マキペディア(発行人・牧野紀之)

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日本は台湾の民主主義を学ぶべきです

2020年11月21日 | タ行
1,日本は台湾の民主主義を学ぶべきです
             小佐野 弾

 思い切って台湾に居を移し、起業をしてから十年あまりになる。日本の老舗「辻利茶舗」の商標使用権を取得し、台北の百貨店に「TSUJIRI」ブランドのカフェの一号店を開けたのは2010年の秋だった。その後ビジネスは順調に拡大し、今では世界11カ国に約40店舗を構えている。

 日本人に台湾で暮らしていることを伝えると「親日だから住みやすいでしょう」と言われることが多い。なるほど台湾は「親日」である。日本統治下に教育を受けた高齢者を中心にした歌壇があり、短歌が詠まれる文化が日本以外で定着しているのは台湾くらいだろう。街を歩けば、日本の最新ヒット曲が必ず耳に入る。日台間の文化交流や人的往来も盛んだ。

 昨今、台湾を取り巻く地政学的環境は緊迫している。日本のネットを中心とした世論を見ていると、民主主義社会の台湾を応援する声がとても多いことに気づく。早期の封鎖と徹底した防疫対策を実施し、市中感染を抑え込むことに成功した台湾当局のコロナ対策も、日本で注目されているようだ。
 
  日ごと夜ごと澄みわたりゆく水のなか
  鮎のごとくにさびしいわれら

 「鎖国」により渡航が難しくなり、日本の友人や家族に会えないのは寂しい。しかし台湾内の市民生活はおおむね平穏であり、域内需要も活況を取り戻しつつある。僕の会社もどうにか黒字経営を維持できている。
          

 市場に流通するマスクを政府が一括で買い上げ、健康保険カードに付された身分証番号の末尾一桁の数字で購入を管理した結果、日本で発生したようなパニックも最小限に抑えられた。三十代のIT担当大臣・唐風(オードリー・タン)氏が開発したアプリによって、近隣薬局のマスクの在庫数は簡単に把握することができる。


 唐氏はトランスジェンダー女性である。台湾では性別や出自、属性や年齢に関わらず、プロフェッショナルが適材適所で活躍できる。政府の中央感染症指揮センターが積極的な情報公開を行っていることも大きい。資本主義市場経済において最も重要なのは「信用」「信頼」であり、その源泉は「情報」だ。台湾では多数の市民と政府の間に信頼関係が築かれている。我々在住外国人の多くも、政府の発信する情報を信頼している。

    かなしみと怒り越えたるひとすじの
    響き永久(とは)なれプユマのうたよ

 女性トップのさい(草かんむりに祭)英文総統が率いる台湾では、人口の九割を超える漢民族や客家(はっか)に加え、アミやプユマなど十六族のマレー系先住民やベトナムやタイからの移民などが共生している。台湾が「住みやすい」のは決して「親日だから」だけではない。民主的な政府があり、多様性が生きるダイバーシティー社会が築かれているからだ。日本の国会に当たる立法院ではクオータ制が導入され、女性議員比率は四割を超える。女性がトップや役員を務める大企業も珍しくない。

 昨年、アジアで初めて同性婚を合法化したことは世界中でニュースになった。外国人も全民健康保険に加入でき、上質な医寮サービスを安く受けられる。日本より合計特殊出生率の低い台湾は、少子高齢化対策でも先輩だ。

 東(ひむがし)の空を見つむる眼差しの鋭き熟をわれは忘れず

 台湾の民主主義の礎を築いた李登輝元総統が七月に逝去した。李氏は「葉隠」を愛読し、芭蕉の俳諧を好み、日本人に対して常に「自信を持て」と鼓舞し続けた。李氏ほど日本人から愛された海外の首脳はいないだろう。僕も何度かお目にかかり、厳しくも温かい眼光と、深淵な知性に圧倒された。

 ただし「自信を持つこと」は時に「上から目線」に繋がる。台湾は既に多くの分野で日本社会を凌駕している。工業化と近代化では台湾に先んじた日本だが、民主主義のあり方やダイバーシテイ社会の実現においては、今や台湾のはるか後塵を拝している。日本が台湾に教えを請うべき時が来ている。(朝日、2020年11月11日。小佐野さんに付いてはウイキペディアに説明があります)

 2,牧野の感想

 これまでの私の台湾に関する知識はお粗末な物でした。かつて日清戦争の結果、台湾を植民地にしたが、その支配の仕方は、後の韓国に対するやり方とは違って、現地の実情を尊重するものであったこと、それは後藤新平がトップにいたことによるものであったこと、などが主たるものでした(以上の知識がどの程度真実かは知りません)。

 戦後は、中国大陸で人民解放軍に敗れた蒋介石の国民党軍が台湾に来て、独裁的な支配をしたこと。しかし、経済の発展と共に少しずつ民主化が進み、1991年の戒厳令の撤廃以降は、李登輝総統のリーダーシップもあって、急速に発展した事。しかし、経済的には、1965年の日韓条約以降、それで得た大金を使って少数の大企業中心に発展した韓国とはちがって、台湾は中小企業が中心であること、などです。

 そうそう、少し前に、台湾で新幹線を走らせる事業を担った会社から派遣されて大活躍した女性社員が、台湾男性と懇意になり、新幹線ができてからも台湾に残る、といったようなテレビドラマも少し前に見ました。植民地時代の差別も少し出てきましたが、全体として、「台湾てきれいだな」という印象を持ちました。

 今回のコロナ問題で台湾の対応が優れていて、効果をあげているらしく、WHOでも評価をしているので、大きな会議に中国の反対を押し切って、台湾の出席を認めるとかの議論があったようです。

 さて、これらの知識を前提にしてこの小佐野さんの文を読んだ私は本当にびっくりしました。「政治では日本は台湾に負けている」と思いました。では彼我の違いの根本はどこにあるのでしょうか。私は「資本主義市場経済において最も重要なのは『信用』『信頼』であり、その源泉は『情報』だ」という言葉に着目しました。政府高官が不正を働き、それに関する情報を公開せず、議員の質問にまともに答えない風景が当たり前になっている我が日本ではダイバーシテイ社会など夢でしかありません。

 日本では1年以内に総選挙があります。しかし、その選挙で日本の政治地図が大きく変わる事はないでしょう。新聞報道によると、一部の策氏が動いているそうですし、野党の指導者も考えてはいるようですが、私見ではピントが外れていると思います。
 
 民主党の大失敗で「政権交代」や「野党」に幻滅した日本国民を動かすのは並大抵の努力では無理だと思います。

 私の案は以下のとおりです。

 ➀何らかの住民運動と関わっていて、
 ②個人でも情報公開を完全に実行している人が(男女関係は私事だから問題にしない)、
 ③この2条件を満たせば、後は憲法改正でも何でもいいという人が集まって、政党を作り、党としては日頃は政治的シンクタンクのようなことをする。  
 ④収入は、党員の収入に応じた党費、議員になっている人の政務調査費、国会議員がいれば政党助成金、サポーターの会費、その他でまかなう。
 ⑤意思のある党員は、それぞれのレベルに合った選挙に出る。選挙費用は党で出す。
 ⑤国政では、特に小選挙区では、②の「完全な情報公開」だけを基準にして統一戦線を組んで戦うことをめざす、
というものです。

 なぜかと言いますと、ヘーゲルがカントを批判して言った通り、「全ての現象が分かれば、その中に物自体(真実)が出ています」から、意見の大きな違いは自然に無くなって行くと思うからです。

 PS

 以上を書いてブログにアップしようと考えていたら、日本でも既に「ガラス張りの県政」を唱えて戦った人がいることを思い出しました。
長野県知事として一大旋風を巻き起こした田中康夫さんです。しかし、我々の期待に反して、田中さんは竜頭蛇尾に終わりました。どうしてこう成ったのか、未だに好くは分かりませんが、今回ウイキペディアを読み返してみて、又考えました。
いった 最初に出た時は、自分から出たのではなく、皆に押されて出たわけで、つまり「出たい人より、出したい人を」を地で行ったわけで、本人も「オレでいいのかなあ」などと言っていたと思います。
 それが、知事になってドンドン支持率が上がり、車座集会が活況を呈するようになると独断的になったのではないでしょうか。

 しかし、〇〇審議会などの無駄な委員会を再検討するのにヤマト運輸の小倉昌夫さんなどの優秀な民間人を起用して、四つを残して他をなくしたこともあったはずです。ですから、知事としてどう振舞うのが適当か、を相談に乗ってくれる相談役を数人決めておくと好かったのかもしれません。

 脱ダム宣言や脱記者クラブ宣言で特に敵を作ってしまったようですが、同じことを提案するにしてももう少し上手いやり方があったかもしれません。いずれにせよ、日本の李登輝になってくれなかったのは残念です。

 最近の事例では、世田谷区長の保坂展人に私は注目しています。着実に区政を改革しているだけでなく、後継者の養成みたいなこともしているようです。出身母体の社民党を改革する気はないようですが、今後を期待して待つことにしましょう。
 

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