マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

離島航路補助事業の実態、盛運汽船、山本公一衆院議員、

2012年07月24日 | ハ行
 離島を結ぶ唯一の航路を営む会社は、国土交通省の離島航路補助事業で、収入から費用を差し引いた赤字額を税金で埋め合わせてもらえる。役員報酬額に上限はなく、ほぼ申請通りに費用にカウントされる。報酬額は公表されておらず、税金の垂れ流しに歯止めが利かない仕組みだ。

 税金から支払われる役員報酬の総額は年間3億円以上。2011年度に最も多く受け取っていたのが、自民党の山本公一衆院議員の親族会社「盛運汽船」だった。

 山本議員は1981年から92年まで社長。元総務副大臣で、現在は衆院国交委員会の筆頭理事。

 盛運汽船に「税金から役員報酬を得ることに疑問を感じないのか」と質問すると、「赤字になることが当然の前提である事業を民間の営利企業に行わせる代償として交付される」と文書で回答した。山本議員も文書で「国交省の監査が行われ問題があれば指摘される制度になっている」と答えた。(略)

 この航路を営むのは、自民党の山本公一衆院議員(愛媛4区、64歳)の親族会社「盛運汽船」(本社・宇和島市)だ。社員23人(船員14人、事務員9人)に対し、役員は3人。社長は山本議員の妻(62)、残る2人は長男(37)と同級生だ。株は長男が95%、妻が0・5%を保有している。

 資本金は1400万円だが、2010年9月期には約1億7000万円の赤字を出し、約3億5700万円の債務超過になった。それでも、11年度の役員報酬は計約2000万円。実はそのほぼ全額が、国土交通省の離島航路補助事業で税金から支払われている。しかも報酬額を決めるのは、妻と長男だけの株主総会だ。(略)

 一方、国交省四国運輸局の担当者は「役員報酬額は会社が決定することなのでどうしようもない。非公式に高いと指摘したが、下げてもらえなかった」と話す。役員報酬額についてルールはなく、各地の運輸局は非公式の指摘さえしていないのが実情だ。

 役員報酬は発表されていない。このため、国交省に情報公開請求して調べることにした。およそ1ヵ月後、報酬総額は開示されたが、役員ごとの金額は黒く塗られていた。

 11年度に税金から役員報酬を1000万円以上得たのは盛運汽船を含め5社。大半は数百万円単位で、10万~20万円も3社あった。(略)

 離島航路補助事業が始まったのは1952年度にさかのばる。行政が確認するのは架空請求がないかだけで、国交省は「長年の慣例で赤字全額について(税金から)支払われているのは承知している」と認める。

 民主党に政権交代してもこの仕組みは続いた。2009年秋の事業仕分けでは離島航路は不可欠だとして「見直す必要なし」と判定され、役員報酬は議論にもならなかった。役所だけでなく、政治も切り込むことができなかったのだ。

 各地の離島航路は先細りし続けている心90年度に約1201万人だった乗客数は11年度に約792万人に減り、事業者の赤字は約53億円から約98億円に膨らんだ。国交省は「補助金をなくしたら離島航路は守れない」という。

 だが、民間には経営統合で赤字を減らした例がある。

 三洋汽船(本社・岡山県)は昨年4月、県内の豊浦汽船と六島航路の2社を吸収合併し、合理化を進めた。2社の取締役は相談役に退き、計約900万円の役員報酬を計120万円に。2社が1隻ずつ所有していた船は1隻に、船員は7人から5人に減らしたが、運航数は維持して利便性は守った。2社合わせた赤字額は10年度に4570万円だったが、今年度は2600万円に半減する見込みだ。

 三洋汽船の天野雄二郎社長は言う。「離島航路を維持するためには、観光資源の発掘と合理化しかない。役員報酬が多くなるのも、税金を使っているという意識が足りず、合理化する気がないからだろう。そういう業者にはやめてもらうしかない」。

 公営や三セクにし、役員報酬などを国や自治体が指示して削減する方法もある。「採算があわないからやむを得ない」として手つかずの補助事業は少なくない。

 離島をつなぐ唯一の航路が失われてはならない。とはいえ、赤字会社の言い値で税金を支払うのは行き過ぎだ。今回の取材では、情報公開や経営合理化が不十分な実態が浮かんだ。全国津々浦々の公的支援のあり方を精査すれば、もっと無駄を減らせるはずだ。  
    (朝日、2012年07年13日。沢伸也)

感想

 補助金を貰っている団体には幹部の給与を含めた徹底的な情報公開を義務づけるしかないと思います。

 そのためには、公費で生活し、活動している政治家や一般の公務員の給与をかつての阿久根市のように情報公開する事が前提でしょう。自分の情報公開をきちんとしていないから、他の必要な所にそれを要求できないのだと思います。修身斉家治国平天下。
コメント
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