マキペディア(発行人・牧野紀之)

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信心、die Erbauung

2011年02月27日 | サ行
  参考

 01、原語は Erbauungであるが、この語のニュアンスは新約聖書に由来している。パウロに「我らは活ける神の宮なり」(コリ ント後書6の16)、「汝らの身は……聖霊の官にして」(コリント前書6の19)という語があるが、ここからしてクリスチャ ンとしての徳を養うことは己れを神ないし聖霊の住む宮として建てることと考えられた。したがってエルバウウングとは元来は建徳のことである。

 しかしロマンティカーの「宗教」を罵倒するヘーゲル、個々人の心情や徳性を本質的なこととは見ないヘーゲルではエルバクウングは単なる信心、単なるお説教というほどの意味のものであり、また「お説教」は有難 いものであるところからしては erbaulichは「有難い」を意味する。

 アフォリスメンの66にも「宗教がなくなったからと言って、ひとは哲学に対して Erbauenに身をいれ、牧師の代理をすることを要求している」(ドタメンテ371頁)とある のは、やはりロマンティカーを罵倒したものであろう。

 なお宗教哲学講義(15巻22頁)を参照。こういうヘーゲルに反対したのがキュルケゴールの Erbauliche Redenの立場である。(金子武蔵訳「精神現象学」上巻463頁)