マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

企業幹部の人間実習

2009年08月24日 | カ行
 企業の所長級がホームレスの世話をする。部長や課長が麻薬中毒の若者の相談に乗る。「サイドチェンジ」プロジェクトでは企業の指導層の人たちが全く新しい経験を積んでいます。

 バルバラ・ザストロチンスキーさんは、上司から「サイドチェンジ」プロジェクトで実習してみないかと勧められた時、さして迷いませんでした。45歳の彼女はドイツの或るIT企業で所長にまで登りつめた人です。バルバラさんの実習先はデュッセルドルフにある施設です。そこで1週間、ホームレスや困っている人たちの世話をし、食事を出し、相談に乗りました。そこでは何よりも、仕事では知り得ない面を知ることができました。「私は、いわゆる『資源』としか見ていなかった人々の許へ帰ろうと思いました」と語っています。

 「サイドチェンジ」は1990年代に指導層のために設立されました。2000年には、このスイスで生まれたプロジェクトがドイツでも導入されました。すでに1000人を超す男性・女性の幹部がこれに参加しています。そして、ホームレスや障害者や麻薬中毒者やお年寄りの面倒を見てきました。

 マリア・ヴレーデさんは「サイドチェンジ」ノルトライン・ヴェストファーレン州支部長です。マリアさんは、このプロジェクトはとても意義があり、啓発力が大きい、と考えています。「企業が社会的責任力を発揮するのはその社員を通じてなのです。そしてこういう事はトップから始めるのが一番好いのです」。しかし、企業人との新しい協力は施設の方にとっても有益です。企業はたいてい永続的だからです。

 バルバラ・ザストロチンスキーさんは、この実習はためになったと考えています。問題を抱えた人々と接して多くの事を学んだからです。今後もこの施設に関わり続けるつもりです。所長としても、今までのようにただ仕事だけで同僚と関わるのではなく、個人的な興味をもった人間として付き合い、仕事以外の会話もするようにしようと思っています。

 (ドイチェ・ヴェレ、2009年07月28日。原文ドイツ語)