マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

過疎地対策(01、ドイツの太陽光発電)

2009年08月21日 | カ行
 自然エネルギーによる発電が農村や過疎地を救う。そんな期待を抱かせる話を、ドイツの電力事情にくわしい立命館大元教授の和田武さんから聞いた。

 和田さんが調査したドイツ北端にあるローデネス村の太陽光発電所が、村の稼ぎ頭になったという話だ。人口わずか150人のこの寒村で、住民らが2000㌔ワットの太陽光発電施設をつくったのは2006年暮れ。2007年には、年間252万㌔ワット時を発電し、当時の為替換算で2億円以上を売り上げた。

 発電施設への投資額は約7年で回収できるという。自然エネルギーによる電気を高く買い取る「固定価格制度」を独政府が導入しているおかげだ。ここの場合、一般の電気料金の3倍近い値段で20年間の買い取りが保証されている。

 和田さんは「衰退しつつあった村の農業がこれで安定し、30人の新たな雇用も生まれた」と話す。ローデネスだけでなく、この制度で過疎地が活性化する例が数多くあるという。

 もちろん、電気が高く売れる半面、一般の電気代はあがる。国民1人当たり月額100円の負担増になるという。

 だが、長い目でみれば温暖化対策に貢献し、国のエネルギー自給率が上がる。じり貧の農業も支えられるならメリットは大きい。日本政府も太陽光発電を高く買い取る制度を始めようとしているが、まだ中途半端だ。ドイツなみの制度を導入すれば、高齢化が進む過疎地もよみがえるかもしれない。

  (朝日、2009年03月05日。中村正憲)