マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

知事選2009(05、私の評価、03、教育改革と残り)

2009年07月02日 | タ行
 もう投票日までの時間も無くなりましたので、残った問題を箇条書き的に論じ、最後に総合評価を出して、結論とします。

 初めに、前回の記事に間違いがありましたので、訂正します。静岡県の教育長の名は「遠藤亮吉」ではなく「遠藤亮平」でした。

 01、教育行政は知事が行うものではなく、知事の任命した教育委員(そのトップが教育長)が行うものです。委員は、ひとたび任命したら、任期満了までその人を代えることはできません。

 教育改革を言うなら、まず現在の遠藤氏の行政をどう評価するかを言わなくてはならないでしょう。しかし、誰も言っていません。川勝さんだけは、「教育委員会の存在意義・あり方を再検討します」と言っていますが、どう変えるのかまでは言っていません。そもそも教育員会のあり方は法律で決まっているのではないでしょうか。県に変える権限があるのでしょうか。

 02、30人学級(平野さん)とか35人学級(川勝さん)とか言っています。そして、それを「少人数学級」と呼んでいます。40人未満なら「少人数学級」と言うのは特殊日本的用語法です。国際的にはそれは25人以下を言います。念のため。

 また、非常勤講師が「官製ワーキングプーア」になっていることに言及している人がいないのは、どうしたことでしょうか。

 どうしたらいいか、簡単です。教師の給与を阿久根市のように詳しく発表すること。そうすれば、それがいかに高すぎるかが皆に分かるでしょう。それを3分の2にして、正規教員を5割増やすのです。人件費総額は同じで、教員を5割増やせます。

 03、川勝さんも海野さんも教育を重視していますが、大学を中心的に考えているようです。曰く「JICAグローバル大学院」(川勝さん)、曰く「県内に世界から大学・学部を10校以上誘致」(海野さん)。両氏とも、また坂本さんも平野さんも、県の教育行政の中心は高校だということを知らないのでしょうか。

 その最大の問題には、教育内容以前にお金の問題があります。「公立高校の入学定員は中卒者の3分2にする」ことになっているそうです。つまり、3分の1は必ず私立に行くようになっているのです。こういう事実を知っているのでしょうか。そして、授業料が払えないので中退する生徒が続出しています。

 高校は今や事実上義務教育なのです。ドイツのように、私立高校でも人件費は自治体が払い、他は設立母体が負担するようにして、教育を金もうけの手段にさせないようにするべきです。

 これも高校教員の給与を今の3分の2にすれば、私立の教師の給与も払えることは計算上分かると思います。教員の給与の高すぎることが、すべての歪みの原因なのです。

 教育内容について言うなら、4人の候補者は覆面して県立高校の授業参観をしたことが1度でもあるのでしょうか。あるいは、信頼できる保護者の話を聞いたことがあるのでしょうか。

 私は、自治会長をしていた数年前、近所の高校の英語の授業を2回(1年生と2年生)、始業ベルから終業ベルまで、見学しました。「世の中にこんな無内容な授業があるのか」と思いました。生徒が荒れているわけもないのに。

 今年の静岡大学の入学式で4年生が新入生に歓迎の言葉を述べたそうです。その中に次のような趣旨の話があったそうです。「私は教師になりたいと思っていた。しかし、教育実習にいったところ、現在の学校の状況に驚いた。授業中なのに寝そべっている生徒、携帯電話を扱っている生徒、寝ている生徒など、考えられない生徒がたくさんいた。今の教育現場は荒れている。この体験から、これを正すために教師になるのではなく、教育現場そのものを作っている現場に勤めるという夢をもった。」

 これは中学のことですが、これらをどうしたら好いか、候補者の中の1人でも、考えを持っている人がいるのでしょうか。そもそもこういう事実を知っているのでしょうか。

 04、海野さんは「学力テストの公開」を主張していますが、これは氏の「脱官僚」と矛盾します。「教育は中央集権にはなじまない」というのが先進国の常識です。だから、ヨーロッパ諸国ではほとんど、国レベルの文部省はありません。文部科学省は解体あるのみです。

 05、海野さんは「県産材を利用した家屋への減税措置で県内林業の活性化」と言い、川勝さんも、同じ趣旨のことを言っています。しかし、これでは「県内林業の活性化」は無理でしょう。

 県産材(の木造住宅)とか言う前に、住宅を建てる余裕がないのです。海野さんは、「民間家屋の簡易耐震診断100%無料化」と言いますが、これで耐震補強工事数が今の年間1500~2000軒から増えると思っているのでしょうか。無理です。平野さんの「木造住宅の耐震補強助成を増やす」でも無理です。今でも助成金は増えてきていますが、工事件数は増えていません。

 工事費を全額県の負担でやる以外の対策はありません。それが可能であることは、私が数字を出して示しておきました。

 06、川勝さんは「都市と農山漁村の交流の促進」と言い、坂本さんも同じ趣旨のことを言っていますが、この程度の「対策」では山村は元気にならないでしょう。「交流」するには山村に「交流の相手」がいなければなりません。それがいなくなっているのです。

 活性化した所はみな有能なマネジャーが現れた所です。現れるのを待っているのは政策ではありませんから、子どもを持つ若い夫婦を職員として採用し、山村にに移住してもらって、活性化のマネジャーをしてもらわなければ無理だと思います。

 川勝さんの「光ファイバー網の100%普及(現在82.4%)で情報環境の向上」策も、「向上した情報環境」を使って仕事を作り出す「人」をどうするのかに、答えていません。

 07、医師不足や介護について検討する余裕がなくなりました。はばかりながら、私の案(ブログ「静岡県庁の真ホームページ」の「知事選の争点」その1~10)と比較してくだされば、候補者の案では即効性がなく、費用もかかりすぎることが分かると思います。

 (教育改革とその他についての)結論

 平野さんと坂本さんは共に10点。海野さんは30点。川勝さんは、「教育委員会」ということを「言っている」点を評価して、40点。

 総合的評価

 長年にわたって県政を研究し、行政と県民の実情に通じていると思える候補者は1人もいません。みな落第です。

 落第の中でせめて「ほんの少し」点数の高い人を探すなら、海野さんと川勝さんでしょう。情勢分析によると、坂本さんと川勝さんが競っているそうですから、まあ、川勝さんに入れるしかないでしょう。

コメント
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