土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

仏像を描く

2020-09-30 18:11:49 | 人生経営
 これまで旅をして、時間があれば風景や建物などをスケッチしてきた。京都タワーは異なる日に描いたものが、たぶん10枚を超えるだろう。

 今年は新型コロナ禍で、県外を訪れる機会がほとんど無くなった。そこで時間つぶしの手慰みに仏像の写真を見て描くことにした。

 これまで薬師寺の三尊像と聖観音像は、火災のため黒くなっており、輪郭がはっきりしないような気がしていた。しかし、各地の仏像を十数枚描いてきて、薬師寺の仏像までついにたどり着いた。十数年前、仙台で何かの企画展として聖観音菩薩が出張していた。以前薬師寺で拝観したことはあるが、お姿がなんとも言えず優美なので、それに惹かれたことと、ちょうど時間があったので仙台会場を訪れた。それ以来疎遠になっていたが、改めて描くつもりでお顔を拝見して見ると、なんと気品があると言うか、上品というか、清楚と表現したらいいのか、他の仏像とは一風変わった彫りであるが、違いを超えてなにか伝わってくるものが、言葉には表せない。静寂の中の凜とした永遠のほほえみが、心を洗ってくれるような思いがする。

 これまで美しい仏像というと、願徳寺の如意輪観音像が第一で、次に安倍文殊院の快慶作文殊菩薩、円城寺運慶作大日如来、醍醐寺の快慶作弥勒菩薩坐像、東大寺の運慶・快慶作仁王像などがある。大人気の興福寺 阿修羅像は、青年のようなお顔で、憂いを秘めておられる。

 国宝ではあるが、向源寺の十一面観音は、確かに美しいが描きにくいお顔をしている。ガンダーラ系ではないかと思わせる。

 そもそも仏像を描きはじめたキッカケは、今年に入って2回目の県外で、7月に奈良県吉野のホテルに宿泊した折り、ホテルにあった雑誌に如意輪寺にある源慶作の蔵王権現の写真を見たからだ、如意輪寺はホテルから登ったすぐ近くにある。金峯山寺の蔵王権現の大きさには圧倒されたが、如意輪寺の像は50cmほどだ。しかし、その迫力はすごい。写真だけ見ると大きく見える。他にこわい系のお顔の仏像として、鞍馬寺の毘沙門天像がある。困ったようなお顔は、無骨さの中に滑稽さも垣間見えて対比が面白い。

 運慶や快慶の整ったお顔の仏像は描くのが難しい。反対に仏像ではないが、俵屋宗達の風神・雷神図のユーモラスはお顔は、ごまかしがきくので描きやすいように思う。それにしても、宗達はあのようなお顔とお姿を、よくも創造したものだと感心する。いつか、自分自身で創造した風神・雷神図を描いてみたなと夢想している。

立花隆の人間と自然観

2020-09-05 11:29:13 | 工程表
 50年ほど前、エコノミスト誌に下水道処理では、石鹸と合成洗剤を比べると処理費は合成洗剤の方が格段に高くつくし、完全には処理しきれないと書かれていた。合成洗剤は石鹸よりも汚れが落ちやすい。だが合成洗剤を製造する企業とそれを使用する消費者は利益を得る一方、税金をおさめている国民と自然が尻拭いをしている格好だ。当時は四日市喘息や水俣病など、公害被害は目を覆う状況を呈するというよりも悲惨な状況であった。そのころは大阪に住んでいたが、水道水は飲めるようなものではなく、スモッグと自動車の排気ガスで道路の先が見えなかった。資本主義とは自然を食い物にして利潤をあげるものだとも思った。

 現在、中国の経済発展は著しいが、反して大気汚染は中国に住む人の健康のみならず、日本人にも影響を及ぼしている。高い経済成長の陰では自然と、現在および将来にわたり地球に住む人々の健康が犠牲になっているのだ。そこには合成洗剤とおなじ問題の構造がある。

 先日(9月3日)のプレジデントオンライン配信記事では、49年前の立花隆のデビュー作「思考の技術」で、「人類は自然をもっと恐れるべきだ」と書いていたことが紹介されている。まもなく九州を風速80mと言われる記録的な大型台風が襲ってくる。温暖化で台風は大型化し、ゲリラ豪雨に襲われ、海水温があがり魚をはじめ海の生態系にも大きな変化を及ぼすことなどが言われていたが、現実のものとなっている。だが、多くの政治家や人々は、一向に温暖化に真剣に取り組んでいるようには見えない。人間は、まさにゆでられ蛙になっている。立花は昨今の温暖化が叫ばれる前に、温暖化の切り口ではないにしても、「自然を大事にしなければならない」ことを広範な研究と知識を駆使して、警鐘を鳴らしている。

 立花隆、佐藤優、出口治明は、日本における3大知の巨人といっていい。3人の中では立花の表出が一番早かった。一部では立花へは批判もあるが、論には謙虚に耳を傾けても損は無いというよりも、今後も積極的に拝聴していきたいと思っている。

石破茂氏の選択

2020-09-04 10:14:33 | 工程表
 石破茂という人は、自民党党員には人気があるが、国会議員からはそうではない。この度の安倍晋三氏の総裁辞任に伴い3人が立候補している。石破氏は国民からも日本国首相として期待があり、ある調査によれば人気も最高点を獲得している。しかし、自民党の派閥が早々と菅氏を後継総裁として選出するように方向づけ、勝負にならない。大統領制なら恐らく石破氏が今後日本国をリードしていくことになるのだろうが、議員内閣制のもとでは今回も芽が出ることはないだろう。

 中曾根氏が田中角栄の門を叩いたことが、中曽根内閣の誕生を決めたと、渡邉恒雄氏が言っていたが、石破氏は群れることや寝技を使うのは苦手なのか、あえて信念を貫くため、裏技を選択することを避けているだろうか。

 新型コロナ禍の中、対応に期待が持てると思うのは、3人の中では石破氏が一番ではないだろうか。しかし、恐らく石破氏が手腕を発揮する場面は当分ないと思われる。石破氏ではならないほど、新型コロナ禍が切迫していないのは、国民にとっては幸いであるが、不謹慎ながら石破氏にとっては不運とも言える。

 石破氏なぜ群れようとしないのか推測してみると、もし総理になったとしても、大臣の任命を派閥順送りでなく、能力本位で人事を断行したいと考えているのではないだろうか。故に、派閥に媚びないで、孤高の雰囲気さえ漂う。しかし、人の価値は他人が決めるのである。石破氏は自分の能力に自信を持っているようであるが、悔しいことながら他人が認めてなんぼである。国民の一人として情けないが、力の誇示と利権に染まった派閥政治がまかり通る日本の現状では、石破氏がその持てる力を発揮する道はまだ遠いだろう。

安倍晋三総理の経済政策能力と危機管理能力

2020-09-03 09:35:12 | リーダーシップ
 アベノミクスと高らかに宣言していたが、確かに政権発足当初の経済政策は功を奏したと言っていい。

 IQが高く、国会での野党クラスへの答弁では、得意分野においては記憶したことを並べて原稿を見ずに答弁することができる能力を持っている。外交においては、IQを駆使して成功してきた自信が、ロシアのプーチンやアメリカのトランプとの交渉でも、ある意味で一定の成果をあげることができたと言えるだろう。

 ただし、北方領土の変換や拉致問題の解決には至らなかったは危機管理能力の低さ故、期待すること自体幻想であったと言える。さらに、危機管理能力の低さが露呈したのは新型コロナへの対応でも明らかであり、もともと、モリカケ問題や桜を見る会、河合議員夫妻の問題、10人ものお粗末な大臣の辞任など、あきれかえるようなガードの甘さが指摘されるが、これらはすべて危機意識の低さが根源になっている。

 どうやら菅氏に政権が引き継がれる様相であるが、菅氏は調整型であり、危機管理に期待することはできないと思われる。新型コロナへの対応などの危機管理は、日常とは異なる思考と行動が必要であり、世界の指導者でも合格点を与えられるのはドイツのメルケル首相や台湾の蔡英文総統など数少ない。日本の派閥に担ぎ上げられた調整型のリーダーの下では、残念ながら危機対応にとまどう状況が、しばらくは続かざるを得ないだろう。