土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

「ICT施工は金がかかるばかりで儲けが出ないのでは」との疑問に対する一つの回答

2020-02-29 10:32:35 | 人生経営
 表記のことは、複数の経営者が口にされることですが、この言は「新しいこと」に直面して、よく聞く言葉でもあります。CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント:新し工程管理手法)の時にも「うちで2~3人の者が使ってくれるのであれば買ってもいいが、使わないと持ち腐れになるので」とか、「新しことは、費用ばかりかかって儲けにならない」との声が聞かれました。

 新しいことに対する出費を費用と見るか、投資と考えるかの違いのようにも思います。勿論、国交省の旗振りで、高い費用をかけて導入したものの、その後立ち消えになったものもあります。ISOも絵にかいた餅になってしまい、審査の時だけ作業している会社が多いのが現状ではないかと思いますが、一方、ISOを活用して「高工事成績獲得」と結び付けている会社もあります。

 社員の「やる気」がある会社は投資となり、そうでない会社は無駄な出費になっている実態があります。「やる気」は、本人独自の個性の場合もありますし、経営者が社員の「やる気」を醸成している場合もあります。両者が合致している場合が最大の強みを発揮できることは言うまでもありません。後者の場合には、経営者も社員も幸せな人生が送れていることと、うらやましく思います。

 ところで、ICT施工への対応は無駄な出費に終わる代物なのでしょうか。時代の趨勢を見ると、どうもこの方向は避けて通れないのではないでしょうか。我々は3次元空間で生きており、これまでの図面の2次元を3次元にするというのは、人間の脳の認識に合致します。トレンドとしてICTやCIMの方向は推進されるものと考えるのが妥当ではないでしょうか。ICTに関しては、感受して、洞察し、先見性を発揮することが必要だと思います。また、手戻りの防止やアイデアの創出、監督職員との協議や地元説明での合意形成のしやすさなど、利点には多大なものがあると思います。

 具体のICT施工事例として、ミタニ建設工業の物部川の現場では、オペレーターが楽だと言っており、武政建設の後入川の河川災害復旧の現場でも、仮設工の盛り土の土量を出すのに、いちいち計算しなくていいので楽だと言ってます。福留開発では、堤防の階段の掘削に使用したり、擁壁の床掘掘削や改良土の割合を算出するのに使っており、これまでの大切り土・大盛り土だけでなく、小規模な工事にも活用されています。北海道の砂子組では、オペレーターの心拍数が、通常施工よりもICT施工の方が低く、ストレスが軽減されていることが報告されています。

 導入パターンとしては、まずは外注、その後内製化という方向だと思われます。その間、複数社員が実習に出向いて、内製化を図るという方法を取っている会社もあります。いずれにせよ、お互いが励まし合いながら、楽しくICTの導入を推進していきたいものです。

ICT施工「時々刻々の進化」に驚く

2020-02-27 10:29:24 | 建設経営
 先ごろ(1月28日)、高知大学で大林組技術研究所・古屋弘氏の5Gの講演会を拝聴した。演題は、「建設分野の今日と、将来に向けて」で、主として高知大学生向けの「建設業はかっこいい」という、学生の就職先として建設業界に誘おうとする目的で開催されたものであった。

 講演内容で驚いたのは、AIを使って自律(自動)で盛土をダンプトラックの荷台に載せたり、人手不足の時代に合わせ、2台の重機をひとりのオペレーターが遠隔操作したりと、夢の世界のようなことを紹介してくれていた。まさに、建設分野におけるICT施工は、時々刻々と進化している様がせまってきた。

 ところで、上記の「自律運転」とは、バックホウが自分で積み込む土砂の位置を確認し、ダンプトラックに積み込む「自律運転バックホウ」の一連の作業のことである。重機とは別の位置にあるカメラが土砂の位置を探しだし、バックホウに伝え、バックホウが土砂をダンプの荷台に積み込む。この時、バケットで土砂を抄うと、その都度形が変わるしダンプの荷台の姿も一回一回変化する。当たり前のことだが、これらをその度に認識し、作業しなければならない。この時5Gのスピードがモノを言うわけである。

 古屋氏は、「月に人間を送り込んだ時代の電波は、地球から月へ送信し、返ってくるまでに3秒ほどかかっていた。月の裏側に入った衛星は、どうなっているかまったく分からない。月面着陸船とのやり取での3秒というと相当長い時間である。よくも月面に人を送り込んだものだ」と、感嘆していた。この時代の最大通信速度は10キロ・ビット/秒で、5Gは、メガを超えて10ギガという超高速なのである。5Gは「低遅延」が売り物である。

 また、2台の重機の遠隔操作は、6つの大型モニターを見ながら、1台は手で、もう一台は声で動かしていた。声で動かす重機にはAIが搭載されている。遠隔操作は、部屋の椅子に座って操作するのだが、敢えて音と振動を与えた方が、臨場感があって良いとのこと。これを「体感型操縦席」と言うらしい。この点では、人間の思考と認識感覚はなんとも面白い。

 高知県技術公社の岡上泰三氏も、スイスの建設業では日本の3倍の生産性があり、タブレット端末を使い作業時間実績を記録していると講演されていたが、古屋氏もタブレットの現場活用の話をしていた。15分ごとに作業記録を入力するとのこと。これは全産業で行われているらしい。日本は世界の動向から隔絶されている感がした。

 これらを含め、例えば盛土の過転圧による強度低下を回避することもICT施工では可能となる。つまり確実な品質管理ができるのである。また、これまで既存の重機にはMG(マシーン・ガイダンス)しか搭載できなかったのだが、トプコンが先日MC(マシン・コントロール)も各社の油圧ショベルに搭載可能とした。ICT施工関係の進化スピードがますます速くなってきており、文字通り「時々刻々の進化」である。

免疫力を高めて新型コロナウイルスと闘いたいのだが

2020-02-21 11:44:11 | 人生経営
 新型コロナウイルスが猛威を振るっている。ところで、ジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」草思社、2012.2.2には、スペイン人がインカ帝国に入った時、南米人の死者は戦闘よりも、ヨーロッパ人が持ち込んだ病原菌により亡くなった数の方が格段に多いとしている。ヨーロッパ人はすでに免疫を持っていた病原菌も、インディオの人々には猛威を振るったわけだ。

 免疫を持たない病気が登場すると人は弱い。今回の新型コロナウイルスがそれであろう。お亡くなりになられた方や重篤な方はお気の毒であるが、人類の歴史から考えると、病気との闘いの一場面なのであろう。治療薬やワクチンなどの開発が早急に実現することを望みたい。

 話は変わるが、塩野七生が高校生への話の中で「男は女に、女は男に免疫を持ちなさい」と言っていたと以前書いた。男女のことはさておき、今回の新型コロナウイルスは肺炎を起こした場合に死に至る確率が高いようだ。日ごろから免疫力を高めておく必要があるが、ぬか漬けの乳酸菌などもいいらしい。ところがここ数年、冬中風邪ぎみでぐずぐずしている免疫力が加齢と共に極端に低下している私は、インディオのように、新型コロナウイルスには勝てるかどうか、あやういところである。

ジェームス・スキナーの「成功の9ステップ」

2020-02-15 08:44:43 | 人生経営
 ジェームスには、「成功の9ステップ」幻冬舎、2004.2.6など幾つかの著書がある。7つの習慣で有名なフランクリン・コヴィーの日本支社長などを務めた人でもある。講演が大層うまく、一人15万円の講演会に1万6千人以上を集めているので、講演会だけでも20数億円を超える大金を稼いでいる億万長者でもある。

 先ごろ、トゥルーノース社から、ジェームスの講演動画が数回にわたり配信されてきた。以前も何回が見たことがあったが、やはり話がうまい。講演会に参加した500名(ほどではないかと思われる)の人たちはと言うと、ジェームスの質問に手を挙げたのを見ると、社長業の人たちがほとんどで、また、参加者のほとんどが外国旅行をしていた。このような会に参加できるのは、資金的にも時間的にも余裕のある人たちなのだろう。

 ジェームス曰く、「人は世界をあるがまま見ているのではない。自分の眼鏡(思考の枠組み)に当てはめて見ているのだ。トーマス・クーンが、パラダイムの変換と言ったが、自分のパラダイム(眼鏡=思考の枠組み)が変わったならば、行動は一瞬で変わる。ただし、行動を変えるのではない。あり方を変えるのだ。自分はどうあるのかを考えることだ。そうすれば、習慣が変わってくる」。「『夜と霧』を書いたヴィクトール・フランクルは、『意味を見出せばどんな苦しいことにも耐えられる』と言った。乗り越えられない壁はないのだ」。「コヴィーの言う原則中心で生きよ。自分の価値観を原則に合わせよう」。「『結果』を求めるのならば、『結果』と『能力・資源』をバランスさせなければならない」。「自分の資源とは、健康・体力などのことである」。「人生は短い。だから、大きな人間になれるように成長しよう。何事も小さく見えるほどの大きな人間になろう。人間は成長し続ける。だから、今大きな問題だと思っていることも成長すれば、それは小さな問題に見えてくる」。「望みは神さまから与えられるものだ。だから、やりたいことは即、今やること。人間は死を迎えたとき後悔するのは、やったことではなく、やり残したことだ」。「小さな、どうでもいいような問題ではなく、質の高い問題に取り組もう」、などの中に具体の話を入れ、説得力があり、パワフルな講演である。

 「成功の9ステップ」の内容紹介には、「驚異的に学習を早める方法、疲れ知らずの身体をつくる食事と運動、一瞬で感情をコントロールするコツ、自由時間を増やすスケジューリング……世界レベルの成功者たちが実践する様々な手法から、効果の高いものを厳選して9つに分類。望みを明確にするプロセスや、人を動かすリーダーシップなど、成功に必要な知識を集約した究極のバイブル」と、書かれている。

 ジェームスの出所はスティーブン・コヴィーの「7つの習慣」なので、人によっては「7つの習慣」の方が、読みごたえがあるのかも知れない。

 ちなみに「7つの習慣」は、米国建国から200年間の成功者をスティーブン・コヴィーが調べあげてまとめたものである。これに先立つ、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」は、500人(最終的には2,000人)の成功者にインタビューなどしてまとめたものだと言われている。

3つの歌

2020-02-13 11:01:20 | 人生経営
 3つの歌と言っても、昔、宮田輝の司会で、今から70年も前の1952年から18年間NHKラジオで放送された聴取者参加型の番組のことではない。私の70数年の人生の中で「心に残る3つの歌」のことである。

 まず1つめは、小椋佳、作詞・作曲の「大空から見れば」である。中でも3番目の歌詞がいい。「大空から見れば 夢を追いかける人間が 何より素晴らしいものだろう 疲れと諦めに 襲われながらも 捨てきれない希望を握りしめる 夢だけが持つ明日という武器で  いつしか道をきりひらいてる そんな人のあとを追って行きたい」。同世代の銀行員である小椋の飾り気のない歌声は心が洗われる思いがし、清々しい。この歌を聞いていると、なぜか文部省唱歌の「村まつり」の情景が浮かんでくる。「村の鎮守の神様の 今日はめでたい御祭日 ドンドンヒャララ ドンヒャララ ドンドンヒャララ ドンヒャララ 朝から聞こえる 笛太鼓」という歌詞で、谷あいの村の稲刈りの終わった清楚な村の風景が、頭の中を爽やかな風とともによぎる。これらの歌は、子供時代から青年期の野望を抱いていた時期を思い起こさせる歌詞でもある。

 次の2つ目は、作詞吉岡治、作曲弦哲也、歌石川さゆりの「天城越え」である。「隠しきれない 移り香が いつしかあなたに しみついた 誰かに盗られる くらいなら あなたを殺して いいですか 寝乱れて 隠れ宿 九十九折り 浄蓮の滝 舞い上がり 揺れおちる肩のむこうに あなた...山が燃える 何があっても もういいの くらくら燃える 火をくぐり あなたと越えたい 天城越え...」。松本清張の小説「天城越え」の映画化された重く暗い印象と共に、大人の情念が沸き立ち煮えたぎる、なんとも言葉には尽くせないものが迫ってくる。

 最後の3つ目は、なかにし礼作詞・浜口庫之助作曲・島倉千代子歌の「愛のさざなみ」である。「この世に神様が 本当にいるなら あなたに抱かれて 私は死にたい あ~あ~湖に 小舟がただひとつ やさしく やさしくく ちづけしてね くり返す くり返す さざ波のように」と、なんとも「せつなく」、散歩をしていると、ついつい頭の中にこの歌が流れてくる。

 さて、少年期から青年期の野望、そして大人の恋愛期へ、最終の人生の帳を迎えながらも、生きる命の「はかなさ」と共に「まだまだ、これからも...」という、諦められない人間の性がやるせなくもさらにあがき、這い上がろうとするはかないモガキが身体の底から湧き上がってくるのを抑えようがない。

 振り返れば、他人に害ばかりを与えてきたとしか言いようのない反省すべき我が人生ながら、残された命をどう燃え尽きさせるか、仕上げの時期でもある。3つの歌から何を学び、どう生きるかがかかっている。

 最後にもうひとつ、小椋佳「山河」があることを忘れていた。「人は皆 山河に生まれ...挑み...信じ...愛し...山河に還る 恥じることのない足跡を 残したろうか 悔いひとつない山を 築けたろうか 愛する人の瞳に 俺の山河は美しいかと 美しいかと...」。