土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

アドラー心理学の役割と今後

2018-12-30 10:51:36 | 人生経営
 野田俊作の「アドラー心理学トーキングセミナー」星雲社、1989.3.1と、岸見一郎「アドラー心理学実践入門」KKベストセラーズ、2014.5.30を読み比べてみると、内容は同じことを書いているのだが、野田は格調が高く盛りだくさんで少し硬く感じ、岸見の方は、やさくし、そしてわかりやすく書かれているように思う。

 さらに、岸見の方はカウンセリングを受けているような気がしてくる。野田の実際のカウンセリング場面も見たのだが、気持ちは軽く明るくなると同時に、少し茶化されているような気分にもなった。アドラーの言う、お二人の「ライフスタイル」の違いだろう。

 野田は思考の回転も早く、岸見はゆっくりとしている。だから、野田には引張られている感じがし、岸見には、自身で考える間が与えられているように思う。勿論、このような受け止め方は、人それぞれのライフスタイルによって異なるだろう。

 ところでアドラーの系譜を受け続いているのがマズローだろうが、マズローの5段階欲求説から見ていると、上の段階にいる人が見えていることが、下の段階にいる人には見えていないことを度々目撃してきた。アドラーの言うライフスタイルと同時に、マズローの言うレベルによっても受け止めが異なる。このレベルが異なると見え方が違ってくることを、ロバート・キーガンが成人の発達理論で述べている。

 つまり、平面的とも言えるアドラーのライフスタイルと同時に、マズローやキーガンの言うレベルも合わせて見ると、より人への理解が深まるだろう。今後人工知能の進展により、肉体を持たないAIと、肉体(と同時に、それに付随する欲望)により規制されている人間の心理学が注目されてくることだろう。

武豊と大谷翔平の思考の共通点

2018-12-05 13:25:27 | 人生経営
 武豊がある時のレースで、1着でゴールしたにも関わらず、進路妨害と判定され、その後のレースで42連敗したことがあるらしい。天才と言われるジョッキーでさえ、ヘコムことがあったということを知って面白かった。しかし、武はインタビューで、「負けがあるからこそ、勝つことができる。負けは後の勝利に結びついている。負けることは無駄なことではない。勝負で負けた経験といえども、人生には必要なものである」と言っていた。

 大谷翔平もバッターとして打てなかったとき、あるいは投手として打たれたとき、「いい勉強になった。貴重な経験をさせてもらった」と発言していた。そして、黙々と足りないところの練習を繰りかえし克服している。自分を冷静に見ることができており、どんな頭脳を持っているのだろうかと不思議な気がしてきた。大谷は24歳ながら老成の感がある。

 私の場合は、勝つと有頂天になって喜び、負ければ悔しくてモンモンとしている。なんとも二人とは大きな違いなんだろうか?二人の場合は、視点が未来に向いているが、私の場合は、終わってしまった過去に目が向いている。

 二人の場合はメタ認知ができており、私の場合は近視眼的で思考の幅が狭すぎ70歳ながら餓鬼のままの思考なのである。

感情と仕事との関係

2018-12-04 10:49:36 | 人生経営
 A.R. ホックシールドに、「管理される心―感情が商品になるとき―」世界思想社2000.4.20がある。また、マッテオ・モッテルリーニに、「経済は感情で動く―はじめての行動経済学―」紀伊國屋書店、2008.4.20や、「世界は感情で動く―行動経済学からみる脳のトラップ―」紀伊國屋書店、2009.1.30などがある。

 日本経済新聞2018年11月26日付けには、オーデマ・ピケ副会長のオリヴィエ・オーデマ氏が、「感情に訴える時計に価値」の見出しで、「デジタル化が成熟化するにつれて感情移入できる物への需要が高まる」と述べている。

 ところで、スピノザは感情について、「感情を統率し制御する人間の無能力を『隷属』と呼び、自分の感情の赴くままに動いている人間は、自分のことを自らの力のもとにあって自由だと思っているかもしれないが、そうではない」と言う。

 さて、創造には感情が必要だと言われるが、前記の論者達は感情について、発生したまま受動的で思考停止のまま流されてしまうか、それとも主体的・主動的・積極的に活用していくか、それぞれの状況や立場から論じているようだ。

 生じた感情を受身のままにしておくのか、理性を働かせ修正力を発揮したり知性を使って感情を活用するのかの違いだろう。感情は切れ味のよいナイフのようで使い方次第だと思う。つまり、負の感情のままで生活や仕事をするよりも、正の感情を使って生活し仕事に取り組むようにすると、素晴らしい成果の仕事ができ、人生が豊になるということだろう。正の感情の乗った仕事は、確かに感動を与えてくれるし、接する人の人生も豊にしてくれる。

賢者とは?

2018-12-03 10:33:54 | 人生経営
 國分功一郎は、2018年EテレNHKテキスト「スピノザーエチカー」の50頁で、スピノザの賢者を「楽しみを知る人、いろいろなモノゴトを楽しめる人」と、解説している。また、「多くの仕方で刺激されうるような状態にある人のこと」だとも言う。

 さて、似たような経歴を持つ社長のいる2つの建設会社で、一方は優良工事表彰を受賞しているが、片やはそうでないところがある。どこに違いがあるかを比較してみると、受賞会社の社長は、いろんな組織での役員をして飛び回っている。そうでない会社の社長はおとなしく、外での活動も目につかない。つまり、刺激を多く受けている社長は、自身が外で刺激を受けると同時に、社員に対しても刺激を与え続けており、それが会社の活性化を促し、活力となって高い成果をあげているように思える。

 ただし、優良工事の受賞は社長がということだけでもない。別の会社では社長以外のナンバー2、3などの人が刺激を与えている会社も受賞しており、会社全体としての刺激の受けかたと出し方に関わっているのであろうと思われる。

 また、スピノザの有名な言葉として「身体が何をなしうるかを知らない」というのがある。そして、これは身体だけでなく、「私の精神が何をなしうるかも私にはよく分かっていない」とも言う。これらの「何をなしうるか」を知るためには、「私の精神や身体がより多くの仕方で刺激されるようになること」だと言う。

 冒頭の受賞会社の社長、あるいは同じく受賞会社のナンバー2、3の刺激を出している方々は、刺激と受賞に因果関係があるとするならば、知るか知らずか、このことを良く実践している人達だと言えよう。

 ただ、注意しなければならないのは、「刺激への反応は、その時の精神状態や体調にも強く依存する」、また、生活をする中では多くの刺激を受けているのだが、「その中のほんのわずかな刺激だけを受け取って」生きている。さらに、「人間が反応できる刺激の数は限られている。あらゆる刺激に反応していたならば、精神はパンクしてしまう」。しかしながら、「多くの刺激に反応できるようになれば、それは必ずや人生を豊にしてくれる」と、國分は言う。

 だからこそ、健康に留意して体調を良くし、心配ごとを無くして精神的な余裕を持つことが大事だということは万人が知っている。スピノザの面白いところは、「ほどよくとられた味の良い食物および飲料によって、さらにまた緑なす植物の快い美、音楽、運動によって、自らを爽快にし元気づけることは、賢者にふさわしいのである」と言う。このように、スピノザは常識的なことから、別項では概念をひっくり返すことまで「エチカ」の中で述べている。