土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

イギリスの苦悩と中国の野望

2019-05-31 16:13:51 | 思考
 ユヴァル・ハラリ「サピエンス全史(下)」河出書房新社、2016.9.30を読むと、イギリスは植民地政策により、1,945年には世界の四分の一を支配していたという(P205)。現在その栄光が薄れ、今はEUからの離脱にもがき苦しんでいる。

 一方中国は、南シナ海南沙諸島のクアテロン礁、ジョンソン南礁、ヒューズ礁、ファイアリクロス礁を埋め立て、自国の領土と海域の拡大を強引に進めている。かつてのイギリスをはじめとするヨーロッパ各国が植民地としてきたやり方は、さすがに現代ではできないので、埋め立てという方法でもって植民地に代わるものとするものであろうことが、ハラリを読むと見えてくるのではないだろうか。

 この背景には、中国は1,404年から28年間で7回、インドから東アフリカまで、3万人近くを乗せ300隻の舟に乗り込んで遠征しているが、その時は植民地にはしなかった(P108)。これは中華思想で行動していたからであり、ヨーロッパ各国の植民地主義によるような富の享受はなく、中国に莫大な利益をもたらすことはなかった。その後悔が、現在の南沙諸島の埋め立てであり、中国によるアジア・アフリカ諸国へのインフラ整備での多額の債務を負わせている姿である。さすがにマレーシアのマハチール首相は、スリランカなどとは路線を変更し、債務の罠から逃れている。しかし、中国は、東南アジアからアフリカまでを結ぶ広域経済圏構想“一帯一路”を推し進めており、今後世界がどのように変貌していくのか、目が話せない。

仏陀とフッサール

2019-05-18 13:21:28 | 人生経営
 白鳥春彦「生きるための哲学」ディスカバー、2012.5.15,PP91-92には、こう書かれている。

 『ブッダと瞑想と思索によって、霊や心というのは実体ではないとした。「心というものが最初から存在しているのではない。心というものはいつも、対象物によって生じる。対象物が心というものを引き起こすのだ。しかし、この対象物とされるものも、心によって対象物とされるにすぎない。どちらも、相手がなければ存在しない。心も物も、それ自体では存在することができない」このことが体感されたとき、人は初めて自由になれる。自分の心に巣くう多くの欲と衝動からようやく自由になれる、と仏教では説いている。』

 さらに、白鳥は続けて、

 『そこから時代を2,500年下って、現象学を専門とした哲学者フッサールも似たようなことを述べている。「意識とは、つねに何ものかについての意識である(志向性)」最初から意識というものがあるのではなく、対象に向かうときだけ意識が存在する、という考え方だ。』

 つまり、ここで白鳥は、ブッダとフッサールは同じ考え方をしていたのだと言う。二人の考え方は観念論で、ブッダとフッサール以外の観念論の哲学者たちも似たようなことを述べているのだが、これを見つけた白鳥はワクワクしたのではないだろうか。見つけた時には、「おおーっ!」と思ったに違いない。

 本を読んでいて共通点や共感する箇所を見つけたときは、嬉しくなる。万刊の書を読み、多数の著作を著わしている白鳥にとっては、すでにこのような発見は、日常のことになっているのかも知れないが・・・

脳と心そして意識

2019-05-14 07:37:58 | 人生経営
 これらの関連の本を読むと、どれもが曖昧模糊としている。それは、これらのことについては最も人間にとって分かりにくい分野なのであろう。

 脳が曖昧だからこそ、進化できるのであり、多様性があり複雑で柔軟性があるがゆえに、創造することができ、成長と発展が保証されているとも言えるのであろう。

 それはそれとして、脳の測定機器の発展によって、段々に分かりつつあることもある。とはいえ、この世界では、AがBならば必ずCになるとは言いがたく、Dになる場合もあればEになることもあるというのが、この分野で起こることらしい。

 さらにフロイトのいう無意識が加わると、混沌としてくる。無いもの、気がついてないことをどうやって把握すると言うのであろうか?しかも、無意識が95%を締めているということになると、理解不能の世界ではないだろうか。

 人の行動は、その人の価値観に左右される。価値観はと言うと、欲望から生まれてきており、欲望はというと、感情から、感情は生きること、つまり命を永らえることが基本となるのだと思う。無意識については、多分このルートで探っていけばいいのであろう。また、無意識は感情とおおいに関連があるらしい。

 ところで、黒川伊保子が「妻のトリセツ」講談社新書、2018.10.20を書いたらしい。男と女の脳は違うらしい。

 少々長くなるがアマゾンからコピーしてみると、曰く『理不尽な妻との上手な付き合い方とは。女性脳の仕組みを知って戦略を立てよう!妻が怖いという夫が増えている。ひとこと言えば10倍返し。ついでに10年前のことまで蒸し返す。いつも不機嫌で、理由もなく突然怒り出す。人格を否定するような言葉をぶつけてくる。夫は怒りの弾丸に撃たれつづけ、抗う気さえ失ってしまう。夫からすれば甚だ危険で、理不尽な妻の怒りだが、実はこれ、夫とのきずなを求める気持ちの強さゆえなのである(俄には信じ難いが)。本書は、脳科学の立場から女性脳の仕組みを前提に妻の不機嫌や怒りの理由を解説し、夫側からの対策をまとめた、妻の取扱説明書である。「妻が怖い」「妻の顔色ばかりうかがってしまう」「妻から逃げたい」という世の夫たちが、家庭に平穏を取り戻すために必読の一冊でもある。
【本書の内容から】
◆妻の不機嫌や怒りの理由を、むやみに解明しない
◆妻は夫に問題解決を求めていない
◆妻は夫に共感してもらいたいだけ
◆地雷を避ける、会話の“黄金ルール”
◆「おうむ返し」で共感のフリをしよう
◆事実の否定は、心を肯定してから
◆妻を絶望させるセリフ集
例1「今日何してたの?」
例2「だったら、やらなくていいよ」
◆夫には見えていない家事がある
◆「~っぱなし問題」を放置するな
◆直感で決める妻、比較検討で選びたい夫の妥協点
◆メールせよ!「今、小田原通過。満席」
◆記念日を軽んじてはいけない
◆されど記念日の“サプライズ”は逆効果
◆「心と裏腹な妻の言葉」の翻訳集
例1「勝手にすれば」→訳「勝手になんてしたら許さないよ。私の言うことをちゃんと聞いて」(「好きにすれば」は同義語)
例2「どうしてそうなの?」→訳「理由なんて聞いていない。あなたの言動で、私は傷ついているの」』と、言うことらしい。

 単純頭の私には理解しがたく、ややこしくて仕方が無い。記念日なんぞというのは、遠い昔の、記憶にほとんど残ってもいない過去のことではないかっ!「いつまで過去にしがみ付いているんだあ~んっ!」それこそ「好きにしたら~っ!」と言い放ちたいところである。

変える(変る)ということ

2019-05-13 09:29:23 | 人生経営
 物事を変えるには、相手を変えることと、自分を変える方法があるかと思います。しかし、相手を変えることは至難の技と言わざるを得ません。どうしても変化しなければならない場合、相手を変えなければならないこともありますが、よく言われているように大概の場合は自分が変ることによって変化させることが出来ると思います。故に、自分を変える方が変化していくためには欠かせない要素となります。 

 繰返しますと、これまでより成長(進化)しなければならない場合、なにかを変える必要があります。

 2019年5月13日の朝刊で、「陸上100m日本人2人目の9秒台」、サニーブラウンは身体的な改善をし、次にスタートを改善した結果、9秒台をマークしたと書かれています。最初に身体的な改善する必要があると「考え方」を変えています(気がついたのは昨年怪我をしたから=問題解決)。次にスタートでは無理に身体を伏せるのではなく「気持ちよく」体を起こしていくスタイルに変えています。これは全体的な調和(心身のバランス)をしており、理にかなったやり方だと思われます。身体と心が一体となった変化を実現しています(自分自身も受け入れやすい方法=苦しくてアドレナリンが流れる方法ではなく、気持ちよくドーパミンが流れるやり方)。

 ところで、大谷翔平は2018年シーズン中打てなくなった時、まず右方向に打球が飛ぶように何十本も打撃練習をしていました。右に飛ばせるようになると、次は同じく右方向で飛距離をのばす打ち方の練習をしていました。最初から右方向で飛距離を伸ばすというやり方ではなく、まずは打球の方向を、そして次には飛距離をと分解して、ひとつ一つ改善のステップを踏んでいました。このように段階を踏みながら地道な練習をしてバッチングスタイルを変え、ヒットに繋げていました。ここでも、ヒットに結びつけるには右方向に打たなければならないという「考え方」を定め(変え)、それに合った「やり方(方法)」を練習し続けることによって改善を実現していました。しかも、最初から右方向で飛距離もと欲張ると困難性が高く、気持ちの持ち方が難しくなりますが、まずは右へだけなら出来るようになるのが早く、モチベーションの維持も可能になり、達成感も味わうことができます。このように大谷翔平は挫折しないやり方をも身につけていると思います。

 成長する(成功し続ける)人というのは、成功への考え方(理論=原理・原則に合致した思考)とやり方(方法論=ステップ・バイ・ステップ)を確立している人なのだなと思います。

 また、アスリートは、身体生理学的(筋肉)な面と、精神的(心)な面の調和、さらに脳科学的な方法論(嫌々ではなく、できるだけ気持ち良いやり方)などの要素が過不足なく頭の中で整理されているのだなと感心します。

 さて、土木技術者に必要な要素とは何と何になるのでしょうか?

人類の思考の発展

2019-05-09 15:23:04 | 人生経営
 竹田青嗣「欲望論」講談社、2017.10.17を読んでいると、哲学者の思考はそれより前に提示された論の上に継ぎ足していることがわかる。故に、ボンクラ頭の私には、どれが誰の論なのかが整理できないでいる。

 ところで、村山斉「宇宙はなぜこんなにうまくできているのか」集英社、2012.1.31を読んでいると、引力を発見したニュートン以前の科学者達がいて、その上にニュートンが「万有引力の法則」を発見したことが書かれている。つまり、科学も哲学と同じで、先人達の思考の上に積み重ねによって確立されてきたことがわかる。

 この構造は、私達が日常の仕事でも行っていることと同じだということがわかる。時に特許の侵害だと騒がれ、裁判沙汰になることもあるが、まったくのゼロから何かが生まれることは無く、それまでの知見の上に付け加えられて、新しいモノが成り立っている。

 発明王として万人が認めるのはエジソンだろう。小学校すら卒業していないオチコボレの人間が、すごい発明をするのだから、人というものはわからないものだ。

 ただ、哲学の話に戻るが、思考の系譜としては幾つかの流れがあって、まったく方向違いに向いているのもあるらしい。竹田論がすべて適切だとは言いきれないと思うのだが、「欲望論」でかなり整理してくれているので、読みながら自らが判断していくのがいいだろう。これまで他人の論を鵜呑みにして右往左往してきた自分にとっては、「そうだったんだっ!」と、ワクワクしてくる話が書かれている。読書の醍醐味のひとつだ。