1 地震は破壊説
「南海トラフ巨大地震‐その破壊の様態とシリーズについての新たな考え‐(2010 年9 月8 日「地震」投稿,2011 年7 月15 日受理)」と題し、東京大学地震研究所の瀬野徹三教授は、「南海トラフ全体にわたる震源断層面の『破壊』の様態については・・・」としている(http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/seno/Papers/jisin.nankai.eq.pdf)。
2 地震は摩擦説
一方、京都大学におられた、カリフォルニア大学サンタバーバラ校谷本俊郎教授は、「実は地震というのは『破壊』ではなく断層面の『摩擦』の問題なのです。」と、2012年7月26日京都大学クオリア研究所で講演している。さらに、地震学者は、地球の複雑さが余りちゃんとわかっていない。地震学者と工学者とのギャップがある。予算は(当面は東北ではなく)、本当は南海トラフにかけるべきだ。」とも述べている。
(http://www.goodkyoto.com/data/File_Storage/agora03.pdf)。
3 摩擦に少しの破壊も伴う説
私の軍配は、東大の瀬野教授ではなく、元京大の谷本教授に上げたい。谷本教授は、岩石の破壊時の歪が10のマイナス2乗から3乗くらいなのに対し、断層歪は10のマイナス5乗から4乗で起こっている。だから地震は破壊ではなく摩擦なのだと、具体的な数値を上げて論じている。ただし、私としては分岐断層破壊を起こしている地震については、摩擦を主としながらも、連動して少しの破壊を伴っているとしたい。
4 深いスロースリップと浅いスロースリップ
東京大学地震研究所の小原一成教授は、東北大地震のあと、「スロークエイクの直後に巨大地震が起きて衝撃を受けた。エネルギーを解消する(エネルギーを溜めないための現象)ものであり、地震の引きがねになるとは思っていなかった(地震を起こさない現象だと思っていた)」と、2013年9月1日放送のNHKスペシャル「MEGAQUAKEⅢ 巨大地震 南海トラフ 見え始めた“予兆”(http://www.at-douga.com/?p=8807)」で発言していた。
この先生は、深い箇所と浅い箇所で起こっているスロースリップの意味をまったく理解していない。つまり、プレートの沈み込みの深いところでは、温度が1000度前後になるので、プレートが軟らかくなり、部分的には溶けているのである。これが深いところで生じるスロースリップである。だから、エネルギーを解消しているのである。しかしながら、東北大地震発生前に観測したスロースリップは、浅いところで生じたものである。工学的知見があれば、これは地震が発生する前兆であると認識できたはずである。崖が崩れる前には、小石がパラパラと落ちてきたり、岩石やコンクリートテストピースを油圧機械で破壊する時に、破壊の前に岩石やテストピースの表面に、ピリピリとひび割れが生じてくるが、これと同じ現象なのである。だから、浅いところでのスロースリップは危険を知らせるものであると認識できたはずである。しかし、小原教授には、工学的知見が無かったのか、冒頭の発現になったものとみられる。発言を聞いていて、なんとも、やりきれない思いがした。
「地震予知2/2」として、2012年12月14日に第26回科学技術映画祭入賞作品がYouTubeで公開されている、「岩石破壊実験での破壊前の表面ひび割れ」を見て欲しいものだ(https://www.youtube.com/watch?v=dZ4VMO79oDI)。
2018年9月1日21時から放送されたNKHスペシャル「南海トラフ巨大地震―迫り来るXデーに備えろ」でも、東北大学の高木涼太助教が、「スロースリップが起こることで、着実に巨大地震発生域の力をためている」との発言に、件の小原教授がその間違い論にのっかり、解説していた。「地震を起こす力」は、スロースリップでも少しは増すが、主体は海側のプレートの沈み込みで生じているものであり、スロースリップは真の原因ではなく、沈み込みの結果生じている副次的なものなのである。依然として、この番組においても、小原教授はスロースリップの性格を、まったく理解していないことを露呈していた。https://www.youtube.com/watch?v=332T74-U1f8
5 想定外ではない
京都大学元総長尾池和夫氏は「東北大地震は想定外ではなかった
(http://www.goodkyoto.com/data/File_Storage/agora03.pdf)」と述べている。これはまっとうな論である。「冪乗、または累乗則関係は、驚くほど多くの自然現象の形態(関係)を記述する。多くの確率分布は、漸近的に冪乗則関係に近づくテールを持つ。こうした冪乗則は、株式市場の崩壊や大規模な自然災害のような極端にまれな頻度だと考えられる、極値理論と強いつながりがある。」、ことを学者なら知っておるべきだ。
6 南海地震は何時起きるのか?
大方の地震学者による次の南海地震の発生は、2,030年とする説が多い(力武常次他)。南海・東南海地震間隔として、過去1、059年間に9回の発生で、117年±35(=83~152年)としているのもあるが、これによると1,946+(83~152)=2,029~2,098年の間に発生することになる。しかし、近い過去3回の341年間で3回発生しており、平均間隔は113.7年となる。慶長地震から102後に宝永地震、それから147後に安政地震、92後に昭和地震が発生している。プレートには富士山ほどの海山があり、凸凹しているので、一筋縄ではいかない。元高知大学岡村眞教授は、2,037年ごろとし、偏差を持たせている。
島崎邦彦「地震と断層」東京大学出版会、1994年10月20日P65の「time-predictable model」により計算してみると、次の南海地震は、2,034から2,045年の間で発生すると読み取れる。これはあくまでも単独発生の場合であり、誤差は、測量時期の補正やデコルマの違いによるものと考えられる。ただし、次の南海地震は、過去300年ごとくらいに発生している連動地震になるかも知れない。連動地震の予測は困難であるが、海洋研究開発機構が「東海・東南海・南海地震の連動性評価」をしており、これに期待したい。
http://www.jamstec.go.jp/donet/rendou/report/search01.html
7 津波代表説
京都大学防災研究所地震予知研究センターの安藤雅孝教授は、「南海道地震は近い(PP859-866)」と題し、「昭和南海地震は、安政地震より小さかった。隆起・沈降も少ない。津波からいうと、昭和は安政の3/4。次の南海道地震までの時間は、92年の3/4、つまり69年後(1,946+69=2,015年(?))に発生するとしている。
この安藤雅孝説はズサンと言わざるを得ない。論文タイトルの「南海道地震は近い」も地震学者がつけるような題ではないのではないか。
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00578/1993/22-0859.pdf
P862 では、「・・・ 安政と昭和の地震を、同じ条件で比較できる測定量は、①津波の高さ、②震度、③地殻変動、④有感余震の数であろう。このうち、地震の大きさ(地震モーメント)を最も正確に表すのは、①の津波である。このことから、南海道地震は安政地震の3/4の大きさであったと結論できる。しがたって、次の南海道地震までの時間は、92年の3/4の69(論文では63)年と求まる。1946年地震の69年後は2015年である。・・・」としている。論文中には17の図が掲載されているが、図名が入っているのが、2、12、15,16だけである。学会論文と思われるが、締切に合わせて慌てて書いたのであろうか。論文の形式事態も杜撰であるが、論文中で安藤は、「地震の大きさ(地震モーメント)を最も正確に表すのは①の津波である」としているが、「津波の高さは、地震発生時の海底の 地殻変動の向き、大きさに依存する」ので、必ずしも地震の大きさとの相関関係を正確に把握することはできない!
場所によって、沈み込みの角度や海山の有無など、地震の大きさ以外の要素によって津波の高さが規定されるので、安藤の解釈は間違いだと言わざるを得ない。安藤は、月刊地球、号外No24、海洋出版、1999の総論を書いているが、論文「南海道地震は近い」の内容は、まったく信じられない論である。
8 巨大地震の発生予測
統計(ビッグ・データー処理)学者は、巨大地震の数が少ないので、予測は困難としている。それは、そうだろう。
9 地震予知
元東京大学上田誠也教授には「地震は予知できる」岩波科学ライブラリー、2001.6.22がある。同じ東京大学のロバート・ゲラー教授は、「日本人は知らない『地震予知』の正体」双葉社、2017.1.13では、「地震予知は当たらない」としている。元東大村井俊治教授には、「地震は必ず予測できる!」集英社新書、2015.1.16がある。この他、地震予知について、当たる、当たらない論が沢山あるが、眉唾ものも多い。
10 南海トラフの巨大地震モデル検討会の言
「平成24年8月29日(第二次報告)津波断層モデル編―津波断層モデルと津波高・浸水域等について-」では、「このモデルは、フィリピン海プレートの沈み込む速度から見ると、平均すべり量は約200 年分の量に、大すべり域は約400 年分、超大すべり域のすべり量は約800 年分の量に相当する。なお、プレート間の固着率は1より小さいと考えられ、実際には上記の年数より多い年数を要するものと思われる。本検討会の津波断層モデルは、次に発生する可能性の高い津波断層モデルを検討したものではなく、南海トラフで発生しうる巨大地震の津波断層モデルである。このような津波の発生頻度は極めて低く、その発生時期は不明であるが、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波である。
「南海トラフの巨大地震モデル検討会(第二次報告)強震断層モデル編-強震断層モデルと震度分布について-平成24年8月29日」
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/model/pdf/20120829_2nd_report05.pdf
「今回の強震断層モデルは、フィリピン海プレートの沈み込む速度から見ると、東から順に、約150年分、約150 年分、約170 年分、約80 年分に相当し、日向灘域を除くと、強震動生成域のすべり量の大きなものには、約300~350 年分の年数に相当するものである。
本検討会の強震断層モデルは、次に発生する可能性の高い強震断層モデルを検討したものではなく、南海トラフで発生しうる巨大地震の強震断層モデルである。
また、プレート間の固着率は1より小さいと考えられ、実際には上記の年数より多い年数を要するものと思われる。このような地震の発生頻度は極めて低く、何時発生するかは不明であるが、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの地震である。しかしながら、今回の強震断層モデルは、震源断層全体の地震モーメント等を定めてから設定する方式のもので、設定するパラメータの幅が大きく、想定より大きな強震断層モデルとなっている可能性も否定できない。また、震源断層近傍での強震動の強さの評価は、被害想定を行う上で極めて重大な課題であるが、震源断層直上での強震動を評価するための観測データが殆ど無いことから、その妥当性の評価が十分に行えているとは言い難い面がある。」と書かれている。
が、私の単純頭には、何を言っているのか、さっぱり理解できないでいる。
11 活断層学者の変?
熊本地震は2016年4月14日21時26分に発生したが、1ケ月後の2016年5月4日22時~民放の番組「報道ライブ」で、活断層研究の第一人者とされる東洋大学渡辺満久教授が、「①私が地震委員会にいる時には、布田川と日奈久はおなじ活断層としていた。ところが、私が委員を抜けると二つはバラバラにされていた。同じ活断層だとしていたら、最初の地震は前震であることがわかったはずだ。②活断層が阿蘇山まで続いていることは知らなかった。」と発言していたのにも驚いた。①はいい。しかし、②は、蘇山で消えているのは、阿蘇山の噴火によるものであり、これを知らない人が「活断層の第一人者」とは、まったく不思議な国である。
12 18分前に東北大地震の津波5mを把握していながら・・・?
独立行政法人防災科学技術研究所の金沢敏彦氏は、東京大学地震研究所が東北大地震発生の13分後に5mの津波を観測しており、その観測から18分後に津波が海岸に到達したとテレビで発言していた。このことは、2013年6月の地震ジャーナルの28から33頁にも書いている。どうして津波が海岸に到達する18分前に5mの高さを観測していながら、地域の人達に知らせることができなかったのであろうか?
http://www.adep.or.jp/public/img/55.pdf
この金沢氏の論文も図の番号がおかしい。図7は8だし、図8は7である。
13 東北大地震発生の1年前に宮城県沖地震発生確率99%と発表していた!
文部科学省のホームページなどを見ると、東北大地震発生の1年前に、99%の確率で地震が発生すると報じている。どうしてこれが活用できなかったのだろうか?
http://www.jishin.go.jp/main/pamphlet/leaflet/leaflet.pdf
http://www.shimalpg.jp/image/zishin3.bmp
14 熊本地震発生前年と10年前の新聞には?
熊本地震発生約1年前の2015年3月15日付西日本新聞朝刊では、「日奈久断層帯、発生確率は全国一。全国187断層のうち、30年以内の発生確率が最大16%と全国で最も高いのが、日奈久断層帯の八代海区間(約30キロ)だ。」と報じている。
http://www.nishinippon.co.jp/feature/attention/article/156892
また、「お母さんが10年前くらいからこの記事とってたらしい…やべえ」として、「熊本地震、九大が10年前に予想していた!日奈久断層に関して空白域と言及」の新聞記事がアップされている(http://okutta.blog.jp/archives/2531739.html)。
「南海トラフ巨大地震‐その破壊の様態とシリーズについての新たな考え‐(2010 年9 月8 日「地震」投稿,2011 年7 月15 日受理)」と題し、東京大学地震研究所の瀬野徹三教授は、「南海トラフ全体にわたる震源断層面の『破壊』の様態については・・・」としている(http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/seno/Papers/jisin.nankai.eq.pdf)。
2 地震は摩擦説
一方、京都大学におられた、カリフォルニア大学サンタバーバラ校谷本俊郎教授は、「実は地震というのは『破壊』ではなく断層面の『摩擦』の問題なのです。」と、2012年7月26日京都大学クオリア研究所で講演している。さらに、地震学者は、地球の複雑さが余りちゃんとわかっていない。地震学者と工学者とのギャップがある。予算は(当面は東北ではなく)、本当は南海トラフにかけるべきだ。」とも述べている。
(http://www.goodkyoto.com/data/File_Storage/agora03.pdf)。
3 摩擦に少しの破壊も伴う説
私の軍配は、東大の瀬野教授ではなく、元京大の谷本教授に上げたい。谷本教授は、岩石の破壊時の歪が10のマイナス2乗から3乗くらいなのに対し、断層歪は10のマイナス5乗から4乗で起こっている。だから地震は破壊ではなく摩擦なのだと、具体的な数値を上げて論じている。ただし、私としては分岐断層破壊を起こしている地震については、摩擦を主としながらも、連動して少しの破壊を伴っているとしたい。
4 深いスロースリップと浅いスロースリップ
東京大学地震研究所の小原一成教授は、東北大地震のあと、「スロークエイクの直後に巨大地震が起きて衝撃を受けた。エネルギーを解消する(エネルギーを溜めないための現象)ものであり、地震の引きがねになるとは思っていなかった(地震を起こさない現象だと思っていた)」と、2013年9月1日放送のNHKスペシャル「MEGAQUAKEⅢ 巨大地震 南海トラフ 見え始めた“予兆”(http://www.at-douga.com/?p=8807)」で発言していた。
この先生は、深い箇所と浅い箇所で起こっているスロースリップの意味をまったく理解していない。つまり、プレートの沈み込みの深いところでは、温度が1000度前後になるので、プレートが軟らかくなり、部分的には溶けているのである。これが深いところで生じるスロースリップである。だから、エネルギーを解消しているのである。しかしながら、東北大地震発生前に観測したスロースリップは、浅いところで生じたものである。工学的知見があれば、これは地震が発生する前兆であると認識できたはずである。崖が崩れる前には、小石がパラパラと落ちてきたり、岩石やコンクリートテストピースを油圧機械で破壊する時に、破壊の前に岩石やテストピースの表面に、ピリピリとひび割れが生じてくるが、これと同じ現象なのである。だから、浅いところでのスロースリップは危険を知らせるものであると認識できたはずである。しかし、小原教授には、工学的知見が無かったのか、冒頭の発現になったものとみられる。発言を聞いていて、なんとも、やりきれない思いがした。
「地震予知2/2」として、2012年12月14日に第26回科学技術映画祭入賞作品がYouTubeで公開されている、「岩石破壊実験での破壊前の表面ひび割れ」を見て欲しいものだ(https://www.youtube.com/watch?v=dZ4VMO79oDI)。
2018年9月1日21時から放送されたNKHスペシャル「南海トラフ巨大地震―迫り来るXデーに備えろ」でも、東北大学の高木涼太助教が、「スロースリップが起こることで、着実に巨大地震発生域の力をためている」との発言に、件の小原教授がその間違い論にのっかり、解説していた。「地震を起こす力」は、スロースリップでも少しは増すが、主体は海側のプレートの沈み込みで生じているものであり、スロースリップは真の原因ではなく、沈み込みの結果生じている副次的なものなのである。依然として、この番組においても、小原教授はスロースリップの性格を、まったく理解していないことを露呈していた。https://www.youtube.com/watch?v=332T74-U1f8
5 想定外ではない
京都大学元総長尾池和夫氏は「東北大地震は想定外ではなかった
(http://www.goodkyoto.com/data/File_Storage/agora03.pdf)」と述べている。これはまっとうな論である。「冪乗、または累乗則関係は、驚くほど多くの自然現象の形態(関係)を記述する。多くの確率分布は、漸近的に冪乗則関係に近づくテールを持つ。こうした冪乗則は、株式市場の崩壊や大規模な自然災害のような極端にまれな頻度だと考えられる、極値理論と強いつながりがある。」、ことを学者なら知っておるべきだ。
6 南海地震は何時起きるのか?
大方の地震学者による次の南海地震の発生は、2,030年とする説が多い(力武常次他)。南海・東南海地震間隔として、過去1、059年間に9回の発生で、117年±35(=83~152年)としているのもあるが、これによると1,946+(83~152)=2,029~2,098年の間に発生することになる。しかし、近い過去3回の341年間で3回発生しており、平均間隔は113.7年となる。慶長地震から102後に宝永地震、それから147後に安政地震、92後に昭和地震が発生している。プレートには富士山ほどの海山があり、凸凹しているので、一筋縄ではいかない。元高知大学岡村眞教授は、2,037年ごろとし、偏差を持たせている。
島崎邦彦「地震と断層」東京大学出版会、1994年10月20日P65の「time-predictable model」により計算してみると、次の南海地震は、2,034から2,045年の間で発生すると読み取れる。これはあくまでも単独発生の場合であり、誤差は、測量時期の補正やデコルマの違いによるものと考えられる。ただし、次の南海地震は、過去300年ごとくらいに発生している連動地震になるかも知れない。連動地震の予測は困難であるが、海洋研究開発機構が「東海・東南海・南海地震の連動性評価」をしており、これに期待したい。
http://www.jamstec.go.jp/donet/rendou/report/search01.html
7 津波代表説
京都大学防災研究所地震予知研究センターの安藤雅孝教授は、「南海道地震は近い(PP859-866)」と題し、「昭和南海地震は、安政地震より小さかった。隆起・沈降も少ない。津波からいうと、昭和は安政の3/4。次の南海道地震までの時間は、92年の3/4、つまり69年後(1,946+69=2,015年(?))に発生するとしている。
この安藤雅孝説はズサンと言わざるを得ない。論文タイトルの「南海道地震は近い」も地震学者がつけるような題ではないのではないか。
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00578/1993/22-0859.pdf
P862 では、「・・・ 安政と昭和の地震を、同じ条件で比較できる測定量は、①津波の高さ、②震度、③地殻変動、④有感余震の数であろう。このうち、地震の大きさ(地震モーメント)を最も正確に表すのは、①の津波である。このことから、南海道地震は安政地震の3/4の大きさであったと結論できる。しがたって、次の南海道地震までの時間は、92年の3/4の69(論文では63)年と求まる。1946年地震の69年後は2015年である。・・・」としている。論文中には17の図が掲載されているが、図名が入っているのが、2、12、15,16だけである。学会論文と思われるが、締切に合わせて慌てて書いたのであろうか。論文の形式事態も杜撰であるが、論文中で安藤は、「地震の大きさ(地震モーメント)を最も正確に表すのは①の津波である」としているが、「津波の高さは、地震発生時の海底の 地殻変動の向き、大きさに依存する」ので、必ずしも地震の大きさとの相関関係を正確に把握することはできない!
場所によって、沈み込みの角度や海山の有無など、地震の大きさ以外の要素によって津波の高さが規定されるので、安藤の解釈は間違いだと言わざるを得ない。安藤は、月刊地球、号外No24、海洋出版、1999の総論を書いているが、論文「南海道地震は近い」の内容は、まったく信じられない論である。
8 巨大地震の発生予測
統計(ビッグ・データー処理)学者は、巨大地震の数が少ないので、予測は困難としている。それは、そうだろう。
9 地震予知
元東京大学上田誠也教授には「地震は予知できる」岩波科学ライブラリー、2001.6.22がある。同じ東京大学のロバート・ゲラー教授は、「日本人は知らない『地震予知』の正体」双葉社、2017.1.13では、「地震予知は当たらない」としている。元東大村井俊治教授には、「地震は必ず予測できる!」集英社新書、2015.1.16がある。この他、地震予知について、当たる、当たらない論が沢山あるが、眉唾ものも多い。
10 南海トラフの巨大地震モデル検討会の言
「平成24年8月29日(第二次報告)津波断層モデル編―津波断層モデルと津波高・浸水域等について-」では、「このモデルは、フィリピン海プレートの沈み込む速度から見ると、平均すべり量は約200 年分の量に、大すべり域は約400 年分、超大すべり域のすべり量は約800 年分の量に相当する。なお、プレート間の固着率は1より小さいと考えられ、実際には上記の年数より多い年数を要するものと思われる。本検討会の津波断層モデルは、次に発生する可能性の高い津波断層モデルを検討したものではなく、南海トラフで発生しうる巨大地震の津波断層モデルである。このような津波の発生頻度は極めて低く、その発生時期は不明であるが、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波である。
「南海トラフの巨大地震モデル検討会(第二次報告)強震断層モデル編-強震断層モデルと震度分布について-平成24年8月29日」
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/model/pdf/20120829_2nd_report05.pdf
「今回の強震断層モデルは、フィリピン海プレートの沈み込む速度から見ると、東から順に、約150年分、約150 年分、約170 年分、約80 年分に相当し、日向灘域を除くと、強震動生成域のすべり量の大きなものには、約300~350 年分の年数に相当するものである。
本検討会の強震断層モデルは、次に発生する可能性の高い強震断層モデルを検討したものではなく、南海トラフで発生しうる巨大地震の強震断層モデルである。
また、プレート間の固着率は1より小さいと考えられ、実際には上記の年数より多い年数を要するものと思われる。このような地震の発生頻度は極めて低く、何時発生するかは不明であるが、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの地震である。しかしながら、今回の強震断層モデルは、震源断層全体の地震モーメント等を定めてから設定する方式のもので、設定するパラメータの幅が大きく、想定より大きな強震断層モデルとなっている可能性も否定できない。また、震源断層近傍での強震動の強さの評価は、被害想定を行う上で極めて重大な課題であるが、震源断層直上での強震動を評価するための観測データが殆ど無いことから、その妥当性の評価が十分に行えているとは言い難い面がある。」と書かれている。
が、私の単純頭には、何を言っているのか、さっぱり理解できないでいる。
11 活断層学者の変?
熊本地震は2016年4月14日21時26分に発生したが、1ケ月後の2016年5月4日22時~民放の番組「報道ライブ」で、活断層研究の第一人者とされる東洋大学渡辺満久教授が、「①私が地震委員会にいる時には、布田川と日奈久はおなじ活断層としていた。ところが、私が委員を抜けると二つはバラバラにされていた。同じ活断層だとしていたら、最初の地震は前震であることがわかったはずだ。②活断層が阿蘇山まで続いていることは知らなかった。」と発言していたのにも驚いた。①はいい。しかし、②は、蘇山で消えているのは、阿蘇山の噴火によるものであり、これを知らない人が「活断層の第一人者」とは、まったく不思議な国である。
12 18分前に東北大地震の津波5mを把握していながら・・・?
独立行政法人防災科学技術研究所の金沢敏彦氏は、東京大学地震研究所が東北大地震発生の13分後に5mの津波を観測しており、その観測から18分後に津波が海岸に到達したとテレビで発言していた。このことは、2013年6月の地震ジャーナルの28から33頁にも書いている。どうして津波が海岸に到達する18分前に5mの高さを観測していながら、地域の人達に知らせることができなかったのであろうか?
http://www.adep.or.jp/public/img/55.pdf
この金沢氏の論文も図の番号がおかしい。図7は8だし、図8は7である。
13 東北大地震発生の1年前に宮城県沖地震発生確率99%と発表していた!
文部科学省のホームページなどを見ると、東北大地震発生の1年前に、99%の確率で地震が発生すると報じている。どうしてこれが活用できなかったのだろうか?
http://www.jishin.go.jp/main/pamphlet/leaflet/leaflet.pdf
http://www.shimalpg.jp/image/zishin3.bmp
14 熊本地震発生前年と10年前の新聞には?
熊本地震発生約1年前の2015年3月15日付西日本新聞朝刊では、「日奈久断層帯、発生確率は全国一。全国187断層のうち、30年以内の発生確率が最大16%と全国で最も高いのが、日奈久断層帯の八代海区間(約30キロ)だ。」と報じている。
http://www.nishinippon.co.jp/feature/attention/article/156892
また、「お母さんが10年前くらいからこの記事とってたらしい…やべえ」として、「熊本地震、九大が10年前に予想していた!日奈久断層に関して空白域と言及」の新聞記事がアップされている(http://okutta.blog.jp/archives/2531739.html)。