土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

気球に聞いてみた ー名和高司の問題解決法を応用してー

2023-02-24 09:59:09 | 思考
河野太郎は、2020年6月防衛大臣の時、日本上空で目撃された気球型飛行物体の行方を問われ「気球に聞いてください」と答え、さらに「安全保障に影響はございません」と軽視した答弁をしていたとのこと。

そこで、私は気球に聞くことにした。すると気球の答えは、「人工衛星の時代、気球がなにするものぞ、との解釈もあるが、気球ほど安く、リアルに状況を把握できるものはない。人工衛星一発あげる費用があれば、無数に近い気球をあげることができる。だから、これからの空飛ぶ車時代においては、気球のさらなる耐久性、安定性を確立するならば、空飛ぶ車の交通整理が可能となり、空の安全を確保することが可能になる」であった。

なるほど、たかが240年前の昔に登場した気球といえども、空気との比重差で浮かぶという誠に安上がりなものなのである。蘊蓄的に言えば気球は、「フランスのモンゴルフィエ兄弟が、暖炉の熱気に煽られた洗濯物を見て、火を燃やした時に出る煙に空気より軽い成分(空飛ぶ魔力)があると信じ、この煙を集めれば人間も空を飛べると考えて作ったのが熱気球で、1783年11月21日、人類史上初の有人飛行を熱気球で成功させた」ということである。

この発想は、大前研一、柳井正が絶賛する、名和高司「コンサルタントを超える問題解決と価値創造の全技法」ディスカヴァー・ツウェンティワン、2018.7.15の二軸、四枠の間トリックス分析を読んでいて浮かんできたもの。同書は500頁ほどで、今ちょうど半分ほど読み進めてきたところである。流石に大前、柳井の両巨匠が推薦した本である。目から鱗というよりも、目が千個、万個も付いてしまったような錯覚に陥っている。さすがにマッキンゼーで20年、ボストンコンサルティングに6年もいて、実践経験を積んだ者にしかわからない、各種技法の得失を、あますところなく開陳してくれている。

これまで技法を学んで、そこですべてがわかった気になって思考停止していた私は、名和の各種技法が持つ限界と、それを乗り越える着眼点と視座の高さ、射程の広さ、そして簡潔に解説してくれている素晴らしさに驚嘆した次第。ハワード・ゴールドマンが「すごい考え方」中経出版、2005.12.8,P68で、「どうやってやるか、ではなく、そのやりたいことを実現するために、次に何をすればいいか、と自問すること」と書いているが、名和の同書を読んでいると、逆に「どうやってやるか」を提示してくれており、さらに「次に何をすればいいか」をも示してくれているとでも言いたくなる。勿論、具体的な事象のことを書いてくれているわけはないが、自ずと見えてくるようになるのである。これは、名和の実践経験、つまり現実への対処で格闘してきたことを示してくれているからで、闇夜のライトのように、進むべき方向を照らしてくれていると言っていい。

自国第一(ファースト)主義の間違い

2023-02-17 11:12:34 | 思考
「アメリカンファースト」と叫んだ愚か者は、前大統領のトランプであった。これまでにもこのフレーズを叫んだ者はいた。だが、21世紀に入ってこれを言うとは、愚か者の極みというしかない。日本にも「ファースト」と叫んだ政治家もいるし、「国益に叶う」と言う政治家は、履いて捨てるほどまだまだいる。

プーチンの暴挙によって、助け合ってきた世界が分断された。一時ウクライナの小麦が輸出できなくなり、アフリカ諸国でパンの値段が高騰した。ガスや石油など、エネルギー資源の国家間の移動がままならなくなり、石炭の使用が復活するなど、脱炭素の取組みも一時後退している。このつけは、いずれ大きな負債となって人類を襲ってくるだろう。

そもそも生命の誕生は、共生の結果だという。正確性を欠く言い方になるが、「タンパク質とRNAの合体、ウイルスの侵入」などによって生物は進化してきたと言われている。

海洋開発研究機構の井町寛之主任研究員は、「私たちが完璧ではなくて、何かと依存、他の人と助け合いながら生活しているというのは、私たちの先祖というのが、もともと別の生物どうしの共生から始まっているからという可能性もあると思います。そうだと面白いですね」と言う(BS3、2023年2月16日15:22~再放送)。

ならば、ダーウィンの進化論は、こう訂正されなければならない。「生き残るのは、強いものでも、賢いものでもない。変化に適応するために、最もうまく協力したものが生き残るのだ」

では「ファースト」のフレーズを使うとするなら、こう言わなければならない。「宇宙(地球)の原理・原則(自然・環境)を踏まえた、共生・協力ファーストっ!」と。

トルコ地震から日本の腐敗認識指数を考える

2023-02-15 19:54:11 | 思考
2023年2月6日未明に発生したトルコ地震の映像を見たとき、ウクライナのミサイル攻撃を受けた建物なのかと錯覚した。ビルが無残に倒壊している。鉄筋がすぽっと抜けており、コンクリートが粉々に崩れている。また、パンケーキ・クラッシュと呼ばれる倒壊もあり、各階が潰れて床だけが並んでぺっしゃんこになり重なっている。建物の断面からは鉄筋が抜け出しており、梁の断面も小さい。細かく割れたコンクリート破片からは、あきらかに貧コンクリートであることがわかる。また、壁などに使われていたとみられるブロックの断面が数多くみられる。以上から、材料的にも構造的にも、地震に弱い建物が多数あったことが見てとれる。11年前に立てられたプール付きの豪華マンションには千人以上が住んでいたというが、生存者は70名ほどで、まだ百名が見つかっていないという。売り出しは「トルコ一安全なマンションだ」とのふれ込みだったという。これが見事横転している。

これを建てた不動産業者は、250棟マンションを建設。すべての預金を引き出してイスタンブール空港からモンテネグロに逃亡しようとしていたところを、過失致死の疑いで逮捕された映像が流された。他に役人など113名が不正や汚職で拘束されたという。トルコでは、耐震基準を満たしていなくても、金を払えば逃れることができたという。

30代の頃、東南アジアに仕事の関係で行ったことがあるが、都市の交差点で渋滞しても交通整理に警察官がこない。郊外のスピード違反は、捕まえると自分の懐にお金が入るのだが、街中の交通渋滞を処理しても、少しもお金にならないからだと言う。

トルコはお金を払って、他人の命をゴミのように捨てている。張りぼての建物を購入した住民は、たまったものではない。

日本では、2021年7月3日、熱海の不法盛土が流失し28名の命が奪われた。また、2023年2月14日、静岡市の砂防指定地に大規模盛り土を行った容疑の業者が逮捕されたと朝日新聞が報じている。逮捕された業者は2018年に盛り土を始め、盛土は約5万立方メートルほど。約700メートル下流部には住宅もあるという。しかも、砂防指定地とは、開いた口がふさがらない。下流の住民は生きたここちがしないであろう。
トルコの腐敗認識指数国別ランキング2022年では、180カ国中101位で指数は36である。指数70以上は清潔な国と言われ、日本はかろうじて73で、世界の上位から18番目だ。

日本でも東京オリンピックでは、誘致からはじまり、現在では440億円にものぼる汚職が捜査されている。けっして胸をはれる状態ではない。北欧およびその周辺国は、デンマークの指数90をはじめ、80以上が8カ国もある。うらやましい限りである。80以上にならないと、民主主義が健全に機能しないのではないかと思う。日本は不法行為に対する取締が、まだまだ甘すぎる。命が奪われる前に対処しなければならない。政治家、公務員、そして国民一人ひとりに健全であること、清潔であること、精神のあり方が問われている。

言葉の多義性について

2023-02-14 09:57:48 | 思考
所属する研究会でF理事長から、「自分が意図を実現するためには島国的な会話とちがう言葉の使い方が必要 20230126」で、以下のことが述べられた。短くまとめると、

『1 言葉は複数の意味を持つ(言葉の多義性)
言葉は必ず複数の意味を持っている。これを「言葉の多義性」と言う。言葉は、自分の思いをうまく表現し、伝える手段であり、人はその場の雰囲気や場面に応じて言葉の意味を広げて使う。多くの人が同じ意味で使うことで言葉に新しい意味が定着する。それは言葉の本来の機能である。
2 文脈が言葉の意味を決める(言葉の意味確定)
言葉は、単語だけでは意味を特定することができない。言葉が正しい意味で伝わるかどうかは前後の言葉(文章)次第で決まる。この言葉の意味を特定する文章の流れのことを「文脈」という。』

である。また、この文章には事例をあげてわかりやすく説明してくれている。

上記は、発語場面における言葉の使い方(形式・形態)が現象的に説明されており、上記の説明で日常生活においては支障がなく十分であろうと思われる。

しかし、なぜ「言葉を拡張して使うのか?」についての根拠は説明されていない。そこで、なぜ「言葉は多義性を持つのか?」について調べてみようと、竹田青嗣「言語学的思考へ」径書房、2001.12.15を三度読み返してみた。すると、PP94-95に『世界観や世界像は原理的に多様性、多数性をもつものだ。世界観の多数性は、人間が価値の秩序を生きており、またこの価値秩序が関係幻想的なものであるという本質的な理由に由来する』と書かれており、これだっ!と思った。

拡張語(意味を広げた言葉)は脳の中で生み出される。したがって、各自の脳の中にある世界観や世界像にもとづいて言葉が表現されることになる。その世界観や世界像が、もともと多様で多数性を持つものだから、そこから発生する言葉も多様であり多数性を持つことになる。また、なぜ世界観や世界像が多数性、多様性をもつのかは、それぞれの人が価値をどう定義づけているのかによって異なるからだと言う。さらに、その価値は「関係幻想的」なものであるからだということになる。関係幻想的とは、よく「1万円札の紙きれを、人々は1万円の価値があると幻想的に思い込んでいるからだ」などと説明されている(他にも、「自分の価値意識は他人の価値意識から生まれてくる」ことなどがあげられるが省略)。
これでやっと底に行き着いたのかなと夢想(空想・幻想・妄想)した次第。もっと納得性を高めるためには、アリストテレスの形而上学の定義から起こし、カントのアンチノミー(二律背反)についての説明を行えば、より理解が深くなるのだが、これらについては、同書P88以下に書かれており、興味のある方は是非お読みいただきたい。

上記のP94の引用文の直前には、(プーチンやトランプが、)言葉を権力と結び付けて、絶対的支配や権威の正当性を補強するイデオローグ装置として使用し、世界観の多様性や多数性を強圧的に排除していく使い方について間接的に説明している。なかなか奥が深く射程のある論考だと思う。

日本の軍事力増強を前に考えておくべきこと

2023-02-09 10:28:51 | 人生経営
防衛予算GDP2%計上が走りだしている。予算を増やすということは、武器を増やし、軍人の数を増やすということだ。万が一戦争になれば、最前戦で闘う人を増やすということでありながら、しかし、核の時代であれば最前線の戦闘員だけではなく、国民全体が闘いの舞台に否応なく押し出される。シェルターを持たない日本人は、身を隠す場所がないのだ。これらの覚悟の上に立っての議論がなされているのであろうか。

先崎彰容は、文芸春秋2月特大号で「新・富国強兵論」を提示している。この中で、「米中対立と言っているけれども、いつ何時米中が和解するのかについても、警戒しておくべきだと、歴史事実や世界情勢を踏まえて論じている。また、中国は、世界をリードした経験がない。この経験の未熟さが生みだす齟齬こそが決定的に危険だ」とも言う。さらに、明治維新後の歴史を俯瞰し、日本は米に追随するだけではなく、台湾から東アジア、ニュージランド、オーストラリアまでを巻き込んだ、新アジア連合(=西太平洋連合=中小国による第三極の地位確保)を主導すべきだとする。これこそが、日本の平和を維持する道であるとしている。これは、先賢の論を踏まえて先崎が出した結論である。先崎は、「日本は核を持つべきではない」といも言い切る。その理由についても述べられている。