ウィルバーの「インテグラル理論」は、2000年に刊行されており、原題は「A THEORY OF EVERYTHING」である。
邦訳は2002.9.20に「万物の理論」として岡野守也訳でトランスビューから。7年後の2019.6.30には「インテグラル理論」と改題して、門林奨訳で日本能率協会マネジメントセンターから発行されている。訳は後者が各段にいいが、後者の本はソフトカバーの上に縦長の装丁で400頁の厚い本となっているので、開くと元に戻ろうと閉じてしまう。物理的に読みにくいこと、このうえない。
(以前発刊された、エリック。ブリニョルフソンらの「機械との競争」日経BPマーケティング、2013.2.12も装丁は最悪であったが、それに続く悪装丁の本だ。ただ、書かれている中身は双方とも素晴らしく、まだの方は読まれることをおおいにお勧めしておきたい。)
P287では、「ロシア(ソ連)は表向きは近代国家であったが、その本質的な構造は古代国家であり、全体的な規則、一党による支配、指令による計画経済、集団主義的な理想などがその基礎にあった。そしてこうした体制のもとでは、個人の自主性に基づく資本主義的な市場は、発展することができない。そのため、市場経済に似たものが突然導入されても、近代国家へと発展していくことはなかったのである。その代わり、多くの面で、封建国家へと退行してしまった。さまざまな犯罪的軍事勢力やロシアンマフィアがはびこり、社会構造にも欠陥があるために、近代国家へと発展していくための苦闘は、今なお続いている。言うまでもなく、このような発達段階では、人権などはもっとも関心を引かない話題である。」
(ところで、ニュースでバイデン大統領は、「プーチンを『人殺しと思うか』の質問に「そうだ」と答えた。プーチンは、政権に批判を行うジャーナリストを7名ほど殺しているのではないかと報道されている。)
続けてP288では、「同じような発達論的苦闘が、中国本土でも起こりつつある。古代国家が、近代国家へと向かって、少しずつ、断続的にではあるが、変化しているのである。一般的に言えば、人権を主要な課題として設定しても、こうした発達を支えることにはならない。」
(中略)
「外面的な発達は、それに対応する内面的な発達がなければ、持続可能な形で実現することはできないのだ。」
新疆ウイグル地区の報人権抑圧報道の背景を説明しており、「なるほどな」と腑に落ちてくる。また、アラブの春が成功しなかったことや、さらに現在のアフリカや中南米の国々から移民を望む多くの人々がいる現象が理解でき納得できる。
何がどうなれば人類が平和に地球で住み続けることができるのだろうか。ジェンダー問題から深刻な環境問題まで、ウィルバーの「インテグラル理論」は、私たちが迷わない地図を提示してくれており、進むべき方向を示してくれているように思う。
邦訳は2002.9.20に「万物の理論」として岡野守也訳でトランスビューから。7年後の2019.6.30には「インテグラル理論」と改題して、門林奨訳で日本能率協会マネジメントセンターから発行されている。訳は後者が各段にいいが、後者の本はソフトカバーの上に縦長の装丁で400頁の厚い本となっているので、開くと元に戻ろうと閉じてしまう。物理的に読みにくいこと、このうえない。
(以前発刊された、エリック。ブリニョルフソンらの「機械との競争」日経BPマーケティング、2013.2.12も装丁は最悪であったが、それに続く悪装丁の本だ。ただ、書かれている中身は双方とも素晴らしく、まだの方は読まれることをおおいにお勧めしておきたい。)
P287では、「ロシア(ソ連)は表向きは近代国家であったが、その本質的な構造は古代国家であり、全体的な規則、一党による支配、指令による計画経済、集団主義的な理想などがその基礎にあった。そしてこうした体制のもとでは、個人の自主性に基づく資本主義的な市場は、発展することができない。そのため、市場経済に似たものが突然導入されても、近代国家へと発展していくことはなかったのである。その代わり、多くの面で、封建国家へと退行してしまった。さまざまな犯罪的軍事勢力やロシアンマフィアがはびこり、社会構造にも欠陥があるために、近代国家へと発展していくための苦闘は、今なお続いている。言うまでもなく、このような発達段階では、人権などはもっとも関心を引かない話題である。」
(ところで、ニュースでバイデン大統領は、「プーチンを『人殺しと思うか』の質問に「そうだ」と答えた。プーチンは、政権に批判を行うジャーナリストを7名ほど殺しているのではないかと報道されている。)
続けてP288では、「同じような発達論的苦闘が、中国本土でも起こりつつある。古代国家が、近代国家へと向かって、少しずつ、断続的にではあるが、変化しているのである。一般的に言えば、人権を主要な課題として設定しても、こうした発達を支えることにはならない。」
(中略)
「外面的な発達は、それに対応する内面的な発達がなければ、持続可能な形で実現することはできないのだ。」
新疆ウイグル地区の報人権抑圧報道の背景を説明しており、「なるほどな」と腑に落ちてくる。また、アラブの春が成功しなかったことや、さらに現在のアフリカや中南米の国々から移民を望む多くの人々がいる現象が理解でき納得できる。
何がどうなれば人類が平和に地球で住み続けることができるのだろうか。ジェンダー問題から深刻な環境問題まで、ウィルバーの「インテグラル理論」は、私たちが迷わない地図を提示してくれており、進むべき方向を示してくれているように思う。