土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

自然(宇宙)の原理原則を掴む

2019-10-17 19:32:36 | 人生経営
 Eテレの100分で名著で、西田幾多郎の「善」の解説を聞いた。聞きながら、西田幾多郎の善とケン・ウィルバーのインテグラル理論、オットー・シャーマーのU理論は、ほぼ同じ思考レベルにあるのではないかと感じた。

 西田の「私、わたしたち」の二象限は、ケン・ウィルバーが、さらに「それ、それら」を加えて四象限にしている。しかし、西田も、人類・宇宙まで拡大させているので、到達点は同じ地平に立っているのではなかろうか。

 さらに、西田の自己は、他者との融合によって形成される。「自己を深く広げていく」とは、オットー・シャーマーのU理論でいうところの、プレゼンシングからセンシングの道程とほぼ同じであると思う。

 西田の「善の研究」は、100年前に書かれたという。100年後のウィルバーやシャーマーが西田をなぞっているようにも見える。場や広がりは異なるのかも知れないが、到達レベルは恐らく同じではないだろうか。我々は宇宙の中の地球の自然で生き、生かされている。生きることの本質を思考した3人は、同じ地平に至ったのではないだろうか。

二軸を持つ ーノーベル化学賞吉野彰博士の考え方から学ぶー

2019-10-10 10:40:19 | 人生経営
 昨日ノーベル化学賞を受賞した吉野彰博士は、剛と柔の二軸を持つことが大切だと言う。硬いばかりだと行き詰まってしまうし、柔らかいばかりだと到達しないまま放置してしまうことになる。硬く考え、思い込み過ぎてしまい、もし、行き詰まったら「そのうちなんとかなるさ」という、楽観も大事だとのこと。

 思考するには、具体と抽象を行き来するのがいいと言われる。つまり、吉野博士の二軸を持つことが大事だと言うことと同じことだ。

 ただ、凡人の普通の感情として、「あれか、これか」のどちらかを選択してしまうのが常だろう。その方がややこしくなく簡単で、気持ちが落ちつくからだ。「あれも、これも」という二軸を持つためには、精神と思考が一段高いレベルに上がる必要がある。これはなかなか難しいことだ。

 よく、「あの人はさっぱりしていて気持ちがいい」とか「あの人は白黒がはっきりしていて、わかりやすい」とかの評を聞くことがある。その「あの人」は、こちらが先を読むことができるので、付き合いやすいし、安心していられる。ところが、あまりにも単純すぎて、「にっちも、さっちも」いかなくなる場合もある。単純バカと言われる人なのだ。

 逆に、どっちの道を選ぶか、皆目読めない人もいる。しかし、読めないというのは、こちらがその人の思考をよく読みとっていないからだろう。冒頭の吉野博士も、部下に対して「現在を見て、過去を考えると、未来がおのずから見えてくるようになる」と、教えていたそうだ。難しい人にであったら、その人がどういう選択をしてきたのかを並べてみると、きっと見えてくるものがあるだろう。二軸か三軸か、もっと多いかも知れないが、きっとこちらの読みの当る確率が高くなるに違いない。データが増えるにしたがって、軸は少なくなってくるかも知れない。

 こう書いてきて気づいたのだが、まだまだ自分には「しっかりとした二軸を持つ」ことができていないことがわかってきた。吉野博士の言を参考にして、これから確立していかねばならない課題である。

ICT施工の課題と技術者の能力伸長 

2019-10-09 10:13:34 | 人生経営

 建設工事は、一品受注で屋外現場工事、労働集約型産業で、これに自動化を実現しようとしているのがICT施工である。これまでとは、まったく異なる発想、考え方が求められていると言える。

 国土交通省が推進する「生産性革命の実現」は、より少ない工事日数、より少ない人数で、現在の工事量をこなすことを狙いとしており、それを実現させるのがICT施工である。

 ICT施工と合わせて「フロントローディング」も導入しようとしている。『フロントローディングとは、調査・測量→設計→施工→検査→維持管理・更新の建設生産システムの一連の流れの各段階に、いろいろな情報通信技術やシステムを入れ込んでいくことで、できるだけ前工程で後工程の問題を解決していこうということである』。フロントローディングは、施工部門だけにおいても、大いに効果が発揮できるので、積極的に取組んで欲しいものである。フロントローディングを行うためには、考える力(創造力、先見性)が必要となる。これからの技術者には、これまで以上に、より高度な能力伸長が求められていると言えよう。

 国家的に次世代の取組を行っているのはシンガポールであり、イギリスがこれに続いていると見られる。ただ、日経コンストラクション2019年9月23日号61頁で、米キャタピラーのプロダクトマネージャーは、「日本は重機の自動化で先駆けている」と言う。また、「工事現場の機械化では、全て自動化するのではなく、遠隔操作など人が関与するものと組み合わせる。人を介在させる作業を残すことに意味がある。ある程度のところからは効率が悪い部分が出てきてコストがかさむ。自動化すべき部分と遠隔操作を含めて人が担う部分とのバランスをとり、利益が最大となる分岐点を見出すことが肝要だ」とも言う。利益を確保するためには、このへんの見極めが重要となる。採算ラインについては、個人の力や個々の企業に頼っていると大きなロスとなる。国土交通省は率先して採算性にかかる情報提供にも取組んで欲しいし、日本建設機械施工協会などの今後の取組に大いに期待したい。

ICT施工の課題と展望

2019-10-08 10:30:33 | 建設経営
 国交省の推進するICT施工の第1号と認定された北海道の「道央圏連絡道路千歳市泉郷改良工事」について、砂子組と札幌開発建設部千歳道路事務所が論文を発表している。「平成28 年度 ICT土工における実際の効果と課題について~i-Construction の取り組み事例~」https://thesis.ceri.go.jp/db/files/14747113735976ab2a282cf.pdfである。

 この論文では、当該工事で得られた「効果」や「課題」を取りまとめている。この効果と課題について、それぞれ( )で意見を述べてみたい。

5.まとめ
効果
今回、i-Construction 対応型工事の全国第1 号としてICT 土工の効果を検証するべく各工程においての調査を実施した。全体をまとめると以下の通りとなる。

(1) UAV 測量は、従来の人が行う起工測量と比較すると約50%の短縮が実現されている。

  (場所にもよるが、もっと短縮される現場もあると考えられる。特に、北海道のような平地ではなく、山岳地帯などにおいては安全性と共に、短縮効果は著しいものがあると思われる)

(2) ICT 建設機械を使用することにより初心者オペレーターでも安心して作業することができることと、疲労軽減・ストレス軽減にも繋がっている。

  (図4に心拍数のグラフが示されており、平均心拍数が従来重機は115であるのに対し、ICT重機は89と下がっており、施工における緊張度合いが少なくなっていることがわかる)

(3)初心者オペレーターと熟練オペレーターの比較では、ICT 建設機械を使用した初心者オペレーターは従来機を使用した熟練オペレーターよりも早く作業が出来ている。

 (これは、熟練オペレーターも慣れてくれば、同程度になるものと考えられる)

(4)全体工程で約20%の効率化が実現され、大規模工事になるほど工程短縮が図られるものと期待できる。

(効率化率は、工事内容によって、大きく差が出てくるものと考えられる。もっと大幅に効率化が図られる工事もあろう)

(5)約3 万㎥以上の大規模土工であれば、受注者にとっても収益性が見込める。

(図9にグラフが示されているが、建機のリース代がいくらかによって採算ラインが変わってくる。恐らく砂子組が使用したよりも、もっと安い建機もあるのではないかと考えられることから、地形等にも大きく影響を受けるであろうが、数千m3程度でも採算性が取れるのではないかと考えられる。事実5千m3程度の報告も複数あることから、慣れるという要素も含めて、今後ICT土工の採算ラインが示されてくるであろう)

 以上、確認できた効果として挙げられるが、他にも作業段取りの軽減や仕上がり品質の向上など様々な効果が出ており、有用性の高いものであると実感できた。

課題
効果や有用性について多くを述べてきた一方、課題も確認された。

(1)3 次元データを扱える人材が少なく、確認・修正が出来る人材育成が必要。

(人材育成に注力していくしかないだろう。経営判断が求められる)

(2)各データの容量が膨大で作業するパソコンの要求スペックが高いものであること。また、データ容量が大きいため、ネットワーク環境によってはメール送信等が困難な場合がある。さらに、現状での3 次元データ作成には多様なソフトウェアを使用するため、設備を整えるための投資が必要。

(初期投資は、なにごとをするにも必要であり、コトがコトだけに、投資額も半端ではないであろう。経営判断が求められる)

(3)現況測量および出来形計測において、気象条件による影響を受けやすい。

(衛星の飛行状態や電波が雲で影響を受けること、また、高い山がある場合にも電波が遮られることなど、場所によっては施工が困難なところもあるようだ)

 今後も積極的に取り組み改善していくことがi-Construction 普及への近道となり、更なる生産性向上へ繋がっていくと考える。

(赫々他でもICT施工が論じられている。しかしながら、まだ慣れていないことや、変更金額の問題もあり、なかなか厄介な課題もあるが、慣れの問題も含めて、より充実した報告が待たれる)

年配者の説得が難しいわけ

2019-10-01 13:46:54 | 人生経営
60代の男性の説得を試みたが、またもや失敗した。数年前から、何回か説得をしてきていて、その考え方はだいたい分かっているつもりだった。複数回の挑戦ながら、やはり他人の考え方を変える困難性が、嫌というほど身に沁みてきた。

人にもよるのであろうが、歳を取るごとに自分の考え方が固まってくる。それはそうで、これまで生きてきた自分の考え方が曲がりなりにも成功しているわけだから、おいそれと他人の考え方を受け入れるわけがない。自分のお宝(往々にして屑の場合もあるのであるが)を手放せるわけがないのである。

こちらが幾ら客観的資料に基づいて説明したとしても、その資料には賛成してくれるものの、具体の目の前の事象となると、感情の方が先行して、それはそれ、これはこれ、となってしまうのである。その矛盾をいくら突いたとしても、その人の肥大化した感情が許さない。そうである限り、考え方をその人が変えることはない。

感情と簡単に片付けたが、事象の重み付けも異なるのであろう。資料として見せた客観事実は1%であるのに対し、自分の主観的事実は99%の重みづけをしているような気がする。頭のいい人だから、客観的事実はすぐに理解してくれる。しかし、根本の価値観が違うのだから、こちらの論を受け入れてくれるわけがないのである。

多分、その人の考え方を変える唯一の方法は、その人が長年苦楽を共にし、尊敬している人物が、それは違うだろうと指摘することではないだろうかと思う。ただ、その苦楽を共にしてきた人も、だいたい同じような考え方であろうから、やっかいだ。

かく言う自分も、まもなく71歳になる。身体は硬くなっても、思考の柔軟性だけは手放したくないものだ。否、柔軟だと思っている思考自体も疑ってみたい。