土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

プーチン氏の価値観と人生観、死生観

2022-11-29 09:47:28 | 思考
プーチン大統領は、2022年11月25日、ロシアで母の日にあたる27日を前に、ウクライナ侵攻に派兵された兵士の母たち17人との会合に参加。『写真を掲げる女性は「わたしの息子は、街を守るために戦って死にました」と語った。プーチン氏は「近親者、とりわけ息子が死ぬのは大きな悲劇だ。だが交通事故、あるいはアルコールが原因でそれぞれ年間3万人ほどが死ぬ。われわれは神の下にある。大切なのはどう生きるかだ」と出席者に説いた。プーチン氏はこれまでも「核戦争が起きればわれわれは殉教者として天国行きだが、敵は悔い改める時間もない」と発言している(東京新聞、2022年11月27日)』。

プーチン氏の言う意味は、「核戦争になっても、われわれは神の意志により死ぬのであり天国にいけるが、敵は地獄に落ちるだろう」とも読めなくはない。上記の発言は、過激な宗教の原理主義者と、ほとんど違いがない。異なるのは、過激宗教原理主義者は、まだ核を持たないのに対し、プーチンは全地球生命を滅亡させることのできる核を保有しており、いつでも使える立場にもいることである。プーチン氏の核発言は威嚇であろうが、言葉の使い方として適切ではない。

竹田青嗣は、「中学生からの哲学超入門」ちくまプリマー新書、2009.7.10,P53で、『欲望がなければ、世界の意味の秩序は形成されない。世界と欲望は、相関的な関係になっている。あるものの存在や性質は、絶対値をもっていない。それと関係する主体との間で決まってくる。道徳律は僧侶には尊いが、マフィアには絵空事だ。事物の存在の性格や意味が、それに向き合う人間(主体)との関係によって変化する』という。

竹田の言からプーチン氏の欲望を、様々に読むことができるが、それは諸氏にお願いしたい。

地球の環境と資源の限界が見えている今、必要なのは力ではなく、言葉を用いての相互理解であり、相互承認である。ただ、プーチン氏は上述の懇談の冒頭、『侵攻による戦死者について、「私個人と国のすべての指導層が痛みを分かち合っていると知ってほしい」と語りかけ、テレビやインターネットには偽情報が多いとして、「信じてはならない」と訴えた(東京新聞2022年11月27日)』という。相手の言うことには耳を傾けないということであり、解決の糸口を自ら塞いでいる。まさか、ウクライナからの小麦が入らず、飢餓に苦しむアフリカ諸国の人たちのニュースも、フェイクとして受け止めてはいないだろうが、まともには聞こうとはしていないのは確かだ。インドのモディ首相ではないが、「今は戦争をしている場合ではない」のだ。

メタ認識の低い指導者を戴いた場合、その国のみならず、世界の人びとが不幸になり、命の危険に晒されてしまう。これを地獄と呼ぶのだろう。この先で地獄に落ちるのは誰か。多くの人には見えていると思う。全員が見えるようになるのは言葉の力であると信じている。その兆候は、少しではあるが現われてきつつあり、さらに加速する必要がある。

資本主義を終焉させるのか、変革していくのがいいのか

2022-11-26 11:24:13 | 思考
マルクス主義者であり、「人新生の資本論」集英社、2020.9.17で2021年度新書大賞を受賞した斎藤幸平は、斎藤の著書を絶賛する水野一夫らと同じく、資本主義を終焉させる論陣をはっている。

反対に、竹田青嗣は、「哲学は資本主義を変えられるか・ヘーゲル哲学再考」角川ソフィア文庫、2016.5.25(「人間の未来―ヘーゲル哲学と現代資本主義」ちくま新書、2009.2.10を改題)では、「自由の相互承認」を担保する基盤となっている資本主義を堅持しつつ、現時点では格差や環境と資源を消尽しつくしてしまうという矛盾を持つ資本主義を変革することで、人間的自由を確保することができるのではないかとしている。

ここで両者の論を短くまとめる力が私にはないので、諸氏に両書から読み取っていただければ幸いである。

ただ、思考の広さと深さと射程は、竹田青嗣にあると言えるのではないだろうか。

現存する最高レベルの天才だと思っているケン・ウィルバーは、「統合心理学への道」春秋社、2004.4.20,PP94-98の「新しい永遠の哲学」の項で、『それぞれの発達段階は、その段階において適切であるが、後続する段階は、さらにその適切性を増大させていく。このことを最初に述べたのはヘーゲルであり、彼こそ、最初の偉大な新しい永遠の哲学者であった。P96』、『現代の、合理的で世俗的な社会が、何か精神性に反したものであるという観念のほとんどは、進化の本質に対する誤解がもたらしたものである。実際は、現在の社会はスピリットの活動であり、スピリットが自身へと帰還する旅の一つの段階なのである。オーロビンド、ヘーゲル、アディ・ダといった、新しい永遠の哲学者たちは、人間中心的で、科学―合理性の段階をまさしく発達段階の一つとして捉えている。P98』と、ヘーゲルを高く評価している。

現存者で、世界第一級の天才だろうと思うウィルバーと、日本で第一級の賢人だとうと思っている竹田青嗣は、奇しくもヘーゲルを高く支持している。単にどちらに軍配をあげるかではなく、人類の存続が問われており、どの道を選択していくのか、岐路に立たされている。しかも時間的にも余裕がない。

平和を希求するためのわたしたちの成熟について(未熟を克服するヒント)

2022-11-22 11:09:34 | 思考
2022年11月19日に友人から、「(私の思考・活動・行動と同じく、)国際社会も国際法や人権法などに基づいて、人々が安心できる社会を目指している。少なくとも多数の国々、人々がそう願い行動してこそ、平和は訪れる。(だが、)ウクライナを犠牲にしているのは、ロシアの犠牲にしているのは、ほかでもない私達が未熟だからです」というメールをもらった。

これに関連して、竹田青嗣の、「人間の未来」ちくま新書、2009.2.10,PP245-247で、ハンナ・アレントの「人間の条件」から、「人間的自由」の本質的な条件についての引用を思い出した。

P246 『多種多様なひとびとがいるという人間の多数性は、活動と言論がともに成り立つ基本的条件であるが、「平等と差異」という二重の性格をもっている。もし人間が互いに等しいものでなければ、お互いを理解できず、自分たちよりも以前にこの世界に生まれた人たちを理解できない。そのうえ未来のために計画したり、自分たちよりも後にやってくるはずの人たちの欲求を予見したりすることもできないだろう。しかし他方、もし各人が、現在、過去、未来の人びとと互いに異なっていなければ、自分たちを理解させようとして言論を用いたり、活動したりする必要はないだろう(志水訳288頁)』である。

さらに続けて、「もし人間の欲望が同一的なら、この欲望の同一性は生の目的の同一性に直結し、個々の人間が多様な関係をもつ社会というものは現われない。そこでの社会は、ミツバチの集団のように、すべての人間が単一の目的をもち、同じ動労と同じ行為の積み重ねを行うような社会(=共同体)となり、そこでは人間の自由というものの条件が現われない(アレントは全体主義社会を思い描いていただろう)。そうアレントは言っている」とまとめている。

また、コジューヴも取り上げ、P247 「社会は欲望として相互に他を欲し合う欲望の全体となって初めて人間的となる(上妻ほか訳「ヘーゲル読解入門」14頁)」を引用している。

つまり、「人間は等質性と同時に差異を持つ」ものであり、人びとが自由に、平和に生きていくためには、このことを理解する必要がある。現在に生きるわたしたちは、過去に生きた人たちが築いてくれた文化と遺産を踏まえ、未来に生きる人たちへ「自由と平和(生の目的)」が構築できるよう引き継いでいく責任がある、ということになる。

だが、プーチンとロシアは、ウクライナ侵略の彼らなりの理由があるとはいえ、結果として自分たちの欲望だけをむき出しにし、上記に述べた内実については欠片も無いと言える。思考も行動もアレントやコジューヴらの考え方とはまったく異なっている。ロシアは国土が広く厳寒の国であり、国家としての統一が難しいだろうことは理解できる。であるとしても、戦力ではなく、折角先哲が指し示してくれている言論を用いる方向への成熟が、より安定した国家の統一(=世界の平和、自国民の幸せ)になるはずである。と同時に、悲しくむなしいことではあるが、友人が言うように、「わたしたちもさらに成熟していかなければならない」ことを、反面教師として教えてくれてもいる。

米中間選挙結果と民主主義の正常化

2022-11-13 14:20:01 | 思考
11月13日、米国の中間選挙投票日の8日から5日かたっても、まだ、最終結果が出ていない。いくら、郵便投票が多かったと言っても、日本では考えられない現象だろう。それはともかく、事前の予測では共和党が勝ち、赤い波が押し寄せると言われていたが、そうはならなかった。いまだに、負けた州では不正が行われたと喚いている者がいる。これらの言動が、逆に民主主義の正常化を促していると言えるかと思う。

黒人の大統領の登場で、さすがに米国は民主主義が機能する国だと関心したが、その反動もあって、自分に都合の悪い情報をフェイクだ!フェイクだ!と叫ぶ者が大統領に選出された。反動だけではなく、ロシアの関与も取りざたされており、真相はまだ不明だ。

でも、今回の選挙結果は、民主主義が捨てたものではないことを証明したと言っていいだろう。

ただ、大統領選での莫大な金の動きや、米議会のロビー活動など、是正されなければならない問題は、まだまだ沢山ある。

翻って、わが日本では、オリンピック誘致から運営中のさまざまな利権問題で揺れている。日本は、世界汚職度ランキングでは18位らしい。さらに、統一教会問題もある。日本の政治をうごかしている自民党議員の多く、しかも議長を務めている人を含めて、霊感商法が取りざたされている宗教団体と深い関係があったという。外野から見ると誠に不可解きわまりない。これらは、民主主義を歪める事象であると言える。

愚痴はともかく、今回の米国中間選挙の結果については、米国民に賛辞を送りたい。