今週の新情報
(2023.3.27)
Q 米国のアイダホ州で『mRNAワクチン禁止令』?
A 米国のアイダホ州で、2023年2月15日、2人の共和党議員がある法案を提出しました。内容は、「メッセンジャーRNAを利用したワクチンをいっさい禁止し、今後、接種に関わる医師、関係者は処罰する」というものです(文献1)。法案中にファイザー社とモデルナ社の名前はありませんが、委員会の主旨説明では、2社を名指ししていたとのことです(文献2)。
理由は、「あまりに臨床試験の期間が短すぎて、安全性の証明がなされていないから」というものでした。同州の知事も、この法案に賛成していると報じられています。
2023年3月末の時点で、法案はまだ可決していませんが、各方面から反発の声が上がっています。たとえば同州のコロナワクチン専門家会議で委員長を勤める医師は、専門誌のインタビューに、「私は30年、医者をやっているが、こんな悪意に満ちた話は聞いたことがない」と語っていました。
また別の医師は、「法案を出す前に、専門家の意見を聞いてほしかった」、「アイダホ州でのワクチン接種率が全米で最低に近いのは、デマ、フェイクニュースに騙されいている人が多いからだ」、「州の議員が、mRNAワクチンにはエビデンスがないと言っているが、それはウソだ」などど、強い口調で非難しています。
法律の専門家も懸念を表明しています。「もし、この法律が成立すると、ワクチンを接種した医師は有罪となり、医師免許を失うことになりかねない」というのです。さらに、法案の内容は1頁に満たないもので、拡大解釈されると、たとえば将来、同州内で臨床研究さえできなくなってしまうのではないか、としています。
この記事を掲載した専門誌は、「mRNAタイプのワクチンについては30年に及ぶ研究の歴史がある。2008年には、15人のがん患者を対象にした臨床研究が行われ、効果と安全性が証明されている」とコメントしています。
しかし事実はいささか異なっています。この技術については、35年以上も前から数百人に及ぶ技術者たちが、それぞれ独自に開発を行ってきており、中には、ヒトの体に重大な損傷を与えることがわかったとして、研究を中止した人もいました(文献3)。少なくとも、効果と安全性を証明できる臨床試験が行われていなかったのは確かです。
いずれにしても、米国は各州の権限が強く、たとえ国家が認めたワクチンであっても、アイダホ州で禁止する法律が成立する可能性は高いようです。
実は、この話には伏線がありました。遡ること1年ほど前、この州で「企業が従業員に対して、ワクチン接種を強要することを禁止する法律」が制定されていたのです(文献4)。ワクチンを打っていない人を法律で守るのが目的でした。
日本でも、一部の地方自治体で、何人かの議員が立ち上がったとのネットニュースがあります。各地方で議員に働きかけを行い、互いに連携し合うことができれば、大きな力になっていくのではないでしょうか。