星のひとかけ

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コーマック・マッカーシー著 『ザ・ロード』

2009-10-06 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
コーマック・マッカーシー著 『ザ・ロード』(黒原敏行訳・早川書房 2008年) 読了。

この本、、 今年春ごろ? 一度読みかけていたのだけれど、、 どうしても読み進めずに放棄してしまったもの。。 眼の調子が悪くてつらい時期だったのかも。。 もしくはつらい内容がその頃の自分にしんどかったのかも。。

突然また読もうとして 今度はあっという間に読んでしまった。。 こういう事がよくある。 適した時が来た、、 ってことなんだと思う。 、、いろんな相互作用が 自分の内部で起こってるんだよね、、、 テキサスのブルースをいろいろ聴いてたりしたこととか、、 あと、、 先月の何かのギター雑誌で デレク・トラックス君のインタビューを読んでいたら、、 デレク君はとっても読書家のようで、 前に日本公演をした時には村上春樹を何冊か読んだとか、、 (はっきり覚えてないけど)米南部で公演した時にはフォークナーを読んだとか、、 そんなで (ああ、そうか、、 フォークナーか。。)と思って、 『八月の光』を読もうかとふっと頭を掠めたんだけど、 先週かな? プレイヤー誌でbrainchild's のエマさんのインタビューを読んでたら、、 螢汰さんがメキシコで育った、、ということが書いてあって、 エマさんの語っていた「血」、、というものについても印象にのこっていて、、、

たぶんそんなこんなで コーマック・マッカーシーの事が頭に浮かんだのでしょう。。

コーマック・マッカーシーの越境三部作の ひとつめ『すべての美しい馬』については 前にちょっとだけ書きましたっけ。。(>>) 

 ***

今回の『ザ・ロード』は、 三部作のようにメキシコが舞台でもなく、、 時代も 近未来、、? と解説には書かれているけれど、 未来的な感覚はぜんぜん無い。 ともかく、 世界はすでに終わっている。 ほとんどの人間が死滅し、 地上は死の灰で覆われていて、 生き残りの父親と子供は もうすぐやってくる冬を前に 南へ行こうと「道」をひたすら歩く。 

映画で言えば マッドマックス2とか、、 (もう内容を殆ど忘れてしまったけど)「復活の日」のラストシーンみたいな。。 、、そんな設定ではあるものの、 映画的な戦闘シーンが頻繁にあるわけでもなく、、 ただ 飢えと、 絶望しかない世界で、 父親以外に何ひとつ拠り所のない子供と 今日をどう生きて、 どう明日を迎えるか、、 それが丹念に描かれていく。 SFのようでありながら、 とても現実的な感覚として感じられるのは、 たとえば 余命の見込めない病に冒された時、 毎日をどのような気持ちで生き続けるのか、、 待ち受けているものから決して逃れることは出来ないと解りつつ、 命の何を信じていけるのか、、 あるいは、 そのような時、 他者にどのような気持ちを抱くのか、 人間をどう信じるか、、 そういう 誰の身にも考えられる問いかけと同様のテーマだと思うから。。

子どもの台詞に たくさんたくさん 胸がいたくなります。。

例えば 親ならば誰もがするように、 子供のカップにはココアを入れて、 自分はお湯だけ注ぐ。。 という場面。
 
  それはしないって約束だったでしょ、 と少年がいった。

   ・・・ (略) ・・・

  ちっちゃな約束を破る人はおっきな約束を破るようになる。 パパがそういったんだ。

 ***

この本の書評サイトにリンクしようかと思ったんだけど、 どこを見ても、 (それ書いちゃダメでしょう、、) というネタバレが多かったので やめておきます。 

この作品、、 ヴィゴ・モーテンセン主演で 映画化されたのだそうです。 
写実的描写と、 会話や記憶の描写だけで紡がれる世界が、 映像化されたらそれこそ マッドマックス風なものになってしまうんじゃないかと、、 どうなのかよくわからないのですが、、 trailerを見たところ、 いちおう原作には沿っているようなので、 書評のかわりに 映画のオフィサイトにリンクしておきましょう。

http://www.theroad-movie.com/

でも、、

父親が子供をみつめる想いを 言葉でつむぐ美しさ、、 せつなさ、、 

きっと言葉には言葉の良さがあるはず、、 です。。  もちろんヴィゴ、 大好きだけど、、ね。
 
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