興趣つきぬ日々

僅椒亭余白 (きんしょうてい よはく) の美酒・美味探訪 & 世相観察

楽爪

2018-11-30 | 随感・偶感・歳時感

サラリーマンをやめ、外出することが少なくなってから、爪の伸び方が早く(速く)なったような気がする。

「爪がよく伸びるのは ‘楽爪(らくづめ)’ といってね、日頃、楽ばっかりしているからだよ」
と、小さいころ母に言われたことがある。
人間は働き者でなくちゃだめだよ、という教訓のニュアンスがあった。

いま考えると、楽爪というのは、ほんとうのことかもしれないと思う。
実際、足の爪も、かつては毎日硬い革の革靴に圧迫され、ひしゃげて卑屈に丸まっていた小指の爪が、いまは素直にまっすぐ伸びるようになった。

ちなみに楽爪を辞書で調べて見ると、「楽爪」単独では載っておらず、「苦髪楽爪(くがみ らくづめ)」として載っていた。
その解説には「苦労しているときは髪が早く伸び、楽をしているときは爪が早く伸びるということ。」とある。(デジタル大辞泉)

ところが、ややこしいことに、この辞書には「苦爪楽髪(くづめ らくがみ)」という言葉も、別なところに載っていて、「苦労しているときは爪の伸びが早く、楽をしているときは、髪の伸びが早いということ。」と説明されている。

髪のことはここでは置いておくとして、爪だけを見ると、爪が早く伸びるのは「楽をしているときか苦労しているときか、どっちやねん」と言いたくなる。

でも、同じ辞書でもこのような食い違いが出るのは、しごく当然のこととも言える。なぜなら「苦髪楽爪」も「苦爪楽髪」も科学的に実証された事実というより、俗信であり、それぞれに共感する人がいて、それぞれが独自に、長く人々に語り継がれてきたものだからだ。

わたしとしては、繰り返しになるが、「楽をしているときに爪が早く伸びる」ほうにより共感を持つ。

そして、できれば爪だけでなく、仕事も人生もこうありたいものと思う。
何かに過度に圧迫されることなく、といって怠けるわけではなく、少なくとも精神的には「楽」な状態にあるのでなければ、人には創意も工夫も生まれないし、なにより自主性というものが湧きにくいだろう。
2018.11.30


セレベスの収穫

2018-11-19 | 季節の移ろい

家の近くに借りている菜園から、今年もセレベス(サトイモの一品種)を収穫してきました。
今年は3株を植え、すでに2株を収穫。これは最後の1株です。

収穫した2株もそうでしたが、これも去年より背丈が小さく、実も小さそう。
暑い夏だったのに、同じ菜園の中でも去年より少し日当たりの悪いところに植えていたからでしょう。

 

 


    

掘りやすいように茎と葉を切り取り、芋(実)が傷つかないように周囲を広いめに掘り進みます。

 

 


   

無事収穫。

皮が赤く、赤目芋とも呼ばれています。

 

 


   
   

家に持って帰って、茎と根を取り去ったところ。

セレベスは、普通のサトイモほどのねっとり感はありませんが、適度なほくほく感で、しかも甘みがあって、煮物などにしてたいへん美味しく食べられます。

 

 

   

今、菜園は、さまざまな野菜の収穫時期です。
ネギ、ニンジン、ホウレンソウ、小松菜、シュンギク、ザーサイ、コブ高菜・・・。





   

白菜やキャベツ、ダイコンも穫れ始めました。
白菜はバカデカになった。



去年のセレベス収穫の様子。
https://blog.goo.ne.jp/kyusan2/e/4a6668e766cc521deca5e0f44f361f43


福島、湯と酒と美味の旅

2018-11-14 | 散歩、時々旅

先週末、福島県に行ってきました。

去年までの6年間、毎年会津に一泊で行っていた友人たちと、今年は少し方向を変え、同じ福島県の二本松市方面を訪ねました。
男ばかり5人の車旅です。

この旅のテーマは例年「湯と酒、ときどき祈り」。温泉や蔵元を訪ね、自然を愛で、寺社や美術館にも寄ります。

上の写真は、二本松市にある蔵元、奥の松酒造。建物の中に酒蔵ギャラリーがあり、試飲と購入ができます。
この日はあいにくの雨となりました。

 

 

 

   
   

蕎麦の「鈴風」で昼食をとったあと、同じ二本松市にある檜物屋(ひものや)酒造店(上)と大七酒造(下)へ。

奥の松酒造とおなじく、いずれも仕込み中のため工場見学はできませんでしたが、購入はできました。
檜物屋酒造店の千功成(せんこうなり)シリーズは、地元以外では手に入らないめずらしい酒。
大七酒造は大きな蔵でした。すべての酒が ‘生酛(きもと)造り’(厳選した清酒酵母を使い、時間をかけて醸す)とのことです。

 

 


    

高村智恵子生家。

智恵子の実家も、造り酒屋だったのだそうです。同じ敷地内に智恵子記念館もありました。

 

 

   

そのあと福島市方面に北上し、西側の山間にある高湯温泉に向かいました。

まず、露天風呂の共同浴場「高湯温泉あったか湯」に浸かり、この日の宿「静心山荘」へ。(上の写真)

 

 


    

静心山荘のお風呂です。湯船も壁も檜造り。

「あったか湯」と同じく、ここも高濃度の硫黄泉。湯の色が緑白色です。
強い硫黄の匂いが鼻をつきました。動脈硬化やリウマチなど、さまざまな症状に効くようです。

 

 

 



静心山荘の晩御飯。
ここの食事は、翌日の朝食も含めて、お世辞ぬきにほんとうに美味しかった。
野菜が多く、調理に手がかけられていて、どの一品もそれぞれ味が秀逸。旨い酒とともに心から堪能しました。

 

 


  

翌日は朝から共同浴場巡り。高湯温泉からさほど遠くない土湯温泉の「中之湯」と、岳(だけ)温泉の「奥岳の湯」を回りました。
土湯温泉は「こけし」で有名なところ。土産物店などでズラッとならんだこけしもゆっくり見てきました。

上の写真は、二本松市街へもどる途中で見た景観。
前日は雨にたたられましたが、雲が切れてきました。尾根に陽が当たり、稜線がくっきり浮き彫りになって美しかったのに、写真で見るとそうでもない。(腕のせいではない、としておきましょう)

 

 


   


二本松市内の大隣寺わきにある大銀杏。黄葉が見事でした。

 

 

 


   

大隣寺へ登る階段にも銀杏の落ち葉が・・・。

 

 



   

この大隣寺は、二本松藩主だった丹羽家の菩提寺で、丹羽歴代藩主の墓があります。
また、戊辰の役で霞城(二本松城)を死守した二本松少年隊の戦死者14人も眠っています。(上の写真)

 

 



    

浪江町から避難して二本松で開業した「杉之家」で、〈なみえ焼きそば〉の昼食をとったあと、霞城の城跡へ。
上の写真は、霞城天守閣の石垣の上から見た二本松市内。里の紅葉(もみじ)がちょうど見頃でした。

 

 

    

ここは阿武隈川近くの観世寺(かんぜじ)

その昔、この辺り安達ケ原で、旅人を岩屋に泊め、殺して食べる鬼婆(おにばば)がいたという鬼婆伝説のあるお寺です。

 

 


   

境内に入ると、とてつもなく大きな石が複数あるのにびっくり。鬼婆が棲んだという岩屋です。
この石、だれがどう運んできたのでしょう。

その手前が鬼婆が出刃包丁についた血を洗ったという「出刃洗いの池」。





   

このお寺の100メートルほど離れた阿武隈川の川岸には、鬼婆の墓といわれる「黒塚」もありました。

これだけ状況がそろっているということは、鬼婆はきっと実在したのでしょう、うん。

 

 

      

旅の土産は檜物屋酒造店の千功成純米酒と、大七酒造の純米生酛。いずれも四合瓶。
飲むのが楽しみです。


今回もたいへん充実した旅となりました。個人的には用事が重なり、遠出はむずかしい状況にあったのですが、思い切って参加してよかった。

写真協力:Y.T.氏


コブ高菜の収穫

2018-11-08 | 季節の移ろい

わが家の菜園から、今年もコブ高菜(コブタカナ)を収穫してきました。

漬物にしても、煮ても炒めても美味しい野菜です。

 

 


    

なぜコブ高菜というかというと、葉の根元の内側に小さなコブ(突起)ができるからなのです。
おもしろい野菜ですね。

 

 


    

かわいいコブがあちこちに。

 

 


      

さっそく塩でもんで、一日おいていただきました。
炊き立てのご飯といっしょに食べると、とても美味しい。

*一年ほど前にアップしたコブ高菜の記事です。
https://blog.goo.ne.jp/kyusan2/e/3a9012b958a277884645a026b9ec8b8f


韓国映画「1987、ある闘いの真実」

2018-11-02 | 時には芸術気分

韓国映画「1987、ある闘いの真実」(原題:1987 When the Day Comes)を観てきました。

全斗煥大統領による軍事政権下にあった韓国で、1987年に起きた民主化闘争を、実話をもとに描いた映画です。

韓国で昨年(2017年)末に公開され、1か月余りで観客動員数700万人を超えた映画とのこと。

・・・1987年1月、民主化を求める学生運動に取り組み、警察の取り調べを受けていたソウル大生が、取り調べ中に亡くなった。
そして、これが過酷な取り調べによる拷問死であったことが、警察の懸命な隠蔽工作にもかかわらず明るみに出てしまう。
これをきっかけに、数か月後には全国民を巻き込んだ「民主化闘争」へと発展していった・・・

過酷な拷問シーンなどもあり、見ていてつらい映画でしたが、今、韓国社会にはこれを作る制作者の力があり、それを受け入れる圧倒的多数の国民がいる。韓国という国は、日本より国民の政治に対する意識が高いのではと、昨今の日本の政治状況を見ていて、思ってしまいます。

 

 


   

映画は新宿のシネマート新宿で、お昼の12時半からでした。その前に、池袋駅北口の「天丼ふじ」で昼食。
天丼800円、おしんこ100円。てんぷらは注文を受けてから揚げるので、熱々。エビのてんぷらもプリプリしていて、とても美味しかった。

天丼をゆっくり味わっていたせいで、シネマート新宿には開始ぎりぎりの5分前に到着。
この日は平日なのに意外に混んでいて、最前列の数席しか空いていませんでした。
これを見ると、日本人の ‘政治意識’ も、決して低くはないのかもしれません。