黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

新「モラル・ハザード」(その1)

2008-09-14 10:50:44 | 近況
 腹を空かしたハゲタカに「餌」を与えたときのように、当方が一言言えば、よってたかって「匿名」(小谷野敦さんだけは実名で)を隠れ蓑に、ああでもないこうでもないと人の「発言」を啄む。そして、「この質問に答えていない、即刻応答せよ」などと「命令」する。
 再度言っておくが、「匿名」(訳のわからないペンネームも同じ)を隠れ蓑にしている人には一切応接しませんので、悪しからず。それでも僕のブログを「賑わせたい方」は、勝手にどうぞ。
 そこでお一人だけ実名でコメントなさっている小谷野さんに、大学≠学問の府でないという僕の考えに関して、小谷野さんがおっしゃるように、僕ら教師は学生に単位を出す(単位認定)という行為において、「生殺与奪の権」を授与されており、その他の「業務」も含めて学生に対して(あるいは、教授は助教や准教授および大学職員に対して)「権力者」であることは、全くその通りで、僕が大学の教師になったときからずっと考えてきたのは、うまくいったかどうかはわかりませんが、いかにおのれの「権力」を揮わないか、でした(出席を取ることで授業に縛りつけることをしてこなかったのも、その一つの実践です)。たぶん、長い間の教師生活の中で学生に対して「権力」を揮ったこともあるかも知れませんが、相対的なことではありますが、僕は筑波大学の教師の中では学生や職員に対して「権力」を揮わない教師の一人だと思います(と書くと、そんなの自己満足だ、と言われそうですが、もしご不審なら、筑波大生にお聞き下さい)。
 なお、小谷野さんに一つだけ質問があります。僕が先に書いた文章の中で触れた「ななとなく、リベラル」は、筒井康隆の「文学部唯野教授」を意識して書かれた作品でしょうか(もちろん、僕は御作を「盗作・盗用」などと言うつもりもありませんし、全くそのように考えていません。ただ、御作を読んだとき、筒井の作品を思い出し、もしかしたら「パロディ」かな、と思ったものですから、教えていただければ幸いです)。

 さて閑話休題。
 今回の経験で思い知ったのは、いかにネット社会における「モラル・ハザード」が進行しているかであったが、そんな「コップの中の嵐」より、開いた口がふさがらなかったのが今大々的に報道されている「汚染米」騒動である。今回の事件、内部告発を受けた三笠フード(三笠フーズでした。訂正します)を初めとする流通業者も問題だが、何よりも「道徳心」というか人間としての「両親」(「良心」の間違い)を無くしていたのは、厚労省(これも間違い。「農水省」でした。以下同じ)のお役人たちであった。厚労省(農水省)の事務次官のあの「悪いのは業者であって、厚労省ではない」という言い草が何よりも語っているのは、明治時代(それ以前からかな)以来の「官尊民卑」の思想に他ならない。処置に困った「汚染米」を、今ではどこのメーカーも作っていない「工業用のり」用に出荷するため、件の三笠フード(三笠フーズ)を始めとする流通業者に「お願い」して安く買ってもらい、その見返りに検査も甘くするという「官業癒着」の構図は、この社会が根源的な意味で「モラル・ハザード」状態になっていることを表している。
 そして、思い起こせば、この「汚染米」問題も元を質せば、米国の支援を背景にした小泉政権が推し進めた「改革」の結果であることを僕らは忘れてはならないだろう――「改革」によって米の流通が「自由」になり、「モラル」など全く考えない金儲け主義の業者が米流通業界に参入してきた――。時は自民党総裁選の真っ最中、5人の候補のうち何人かが「小泉改革」の継承を訴えているが、繰り返すが、体験的に言って小泉改革の目玉であった「郵政改革」が地方ではとんでもない事態を招いていること、小泉さんがやった「改革」など、内政的にはそんなものであること、このことも肝に銘じるべきであろう(外交・国家思想の面からは、自衛隊の海外派兵を現実化した、という大きな「罪」を犯した、と僕は思っている)。
 とんでもない時代になっていることを、僕らは忘れてはならない。

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24 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2008-09-14 15:26:48
>もちろん、僕は御作を「盗作・盗用」などと言うつもりもありませんし、

もうおまえでいいよね、頭おかしいよ・・・
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先生、同感です (Unknown)
2008-09-14 15:55:29
>とんでもない時代になっていることを、僕らは忘れてはならない。

この間の先生のブログでのコメントを拝読していて、このお言葉だけには激しく同感いたしました。先生のような方が、文芸評論家であるとか大学教授であるとかは関係なく、言論公表者であるという日本という国を憂えて、柄にもなくナショナリストになってしまいました。
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黒古は福田康夫以下 (GODinNY)
2008-09-14 16:13:06
左翼やリベラルっていうのは、理知で勝負するしかないのに、これほど知性の減退した御仁が国立大学キョージュをやっているとは。
黒古よ。左派、リベラルの大学人として言わせてもらうが、あんたに左翼(しかもステロタイプ極まりない)的視点から政治批判をやる資格はない。それはこの一連の論争で明らかだ。悪いことはいわない。もうブログ閉じな。
昔の左翼はもう少し理論闘争で鍛えられたものだが、もはやあんたは欺瞞的惰性体に過ぎないだろ。
ローンもあるだろうから、辞職せよとは言わん。公的な発言はごくごく専門的な領域に限るべきだな。(匿名であれ、顕名であれ、実名であれ)論争にも応じず、自己批判もできないような輩は、左翼でも何でもない。
黒古一夫は福田康夫以下であると断定しておくぞ。
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Unknown (みどり)
2008-09-14 17:45:43
まあみなさん少し頭を冷やしてください。

世の中にはいろんな意見があります。
それを前提にしましょう。

自分と違う意見の人を見ると自分が否定された気になって腹が立つことがあるでしょうが、それで相手に悪口を言っても、自分自身も貶めている感じで、すっきりした気分にはならないでしょう。

もう少し落ち着いて、議論をしましょう。
議論を重ねることでお互いの認識を高められるような
形にしようではありませんか。
ブログの主に対する感情的、心ない悪口は、見ていて気分のいいもんではないです。
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Unknown (Unknown)
2008-09-14 17:46:16
いやでもまさか
「学問・研究は社会批評を含む」←まあ疑わしい
「私の『文学』は社会批評を含む」←主観的にはそうなんだろうね
それゆえ
「私の『文学』は学問・研究である」
なんて頭の悪すぎること本当に考えてたんなら全共闘世代にしても度が過ぎていると思いますよ。まあ匿名が相手でも論破してやろうなどという知的気概を60過ぎの老人に求めようとはあまり思いませんが(まあどうせ全共闘世代ですしね)。

しかし、肝心の『文学』観についてはまったく説明も敷衍も正当化もないようで、お師匠の小田切秀雄式の「戦後文学」理念を振り回してマルクス主義的文学理論全面展開、みたいなのを期待していたのにガッカリです。

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呆れはて (呆れはて)
2008-09-14 18:45:29
>何よりも「道徳心」というか人間としての
>「両親」を無くしていたのは、厚労省のお
>役人たちであった
これだけ誤字誤用が問題になってるのに、まだ「両親」
とか書くか?
どこの「厚労省」の役人が「両親を無くした」んだ?
しかも、この問題の管轄は厚労省じゃなく農水省だろーが。
自分も役人(みなし公務員)のくせに、そんなこともしらんでよく「社会批評」など書けるな。バカなTVコメンテーターだってそんな間違いしないぞ。貴方のバカな「言い草(正規表現は「言い種」)」が許されているのは「官尊民卑」だからじゃね?
国立大学バカ教員のたわけた「言い草」に事務次官も大わらいだろうな!
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Unknown (Unknown)
2008-09-14 19:35:51
> そして、思い起こせば、この「汚染米」問題も元を質せば、米国の支援を背景にした小泉政権
> が推し進めた「改革」の結果であることを僕らは忘れてはならないだろう――「改革」によっ
> て米の流通が「自由」になり、「モラル」など全く考えない金儲け主義の業者が米流通業界に
> 参入してきた――。

バカなの?

三笠フーズが事故米を転売していたのは1985年からなんですけど。小泉改革とか何の関係もないし。三笠フーズはそもそも新規参入業者じゃないし。三笠フーズの社長いわく、カビを削れば食べられる米を工業用としてムダにしてしまう農水省がおかしい、米を大事にする昔ながらの美しい精神はどこいった、ということで転売してきたということなので黒古先生的にはむしろ三笠フーズ褒めてあげないといけないんじゃないの?

そもそも入札に参加できるのは商業登記に「工業用糊製造」と書かれている会社だけ――実際には製造しない・するつもりもないのに登記してれば商法違反――なので、農水省の役人責める前に――責めるなとは言わないけど――虚偽登記してしかも転売してた業者をまず責めてください(でもいっとくけどそれは小泉内閣云々とは何の関係もないよ)。

事実とまったく関係なくアプリオリに小泉内閣批判とかグローバリゼーション批判とか資本主義批判へと向かっているあたりが本当にクズですね。体制批判は多いに結構ですが、無根拠な批判は単純に有害です。左翼全体がバカみたいに見えるので本当に迷惑です。

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Unknown (Unknown)
2008-09-14 19:44:01
> 三笠フーズが事故米を転売していたのは1985年からなんですけど。

これは正確じゃなかったな。事実を重んじる左翼としては訂正しておきましょう。1985年から事故米転売してた福岡の会社があって、これが1997年に三笠フーズに買収されたのね。で、福岡の会社の経営者が事故米転売を三笠フーズに指南したので買収された10年ほど前から三笠フーズも事故米転売を始めたと。まあいずれにせよ小泉内閣とか新自由主義とか1ミリも関係ないですね。
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Unknown (小谷野敦)
2008-09-14 21:14:23
黒古先生、礼を失したことがあればお許しください。確かに、この世には、碌な業績もないのに国立大学の教授をしている人などごまんといるわけで、黒古先生は十冊以上の著書があるだけで、立派なものです。
「なんとなく、リベラル」はもちろん田中康夫「なんとなく、クリスタル」のもじりですが、『文学部唯野教授』を意識したかといえばしていて、それは『反=文藝評論』という著作に書いてあるので、ぜひお手すきの折にでもお読みください。
 それとブログにも書きましたが私は三浦綾子の『氷点』を、犯罪者の娘もまた犯罪者であるかのごとくに想定する点で差別的な小説だと考えており、これも著書のどれかに書いてあるはずです。いかがお考えか、お聞かせください。
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Unknown (Unknown)
2008-09-14 22:02:16
> 繰り返すが、体験的に言って小泉改革の目玉で
> あった「郵政改革」が地方ではとんでもない
> 事態を招いていること

地方でどんな「とんでもない事態」を「招いている」のかどうぞ具体的にご教示ください(「招くだろう」じゃなくて「招いている」のなら具体的事例を追跡・検証可能な形で挙げられるんでしょうから←「体験的に」とはそういうことですよね)。簡易郵便局数が減ったとかですか? で、それがどれほど「とんでもない事態」を引き起こしているのですか? 集配回数が減ったのが「とんでもない事態」だとかいわないでくださいね(離島の人に殴られますよ)。

米の流通業者もしかりですが、改正前の食糧法による高い参入障壁に守られて農協・全農(そして農水省)と癒着してきた旧来の流通業者が今回のような問題を引き起こしているのだということがまったくわかっていませんね。これで資本主義や自由競争批判をしようというのだから笑わせてくれます。

地方の郵便局も農協絡みの業務受託者ばかりで(地方の特定郵便局が何をしてきたことか)、都市を疎外した農村による日本支配の一翼を自民党の支持基盤として担ってきたわけですけれどね(民主主義を真剣に捉えているならば到底見過ごせない――最高裁によって何度も違憲状態にあると指弾されてきた――田舎の票に馬鹿馬鹿しいほど重みのついた投票格差がなぜ是正されないのか考えたことはありますか?)。戦後から現在にいたるまで(というよりもそもそもフランス革命のころから)、土地を所有し既得権に安住する農村はずっと反動勢力であり、都市労働者とは階級的利害の対立相手であり左翼の敵でした(農村から都市へ労働者が流入したことで都市と農村を繋ぐ家族関係があったためにこのことが最近まで隠蔽されてきたに過ぎません)。

小泉改革が、農村による不当な――投票格差という違憲状態によって支えられた――日本支配を実現してきた自民党の支持基盤を田中角栄的自民党への憎悪を以って自ら破壊したこと自体は立憲主義者として民主主義者としてまた左翼として実に慶賀すべきことです。その点を冷静に評価できない者は知的廉直性を備えた左翼ではありません。

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