カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

これはもう呆れるよりない素晴らしさ   RRR

2024-05-17 | 映画

RRR/S・S・ラージャマウリ監督

 時代はインドが英国の支配下に置かれていた頃のもののようだ。民衆は強大な軍事力のもとに屈しており、英国人との明らかな差別のもとに置かれていた。そうした中に、その軍事の下に組織されたインドの警察官として活躍する男と、ある村で英国軍に騙されてさらわれた少女を救うためにやって来た男とが、不思議な縁で友情を結び、しかし時代と立場に翻弄される姿を描いている。まじめに書くとそんな感じが一応あるが、インド映画である。いわゆる部分的なミュージカルにもなっているし、CGも多用した大スペクタクルにもなる。そのアクションのやりすぎには限度が感じられず、思わず笑ってしまうレベルである。まさにそれこそが、この映画の魅力であるわけだが……。
 英国に抵抗した時代の英雄が実際二人いて、その二人が出会っていたら、という着想を得て作られた物語らしく、この異なった境遇で英国支配下と対峙するインド人の青年の友情が、大きな柱となっている。ところがある事件を境に、二人の間には大きな溝ができてしまう。前々から地道に計画して反乱軍を形成しようとしているラーマに対して、自分の妹を取り戻そうとだけ画策しているビームの行動が早急すぎて、今はまだ英国を防御する立場にいるラーマとしては、対立せざるを得ない状況である。したがって親友を裏切り、捕らえるばかりでなく拷問にもかけてしまうのだ。それは将来の国家のために致し方ない判断だと思っていたが、ビームのあまりに実直な想いと勇気に感銘を受けて、結局は脱走を手伝ってしまう。そうしてその為に反逆罪として、ラーマの方が死罪に処されることになってしまうのだったが。
 反英国という時代背景にありながら、その圧倒的で残酷で差別的な支配の在り方に、国民の怒りが沸騰している。そうした背景をもとに、二人の激しいアクションと踊りが繰り広げられる。なんでもありの活劇ファンタジーの世界なのである(それこそがインド映画だ!)。ミュージカルと言ってもいいかもしれない。それらの歌無しに、民衆のカタルシスは無く、この物語を気分的に明るくしているものでもある。
 強靭な軍隊をものともせずに二人で対峙し壊滅させようとするアクション描写は強力で、あまりに凄すぎて唖然としてしまう。人間や超人という枠に収まらず、宇宙人でも難しい神業が繰り広げられる(実際の宇宙人がそうなのかは知らないのだが)。そうしてそれでいいのである。大仰かもしれないが、それらのアクションを支える様々なものを使った演出も素晴らしく、ため息が出るようだ。美的な感覚も備えていて、アクションが決まると絵にもなっている。歌舞伎の美がそこにある、と言ってもいいだろう。もうなんだか無茶苦茶なんだけれど、これは酔いしれるための舞踏なのであり、なにか考えたら負けなのである。ただただ、素晴らしいのである。
 という映画で尺も少し長いのだが、ちょっと疲れること以外は娯楽作すぎる娯楽作である。もう参りました、しばらくは離れていよう。
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