カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

底辺の生き方と抜け出し方   トラッシュ!

2017-06-04 | 映画

トラッシュ!/スティーブン・ダルトリー監督

 副題「この街が輝く日まで」。リオデジャネイロの貧困スラム地区の少年たちは、ゴミをあさる(資源ごみのようなものだろうか)ことで生計を立てている。そのゴミの中から偶然財布を拾うのだが、これは政治家の秘書だった男が様々な秘密の鍵を握っているものだった。財布を追うのは悪徳警察の組織で、スラムの子供という弱い立場の人間がどのように対抗しながらその秘密を暴いていくのか、という展開。
 最初は面白かったのだけれど、段々と制作側の妙な正義感とか偏見が見て取れてシラケた。せっかく命を張って大人社会を信用せずに頑張っていたのに、最終的にはあいまいに政治的な巨悪に勝つような幻想を抱いているように感じられる。いや、そうであるのなら、もう少し裏をかいてやりこめるような手段を、何か一ひねり講じるべきでは無かったろうか。ブラジルの腐敗は問題が多いという告発もあるんだろうけど、西洋社会の偏見も大きく、そこが監督たちの目を曇らせている原因だろう。お金のありかを探るなら、紛失した財布を探すより、他に方法はいくらでもありそうである。まあ、それではこの物語は面白くはならないのだろうけど。
 しかしながら、刑務所のヒミツの鍵を握る爺さんにまで行き着く展開くらいまでは、面白かったのは確かである。子供ならではの役割の妙があって、いわば大人社会を出し抜いていくのである。しかしあんがい手の内はそれなりにたどられていくあたりは、あちらの警察は有能すぎるという感じがするわけだ。スラムの子供らのその他大勢感があるからこそ、敵を出し抜けると思うのだが、ずいぶん最初のところから、名前や顔が割れてしまう。それはスリル間のあるところではあるが、普通ならそれでほとんど終わりだ。実際に最大の危機は、ずいぶん最初の頃にあるのだけれど、それもほとんど奇跡で乗り越える。それは見当はずれの子供を一人くらい殺さなかったくらいで、何とかなるような大人の同情がある所為だとは思うが、むしろそれくらいで済まされるのならば、その悪の警察組織は、あんがい脆いのではないかと逆に考えてしまった。どちらも危ういからこそ必死であるという展開が、この物語の緊張感を最後まで保たせると思う。だから結局荒唐無稽なクライマックスになってしまったのが残念だった。
コメント
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