カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

後世に残るべき立派な映画   ゼイラム

2017-02-07 | 映画

ゼイラム/雨宮慶太監督

 91年に発表された低予算SF映画。どうもカルト的に人気があるらしく観てみた。
 宇宙監獄から脱走したゼイラムという凶悪犯を賞金稼ぎの女ハンターが追ってきて、ちょうど居合わせた2人の地球人の男も交えて格闘する物語。筋は単純だけれど(登場人物もこの4人だけ)画面もチープでさすがに時代がかっているけど、さらに主人公の女性がかなり大根だけど、これがなかなか面白いのである。公開当時はコケたらしいが(それは残念だが分からないではない)、その後人気が出たのはよく分かる。とにかく映画的にものすごく工夫が凝らしてあって、感心したり感動したりするんである。主演の森山裕子さんは、科白回しはいまいちだけど、アクションは様になっているし、いわゆる男の子が喜ぶ要素が詰まっていて大変に魅力的だ。これをリアルタイムで観たならばファンになっていたに違いない。
 最初から低予算のテレビドラマのような雰囲気が漂っていて、これはちょっといくらなんでも劇場用では無理があるのでは? と思う訳だが、その無理がどんどん通って行って妙な設定になって行って、確かにチープながら、おおっと思うようなカットが続いていくうちにどんどん熱中してみてしまうような感じだった。いや、凄いものを観ているのだという実感が結構ある。いろんなものを差し引いてみていることは確かだが、それはそれで相当凄いということが伝わってくるのである。安っぽい、といっても爆発シーンなどは迫力もあるし、いくらこういう映画だからと言って怪我しないのだろうか? というような派手なアクションも満載だ。悪役が不気味で気持ち悪いだけでなく、本当にしつこくて怖い。地球人の二人もいい味を出していて、巻き込まれて気の毒だったけど、力が無い割にけっこう活躍している。いや、これはホントにいい映画ですよ、と誰かに自慢したくなる観た後の充実感もある。でもまあ、たぶん女の人の多くは「?」という感じでしょうけれど。
 まあ、普通はオタクっぽい感じでウケるというのは分かるのだけれど、本当に映画的に良いと思うのだ。それというのも、これを作るためにいろいろ制作側が考えていることがひしひしと伝わってくるからに他らない。特撮SFで予算も無いから、まあ、こういうところはやっつけてさっさと撮ってしまおうという気分がまったく感じられない。実際のことはまったく知らないまでも、本当にそういうことが映像を通じて伝わってくる映画なんてものは、そんなに多くあるわけじゃない。いわゆる凝りに凝ってマニアにしか分からない身内ネタということでもなくて、しかし細かく観る人にはちゃんとそういう部分でも分かるような手抜きが無いのである。
 残念ながら好きな人しか観ない作品であるとは思うが、こういう映画魂が基本的に日本映画界に残っていくことが大切なんではなかろうか。日本文化を残すというようなことを考えるとき、こういう精神性こそが基本だ、というようなことを是非思い返して欲しいと思う。そういうことを考える上でも、大変に立派な映画ではないだろうか。
コメント
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