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ミステリ感想-『放課後はミステリーとともに』東川篤哉

2018年12月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
謎と野球(特に広島カープ)をこよなく愛し、エアコンに例えられることをこよなく嫌う、鯉ヶ窪学園2年生にして探偵部の副部長の霧ヶ峰涼が遭遇する8つの事件を描いた短編集。

2011年本ミス9位、日本推理作家協会賞候補(長編・連作短編集部門)


~感想~
本ミスベスト10やら日本推理作家協会賞は大袈裟だが、作者らしい軽快な描写と、シンプルながら本格ミステリの肝を抑えた謎解きが楽しめる好短編集。

先にドラマ版を見てしまった人は残念だが、冒頭の「霧ヶ峰涼の屈辱」は毎年のベスト短編を収めた「本格ミステリ04」にも採られた良作で、魅力的な主人公にも引き込まれるだろう。
トリックやプロットは単純ながら、探偵役が毎回のように入れ替わったり、ユーモアミステリならではの味が冴え渡り、毎回何かしら見るべきところがあるのは流石である。
個人的には掉尾を飾る「霧ヶ峰涼の二度目の屈辱」がベストで、連作的仕掛けというほどではないが、一度しか使えないトリックや、犯人を絞り込む明快なロジックが光る。

一作目とは打って変わり全く賞レースに引っ掛からなかったが続編も出ているし、広島カープがセ界最強の常勝軍団となった現在の、霧ヶ峰涼の心境もぜひ聞いてみたいので、第三作も読みたいところである。


18.12.28
評価:★★★☆ 7
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