東アジア歴史文化研究会

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「日本人の連帯力がウイルス克服の鍵」(『週刊新潮』 2020年2月27日号 櫻井よしこ)

2020-02-29 | 日本の安全保障
2020.02.27 (木)
新型コロナウイルスの感染が日本国内で広がりつつある。2月14日、東京、神奈川、沖縄、和歌山、北海道、愛知の6都道県で新たに8人の感染が判明した。

気になるのは感染ルートを辿れる場合とできない場合が混在していることだ。たとえば東京の感染者二人は、その前日に感染が確認されたタクシー運転手の男性と濃厚接触があった。タクシー運転手は屋形船で遊覧しており、そこには武漢からの旅行者を世話した屋形船の従業員がいた。

神奈川県の感染者はダイヤモンド・プリンセス号の乗客の搬送などに携わった消防局職員だ。

沖縄の女性タクシー運転手はダイヤモンド・プリンセス号の乗客を乗せて観光案内をしていた。

他方、北海道の感染者は感染ルートがはっきりしない。愛知の男性感染者は2月7日までハワイ旅行をしていたが、やはり感染ルートは不明だ。

中国人との接触も中国への渡航歴もなく感染が起きたとすれば、それは三次感染以上の感染が国内で起きている、つまり日本にはすでに感染が広がっているということだ。私たちは新たな段階に入ってしまったと考えるのが正しいだろう。そこで大事なのは、大感染のパニックを引き起こさずに、ウイルスを管理していくことだ。目に見えない敵のコントロールは極めて難しい。だが、ウイルスの性質と日本人の資質を考えれば、可能だと私は思う。

まず、新型コロナウイルスの性質を見ておこう。これまでに判明しているのは、新型コロナウイルスの感染力は一般のインフルエンザウイルスと異なり、未発症の段階でもヒトヒト感染を起こすが、致死率は0.6%から1%と見られることだ。これはSARS(重症急性呼吸器症候群)の致死率10%より低く、インフルエンザの0.1%より高い。

助け合いの精神

東京大学医学部教授の橋本英樹氏は「たちの悪いインフルエンザと考えればよいでしょう」と、語る。

であれば、新型コロナウイルスは、十分注意しなければならないが、かといって過度に恐れる相手ではない。新型コロナウイルスの決定打となる治療薬はまだ開発されていないため、現在は対症療法しかない。それでも普通に健康で普通に体力のある人は、基本的なルールを守ることでウイルスに打ち勝てるという。

そのためには外出から戻ったらまず、十分な手洗い、うがいを欠かさないことだ。余り無理をせず睡眠と栄養をとり、ウイルスと戦う体力を維持することに尽きる。医療水準だけでなく、一人一人の行動と心構えが大事な要素であり、その意味で私は日本人は大丈夫だと考えている。

2009年に日本列島を襲った新型インフルエンザのことを想い出したい。感染力は強く、とりわけ高齢者の致死率が高いとして恐れられた。私は当時百歳近い母と暮らしていたために、この新型インフルエンザウイルスから母を守るべく心掛けたことなどを鮮明に記憶している。

当初政府は、今回と同じく新型インフルエンザウイルスの上陸を阻止する水際作戦に力点を置いていた。しかしそうした中で海外渡航歴のない人々の集団感染が判明したのだ。その時点で政府の対処方針は、今回と同様、水際作戦から重症化を防ぐ作戦へと転換した。軽症患者には十分な注意と指導を徹底して、地元の病院、或いは自宅で療養してもらい、重い症状の人をふやさないという作戦である。

当時、私も即、母の生活パターンを変えた。週3回から4回に上っていた母の外出を減らして自宅ですごしてもらうようにしたのだ。その上で私も、そしてわが家に出入りする人々全員に、手洗い、うがいを徹底してもらった。橋本氏は「まず、自分が感染源にならないようにすることが大事」だと強調したが、私もこうして自身を守り、周囲の高齢者や弱い存在を守れるよう心掛けた。そしてそれは成功した。

自分の健康と周りの人、他者、さらに社会全体の健康を重ね合わせて考えることが大事である。それは連帯意識と助け合いの精神に直結する。

あの3.11の東日本大震災で大地震と大津波に襲われたとき、東北地方の人々を中心に、日本人は全員が助け合った。自分の身を守ったうえで、自分より弱い人たち、お年寄りを、皆が助けた。一緒に頑張った。こうした日本人の資質から見ても、このコロナウイルスを管理していくことは、日本人には出来るはずだ。

高齢者は感染すれば、20%から30%の確率で重症に陥り易いという。とりわけ糖尿病などの基礎的疾患のある高齢の人はリスクが高い。

万が一、感染すれば、呼吸器をつけたりして全身を管理する必要も生じてくる。感染者がどっとふえて集中すれば、大病院といえども限界にぶつかる。高度の治療を供給できる十分な病室の準備は容易でなくなるだろう。このウイルスには前述のような感染力があって広がり易いのである。それだけに爆発的な流行を抑えることが大事である。

中国人は本当に気の毒

そのために何をしたらよいのか。前述のように自身の健康管理の徹底が第一だが、感染した場合、私たちは保健所や厚労省に殺到するのでなく、地元の医師や病院を活用することが大事になる。そしてここに政府のリーダーシップが求められる。十分な情報を国民に提供し、感染しても、どこでも良質な医療が受けられる態勢を、各地域の医療機関を有機的に結んで作り上げることだ。そのことへの信頼や安心感さえ築くことができればパニックは起こらない。症状が軽い場合、普通のインフルエンザの患者同様に各地の病院が治療し、或いは患者は自宅で静養して、コロナウイルスに打ち勝てるのではないか。それができるのが日本の文明・文化の本当の力ではないかと思う。

武漢で何が起きているのか、正確には見えてこないが、武漢に封じ込められている中国人は本当に気の毒だ。いま、武漢では夜から朝までの「アルバイト」募集が盛んに行われているという。夜を徹して「死体」を搬送するのだそうだ。新型コロナウイルスで亡くなった人々の遺体である。火葬場は一日中フル回転しても間に合わないといわれる。

国民のための医療などが整っていない国では弱い人ほど真っ先に犠牲になる。それでも中国の惨状の実態は外部世界には説明されない。国民のための情報開示よりも、習近平国家主席や中国共産党を守るための情報隠蔽が先行するからだ。しかし隠しても隠しきれない。習氏も共産党も、決定的に国民の、そして国際社会の信頼を失いつつある。

日本にも新型ウイルスの感染が広がるいま、わが国は国民、人間中心の体制を作り上げよう。国民の資質、政府の在り方、国柄の違いでこの危機を乗り越えよう。

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