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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

経済の迷宮⑩ 市民社会の英知が実る

2016-10-20 15:19:50 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済の迷宮⑩ 市民社会の英知が実る

多国籍企業の税逃れを国際政治の焦点に押し上げたのは市民社会の圧力でした。
経済協力開発機構(OECD)租税委員会の議長として税逃れ対策の調整に携わる浅川雅嗣財務省財務官が振り返っています。2008年のリーマン・ショックを機に経済危機が広がり、世界がコ斉に財政出動に走った」後のことです。
「各国は税金を上げた。納税者に負担をお願いするにあたって、多国籍企業の行き過ぎた租税回避は、税の公平性を担保するという立場から看過できなくなった。政治的に大きな問題になった」

所得格差背景に
もう一つの大きな要因は世界的な格差の拡大でした。
「(経済危機から)立ち直る過程で所得格差が広がってきた。政治的にはアドレス(対処)しなくちゃいけない。多国籍企業だけに認められるような租税回避の機会はできるだけディスカレッジ(阻止)しなくちゃいけない。そういう背景があった」(6月6日、日本記者クラブでの講演)
市民社会の英知も結実しています。
OECDを中心とするBEPS(税源浸食と利益移転)対策プロジェクトは、税逃れを隠す海外子会社のべールをめくりあげる計画を盛り込みました。15の行動計画のうち「行動13」。多国籍企業グループ全体の情報を文書化する取り組みです。子会社の所得や従業員数などを国別報告書にまとめ、親会社が税務当局に提出する決まりを設けます。
「タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)の創設者たちが運動の初期に掲げた方策が実現しようとしているのです」
政治経済研究所の合田寛理事は指摘します。公正な税制を求めて03年にロンドンで設立された民間団体TJNは国際的組織に成長を遂げ、国際政治を動かすに至ったのです。



税逃れを議論するOECD租税委員会の会合に出席したパナマ代表(左)=6月30日、京都市内

透明性に弱点も
一方で、BEPSプロジェクトはいくつもの弱点を抱えます。多国籍企業の国別報告書を一般公開しないことが一例です。15年にイギリスで設立された「税に責任を負う超党派議員連盟」が批判しています。
「国別報告書を公開しないことで、税制を透明化する真の機会を失った。透明性こそ、人びとの信頼を回復する最良の方法である」
多国籍企業の子会社を一つの独立した企業のように扱っている点も重大な欠陥です。TJNは指摘します。
「求められるのは多国籍企業グループを単一企業として扱うことだ。そして経済活動が行われた国に税は帰属するという新しいアプローチをとることだ」
「(子会社を独立企業として扱えば)古く破たんしたシステムをとりつくろい、より複雑化することで、税のアドバイザーや法律家、会計事務所のもうけを膨らますことになる」
法人税率引き下げの国際競争を問題にせず、タックスヘイブンを放置するという根本的な欠陥もあります。「税率を何パーセントに設定するかは国家主権の範囲内」(浅川財務官)という従来型の見地にとどまるためです。国際協力団体オックスファムは強調します。
「法人税の回避を可能にするタックスヘイブンのネットワークとたたかうべきだ。底辺へ向かう破壊的なレースに国家を引き込む有害な(税率引き下げ)競争に対処すべきだ。利益を得るのは富裕層だけなのだから」
BEPSプロジェクトの欠陥は「大企業の税アドバイザーやロビイストらの軍団によってむしばまれた」(TJN)結果です。
日本の経団連も国別報告書の公開に反対するなど、税逃れ対策の進展を妨害してきました。地域統括会社が日本のタックスヘイブン対策税制の対象外にされた背景にも経団連の要求がありました。
税逃れ対策の行方を左右するのは、公正な税制を求める世界の連帯行動と、対策を骨抜きにする大企業連合のせめぎあいです。合田さんは話します。
「パナマ文書を一時的な騒動に終わらせてはなりません。新しい国際課税のルールをつくるたたかいは、これからです」
(おわり)(杉本恒如、佐久間亮が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年10月19日付掲載


ここでも、租税回避を許さない取り組みが、下からの要求で起こりつつある。たたかいはこれからです。

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