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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」⑥ 不安定な雇用拡大

2018-05-31 13:54:20 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」⑥ 不安定な雇用拡大

「生産性革命」と「働き方改革」を一体で進める政府は、企業の“生産性”を向上させるとして、フリーランス(自由業)など不安定な雇用を拡大させようとしています。
主務大臣の認定を受ければ、あらゆる規制が一時凍結できる「サンドボックス制度」が生産性向上特別措置法に盛り込まれました。
同制度は規制緩和できる対象分野に限定がありません。雇用や労働分野についても、世耕弘成経済産業相は「排除されない」(4月11日、衆院経済産業委員会、日本共産党の笠井亮議員の質間)としています。
安倍晋三政権の成長戦略「未来投資戦略2017」では、生産性向上につながる「多様で柔軟な働き方」として「雇用関係によらない働き方」の実現を掲げました。「雇用関係によらない働き方」の例として、「請負を中心として雇用契約によらない形で働く働き方」が挙げられています(17年3月、経済産業省の「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」の報告書)。
16年4月に経団連は、人工知能(AI)やロボットなどの活用で働き方が変化するとした上で、「多様かつ柔軟な働き方を認める環境を整備することが不可欠である」と提言しました。
官邸と財界が一体で推進するシェアリングエコノミー(共有型経済)の裏側で危険な事態が進んでいます。プラットフォーム(基盤)事業を通じて労働者保護の規制の外に「雇用関係によらない働き方」が広がっています。プラットフォーム事業は、インターネット上で不特定多数の個人のマッチング(引き合わせ)を仲介するもの。民泊仲介のエアビーアンドビーや配車仲介のウーバーなどが有名です。
こうした事業は、仲介業者(プラットフォーム事業者)と働き手の間に雇用関係がありません。働き手は「労働者」ではなく「個人事業主」として扱われます。



スマートフォンに表示されているウーバーのアプリ=ロンドン(ロイター)



“便利な労働者”
こうした働き方は、企業にとって非常にうまみがあります。雇用契約を結んでいないため、雇用保険や労災保険などの福利厚生を企業が負担する必要がありません。労働基準法や最低賃金法も適用されないため、企業が思うままに長時間労働をさせたり、一方的に契約を打ち切ったりすることができます。労働者より立場の強い企業にとっては、安価で手軽に扱える“便利な労働者”なのです。
世界でも、プラットフォーム事業者の下での不安定な働き方が問題になっています。代表的なのはライドシェア(相乗り)事業大手のウーバーです。同社は、スマートフォンのアプリを使って、乗車希望者と登録運転手が結びつき、運転手が自家用車で運送するサービスを行っています。

自殺する運転手
ウーバーでは、劣悪な労働環境が広がっていると指摘されています。15日の参院経済産業委員会の参考人質疑で意見陳述した弁護士の川上資人氏は、米ニューヨークでウーバーが事業開始したことで、タクシーの台数が10倍に増加し、タクシーやウーバーの運転手の収入が激減したことを紹介しました。「12時間働いても5500円稼ぐのがやっという状況」に陥り、タクシー運転手から自殺者が出ているといいます。
こうしたウーバーの乱暴な経営姿勢に対し、各国で市民が反発。ウーバーは次々に欧州で撤退を余儀なくされています。一方で、同社の代表が2月に安倍首相を訪問するなど日本市場への参入に意欲を燃やしています。
欧州では、技術革新が雇用形態を変化させる中で、雇用の質を守る取り組みが進んでいます。15日の参院経済産業委員会の参考人質疑で川上氏は、ロンドンや米国のカリフォルニア州で、判決などによってウーバーの運転手の労働者性が認められているといいます(日本共産党の辰巳孝太郎議員の質問)。フランスでは、労働法を改正し、労災保険などを事業者負担とする「プラットフォーム事業者の社会的責任」が規定されました。
安倍官邸と財界が一体となってつくった生産性向上特別法は、企業利益を最優先して、国民の安全安心や労働者の雇用を脅かしかねません。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月30日付掲載


「自由な働き方」などと言うけれど、実際はいつ働くか、どれだけ働くかなどの裁量などの自由はない。
残業時間の規制や有給休暇などの保障のない、非常に不安定な働き方。
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安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」⑤ 営利目的で官データ利用

2018-05-29 18:16:39 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」⑤ 営利目的で官データ利用

グーグルなどの大企業がデータ産業を席巻する中、日本政府と財界は、公的機関が保有する個人データを民間が営利目的で利用できる制度をつくってきました。
経団連は、2013年から企業のニーズの高い行政機関が保有する公共データを調査し、公共データを産業に利用する施策を政府に提言していました。これを受けて15年9月に改定した個人情報保護法は、法律の目的に「新たな産業の創出」を追加し、16年5月に改定した行政機関等個人情報保護法ではデータ利用制度の法的枠組みを盛り込みました。
経団連は16年7月に「データ利活用推進のための基本法を早期に制定」することを要求。政府は同年12月には「官民データ活用推進基本法」を成立させました。安倍晋三首相を議長とする「官民データ活用推進戦略会議」が設置されました。
16日に与党などの賛成で成立した生産性向上特別措置法では、主務大臣から認定を受けた事業者が、国や独立行政法人に対して、データの提供を要請できる制度を盛り込みました。公的機関が提供できるデータは個人情報も含まれます。


欧州の一般的データ保護規則と日本の個人情報保護法の比較
項目一般データ保護規則個人情報保護法
消去の権利(「忘れられる権利」)データが必要でない場合や違法に取り扱われている場合に、個人がデータを消去させる権利を持つ(第17条)条文規定なし
データポータビリティ(データ持ち運び)の権利個人が企業に提供したデータを取り戻し、他の企業に移転させる権利を有する(第20条)条文規定なし
罰則最大2000万ユーロ(約26億円)もしくは、世界全体における売上総額の4%の制裁金(第83条)30万円以下の罰金、または6カ月以下の懲役


個人特定の恐れ
政府は、公的機関が個人情報を提供する場合、氏名や住所を削除するなどして個人を特定できないよう「非識別加工」を施すとしています。ところが、公的機関から得た情報を、顔写真や名前を公表しているインターネット交流サイト(SNS)の情報などと組み合わせることによって個人が特定される危険性があります。個人情報保護委員会が作成したガイドラインでも、個人情報が復元される技術的な可能性をすべて排除することを行政機関に求めていません。
公的機関のデータを活用したい企業と、データを保有する省庁が直接対話する場として「オープンデータ官民ラウンドテーブル」が内閣官房情報通信技術総合戦略室の主催で18年1月から開催されています。
同会議では、SNSの利用状況、免税品の購入データなどの観光庁や国税庁が保有する訪日外国人に関するデータの提供を、民間事業者が要望しました。提供されたデータと、SNSなどのデータを組み合わせることで訪日外国人の観光行動を詳細に分析する事業を提案しています。
企業が注目しているのは、公的機関のデータを他の情報を組み合わせることで付加価値を生むサービスです。組み合わせた結果、個人が特定された情報が、流出した場合にプライバシーが侵害される恐れがあります。ところが、個人情報が流出した結果については、誰も責任をとらないことが明らかになりました(15日、日本共産党の岩渕友参院議員の質問)。
公的データを、非識別加工すれば民間ビジネスに提供できる制度は、日本以外の国にはありません。住民票や社会保険、就学などの公的機関が保有する個人情報は、国民が行政サービスを受けるために、提供せざるを得ないものです。その情報を民間企業の営利目的に利用するのは、提供した国民が認識していない目的での利用です。
欧米では一部の大企業がデータ産業で独占的な地位を占める状況を受けて、個人情報を保護する規制を強めています。

貧弱な情報保護
欧州委員会は25日に一般データ保護規則(GDPR)を施行し、情報を取り扱う企業に対する規制を厳しくしました。GDPRは、個人の尊厳を守る観点で、個人情報に関するさまざまな権利を規定しています。個人が企業に提供したデータの削除を求められる「忘れられる権利」や、企業に提供したデータを取り戻し、他の企業に移転できる「データポータビリティ(データ持ち運び)の権利」などを明記。これらの権利は日本の個人情報保護法には記載されていません(4月10日、衆院経済産業委員会、福家秀紀参考人に対する笠井亮議員の質問)。
欧州に比べると、日本の個人情報保護制度はぜい弱です。個人情報を守る対策を進めず、データの利活用だけを進めれば、憲法が保障する個人の尊厳が、企業利益のために犠牲になる危険があります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月29日付掲載


欧州の一般的な情報の保護規定と比べても、日本の情報保護の規制はザル法とも言えるもの。
官の持っている個人情報を民間に開放するってもってのほか。
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安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」④ IT企業データ独占

2018-05-27 14:09:43 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」④ IT企業データ独占

インターネットを支配する巨大な通信技術(IT)企業が、世界のデータを独占しています。米IT大手のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンは頭文字をとって「GAFA」(ガーファ)と呼ばれ、独占的な地位を築いています。
グーグルは検索サービス、アップルはスマートフォン端末、フェイスブックはインターネット交流サイト(SNS)、アマゾンはネット通販で、市場シェアの大半を占めています。これらの企業は、自ら運営するサービスを通して集めた個人情報を広告などに利用して、巨額な利益をあげています。
IT大企業の急成長を受けて、日本政府や財界は、強い危機感を募らせています。
経団連は、人工知能(AI)などの先端技術によって新しい社会を築くという「ソサエティー5・0」を実現するため、2017年2月に提言書を発表。未来投資会議などを「強力な司令塔」とし、国家戦略を策定するよう求めました。18年5月の提言書では、冒頭で「データを活用したビジネスには立ち遅れた」と焦りをにじませています。
経済産業省の産業構造審議会は16年4月、「新産業構造ビジョン」のとりまとめに向けた議論で、「GAFAが大規模なプラットフォーム(IT基盤)を形成しており、大きく水を空けられている」、「(GAFAなどによって)競争優位が固定され、支配的地位になっている可能性が懸念される」としています。こうした指摘を受け、政府は成長戦略「未来投資戦略2017」に「ソサエティ5・0」の実現を掲げ、16日に成立させた生産性向上特別措置法では、公的機関が保有するデータの民間活用を促す制度を盛り込みました。
ところが、IT大企業をめぐり、さまざまな問題が表面化。各国が規制に乗り出しています。



米上院で証言にのぞむフェイスブックのザッカーバーグCEO=4月10日、ワシントン(ロイター)

欧州では制裁金
3月に、フェイスブックで最大8700万人分の個人データの流出が発覚しました。流出したデータが米大統領選の世論工作に使われたとされ、同社のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)が米議会公聴会に招致されました。
欧州では欧州委員会が、昨年6月に反トラスト法(独占禁止法)に違反したとしてグーグルに対して約3000億円という巨額の制裁金を科しました。インターネット検索での支配的な地位を乱用し、自社が運営するサイトの上部に自社製品やサービスを表示するなどの優遇をしていた点を問題視しました。
欧州の取り組みと対照的なのが日本です。
日本では、メールの内容を解析して把握した個人の関心に合わせて、広告を表示するヤフーのサービスに対して、12年に総務省は、解析の目的や対象を表示することや、利用者が望めば解析を中止することなどを条件づけました。憲法が保障する通信の秘密を侵害する恐れがあったためです。

米企業規制せず
一方、米国のグーグルが運営する無料メールサービス「Gメール」でもメールの内容を解析し、広告を表示するサービスを行っていますが、日本政府は対策をとっていません。米国企業と日本企業の間で規制の適用が不公平になっています。
経済産業省と公正取引委員会は、17年6月に報告書を発表し、GAFAなどによるデータ独占に対する競争法上の課題や対応をまとめました。しかし、具体的な対策は示せていません。
ようやく日本も及び腰ながら3月に、独占禁止法が定める「優越的地位の乱用」に違反した容疑でアマゾンの日本法人であるアマゾンジャパンに対して公正取引委員会が立ち入り調査をしました。アマゾン側が値引いた額を「協力金」という名目で取引先に不当に負担させていた疑いです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月26日付掲載


ITの大手企業は、インタネットを通じて集めたビックデータを活用して、大きな利益をあげています。
課税逃れを許さない取り組みが必要です。
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安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」③ 安全守る規制に風穴

2018-05-26 10:06:13 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」③ 安全守る規制に風穴

第2次安倍晋三政権は発足当初から「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指します」(2013年2月、施政方針演説)と語り、規制緩和を進めてきました。
安倍政権のもとで、国、地域、個社の三つの単位でさまざまな規制緩和を進める「規制緩和の三層構造」がつくられてきました。規制緩和制度の枠組みは▽全国一律での規制緩和を進める「規制改革推進会議」▽特定の地域に限定して、規制を取り除く「国家戦略特区」▽「産業競争力強化法」に基づく企業や事業単位の規制緩和―の大きく3種類に分かれます。どの制度も最終的には全国一律の規制緩和を狙っています。
政府は、13年12月に成立した産業競争力強化法に基づき「新事業特例制度」と「グレーゾーン解消制度」を創設しました。




まずやってみる
新事業特例制度は、安全性を企業が確保する代替措置を前提に、事業単位で規制緩和を受けられる制度です。グレーゾーン解消制度は、企業が新しい事業を行う際、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。二つの制度を活用すれば、企業が新事業を行う際に規制の適用を受けるかどうかを事前に確認し、適用される場合は政府に規制緩和を求めることができます。
政府はこれらの制度を利用し、国民の命を守る業法に風穴を開けてきました。代表的なのはライドシェア(相乗り)事業です。同事業は、自家用車で“実費負担”により旅客運送するもの。同事業を有償で行うことは、運転者の要件や車の点検・整備などのさまざまな安全義務を課す道路運送法に違反する「白タク」行為として禁止されています。
17年5月にグレーゾーン解消制度によって、自家用車で長距離を移動する人と車に相乗りして安く移動したい人をインターネット上でマッチング(ひきあわせ)させる事業について、道路運送法の規制の対象外であると政府が認定しました。運転者が受け取る費用がガソリン代と高速道路料金などの実費での“相乗り”であれば合法だとしました。安全性や利用者保護の担保がない事業に、国がお墨付きを与えたのです。一方、有償での旅客運送事業は、依然として業法が及びます。
17年12月までの4年間の利用実績をみると、新事業特例制度は11件、グレーゾーン解消制度は116件にとどまっています。経済産業省は、規制所管省庁の最終判断が優先されたことや安全性を検証するデータの収集に膨大な時間とコストがかかるため、利用が進まなかったとしています。
そこで、安全性を担保するデータを事前に収集する必要なく、実証実験を可能にする「サンドボックス」制度が生産性向上特別措置法に盛り込まれました。同制度の意義を安倍首相は「(サンドボックス制度によって)試行錯誤を認める。つまりはまずはやってみる。関西風で言えば『やってみなはれ』」(未来投資会議、17年5月)と強調しました。

日本は“実験場”
同法は内閣官房に「一元的窓口」を設置。規制緩和を希望する事業に適した規制緩和制度を提案し、利用を促します。サンドボックス制度は主務大臣の認定が得られれば、あらゆる既存の規制を一時凍結したもとで、実証実験ができます。規制緩和の対象について日本共産党の笠井亮衆院議員が取り上げると、「制度の対象となる事業分野をあらかじめ限定していない」(世耕弘成経済産業相、4月11日、衆院経済産業委員会)ことが分かりました。サンドボックス制度は英国など18力国で採用されていますが、金融分野などに限られています。労働や産業分野を対象に同制度を採用したのは日本だけです。無限定・無制限な異次元の規制緩和制度です。
17年9月のニューヨーク証券取引所で、安倍首相は「世界中で新しいビジネスがどんどん生まれている。
こうしたベンチャー精神あふれる人たちに、日本はその実験場を提供したい」と語りました。海外企業を誘致するために日本を“世界の実験場”にしようという魂胆なのです。企業利益のために、国民の命や暮らしを脅かしかねません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月25日付掲載


空港への相乗りタクシーなどは、以前からMKタクシーがやっている。自家用車の乗り合いは、本当に「たまたま行先が一緒なのか」「小遣い稼ぎのために一緒ということにしているのか」が分からない。
安全運行に責任が持てるとは言い難い。
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安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」② 賃金上昇に結びつかず

2018-05-25 10:42:01 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍官邸・財界一体 危険な「生産性革命」② 賃金上昇に結びつかず

2017年9月のニューヨーク証券取引所。訪米した安倍晋三首椙はウォール街の投資家たちの前で「一人一人の労働生産性を大きく向上させることができれば、賃金も上がる。デフレからの脱却スピードを速めることができる」と語りました。
安倍政権は、同年12月に「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定しました。労働生産性を11年から15年までの平均値0・9%から年2%に倍増させることを目標にすえました。これを具体化するため、16日に成立させた生産性向上特別措置法は「短期間での生産性の向上に関する施策」を行うことで、国際競争力の強化や国民生活の向上を目指すと明記しています。
労働生産性が向上することで賃金は上昇すると政府は描きますが、労働生産性の向上が賃上げにつながっていません。




連動性を失って
厚生労働省が15年にまとめた労働経済白書からも明らかです。1995年を100とした場合、2014年の1人あたりの実質労働生産性は約119に伸びている一方で、1人あたりの実質雇用者報酬は約99と横ばいです。ヨーロッパ諸国や米国は、労働生産性の伸びに合わせて雇用者報酬も増えています。白書は賃金が「労働生産性との連動性を失ってきた」と指摘しました。
白書は労働生産性の上昇が賃金上昇に結びつかなかった要因を「4つの仮説」として、①企業利益への配分が高まる一方で労働者への分配が低下②交易条件の悪化による海外への所得流出③非正規雇用の増加④労使交渉における賃金決定過程や労使の交渉力の変化―を挙げています。
白書によると国内総生産(GDP)に占める雇用者報酬を示す労働分配率は、1990年の51・1%から2013年は51・6%と、ほぼ同水準になっています。資本金10億円以上の大企業ほど付加価値に占める人件費としての労働分配率は、低下傾向にあると指摘しています。一方で、2000年以降に当期純利益の分配先として配当金の割合が大きく上昇し、内部留保も増加しました。
1997年度から2014年度にかけて常用労働者は13%減少しました。同期間の1人あたりの名目賃金の推移をみると、一般労働者は42万円から40・7万円まで落ち込む一方、パートタイム労働者は9・4万円から9・8万円に微増しました。「非正規雇用に就いた者の増加により雇用者一人当たり賃金が押し下げられている」と指摘しました。
労働組合の推定組織率は長期的に低下し、14年には18%まで落ち込み、交渉力が変化したとしています。
1999年の産業競争力許可法(当時は産業活力再生特別措置法)のもとで、この白書の指摘は仮説ではなく実証されました。その結果、約20年間で自動車など世界的な多国籍企業に成長した大企業は史上空前の利益をあげ、株主配当は5倍の16兆円、内部留保については400兆円を超えました。非正規雇用は2割から4割近くにも増え、格差と賃金は拡大しました(4月18日、参院本会議、日本共産党の岩渕友議員の質問)。

収奪体制を強化
財界も労働生産性の向上を強調しています。春闘の経営者側方針である18年版「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)は「生産性向上の取り組みをさらに強化」することを政府に要望しています。
安倍政権が言い続けてきた、大企業の利益が上がれば、労働者に還元される「トリクルダウン」は破綻が明らかになっています。このことに目をつむり、「労働生産性が上がれば賃金は上がる」と強調することは、大企業による収奪体制強化を合理化するものです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月24日付掲載


労働生産性は、日本もヨーロッパも米国も上がっているのですが、日本だけ労働者の賃金に反映されていない。
果実を資本家が独り占めしてる。これでは、いくら生産性が上がっても労働者は報われない。
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