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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 日米首脳会談② 頭から自衛隊のみ込む

2024-05-03 06:05:07 | 国際政治
検証 日米首脳会談② 頭から自衛隊のみ込む

「日米同盟が始まって以来、最も重要なアップグレード(更新)だ」。バイデン米大統領は4月10日(日本時間11日未明)、日米共同声明に「(日米の)作戦及び能力のシームレスな統合を可能に」するため、2国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させると明記されたことを指して、こう力説しました。

日米「統合司令部」
「指揮・統制の枠組み向上」―。端的に言えば、米軍・自衛隊の司令部機能の連携強化です。岸田文雄首椙は「独立した指揮系統」を強調しますが、日本共産党の志位和夫議長は22日の衆院予算委員会で「自衛隊は事実上、米軍の指揮下に組み込まれる」と鋭く告発しました。自衛隊を頭からのみ込み、従属態勢を完成さ
せる―。ここに最大の狙いがあることは明らかです。
旧日本軍の解体後、米占領軍は自らのアジア戦略の補完部隊を育成するため、日本の再軍備に着手。1950年8月の警察予備隊から54年7月の自衛隊創設にいたるまで、米軍が一から育成してきました。米側は日本の軍事組織が自らの指揮下に入ることを当然視しており、52年1月、米軍の占領特権を定めた日米地位協定の前身「日米行政協定」の当初案に、「有事(緊急事態)」に統合司令部を設置し、米側が指揮官に就くとの条項を提案しました。ここでいう「有事」は米側が判断することになり、「日本有事」に限定されません。



日米共同訓練レゾリュート・ドラゴンの開始式典で敬礼する米海兵隊(左)と陸上自衛隊各部隊=2023年10月14日、健軍駐屯地(熊本市)=米海兵隊ウェブサイトから

しかし、日本側は必死に抵抗します。外務省が公開した行政協定の交渉経緯に関する外交文書によれば、日本側代表の岡崎勝男外相は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とする憲法9条2項を引用し、建前上は軍隊ではない警察予備隊が「第三国に対する交戦行為に参加できることを予見する協定またはそのような解釈の余地を残す協定を外国政府と結ぶことは不可能」だと断言しています。つまり、米軍の指揮下に入ることは9条違反だという主張です。
現在の自衛隊の行動も、憲法9条によってさまざまな制約を受けています。阪田雅裕・元内閣法制局長官は「米軍の指揮下に入るということは、自衛隊が米国の意に従って軍事行動を取ることを意味する。集団的自衛権の全面的な行使など、無制限で米軍の指揮に従うことは、違憲の軍事行動を許容することであり、到底許されない」と指摘します。

完全な9条空洞化
結局、行政協定から「統合司令部」条項は削除されましたが、日米両政府は「有事」に自衛隊が米軍の指揮下に入るという密約をかわし、自衛隊にも引き継がれました。その後、憲法と日米同盟の矛盾を抱えたまま、日米共同作戦体制の強化や日米軍事協力の指針(ガイドライン)などに基づく軍事一体化が進み、実態的に米側が指揮権を握る構造が強まってきました。
今回の日米共同声明は、いわばその「完成形」を目指していると言えます。だから、「最大のアップグレード」なのです。その先にあるのは、憲法9条の完全な空洞化です。


米「主権切り離し」まで要求
「指揮・統制の枠組み向上」として臭体的に狙われているのは、米軍の司令部機能の強化です。2024会計年度米国防権限法(第1317条)は国防総省に対し、「在日米軍の司令部機能見直しの実現可能性・可否」を含む、日本との安全保障協力に関する報告書を6月1日までに議会に提出するよう求めています。5月末にも東京で開かれる日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、大枠が決定される見通しです。
在日米軍は米本土以外では最大規模となる5万人以上の兵力を抱え、空母打撃群や海兵隊など地球規模の出撃部隊を有しています。しかし、横田基地(東京都)に置かれる在日米軍司令部のスタッフはわずか140人とされています。しかも、その機能は基地や人員の維持・管理などにすぎません。
戦時の指揮権を有し、日米共同訓練などを立案するのは、ハワイにあるインド太平洋軍司令部です。インド太平洋軍は30万の兵力を有し、広大な太平洋からインドまで、北極から南極まで地球の約半分を「責任区域」とする米軍最大の統合軍です。同司令部の下に統合任務部隊(JTF)を設置し、日本に派遣。2025年3月に発足する自衛隊の「統合作戦司令部」を支援する案が有力視されています。
統合作戦司令部は陸海空自衛隊の実動部隊を一元的に指揮するとしています。しかし、河野克俊・元統合幕僚長は、同司令部創設にいたった最大の理由は、「インド太平洋軍司令部との調整」にあることを明らかにしています(『トモダチ作戦の最前線』)。当初から、米軍の実質的指揮下に入ることが予定されていたのです。
アーミテージ元米国務副長官らが4月4日に発表した報告書では、日米の統合司令部を同じ場所に置くべきだと提言しています。
「有事」に統合司令部を置くとの日米密約を踏み越え、「平時」から公然と、事実上の統合司令部を置くというものです。

志位議長の告発で
日米の司令部機能「統合」で、自衛隊が事実上、指揮下に置かれる―。日本共産党の志位和夫議長は22日の衆院予算委員会で、具体的な事実をあげて告発しました。
第1の問題は、敵基地攻撃実行の際の「日米共同対処」です。当面、念頭に置かれているのは、自衛隊が導入を進めている米国製巡航ミサイル・トマホークの共同運用です。
志位氏は防衛省の資料を示し、「指揮統制」で日米が緊密な協力を行うことが明記されていると指摘。指揮統制は情報・装備等で圧倒的に優越的な立場にある米軍主導で行われ、「自衛隊は事実上、米軍の指揮統制のもとにおかれることは明らかだ」と迫りました。



質問する志位和夫議長=4月22日、衆院予算委

シームレスな統合
第2の問題は、日米共同声明に初めて明記された、米軍と自衛隊の「シームレス(切れ目のない)な統合」という概念です。
これに関して志位氏は、インド太平洋軍の「IAMDビジョン2028」概要版を示し、「同盟国とシームレスに統合する能力を備え」ると明記していると指摘しました。
IAMD(統合防空ミサイル防衛)は防空と敵基地攻撃を一体化したシステムです。中国軍の航空機やミサイルによる脅威を無力化し、米軍の作戦行動の自由を確保するのが狙いです。基地だけでなく司令部機能、空港などインフラへの先制攻撃も排除されていません。日本は敵基地攻撃能力の導入に合わせ、IAMDの導入を決定しました。
岸田文雄首相は志位氏の追及に、日米のIAMDは「まったくの別物」だと反論。志位氏は米軍の太平洋IAMDセンター所長が執筆した公式の解説論文(米空軍『航空宇宙作戦レビュー』22年冬号所載)を示し、「インド太平洋軍の広大な管轄では、同盟国やパートナー国が絶対に不可欠であり、地域の同盟国とシームレスに統合するというビジョン」を力説していることを明らかにして、「別物」という理屈は成り立たないと反論しました。



防衛省を表敬訪問した米インド太平洋軍のアキリーノ司令官(右)。左端は吉田圭秀統合幕僚長=4月22日(インド太平洋軍ウェブサイトから)

まぎれもない違憲
解説論文は「シームレスな統合」の具体的な内容として、センサー(情報網)やインターセプター(ミサイル、戦闘機など)といった同盟国の戦力を、米軍主導の単一のネットワークに組み込むことを挙げています。その上で、米国防総省が開発を進めている「統合全領域指揮統制(JADC2)」に言及。JADC2は米軍の全戦力を単一の情報ネットワークに統合するシステムですが、「IAMDビジョン2028」のネットワークは、同盟国も含めて統合する「一歩進んだもの」だとしています。
志位氏は、ここに組み込まれる危険を追及。さらに、こうしたネットワークを実現するために、米軍が同盟国に「主権の一部を切り離させる」ことまで要求していることを明らかにしました。
解説論文はこう述べています。「ビジョンの実現のための政治的な賛同に取り組む必要がある。より大きな全体的な防衛ネットワークのために、まずは諸国家に主権の一部を切り離させるという最終的な権限は、政府全体のアプローチが必要だ」。日本を含む同盟国に国家主権の一部放棄を迫っていることは明らかです。
志位氏は「これが米軍の求める『シームレスな統合』だ。日本の主権まで米国に差し出すなど、まぎれもない憲法違反だ」と告発しました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月1日付掲載


行政協定から「統合司令部」条項は削除されましたが、日米両政府は「有事」に自衛隊が米軍の指揮下に入るという密約をかわし、自衛隊にも引き継がれました。その後、憲法と日米同盟の矛盾を抱えたまま、日米共同作戦体制の強化や日米軍事協力の指針(ガイドライン)などに基づく軍事一体化が進み、実態的に米側が指揮権を握る構造が強まってきました。
日米の司令部機能「統合」で、自衛隊が事実上、指揮下に置かれる―。日本共産党の志位和夫議長は22日の衆院予算委員会で、具体的な事実をあげて告発。
JADC2は米軍の全戦力を単一の情報ネットワークに統合するシステムですが、「IAMDビジョン2028」のネットワークは、同盟国も含めて統合する「一歩進んだもの」だとしています。
志位氏は、ここに組み込まれる危険を追及。さらに、こうしたネットワークを実現するために、米軍が同盟国に「主権の一部を切り離させる」ことまで要求していることを明らかに。
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