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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

日本製鉄復活 意味と狙い① 戦争のため合同した歴史

2018-06-02 09:36:21 | 経済・産業・中小企業対策など
日本製鉄復活 意味と狙い① 戦争のため合同した歴史
鉄鋼産業研究会 大場陽次さん

新日本住金が社名を変更しました。その意味と狙いについて、鉄鋼産業研究会の大場陽次さんに寄稿してもらいました。

新日鉄住金(本社東京都丸の内、進藤孝生社長)は5月16日、社名を2019年4月1日付で「日本(にっぽん)製鉄」に改めると発表しました。1950年に解体された旧日本(にほん)製鉄以来、ほぼ70年ぶりに「日本製鉄」の呼称が復活することになります。しかし、なぜ今なのか、その国際的な意味合いや狙いを探ってみました。

近代製鉄の誕生
日本で洋式高炉法(注1)による製鉄が始まったのは、今から161年前、ペリー来航4年後の1857年、釜石市の西郊で南部藩士大島高任(たかとう)によるとされています(日量1~2トン、木炭銑)。間もなく明治維新となり、殖産興業の時代に入ると、明治政府は75年この釜石鉱山を官営製鉄所とし、5年後高炉2基を稼働させました。しかし、不調続きで結局、廃止。その約10年後、軍御用商人の田中長兵衛が払い下げをうけ、商業生産に成功しました。維新後の富国強兵政策もあいまって、全国的に平炉法(注2)による製鉄が伝播(でんぱ)していきました。ただ、国内需要を賄うにはあまりにも小規模で、レールや鉄筋などイギリス、イタリアなどからの輸入が著増し、外貨不足問題が浮上しました。そこで、政府(農商務省)は新規に官営製鉄所の建設を決定。1897年北九州八幡で着工、1901年官営八幡製鉄所が操業を開始しました。09年には、民間の北海道炭礦(たんこう)汽船が輪西製鉄(現在の室蘭製鉄所)を稼働させています。


(注1)洋式高炉(こうろ)
古来のたたら(ふいご)を使った製鉄法に対し、西洋に学んだ製鉄用の溶鉱炉。高さのある円筒形の炉で、上部から原料鉱石とコークス・石灰石を入れて溶錬し、下方にたまった銑鉄(せんてつ)を取り出します。

(注2)平炉(へいろ)
製鉄用の反射炉の一つ。耐火れんがで造られ、平らな炉床をもつ。銑鉄やくず鉄を入れ、1000度以上に熱せられた空気と燃料を送り込んで燃焼させ鋼を製造します。日本では1975年ころまで用いられました。




旧日本製鉄誕生
日露戦争や第1次世界大戦による軍需ブームに乗って、国内に中堅メーカー43社、中小166社、国外にも中国東北地方(旧満州)や朝鮮半島など旧植民地にまで製鉄会社が乱立する事態となりました。しかし、“にわかメーカー”が多く、経営体質が脆弱(ぜいじゃく)で、政府としては軍需産業の強化なしには、戦争の世紀を耐え抜くことはできないとして、製鉄合同を推奨しました。しかし、そのつど景気が回復し、合同が回避されてきました。しかし、満州事変、(1931年)を経て、戦争遂行能力の基礎として製鉄大合同が強行され、34年2月、官営八幡製鉄所と財閥系の輪西製鉄、釜石鉱山、三菱製鉄、富士製鋼、九州製鋼、東洋製鉄―の計7社が合併し、日本(にほん)製鉄が発足しました。第2次大戦中は、「鉄鋼統制会」が設立され、原料優先配分から製品供給まで需給を完全にコントロール下に置きました。

戦後分割され…
敗戦後、「過度経済力集中排除法」によって、財閥が解体されたのと同時に、日本製鉄も1950年、4社(八幡製鉄、富士製鉄、日鉄汽船、播磨耐火煉瓦)に分割されました。その後、日本鋼管、川崎製鉄、住友金属、神戸製鋼など高炉メーカーが多数しのぎを削ることとなり、競争が激化。70年4月、八幡と富士が合併し、新日鉄に。02年10月、日本鋼管と川鉄が統合。12年10月、新日鉄と住金が合併して今日に至り、さらに日新製鋼の完全子会社化を予定しています。いずれも“追い込まれ型合併”という側面が色濃いものでした。
(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月31日付掲載


かつては、戦争のために製鉄会社の統合・合併が行われた歴史があるんですね。
昔と同じ標記ですが、「よみ」は「にほん」から「にっぽん」へ。

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1 コメント

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神はサイコロ遊びをする (ああいえばこういう熱力学)
2024-04-02 08:05:40
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。

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