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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

資本主義の現在と未来 日本の金融化② 衰退した郵便貯金

2024-05-09 07:11:33 | 経済・産業・中小企業対策など
資本主義の現在と未来 日本の金融化② 衰退した郵便貯金
日本共産党元衆院議員 佐々木憲昭さんに聞く

―財政投融資の解体を求めたのは誰だったのでしょうか。

財投をやり玉に挙げたのは、まず財界です。経団連は1997年に「財投改革の基本方針」を発表し、「『入口』の郵貯・簡保が、国家信用や税の免除などの恩典を背景に、依然として大量の資金を集め、民間金融機関を圧迫している」と主張しました(『経済団体連合会五十年史』)。民間金融機関の利潤獲得にとって公的金融システムが邪魔になり、それを破壊することを狙ったのです。
大蔵省は、この財界の要望を受け、「市場原理」優先論を主張するようになりました。例えば99年12月23日の資金運用審議会で、理財局長の中川雅治氏は「この改革は、財投全体を市場原理にさらす、市場原理の下で運営していくというところに意義がある」と述べています。

―米国からの外圧はどうでしたか。
米国から「外圧」

米国政府は80年代から金融自由化をもとめ、日本の公的金融システムを攻撃しました。83年に日米円・ドル委員会を設置し、日本の金融制度や法制度にまで口を出してきました。
元大蔵省銀行局長の西村吉正氏は、自著『日本の金融制度改革』の中で「異例の手法と内容」の「外圧」だったと振り返り、「国家の信用を背景とした事業者」(郵便貯金など)の存在がネックだったとのべています。
そのうえ、米国政府は94年から毎年、日本政府に「年次改革要望書」を突きつけ、新自由主義的改革を求めました。95年に日米で合意した「金融サービスに関する措置」の中で、日本政府は公的年金資金の運用に「投資顧問会社が実質的に参入することを認める」と約束。直後に規制を緩和し、外資を含む投資顧問会社への委託を急増させました。2001年の財投解体以降、年金資金の市場運用そのものが拡大しました。

―財政投融資の解体は国民にどんな影響をもたらしましたか。
さまざまな悪影響がありますが、その一つは郵便貯金の衰退です。民間金融機関にとって郵便貯金は邪魔な存在でした。銀行預金よりも金利が高く国民にとって有利でしたから。
財投の公的な枠組みの中で保護されてきた庶民の零細な郵便貯金を、財界と米国が攻撃したのです。小泉純一郎首相が強行した郵政民営化は、それに忠実に従ったものでした。






大銀行の補完役
郵便貯金を保護していた金利は「一元化」の名のもとで引き下げられました(グラフ上)。そのため郵便貯金の残高が減り、国内銀行の預金残高は急増しました。(グラフ下)
もう一つは政府系金融機関の変質です。07年の再編で、暮らしと営業にかかわる国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の三つの公庫が、国際協力銀行の国際金融部門とともに日本政策金融公庫に統合されました。その後12年に日本政策金融公庫から国際協力銀行が分離・独立しました。
重大なのは、この過程で「目的」が変えられたことです。それまでは「一般の金融機関からその融通を受けることを困難とする国民大衆が必要とするもの(資金)を供給」するとしていたのに「一般の金融機関が行う金融を補完する」(日本政策金融公庫法)と変更されました。政府系金融機関の「公共」を否定し、利潤第一の大銀行の補完役におとしめたのです。
このように財投の解体は、郵政事業や年金基金の公的な性格を奪うとともに、政府系金融機関の大きな変質をもたらしました。
金融自由化は「公共」の破壊そのものだったのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月7日付掲載


米国政府は94年から毎年、日本政府に「年次改革要望書」を突きつけ、新自由主義的改革を求めました。95年に日米で合意した「金融サービスに関する措置」の中で、日本政府は公的年金資金の運用に「投資顧問会社が実質的に参入することを認める」と約束。直後に規制を緩和し、外資を含む投資顧問会社への委託を急増。
財政投融資の解体はさまざまな悪影響がありますが、その一つは郵便貯金の衰退。
もう一つは政府系金融機関の変質。重大なのは、この過程で「目的」が変えられたことです。それまでは「一般の金融機関からその融通を受けることを困難とする国民大衆が必要とするもの(資金)を供給」するとしていたのに「一般の金融機関が行う金融を補完する」(日本政策金融公庫法)と変更されました。政府系金融機関の「公共」を否定し、利潤第一の大銀行の補完役におとしめた。

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