きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

変貌する経済 財界の策動⑩ 「靖国参拝」で深刻な矛盾

2014-06-27 23:45:12 | 経済・産業・中小企業対策など
変貌する経済 財界の策動⑩ 「靖国参拝」で深刻な矛盾

安倍晋三首相は現内閣発足から1年が経過した2013年12月26日、靖国神社を参拝しました。中国、韓国政府が抗議したのをはじめ、米政府も批判。参拝から数時間後に在日米国大使館は、「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったことに、米国政府は失望している」と厳しい表現で異例の声明を発表しました。

「悪影響及ぼす」
靖国神社は、日本軍国主義による侵略戦争を「自存自衛の正義のたたかい」「アジア解放の戦争」と美化し、宣伝することを存在意義とする特殊な施設です。
第2次世界大戦後の国際秩序は、日独伊の3国が行った侵略戦争は不正不義のものとすることを共通の土台としています。安倍首相の靖国参拝は、第2次世界大戦後の国際秩序に対する正面からの挑戦です。
年が明けた財界・業界団体の新年会の会場。首相の靖国参拝についてトヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長は「突然でびっくりした」と率直に語っていました。財界3団体(経団連、経済同友会、日本商工会議所)の1月7日の共同会見では、日商の三村明夫会頭が「長期的に見れば、政治の関係が悪いということは、われわれの関係にも悪影響を及ぼす」とコメントしました。
しかし財界からは、靖国参拝について表立った直接的な批判の声は上がっていません。それは、「首相の靖国参拝を批判すれば、財界が右翼からの攻撃にさらされる」(財界事務局幹部)ことを恐れてのことです。
4月3日午後7時。官邸から程近い紀尾井町の日本料理店「福田家」で財界人との会食会が開かれました。出席者は経団連の今井敬、奥田碩(ひろし)、御手洗冨士夫各名誉会長らでした。
1時間半以上にわたる会食の席上、財界側から安倍首相に対し、「(外交問題で)こちらからいいたいことは言った」といいます。
はたして財界側の「言いたいこと」とは、なんだったのでしょうか。



靖国神社を参拝した安倍首相が乗り込んだ公用車と見送る人たち=2013年12月26日、東京都内

対米従属のもと
謎解きのカギとなる提言があります。2003年1月に発表された「活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして」です。
東アジア自由経済圏構想を打ち出した提言は、「日本が東アジアにおいて本格的なリーダーシップを発揮すること」が必要だと強調しています。その上で次のように指摘します。
「日本は、第2次世界大戦において大東亜共栄圏の建設を掲げて戦い、東アジアの国々に多大な損害を与えた。そのことへの深い反省と、東アジアがアメリカの安全保障の傘のもとにあるという実態」があり、「(東アジア自由経済圏)構想の実現に日本が建設的な貢献をしていくことは、過去の不幸な歴史を乗り越えていく大きなチャンスでもある」。
日米軍事同盟を外交の基盤に据える財界は、過去の戦争に対する「深い反省」の下に「過去の不幸な歴史を乗り越え」なければ、東アジア自由経済圏は構築できない、という認識を持っているのです。
安倍政権による歴史逆行・復古的な政治姿勢は、一部大手メディアからの後押しもあり、「時流」を形成しているかのように見えます。しかし、この姿勢こそ、同政権のアキレス腱であり、対米従属のもとでアジア地域での経済支配構造を確立したいという財界の思惑とも深刻な対立が、そこにはあります。
そのことを日本共産党第26回大会は次のように指摘しています。
「安倍自公政権は、衆参両院で多数を握っているが、政治的には決して盤石ではない。この内閣の基盤はきわめてもろく、深刻な矛盾をはらんでいる」
(この項おわり)(金子豊弘が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月26日付掲載


東アジアで商売をやっていこうとする財界は、過去の戦争の反省の上にたたないと、うまくいかないと考えている。
財界の「東アジア自由経済圏」、共産党の「北東アジア平和協力構想」。中身は全然違いますが、過去の戦争を反省するという点では一致。
安倍さんの進める方向の異常さが際立っています。
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変貌する経済 財界の策動⑨ 自民政権へ献金再開検討

2014-06-26 21:57:18 | 経済・産業・中小企業対策など
変貌する経済 財界の策動⑨ 自民政権へ献金再開検討

経団連は2013年10月、「政策評価について」と題した文書を公表しました。
「経団連の政策提言が、どの程度実現し、何が課題として残されているのかを検証する」とした文書には「政策評価結果」が別紙として添付されています。事実上、自民党の政策と取り組みを評価したものです。
「経団連が主張する政策を積極的に推進しており、高く評価できる。引き続き、大胆な規制改革をはじめとする成長戦略の実行を強く期待する」との総評が記されています。

安倍暴走一覧表
12年暮れの総選挙での民主党政権から自民党政権への政権交代。そして13年夏の参院選挙での「衆参ねじれの解消」。経団連にとっては、「政策を着実に実行できる環境が整った」(「政策評価について」)わけです。安倍晋三政権に対しては財界中枢からは、「長期政権を望む」との強い声が出ています。
文書の添付表には、「成長戦略」「経済連携」「エネルギー」「財政・社会保障」「道州制」「震災復興、防災・減災」の六つの項目ごとに実績と課題が示されています。
それは、まるで経済分野における「安倍暴走一覧表」です。
実績として挙げられたのは、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加、原発再稼働の加速化、消費税率の8%への引き上げ、社会保障制度「改革」などです。いずれも、暮らしや営業、安全・安心を脅かすものとして、国民から強い不安と批判の声があがっているものです。
これからの課題として掲げられているのは、それぞれが国政上の大間題です。
法人実効税率の引き下げ、原発の早期再稼働、消費税率の10%への引き上げの「堅持」、社会保障制度の「重点化・効率化」、道州制推進基本法の早期成立―。
これらの課題を政治に実行させていくうえで、経団連が検討を始めたのが企業献金への関与再開です。



経団連会館=東京都千代田区

「通信簿」の矛盾
経団連は、04年から08年まで5年間、「カネも出すが口も出す」方針を掲げ「政党通信簿」方式での「企業献金のあっせん」を実施してきました。
この方式は、経団連と日経連が02年5月に統合して新しい経団連が発足したことを機に、「政策提言能力と実行力を高めるため」に実施されたものです。
当時、政党の政策を買収る「年間サイクル」の仕組みがつくられました。まず、経団連が毎年1月ごろ、10項目にわたる「優先政策事項」を発表。つぎに、経団連と自民党、民主党との「政策を語る会」を春に開催。「政策を語る会」では、居並ぶ経団連の幹部からの「口頭試問」。そして10項目についてA・B・C・D・Eの5段階評価、いわゆる「政党通信簿」を秋に決定していました。この「政党通信簿」を指針として企業献金が行われていました。
しかし、09年の総選挙で財界奉仕の自民党政権への国民の怒りが噴出。民主党に政権が交代しました。このとき「政党通信簿」方式は、重大な矛盾に直面しました。10年3月8日に御手洗冨士夫会長(当時)は記者会見で次のように述べていました。
「本格的な政権交代の時代に入り、従来の政策評価は硬直的で柔軟性に欠けたものになってしまった」
「政党通信簿」が中止になったことは、財界戦略の大きな柱が破綻したことを意味していました。「通信簿方式」による「献金あっせん」は、二大政党づくりが大目標でした。ところが、その目的の裏には、与党・自民党への献金関与という、もう一つの狙いがありました。一つの方式の中に矛盾した二つの狙いがあり、民主党政権の誕生によって、この矛盾が一気に噴出した、という背景があったのです。
今回、自民党政権復活により、政治への関与を拡大しようというのが、企業献金関与の狙いです。大企業本位の政策を「カネで買う」新たな時代は、国民との矛盾がこれまで以上に激化する時代です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月25日付掲載


自民党と民主党を財界よりの政策で競わせるための「通信簿」方式の献金攻勢。
志位さんが、財界からすれば、共産党の評価はすべて5段階評価のEだ。って言っていたものです。
民主党政権になったからといって、財界は献金を自民党から民主党へ切り替えるってことはしなかった。
また、自民党政権に戻って、かつての「企業献金あっせん」の復活です。
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変貌する経済 財界の策動⑧ 武器三原則撤廃を「歓迎」

2014-06-25 22:30:49 | 経済・産業・中小企業対策など
変貌する経済 財界の策動⑧ 武器三原則撤廃を「歓迎」

小野寺五典(いつのり)防衛相は4月18日の記者会見で、米軍需企業大手レイセオン社から自衛隊の地対空迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC2)に使われている三菱重工業製部品の輸出の打診がきていることを明らかにしました。
安倍晋三内閣が、同月1日に日本の武器輸出を全面禁止してきた「武器輸出三原則」を撤廃し、輸出推進へ転換する「防衛装備移転三原則」を閣議決定したばかりのことでした。

紛争国に輸出も
「武器輸出三原則」は1967年、佐藤栄作首相(当時)の国会答弁として打ち出されたものでした。
76年には、三木武夫内閣(当時)によって政府統一見解が示され、その後、81年衆参両院の国会で決議されました。その中では、「日本国憲法の理念である平和国家としての立場をふまえ」たものであるとして、憲法と「武器輸出三原則」の関係が明確にされました。
「武器輸出三原則」は、国権の最高機関である国会での議論を踏まえて確立された「国是」だったのです。
「防衛装備移転三原則」は、▽輸出を認めない場合▽輸出を認める場合▽輸出先での管理体制―を規定しています。紛争当事国の定義を狭め、米国やイスラエルなど紛争当事者への輸出も容認します。また、「日本の安全保障に資する場合」など、政府の判断次第で相手国をいくらでも拡大できる内容。武器の種類についても限定しておらず、部品・関連技術だけでなく、完成品の輸出も可能となります。F35戦闘機や、「ミサイル防衛」装備など日米が共同開発した武器を、米国が日本の事前同意なしに他国へ売却することも可能になっています。



武器展示会「ユーロサトリ」で展示された三菱重工社製新型装甲車の模型=6月16日、パリ(島崎桂撮影)

「米と協力深化」
「武器輸出三原則」の見直しを求めてきた経団連は4月1日、「武器輸出三原則」撤廃を「歓迎する」とのコメントを発表しました。
米政府の反応も早いものでした。米国務省のマリー・ハーフ副報道官は同月2日の記者会見で、「日本の防衛装備品の輸出政策見直しを歓迎する」と評価。
「米国および他の相手国との防衛産業協力の機会を拡大し、手続きを簡素化する」と強調しました。米国の軍需産業にとっても、日本の「武器輸出三原則」の見直しは長年の要求だったのです。
同月6日には、小野寺防衛相とへーゲル米国防長官は防衛省内で会談。この中で、小野寺防衛相は「防衛装備移転三原則」について説明。へーゲル長官からは、日本の取り組みを「歓迎する」との発言がありました。防衛省は、「両閣僚は、引き続き、2国間の装備・技術協力を深化させていくことで一致した」としています。
経団連防衛生産委員会が11年1月から2月にかけておこなった米国での調査は、レイセオン社訪問も含まれていました。後日作成された報告書(同年7月1日)には、同社が日本の「武器輸出三原則」の見直しを求めていることが明記されています。
「レイセオンは日本との共同研究開発の推進を望んでおり、特に日本の技術を活用した研究開発は合理性が高いと評価している」
「武器輸出三原則等が見直され、情報やハードウェアの共有が可能になることをレイセオンは望んでいる」
報告書には、将来的に日米の共同開発の対象となりうる分野として、海上のセンターシステムやイージスシステムのイルミネイターなどが具体的に挙げられていました。
16~20日にパリで開催された国際的な武器展示会「ユーロサトリ」には、日本から三菱重工、日立製作所、東芝、富士通、NECなど軍需生産を手がける企業13社が参加。安倍政権の下で憲法の精神に反した武器輸出がいよいよ本格化しそうです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月24日付掲載


「武器輸出三原則」(つまり「三原則」に反する場合は輸出できないという事)の時も、輸出のための抜け穴はあったのですが…。
今度は、「防衛装備移転三原則」で、基本的に輸出はOK。同盟関係にあるなら紛争国への輸出も認めるって事。
同じ三原則でも、中身が全然違います。
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変貌する経済 財界の策動⑦ 「国権の最高機関」を攻撃

2014-06-24 21:19:05 | 経済・産業・中小企業対策など
変貌する経済 財界の策動⑦ 「国権の最高機関」を攻撃

日本国憲法は、「国会は、国権の最高機関」と明記しています。憲法第41条のこの規定がいま財界からの攻撃の対象になっています。
経団連は2003年1月に「活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして」(「奥田ビジョン」)と題する21世紀戦略を打ち出しました。提言は、「政策本位の政党政治を実現するためには、政党の機能強化とあわせて、総理のリーダーシップが機能する体制を整備する必要がある」と強調しました。
「総理のリーダーシップ」を機能させるためには、「閣議自体を国家経営や国益を議論する場とする一方、国策の決定が時期を失することのないよう、スピード感ある真の『国家のボード』に変えていかなければならない」といいます。ボードとは役員会のことです。
日本経済は、本格的な多国籍企業時代に入り、たとえ国民が強く反対しようが、首相のトップダウンで大企業本位の政策の実行を進めることが財界にとっては焦眉の課題になっている、との認識を持っています。
その危険性は、集団的自衛権行使容認をめぐる安倍晋三首相の暴走をみれば明らかです。これまで半世紀にわたる憲法解釈を百八十度覆し、「海外で戦争する国」への大転換を国民多数の批判や不安に耳をかさずに強行しようとしています。しかも、国会でのまともな議論はありません。与党だけの密室協議で可能にしようとしています。

世論無視の姿勢
経団連は、これまで取り上げることを控えてきた外交・安全保障、憲法問題で「奥田ビジョン」を深掘りした提言「わが国の基本間題を考える」を05年1月に発表します。この提言は、財界による「国家改造計画」とも言えるもの。集団的自衛権行使容認を求めた提言は、一方で国民の中には「無責任な利己主義がまん延しつつある」と攻撃しているのが特徴です。
立法府である国会にたいしては、閣僚の議院出席義務の緩和や「首相のリーダーシップを発揮」するために内閣府機能の強化を求めました。
13年1月には「国益・国民本位の質の高い政治の実現に向けて」との提言を発表。財界が求める政治とは、「グローバルな観点にたった政策を、適切なタイミングで迅速に実行できる『判断力』『実行力』を持った政治である。経済社会のグローバル化が進む中で、経済活動においても、国の政策決定にあっても、迅速果敢な意思決定が求められる」と強調します。
国民と政治との関係についてはさらに露骨です。提言は、「政治は、国の将来のために、国民にとって痛みを伴う政策を実行しなければならない」と強調し、「世論の動向などに過度におもねる政治からの脱却が求められる」と世論無視姿勢をエスカレート。
財界主導の政策は国民の批判を呼び起こします。「世論におもねるな」との絶叫は、財界自身は決して黙して語らないこの事実を浮き彫りにしました。



解釈で憲法9条を壊すなと抗議する人たち=5月15日、首相官邸前

二院制否定まで
さらに政党法の制定の検討を求める一方で、首相の解散権が及ばない参議院については、「現状のままでは政策遂行の阻害要因となっていると言っても過言ではない」と非難を加え、「この際、参議院を廃止し、一院制の採用を検討すべきである」とすら提言しています。経団連は、この提言で憲法に規定された二院制を否定するまでにいたりました。
財界人や学者らが参加して12年2月に発足した「日本アカデメイア」は、同年9月、「国会改革に関する緊急提言」を発表。長谷川閑史(やすちか)武田薬品工業社長、岡村正東芝相談役、大橋光夫昭和電工相談役らの連名でした。
この中で▽首相の国会出席の上限を1週間5時間程度(例)とする▽予算委員会の全閣僚出席慣行は最大で月1日程度とする▽閣僚の国会出席に上限を設けるーなどを提言しています。
安倍内閣によって強まる憲法破壊への道は、まるで財界の手によって舗装されているようです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月21日付掲載


二院制の否定どころか、国会や予算委員会の形骸化まで要求する財界。
議院内閣制なんですから、首相や内閣の独断で政治を進めることは許されません。
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変貌する経済 財界の策動⑥ 暴走の論理 10年前に提言

2014-06-23 22:35:47 | 経済・産業・中小企業対策など
変貌する経済 財界の策動⑥ 暴走の論理 10年前に提言

財界の老舗シンクタンクに日本経済調査協議会(略称・日経調)があります。
日経調は1962年3月に、経団連、日本商工会議所、経済同友会、日本貿易会の財界4団体によって設立されました。その提言は、これまで政界、官界に大きな影響を与えてきました。
2004年7月に発表した「憲法問題を解く」では、憲法問題が「政治的なタブーとしては戦後最大の問題」と位置づけ、改憲に向けた取り組みが必要だとの認識を示しました。そして、「21世紀の日本の内政と外交のありかたを根本から見直す」ことが必要だと宣言しました。
「内政と外交のあり方」の「見直し」は、10年後の今まさに、安倍晋三政権が狙っていることです。

解釈改憲求める
現在の熱い焦点は、集団的自衛権問題です。報告書は、すでに次のように主張していました。
「初めに集団的自衛権の行使は違憲であるという内閣法制局の解釈ありき」だと非難し、「そこから外交政策や安全保障政策を決めようという順番になってしまっているのです。この逆転の構造を変えなければ、現実を直視して政策を考えることなどとうていできるはずもありません」
「逆転の構造」をどうやって変えるのでしょうか。集団的自衛権の行使は、「現憲法下において、当然、問い直されてしかるべきだ」として、改憲手続きをとることなく解釈の変更で集団的自衛権行使を認めるよう報告書は求めていたのです。
日経調の報告書が10年前に、今後の課題として指摘したのは、安倍政権の真の狙いでした。
「米国が攻撃されたときに、同盟国である日本がどのように、またどの程度まで同盟の精神を生かすことができるかであろう。冷戦状況においては思考停止が許容されたが、今後米国に対するテロは一定の頻度で起きる可能性は否定できず、否(いや)応なく対応の検討を迫られることになろう」
アメリカとともに海外で戦争ができる国づくりへの「暴走の論理」そのものです。
日経調の報告書をまとめたのは、「葛西委員会」です。委員長は、葛西敬之(よしゆき)JR東海会長(当時)でした。
葛西氏は、安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)のメンバーの一人。豪腕で知られる葛西氏は、安倍首相を囲む経済人の集い「四季の会」の有力メンバーでもあります。政界と経済界の連綿と続く結託が政治の右傾化を加速させています。



国会議事堂=東京都千代田区

「参院が妨げに」
日経調の報告書には、もう一つ、「内政上の問題」で重大な提言を行っていました。
報告書は、「理論的にみれば、内閣総理大臣はかなりの程度オールマイティー」だと強調。「立法・司法・行政をコントロールし、みずからの望む方向に政治を指導することが、原理上は可能」だと指摘します。
この「オールマイティーの首相」にとって、障害はあるのでしょうか。
「内閣総理大臣のリーダーシップを唯一妨げる存在が、参議院です。内閣総理大臣は、衆議院は解散できても、参議院は解散できません」「内閣総理大臣が率いる与党が参議院で多数を占めていないと、内閣総理大臣が意のままに法律案を通すことはできません」
「首相独裁体制」を築き上げ、首相が「意のままに法律案を通す」ためには、参院の権限の縮小がなんとしても必要だと提言します。
財界・大企業が求める多国籍企業本位の国づくりを進めれば進めるほど、国民経済との矛盾は深まります。そのとき、選挙で選ばれた国会よりも、内閣が優先する国家体制をつくりあげることができていれば、国民の批判を恐れることなく、多国籍企業本位の経済政策を推進することが可能、というのがその狙いです。
安倍内閣は今、国権の最高機関としての国会を形骸化させる策動を強めています。これは、国民主権をうたう憲法を実質的に解体させる道です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月19日付掲載


財界団体が10年も前から集団的自衛権行使を求めていたんですね。
さらに、参議院の機能弱体化まで狙っていたとは空恐ろしい。参議院は3年に一度の選挙で半数が改選され、一度選ばれた議員は6年の任期をもつ。解散で議員でなくなることはありません。それにひきかえ、衆議院は満期まで務めても4年間。解散があれば、1年以下で議員でなくなることもあります。
第35回衆議院総選挙(1979年10月7日投票)第36回衆議院総選挙(1980年6月22日投票)。その間、259日でした。
それに引き換え参議院は、事実上、衆議院のまる2回分を担う長い視野で、日本の国政に係わる議員で構成される議会です。
選ばれ方も、衆議院は小選挙区制と全国11のブロックの比例代表で選ばれる。参議院は各都道府県ごとの選挙と全国一本の比例代表で選ばれる。
議員の資格も選ばれ方も違う二つの院をいっしょこたにすることはできませんネ。
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