きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 日米首脳会談③ 軍需産業まで「統合」へ

2024-05-05 09:33:31 | 国際政治
検証 日米首脳会談③ 軍需産業まで「統合」へ

日米首脳会談では、米軍・自衛隊の「統合」と並んで、日米軍需産業の「統合」も重要議題となりました。

「死の商人国家」
日米首脳共同声明は、軍需産業間の協力に関する協議体=「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)を創設すると明記。背景にあるのが、米政府が2022年に公表した「国家安全保障戦略」です。同戦略は「中国抑止」のため、同盟国の軍事・外交・経済力を総動員する「統合抑止」を打ち立てています。
その具体化として、米国防総省は今年1月、同盟国の軍需産業の「統合」を掲げた「国家防衛産業戦略」を初公表しました。同戦略は、「同盟国やパートナー国の強固な防衛産業は、統合抑止の礎石であり続ける」と指摘。地球規模の武器供給網(サプライチェーン)や整備拠点の確保が死活的だとして、同盟国との共同生産や維持・整備網の構築を掲げています。
重大なのは、日米共同声明が、殺傷兵器の輸出を可能にした防衛装備移転三原則と運用指針の改定を「歓迎」し、日米軍需産業の優先分野の第1に、「ミサイルの共同開発・共同生産」をあげていることです。
防衛省は既に、昨年12月、地対空ミサイル・パトリオットを米国に輸出。将来的には、敵基地攻撃や先制攻撃につながる長射程ミサイルも排除されていません。米主導の武器輸出網に本格的に組み込まれ、対米従属下の「死の商人国家」に踏み込む危険があります。



地対空ミサイル・パトリオット(航空自衛隊提供)

事実上の工廠復活
優先分野の第2が、日本の民間企業を動員しての米艦船・航空機の「共同維持整備」です。実は、首脳会談全体の議題のなかで、米側にとって最も死活的な分野と言えます。
近年、米艦船・航空機の故障や重大事故が頻発。整備要員や部品が不足し、稼働率も低下の一途をたどっています。日本でも2017年、横須賀基地(神奈川県横須賀市)所属の米艦船が衝突・座礁など立て続けに6件の重大事故を起こしました。米軍機の緊急着陸も相次いでいます。
米戦略に詳しい軍事社会学者の北村淳氏は「かつて米海軍は13カ所の海軍工廠を運用していたが、現在は4カ所の海軍造船所に縮小した。施設も老朽化し、労働環境が劣悪なために慢性的に人員が不足。整備が追い付かず、稼働率が下がって将兵の士気が低下している。日本に常駐している第7艦隊などの整備を日本国内で実施すれば、米軍にとって大幅な負担減になる」と指摘します。
戦後、旧日本軍の工廠(軍需工場)は米占領軍によって解体されました。今度は、米軍のために事実上の工廠を復活させようという動きです。



衝突事故で大破したイージス艦フィッツジェラルド=2017年7月、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)

日本労働者を米戦略に
ただ、日本の民間企業が本格的に米軍装備の修理・整備を行うためには、機密情報に接するための身辺調査=「適性評価(セキュリティー・クリアランス)」が避けられません。参院で審議中の経済秘密保護法案は、日本の労働者・技術者を米戦略に組み込むための条件づくりなのです。
日本の民間企業が米艦船・航空機を定期的に整備するためには、部品や作業員などを常時、確保する必要があります。NPO法人「国際地政学研究所」の林吉永事務局長は、「新たな『思いやり予算』の形で、政府が整備費を負担する可能性もある」と指摘します。世界的に部品も人的資源もひっ迫する中、政府の税金投入で民間船舶・航空機よりも米軍の整備を優先する事態になれば、この国の産業に深刻なゆがみは避けられません。
さらに、米軍は中国との武力衝突が発生した際、日本を足場に戦うことを想定しています。そうした事態を見越した場合、日本に艦船・航空機の整備拠点を確保することは決定的に重要となります。日本の国土の戦場化をもたらす動きであり、注視していく必要があります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月2日付掲載


重大なのは、日米共同声明が、殺傷兵器の輸出を可能にした防衛装備移転三原則と運用指針の改定を「歓迎」し、日米軍需産業の優先分野の第1に、「ミサイルの共同開発・共同生産」をあげていること。
優先分野の第2が、日本の民間企業を動員しての米艦船・航空機の「共同維持整備」です。実は、首脳会談全体の議題のなかで、米側にとって最も死活的な分野。
ただ、日本の民間企業が本格的に米軍装備の修理・整備を行うためには、機密情報に接するための身辺調査=「適性評価(セキュリティー・クリアランス)」が避けられません。参院で審議中の経済秘密保護法案は、日本の労働者・技術者を米戦略に組み込むための条件づくり。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする