勝手に書評

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はやぶさ、そうまでして君は / 川口淳一郎

2011-06-11 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : はやぶさ、そうまでして君は
著者 : 川口淳一郎
出版社 : 宝島社

---感想---
2010年6月、7年の苦難の飛行の後にイトカワから帰還したはやぶさ。そのはやぶさのプロジェクトリーダーのJAXA宇宙科学研究所教授川口淳一郎氏が記したプロジェクト秘話。

本書は、はやぶさの実験が企画された意図、到達目標の話から記されています。国の機関という制約の元、どの様にそれらの障害を克服したかと言う所から語られています。実は、川口教授の講演は何度か聞いたことがあるのですが、講演では、打上げ以降の話中心になるので、打上げ前の話は興味深く感じました。実はそれ以外のところは、概ね、講演で語られている話と同じ話ですが、講演だと耳から聞くだけですが、改めて文字で読んでみると、一段と理解が深まる感じもします。

打上げ当初は、それまでのいくつか打ち上げた衛星の一つでしか無かったはやぶさが、数々の困難に直面しながらも、それらを克服して行くに従って、思い入れが大きくなって行く様子が描かれています。手間のかかる子供ほど可愛いという事でしょうか。科学者であると言う事と背反するような、測定器への思い入れ。でも、人間味が感じられて、良いのではないかと思います。川口教授は、研究で忙しいはずなのですが、それをおしてまで数多くの講演活動などを行っているのが不思議でした。しかし本書を読んで、理由が分かりました。そう言う思い入れが、はやぶさで得られた経験・知見を多くの人に伝えたいと言うその気持に置換されたんですね。良く分かります。

本のほぼ最後、やはり、【あの件】について書かれています。【あの件】とは、「二番じゃ、ダメなんですか?」です。川口教授は、はっきりと、『二番ではダメ』と言い切っています。(それは、講演の時も言っています。)この本を読むと、一番を目指して思い切ったことをやったので、はやぶさの快挙が実現したのだという事がよくわかります。『二番ではダメ』なのです。