勝手に書評

私が読んだ本の書評を勝手に行います。

マドンナ・ヴェルデ / 海堂尊

2010-10-30 | 小説
タイトル : マドンナ・ヴェルデ
著者 : 海堂 尊
出版社 : 新潮社
出版年: 2010年

---感想---
人気作家海堂尊の作品。映画化もされている『ジーン・ワルツ』の続編(裏物語?)。『ジーン・ワルツ』で触れられた代理母事件の話が綴られています。これまでの海堂尊の作品と同様、海堂尊ワールドの中で、登場人物・設定が、様々にリンクしていきます。

主人公“山咲みどり”の視点で物語が進んでいきます。時代的には、いまである筈ですが、みどりは中々古風な人物であるようで、“手紙”が物語のツールとして見事に使われています。それが、現代医学の粋を集めた代理母という医療と、上手く対比を成しているような気もします。

映画『ジーン・ワルツ』の方の話になってしまいますが、曽根崎理恵を菅野美穂が演じるというのは、菅野美穂のイメージと若干合わない気がしますが・・・。もっとも、清川吾郎が田辺誠一だというのも、微妙です。

ダイスをころがせ! / 真保裕一

2010-10-23 | 小説
タイトル : ダイスをころがせ!
著者 : 真保 裕一
出版社 : 新潮文庫
出版年: 2006年

---感想---
2002年、単行本で刊行された作品の文庫本化。衆議院議員総選挙に出る、若き候補者と、その候補者の高校時代の友人たちの物語。

総選挙の背景として、小渕総理が倒れ、その後、自民党の密室の協議によって森喜朗が総理に担ぎだされるエピソードが描かれていることから、物語は1999年から2000年頃を想定しるものと思われる。

この所になって、ようやく市民も、少しは関心をもつようになりつつ有りますが、この物語で描かれている頃は、まだまだ政治への市民の関心は低い時代。十年一昔といいますが、10年で、市民感覚はだいぶ変わった気がします。もっとも、その関心もごく一部の分かりやすかったり、面白そうだったりするところだけで、きちんと自分の意思を政治に活かしているとは言い難いのかも知れませんが。

選挙に出るため作業、選挙に出てからの作業、それらあまり目にふれることのない事が、キチンと描かれています。そういう所が、この作品の臨場感を盛り上げているのだと思います。選挙の結末は・・・、映画にしたら、大きな歓声と共に映像がF.O.してく感じですね。

蟻の兵隊 / 池谷薫

2010-10-15 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 蟻の兵隊
著者 : 池谷 薫
出版社 : 新潮文庫
出版年: 2010年

---感想---
第二次大戦後、中国山西省に残留した日本軍部隊に関する秘録。

敗戦時、インドネシアに残留し、その後のインドネシア独立戦争に参加した日本兵がいた事は知っていましたが、中国でも似たようなことがあったのは知りませんでした。しかもこの中国の場合、残留日本軍が参加したのは国民党軍の方でしたが、その後、その国民党軍の将軍からも知らぬ存ぜぬの扱い・・・。悲劇はそれにに留まりません。中国に残留した日本軍部隊の兵士たちは、現地除隊したものとして扱われ、日本政府からも意味見放されてしまっているんですよね。

本書は、その日本政府へのアピールとしての意味も有るようです。当時の命令書なども発見され、命令として残留したことがほぼ明らかになってきています。それでも未だ、日本政府は中国に、命令を受けて組織的に残留した日本軍部隊がいた事を認めていないようです。

8月17日、ソ連軍上陸す / 大野芳

2010-10-11 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 8月17日、ソ連軍上陸す 最果ての要衝・占守島攻防記
著者 : 大野 芳
出版社 : 新潮文庫
出版年: 2010年

---感想---
1945年8月15日。この日は、日本軍が連合国軍に対して無条件降伏し、戦闘を停止した日です。この日より後の1945年8月17日に、ソ連軍と日本軍の間に起きた戦闘を記したノンフィクション。

8月15日以降に、ソ連軍と日本軍の間で、非常に激しい戦闘があったことは知っていました。しかし、停戦交渉のための軍使の派遣に関して、詳らかになっていない事があるのは知りませんでした。この作品では、はっきりとは断言できないものの、通説で言われていることに誤りがあると言う指摘をしています。

あまり広くは知れ渡っていませんが、ここで日本軍が激しく抵抗し、ソ連軍の被害が思いのほか多かったので、ソ連軍は当初の予定を見直し、それ以上の日本への侵攻を停止したと言われています。もし、ここで日本軍があっさりと撃退されてしまっていたら、日本も分断国家になっていたかもしれません。その事を思うと、非常に感慨深く思いました。

告白 / 湊かなえ

2010-10-09 | 小説
タイトル : 告白
著者 : 湊 かなえ
出版社 : 双葉文庫
出版年: 2010年

---感想---
映画の感想にも書いたんですが、「娘の愛美は、このクラスの生徒に殺されました。」と言う強烈な衝撃的なセリフが印象的だったので、元々、原作であるこの作品を読もうと思っていたんですが、映画を見るのが先になってしまいました。

映画の時に受けた衝撃を再び受けました。映画は基本的にモノローグで進んでいたので、「不思議なつくりだなぁ」と思っていたんですが、それは、原作を忠実に表現したからだったんですね。モノローグで進む映画というのも珍しいですが、モノローグで進む小説というのも珍しいと思います。

原作に無いシーンが映画にはあったりと、映画と原作は、若干、違うところはあります。でも、映画の表現形式もモノローグであったりと、基本的な大きなところは原作を踏襲して映画化しています。大きな違いとしては、映画では木村佳乃が演じた母親の件です。映画では、母親のモノローグとして描かれていましたが、原作では下村直樹の姉が、母親の日記を読んで語るという形になっていました。何故変えたんでしょうね? 映画で表現すると、判り難くなると判断したのでしょうか?

文体がモノローグなので、普通の小説とは違い、始めのうちは読み難さを感じましたが、読み進むに連れ、気にならなくなりました。って言うか、小説を読んでいても、松たか子だったり、木村佳乃だったりと、映画に出た俳優たちの姿が浮かんでしまいました(苦笑)。

2008年に双葉社より単行本で刊行されたモノの文庫化。2010年6月映画公開。文庫化に際して、映画「告白」の中島哲也監督のインタビューが収録されてます。

グーグル秘録 完全なる破壊 / ケン・オーレッタ

2010-10-02 | ビジネス
タイトル : グーグル秘録 完全なる破壊
著者 : ケン・オーレッタ
出版社 : 文藝春秋
出版年: 2010年

---感想---
いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのGoogle。

その創立から、今に到るまでの経過を、ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン、エリック・シュミットらへのインタビューを繰り返しながら、再構成している。最近は、あまりメディア対応しないラリー・ペイジやセルゲイ・ブリンへも直接話しを聞いていることが非常に興味深い。

創業当時は「一体何時になったら黒字になるんだ?」と言われていたGoogleが、あれよあれとと言う間に超高収益誇る企業に成長していくさまは非常に興味深い。

「邪悪になるな」と言う言葉が、Googleの企業テーマで有ることは有名な話である。これは、その当時(今もだが)IT業界のガリバーであったマイクロソフトに対しての、強烈な皮肉の意味合いもあったわけだが、自身がIT業界のガリバーとなってしまった今、「邪悪になるな」の企業テーマが守られているのか、今一度、Googleは見つめ直して欲しい。