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勝手に書評

私が読んだ本の書評を勝手に行います。

東日本大震災、その時企業は / 日本経済新聞社

2012-02-26 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 東日本大震災、その時企業は
編者 : 日本経済新聞社
出版社 : 日本経済新聞出版社

---感想---
東日本大震災に際して企業がとった行動をまとめた本。

日経新聞のルポを再構成・再編集したもの。なので、震災直後の頃の生々しい雰囲気も文章中に現れています。元々が新聞記事なので、一つ一つの企業の話が短く、細かいところまでは描かれていませんが、企業がとった行動の大枠は把握可能です。

基本的に、上手い対応しか書かれていませんので、個々の企業の対応の是非をこの本だけで語ることはできません。ただ、やっぱり外資企業は立ち上がりが早いということは感じますね。グルーバルに拠点があり、海外拠点のサポートを受けやすいという側面は否定しませんが、それでも、やっぱり元々の危機管理の考え方が違うんでしょうね。

まもなく、3.11から一年。この経験を、確実に来る東海地震に活かせるかどうかが、問われているのだと思います。

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙 / 河北新報社

2012-02-17 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙
著者 : 河北新報社
出版社 : 文藝春秋

---感想---
まもなく1年を迎えようとしている、東日本大震災。被災地の新聞社の一つ、河北新報社の震災との戦いを記した記録。

東日本大震災で有名になった新聞といえば、手描きの新聞の石巻日日新聞がある。しかし、河北新報社も、手描きの新聞までは至らないものの、地震発生直後は、自社の編集装置に不具合が発生し、一時は、新聞発行の危機に至っている。友好新聞社の協力により、新聞発行が不能になると言う最悪の事態は避けられたものの、新聞発行に至るまでの道筋はドキドキものである。

また、自身も被災者である訳であるが、どうやって多数の被災者と共に生きているのか?と言う地元紙ならではの苦悩も見受けられる。このあたりについては、まだまだ正解は見えていない。もしかしたら、永遠に正解は見えないのかもしれない・・。その、新聞発行という陽のあたる場所の影に隠れた苦悩が、この本の本当に伝えたいテーマなのだと思う。

「宗谷」の昭和史 南極観測船になった海軍特務艦 / 大野芳

2012-01-29 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 「宗谷」の昭和史 南極観測船になった海軍特務艦
著者 : 大野芳
出版社 : 新潮文庫

---感想---
南極観測に関連して日本人が忘れられない出来事といえば、3次隊に発見されたタロとジロの話ですが、その頃に南極観測船として活躍していたのが、宗谷です。この書は、その宗谷を巡る数奇なもの語りが表されています。

宗谷が、自衛隊ではなく海上保安庁の船であったという事は知っていたんですが、そもそもが旧ソ連からの発注により建造された船であるということは知りませんでした。旧ソ連だから砕氷船と言うのは、理解できます。この船の数奇な運命の大部分は、この件で表されるでしょうね。その後、日本と旧ソ連の国際問題となりながらも、日本側が違約金を支払うことで日本の船となったと言うことです。その後は、御多分にもれず旧日本海軍の船となり戦地に赴くわけですが、海図制作を任務とする特務艦となったことから、激しい戦闘には参加することもなく(巻き込まれることはあったようですが)、無事終戦を迎えています。

もう一つ、この本で知ったことは、宗谷と言う非常によく似た名前の鉄道連絡船があったこと。宗谷も、稚内航路で使用された船なので、砕氷船として作られていて、日本が南極観測隊を送り込むときの南極観測船の候補にもなったと言う事で、よく宗谷と宗谷は混同されるようです。

その他、南極観測隊を巡るゴタゴタ騒ぎは、アクの強い学者たちにはありがちな話かなとは思いました。

53次隊が南極に到着し、現在52次隊からの引継ぎの最中の南極観測隊。いまの南極観測船は、宗谷の6倍もの排水量を誇るしらせ(二代)になっています。

関東大震災 / 吉村昭

2011-07-02 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 関東大震災
著者 : 吉村昭
出版社 : 文春文庫

---感想---
1923年9月1日に発生した関東大震災に関して記した記録文学。

先の『三陸地震大津波』が、主に、津波被害の遭難者から聞き取った事柄を、比較的淡々と記した形態を採っているのに対し、こちらの『関東大震災』は、地震の記録の他、関東大震災をめぐる地震学者の確執なども記してあり、より“文学”と言う形に近い。また、地震の記録そのものも、遭難者からの直接の聞き取りというよりは、公式記録+αに拠っているような気がします。

内容的には、先の『三陸地震大津波』が津波被害についての啓蒙書であり、こちらの『関東大震災』が地震火災についての啓蒙書と言えるような気がします。著者の吉村昭がまだ存命であったならば、この度の東日本大震災の事は、どの様に記録を残していくのか、非常に気になります。

三陸地震大津波 / 吉村昭

2011-06-25 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 三陸地震大津波
著者 : 吉村昭
出版社 : 文春文庫

---感想---
3.11東日本大震災により一躍脚光を浴びた三陸地方を襲った津波に関する記録文学。元々は、1970年に最初に刊行されています。1896年(明治29年)の明治三陸地震による津波、1933年(昭和8年)の昭和三陸地震による津波、1960年のチリ地震津波の3つの津波災害の話が記録されています。

どの様に津波が襲来し、生き残った人々はどうやって生き残ったのかなど、今に通じる話が、人々の実際の経験として記録されています。3.11東日本大震災の津波の映像が頭に残っているだけに、この本で描かれた津波の描写が、物凄く(必要以上に)リアルに感じました。

三陸地方は、これらの津波を経験し、津波から身を守る知見は十二分に持っていたのに、今回の3.11東日本大震災では、残念ながら多数の犠牲者が出てしまいました。今回の3.11東日本大震災での被害も、きちんと記録して後世に確実に伝え、そして、未来の被害を無くすことが、今の我々に出来る事なのだと、改めて感じました。

はやぶさ、そうまでして君は / 川口淳一郎

2011-06-11 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : はやぶさ、そうまでして君は
著者 : 川口淳一郎
出版社 : 宝島社

---感想---
2010年6月、7年の苦難の飛行の後にイトカワから帰還したはやぶさ。そのはやぶさのプロジェクトリーダーのJAXA宇宙科学研究所教授川口淳一郎氏が記したプロジェクト秘話。

本書は、はやぶさの実験が企画された意図、到達目標の話から記されています。国の機関という制約の元、どの様にそれらの障害を克服したかと言う所から語られています。実は、川口教授の講演は何度か聞いたことがあるのですが、講演では、打上げ以降の話中心になるので、打上げ前の話は興味深く感じました。実はそれ以外のところは、概ね、講演で語られている話と同じ話ですが、講演だと耳から聞くだけですが、改めて文字で読んでみると、一段と理解が深まる感じもします。

打上げ当初は、それまでのいくつか打ち上げた衛星の一つでしか無かったはやぶさが、数々の困難に直面しながらも、それらを克服して行くに従って、思い入れが大きくなって行く様子が描かれています。手間のかかる子供ほど可愛いという事でしょうか。科学者であると言う事と背反するような、測定器への思い入れ。でも、人間味が感じられて、良いのではないかと思います。川口教授は、研究で忙しいはずなのですが、それをおしてまで数多くの講演活動などを行っているのが不思議でした。しかし本書を読んで、理由が分かりました。そう言う思い入れが、はやぶさで得られた経験・知見を多くの人に伝えたいと言うその気持に置換されたんですね。良く分かります。

本のほぼ最後、やはり、【あの件】について書かれています。【あの件】とは、「二番じゃ、ダメなんですか?」です。川口教授は、はっきりと、『二番ではダメ』と言い切っています。(それは、講演の時も言っています。)この本を読むと、一番を目指して思い切ったことをやったので、はやぶさの快挙が実現したのだという事がよくわかります。『二番ではダメ』なのです。

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 / 大鐘良一・小原健右

2010-12-11 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験
著者 : 大鐘良一・小原健右
出版社 : 光文社新書
出版年: 2010年

---感想---
2008年に行われたJAXAの宇宙飛行士選抜試験に密着したドキュメント。元々は、NHKスペシャル。

宇宙飛行士選抜試験は、これまで厚いベールに隠され、一般人が知ることは出来なかったのですが、これで、その要旨は垣間見る事ができました。それで判ったのは、宇宙飛行士選抜試験は単に知識や健康状態を見るだけではなく、人間そのものを見る試験なんだなという事。これまでも、極限下での能力や、協調性が必要とされるので、そういう事が試されるという話は聞いたことがありましたが、それ聞くのと見るのは大違い。良く判りました。でも、これを読んだからといって、赤本的に使える情報だとは全く思いませんね。人間そのものが試されるという訳ですから。

蟻の兵隊 / 池谷薫

2010-10-15 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 蟻の兵隊
著者 : 池谷 薫
出版社 : 新潮文庫
出版年: 2010年

---感想---
第二次大戦後、中国山西省に残留した日本軍部隊に関する秘録。

敗戦時、インドネシアに残留し、その後のインドネシア独立戦争に参加した日本兵がいた事は知っていましたが、中国でも似たようなことがあったのは知りませんでした。しかもこの中国の場合、残留日本軍が参加したのは国民党軍の方でしたが、その後、その国民党軍の将軍からも知らぬ存ぜぬの扱い・・・。悲劇はそれにに留まりません。中国に残留した日本軍部隊の兵士たちは、現地除隊したものとして扱われ、日本政府からも意味見放されてしまっているんですよね。

本書は、その日本政府へのアピールとしての意味も有るようです。当時の命令書なども発見され、命令として残留したことがほぼ明らかになってきています。それでも未だ、日本政府は中国に、命令を受けて組織的に残留した日本軍部隊がいた事を認めていないようです。

8月17日、ソ連軍上陸す / 大野芳

2010-10-11 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : 8月17日、ソ連軍上陸す 最果ての要衝・占守島攻防記
著者 : 大野 芳
出版社 : 新潮文庫
出版年: 2010年

---感想---
1945年8月15日。この日は、日本軍が連合国軍に対して無条件降伏し、戦闘を停止した日です。この日より後の1945年8月17日に、ソ連軍と日本軍の間に起きた戦闘を記したノンフィクション。

8月15日以降に、ソ連軍と日本軍の間で、非常に激しい戦闘があったことは知っていました。しかし、停戦交渉のための軍使の派遣に関して、詳らかになっていない事があるのは知りませんでした。この作品では、はっきりとは断言できないものの、通説で言われていることに誤りがあると言う指摘をしています。

あまり広くは知れ渡っていませんが、ここで日本軍が激しく抵抗し、ソ連軍の被害が思いのほか多かったので、ソ連軍は当初の予定を見直し、それ以上の日本への侵攻を停止したと言われています。もし、ここで日本軍があっさりと撃退されてしまっていたら、日本も分断国家になっていたかもしれません。その事を思うと、非常に感慨深く思いました。

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

2008-08-10 | ドキュメント/ノンフィクション
タイトル : チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
著者 : ジョージ・クライル
出版社 : ハヤカワ文庫NF
出版年: 2008年

---感想---
映画「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」の原作。

映画では、破天荒な下院議員として描かれていたチャーリー・ウィルソン氏ですが、これを読むと、本当に破天荒な人物だったみたいですね。映画と言うものは多少の誇張はあるものですが、それほどの誇張は無い印象を受けました。

しかし、このアフガニスタンの戦いが世界にもたらしたのは、一体、何だったんでしょうね? 確かに、アフガニスタンの戦いが、その後の冷戦の構図に少なからぬ影響を与えていますし、ソ連崩壊の遠因にもなっているのかもしれません。しかし、一番興味深いのは、この時アメリカ、って言うか、チャーリー・ウィルソン氏が援助したムジャヒディンが、結局、9.11の悲劇を引き起こす勢力に繋がって行ってしまうと言うのは歴史の皮肉以外の何物でも無いわけです。一体、何のための援助だったのでしょうか。

それにしても、たった一人の下院議員が、これほどまでの規模の紛争を主導して行くことができたと言うのは、驚きです。国家の意思決定と言うのは、一体何なんでしょうね?