週刊現代がリバイバル連載をしている「あしたのジョー」は、日本のマンガ史に残る名作です。私にとっても1番の作品です。
ちばてつや作画、高森朝雄(梶原一騎)原作の「あしたのジョー」は1970年前後の時代を背負った作品ですが、週刊現代の連載に触発されて3日間で一気に全巻読破しました。
私の最も好きな場面は、矢吹丈(ジョー)が世界バンタム級の最強王者であるホセ・メンドーサ戦前の控室で白木葉子からジョーに対しての愛の告白の場面です。
すでにパンチドランカーになってしまっているジョー。愛するジョーをリングに上げさせないために「一生のおねがい」と涙を流しながら入口のドアに立ちふさがって「好きなのよ矢吹くん、あなたが」「好きだったのよ最近まで気付かなかったけど」「おねがい…、私のために、私のためにリングに上がらないで」。
しかしジョーは「ありがとう」と言って控室から出ていく。あの気位の高い白木葉子の告白と愛をおいて。
そして15ラウンドを闘い抜いたジョーは「燃えたよ、まっ白に…」「燃えつきた…」「まっ白な灰に…」と。
闘い燃えつきたはずのジョーが「葉子はいるかい」と葉子を呼び、「このグローブもらってくれ」「あんたにもらってほしいんだ…」とジョーの最後の闘いのグローブを葉子に手渡した。そして敗北のコール。
ジョーは呼びかける丹下のオッチャンの呼びかけに答えることなく、まっ白になって「あしたのジョー」は終わるのだ。
哀しく、そして美しく燃えつきた「ラスト」は言葉にならない感動を読者に与える。
負けるとわかっていても闘い続けるジョー、何かに駆り立てられるように闘いに出立していくジョー、学生叛乱のあの季節「自己否定」がキーワードのひとつであったあの時代と重なる。
「あしたのジョー」を超える作品を、その後私は未だ読んでいない。