前回の「8月の帰省」で記した、帰省する際の立ち寄り観光についてとりあげる。
●トヤ沢砂防えん堤(津南町)
国道353号沿いで、巨大な円柱型の構造物が現れる。4年前に初めて見た時には驚いた。
2011年(平成23年)3月12日、長野県北部地震の揺れにより津南町のトヤ沢では土砂が流れ出し道路などが埋まる被害があった。「トヤ沢砂防堰堤」は、この被害をうけて作られた土木構造物で、流れてくる土砂からライフラインを守っているえん堤であり土石流モニュメントでもある。
Webによると、えん堤は重力式コンクリートえん堤・鋼製セル式えん堤・INSEMダブルウォールの3種類の構造でできており、目を見張るのは鋼製セル式えん堤。大型の円柱状構造物が4体連続配置されている。
駐車場に立てられている説明板のように、上空から見られないのが残念。
長尺鋼矢板を円状に打ち込み、現地の崩壊した土砂を中詰土砂として有効利用している。鋼製セル式えん堤の上部は土なので、普通に植物が育っている。
●最後の教室(十日町市松之山)
十日町市と津南町で開かれる世界最大規模の国際芸術祭「大地の芸術祭」で、2006年に製作された「人間の不在」をテーマにした現代アート作品。フランスの芸術家クリスチャン・ボルタンスキーとジャン・カルマンによる共作。
1997年に廃校となった小学校の体育館や3階建ての校舎全体が使われている。
体育館から入って教室の作品をめぐり体育館に戻る。体育館に入った時は暗くてほぼ何も見えず、「右側に沿って歩いて」と受付で言われた言葉を頼りに進む。戻って来た時は目が暗さに慣れ作品を見ることができた。
体育館は真っ暗で、わらが敷き詰められ無数の扇風機が回り続ける。物だけが残された世界を強調し、いるべき児童の「不在」を際立たせた。(現地掲示の新聞記事)
教室の作品。芸術作品は見る者の受け取り方次第・・・だとしても、素人には説明がほしい。
この暗い部屋では、大きな衝撃音のような音が響いていた。妻は「音が嫌」と入らず。
教室をぶち抜いて透明のケースが幾つも並べられていた。棺を連想してしまう。
●大棟山美術博物館(十日町市松之山)
700年に近い歴史をもつ、元造り酒屋であり庄屋であった村山家の旧宅と庭を博物館にしたもので、平成元年に村山家三十一代当主により、博物館として公開された。
ここに寄ろうと思ったのは、元々「美味しい湧き水がある」という情報から。事前の情報収集が足りなかったし、時間も足りないので周囲の見学のみ。駐車場で周囲を眺めて、これは表門から入らないと!と移動する。
旧村山家主屋・表門は、日本遺産の「究極の雪国とおかまち ―真説!豪雪地ものがたり―」の一つとして認定されている。豪雪地域における特別な農家建築である。
道路沿いから見る。民家の門!?扁額には大棟山(だいとうざん)。
振り返ると、門に至る坂道の歩道には、参道のような並木があって驚く。
表門手前の左右には池もある。堀のようだ。
門を入って石段を数段上りながら直角に2回曲がる(何やら城の造りのよう)。画の右側にある煙突が酒蔵であったことを偲ばせる。
主屋(美術博物館)の正面に出る。玄関の右側に、名水「御清水」があった。かつては銘酒「越の露」の仕込み水に使われていた。冷たくて旨かった。
屋根、軒、窓ガラスなど趣きがある。
正面左手側から見る。建物は大きく、池のある日本庭園が設けられていた。
その昔、雪深い山間の地で、このような造りの建屋があったことに、ただただ驚くばかりだった。