まぁその、とても1万円もの金を取って売れるレベルじゃないというのが正直な感想。せいぜい「人柱お願いします」のβバージョンである。正月から過激な物言いだが、おめでたい正月に免じてお許しを乞うておく。^_^;
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いろいろ試してみたが、やはりメールクライアントはBecky!に限る。
もちろん慣れも大いにあろうし、好き嫌いや趣味の問題に踏み込むほど愚かではないので、そういう向きのご批判なら甘んじて受けるが、それでもBecky!は圧倒的に優れたメールクライアントであると断言する。しちゃう。しちゃったんだからしようがないじゃないか。^_^;
そのBecky!がMacBookで使えないのは実に残念だ。
仕事柄、電子メールはインターネット利用の圧倒的上位に位置している。
親指シフトが使えるようになったのでようやくMacOSで暮らしていく目処は立ったが、これまた仕事柄Windows を全然使わないわけにはいかないので、できればWindows でもMacOSでも、おなじメールクライアントを使いたい。
両OS対応ということで真っ先に候補に挙がるのがThunderbirdだ。実際にしばらく使ってみて性能機能ともに十分だと感じている。Becky!ではできないIMAP4サーバでのフォルダ移動を実行できることもあって、割と気に入ってはいる。
しかしメール本文を書くエディタの出来が「普通」だ。Becky!はおなじ作者の手になるDana(「でいな」と発音するらしい)をベースにしたテキストエディタを内蔵しており、これが
(1) 時としてそのためなら文体を変えるほど、行の右端をそろえることに異様に執着する。
(2) 先頭の字下げを使い分けて段落の性格付けに利用する。
というアタシのスタイルを見事に実現してくれる。(2) などはむしろ、Danaのこの機能を知ってから身についたものとも言える。
Thunderbirdのエディタは(1) には対応しているが、(2) の機能は実装されていない。エディタというよりはワープロに近い機能なので、メール本文のエディタとしてはオーバスペックなのだろうが。
両OSで同一ソフトは無理かもしれないと、Mac用のメールクライアントで高機能をうたったものをいくつか試してみた。しかしどれもこれも、あっちが良ければこっちが悪い。帯に短し恋せよ乙女…あれ?
あるメールクライアントなどは2,000円もの金を取るシェアウェアのくせに、エディタで本文を入力している間は桁指定強制改行の様子もWordrapの状態もわからず、送信済みの本文を見てようやくどこで行が折れたのかがわかるという、とんでもないものまであった。
※ あくまでもアタシの要求する内容から見て「とんでもない」である。
しかたがないのでもういちど、MacOSでもBecky!を快適に使う方法を再検討することにした。
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Intel MacでWindows アプリを使う方法には大きく分けて3種類ある。
(1) BootCampを使う。
(2) 仮想Windows 環境を使う。
(3) Windows シミュレータを使う。
・ (1) はApple純正のWindows インストール/実行環境だ。
要するにMacintoshというハードウェアにWindows を直接インストールするのだ。おそらくはなんらかの手段で、MacOS純正のBIOS相当機能にIBM-PC互換のBIOSをかぶせるのだろう。IntelMacがネイティブでWindows の走行をサポートするのだから当然効率がよく、ベンチマークテストを見ても他の方式を引き離して高速だ。しかし問題はMacOSとWindows の同時利用ができないことだ。
OSを切り替えるにはリブートするしかない。「MacOSは使いたいが、メール環境だけはWindows アプリであるBecky!を使いたい」という要求は満たせない。
・ (2) はバーチャルマシンの上でWindows を走らせる方法だ。
VMWare FusionやParallels Desktopが有名で、最近はVirtualBoxという製品がPublicβ版を配布して参入の機会をねらっているようだ。
VMWare FusionはMacBook購入と同時に購入して使っているが、Parallelsに遅れて登場したものの、さすがに仮想マシンの老舗VMWareの製品だけある。安定性、パフォーマンスともに大変優れており、Windows XPインストール後に簡単に試してみられるが、仮想マシンのSMP(Symmetrical Multi Processing)にも対応している。
※ どうもNT kernelのHALにバグがあるような気がしてならんのだがなぁ。ターミナルでの文字入力が落ちたりダブルになったりする。
書き足りなくて申し訳ない。これはSMPの話。CPUが1個の場合は問題ない。
「仮想マシン」といってもMacもWindows とおなじIntel製CPUを採用しているため、CPU自体のエミュレーションは必要ない。高速性を要求されるゲームなどを除けば、パフォーマンスで不満を抱くことはないはずだ。難点は仮想マシンにインストールするWindows のライセンスを別途購入しなければならないという点と、仮想マシンとその上で動くWindows のために1GB前後のメモリを必要とするという点だ。
両方とも、導入コストを押し上げる要素だ。後者については使うときだけバーチャルマシンを起動するという運用で負担を軽減することも考えられるが、その都度Windows の起動時間がかかる(仮想マシンのサスペンドを利用すれば短縮は可能だが)。またアタシのようにメールクライアントを常駐させておいて短いサイクルでメールチェックをするような使い方には向かない。
・ (3) の代表格がCrossOver Macだ。
これは(2) の仮想マシン方式が「Windows を丸ごとホストOSの元で動かしてしまおう」とするのに対して、「どーせWindows アプリなんてAPI叩いて動いているんだから、Windows 丸ごとじゃなくてアプリが必要なAPIだけを用意してやればMacの上でも動かなくね?」という発想で作られている。あぁ、冗談とは言え正月からこんなゲロな日本語を使うなんて。
これなら仮想マシン方式よりはメモリを食わないだろう。またアタシは取得しているので問題ないが、Windows のライセンスを持っていない人にとっては出費も抑えられるので有り難いはず。今回は体験版を手に入れたので、さっそくBecky!をインストールしてみた。
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で、その結果が冒頭の感想だ。
※ お断りしておくが、Becky!は正式サポートアプリケーションリストにはまだ登録されていない。販売元がサポートフォーラムで、「日本語入力に問題があったが最新バージョンでは解消されている」とアナウンスしているだけである。
インストール自体はBecky!のインストールファイルを指定してやるだけだから難しいことはない。実際にトラブルもなくインストールは完了した。しかしここからが「えらいこっちゃ」、なのである。
まず起動はしたもののまともに文字が読めるのはメニュー類とフォルダリストだけ。アタシの場合はIMAP4なのでサーバ設定さえしてやればメールログがすべて読めるのだが、メール一覧も本文も文字化けしてまったく読めない。いくらフォントやエンコーディングを設定しても化け方が変わるだけ(笑)で、いっこうに改善されない。
Becky!を再インストールしてみたが、それでもだめ。CrossOver MacでBecky!が動いているというユーザの報告も見たのでなにか原因があるはずだと調べていったら、ボトルと呼ばれているAPI環境がWindows 2000対応になっている。指定した覚えはないからデフォルトがそうなのだろう。Windows XP対応のボトルを新規に作成してBecky!をインストールしてみたら、とりあえずFixedSysフォントでメール一覧も本文も読めるようになった。
おもしろいのはタイトルバーなどウィンドウの体裁がMacとおなじになっていること。まるでBecky!がWindows アプリになったかのようだ。仮想マシン上で動いているBecky!は当然のことながらWindows 規定の外観を持っているので、これは構造上当然のこととはいえ、なかなかおもしろい。フォントもMac標準のヒラギノフォントが使えるので、とても美しい。
しかしおもしろいのはこれくらいで、おもしろくないことは山ほどある。
まずシステムフォントの汚さ。CrossOver MacはWindows をインストールするわけではないからWindows 標準のフォントはないはずだ。だからMacのフォントを無理矢理使ってシステムフォントやFixedSysフォントを作っているのだろうが、これがベタにつぶれて実に美しくない。
VMWare FusionでのゲストOSフォントはWindows システムが持っているものをそのまま使っているのだから比較するのはかわいそうだが、それにしてもみっともない。周りがMacフォントで動いているだけに、なんとも哀れである。
しかも、どうもそのフォントの扱いに無理があるのか文字が切れたりしている。
たとえばフォルダ一覧で "System-Def" というフォルダ名は末尾が消えて "System-De"になっている。リストを再表示させるなどしても変わらないことから、どうもクリッピングの計算をしくっているか、それともフォントの諸元を間違って解釈しているように思われる。こんな基本的なところでこの状態では、正式サポートアプリのリストに載っている一太郎だって、まともに動くかどうかは大いに疑問だ。
こまかなところを挙げればまだまだある。たとえばその文字が化けているフォルダ一覧では、右クリックの反応が非常によろしくない。何度も右クリックしてようやくコンテキストメニューが現れるという具合で、イライラしてしまう。いったいなにをやっておるのだ。
情けないことに、仮想マシン上のBecky!より全体に動きが遅い。たぶんフォント関連か描画関係が足を引っ張っているのだろうが、なんともモタモタした感じで楽しくない。どう考えてもこれはβテスト中というレベルで、お試し版を使っているくせに「金取って売るなよ、こんなもの」と悪態をつきたくなる。
しかし。
しかしだ。
メールクライアントとしての動作には師匠が泣く、弟子が笑う。違うって。支障がなく、メールの作成も送受信もまったく問題なく行える。ちゃんと(いやぁ…うーむ…「ちゃんと」かぁ?)動いているのだ。MacOSのデスクトップ上でWindows 用メールクライアントソフトであるBecky!が。
アタシの場合はこの諸々のストレスがイヤなので、たぶんすでに用意してあるVMWaew Fusion上のBecky!をユニティモードで使う選択をすることになると思う。メモリの問題はこのMacBookを購入したのとほぼ同時に4GBに換装済みだから、精神的な問題(いわゆる「もったいない」という気分)を除けば支障はない。
しかしMacの上でWindows アプリを使わなければならないが、そのために大規模なメモリ増設をしたりWindows OSを購入したりというコストをかけたくない場合。そしてその使いたいWindows アプリが動作検証済みアプリのリストに入っているならば、CrossOver Macを試してみる価値はあるだろう。
現行のバージョンでは失望することがかなりあると思われるが、それでも動作検証済みアプリであれば取りあえずは「実用上」問題なく動作する「可能性が高い」し、導入コストも少なくてすむ。
アタシの感想は、いまのところはまだそういうレベルの製品ということだ。今後かなりの開発パワーをつぎ込まないと、評価できるレベルまで到達しないと考えられる。意欲的な商品だけに、長い目で見てやれるユーザに恵まれるといいのだが。
アタシは、こういう不出来なものを金を取って売ろうという姿勢の会社を長い目で見てやれるほど、気長でもなければ優しくもない。