![ワールドトレードセンター](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/9a/ead633f390ee889aa0cec0d07d962f95.jpg)
いったい、どれだけ昔だと言うのだろう。それは2000年の4月のことだ。私と夫が、ニューヨークへ旅行にでかけたのは。
その時の私たちが持っていなくて、今や当たり前になったものが3つある。ひとつはデジタルカメラ。それからブログ。そしてGoogle Street Viewだ。
つまり、その頃私たちは、日々を記録する習慣がなかったということになりそうだが、いやそんなことはない、むしろ私たちは二人ともカメラを持ち歩き、ボイスレコーダーでアイデアを記録したらどうだろうとか話し合ったり、それにほんとうにふつうの日記さえ私はパソコンで書いていた。
私はニューヨークにパソコン──というかその時すでにマックだったのだけれど──を持っていったのだろうか? 実はよくおぼえていないのだけれども、おぼえていないくらいだから持っていかなかったのだと思う。ブログを書いている今では考えられないことだ。ということはつまり、少なくとも記録する道具そのものについては、劇的に変化したのだ。
だが、私たちは記録をしなかったために、これはいつか消えてしまうのだ、ということを強烈に意識していたせいか、今思い返してもかなり細部にいたるまで、記憶が蘇ってくる。空港からニューヨークまでの道のりのこと。ホテルに近い楽器店で店員さんがランチタイムにボウルいっぱいのサラダを食べていたこと。マジソンスクエアガーデンで開かれていたCSNYのコンサートで、東京ドームで言えば3階席の最後列ブロックというような当日券で観ていると、遅れてきたビジネスマンが必ずビールを片手に、すでに席についている観客へ向かって挨拶してから自分の席に腰掛けたこと。……だけどそれって、今でもそうなんだろうか?
というようなわけで私たちはタイムズスクエアにあるホテルに泊まり(航空券とセットで格安だったのだ)、情報誌を読んで連日ライブに出かけ、買い物をしたり、カフェに寄ったりした。そういう過ごし方そのものは、あまり東京と変わりがないね、と私たちは言い合ったりした。
帰りの──つまり時差ぼけが強いと言われる向きの──飛行機が成田につき、いざ電車に乗り換える段になって、私たちは買い物をしすぎたことを少し後悔した。旅慣れない旅行者にはありがちなことだ。中でも鉛のようにごろんと重みを加えていたものがあった。「なんでそんなものを買ったのよ」と私は何度も言った。なにしろ私は、買う前にもそう言ったのだ。
それは、巨大とも言えるスノーボールのオルゴールだった。
だが私たちが驚いたのはそれから1年半後、2001年9月11日のことになる。
(つづく)
[ニューヨーク2000年滞在記、WTCツインタワーがあった頃。]
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