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ぽかぽか春庭「橋のことば」

2017-04-15 00:00:01 | エッセイ、コラム

黒部川にかかる橋2011年撮影

20170413
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>春の辞書(2)橋のことば

 世界でもっとも大きな影響力を持つ国の大統領が「国と国の境に巨大な壁を作る」と言って当選しました。そういう大統領を支持する人もいるし、「私たちの間に、壁ではなく橋を作ろう」と主張してデモを続けている人もいる。私はだんぜん「橋派」です。
 さまざまな人々が行き会う場所のひとつが橋です。壁の前で人は向こう側の人と行き会うことはできません。
 橋が好きなのは、古来、橋はこちら側をあちら側をつなぐ場所であるからでしょう。

 橋が好きです。土木建築と言い習わされているうち、さまざまな建築、建物を見て歩くのも好きですが、もっと地味な「土木」分野も好きです。土木の仕事には、建築の基礎工事など、建物に関わる分野もありますが、一応、建物として人が住んだり利用したりする部分以外を受け持つのが土木。
 縄文時代で言うなら、竪穴式の家を建てる際に、土を掘ったり固めたりする作業が土木で、柱を組み立てたりカヤなどで屋根を葺いたのは建築、ということになるのだと思うけれど。弥生時代になれば、水田用の水路を築いたり、ため池を作ったりできる能力のある人が集落をまとめてクニに仕上げていったはず。

 現代の土木工事のうち、その完成形がもっとも目に映える仕事のひとつが「橋」です。
 私は、旅のテーマとして「鉄旅(ただひたすら鉄道旅行を続けて景色を見ている)」「滝旅(滝を見に行く)」「巨樹旅(各地の巨木を見に行く)」「手仕事旅(各地の手仕事を見に行く)」「お茶旅(それぞれの土地でまったりとお茶を飲む)」などなどあるのですが、「橋旅」も大好き。といっても橋を見ることだけを目的として出かけることは少なくて、出かけた先に橋があるとうれしくなる、という程度の橋好きです。

 橋を見ることだけを目的として、隅田川下りのシーバス旅などもしてきましたが、たとえば、下町散歩の途上に「弾正橋(旧八幡橋)」を渡ることができて、大喜び、という場合のほうが多いです。
 いろいろな橋の写真集を眺めているのも好き。橋の姿は美しく、古代の橋も中世の橋も近代の橋も、それぞれに趣があります。

 今年読んだ本の一冊は、『日本の橋』。昨年末ミネルヴァ書房より発行。「シリーズ日本発見」の中の一冊。世界(主に欧米)との比較にも言及しつつ日本の橋を古代から現代まで紹介し、形のデザインだけでなく、構造や工法も詳しく説明されており、なによりいいのは、専門的なことを素人にもわかるような文章であり、各ページ左端に専門用語解説が載っていること。

・バスケットハンドル状のアーチ:アーチ面が内側に傾斜がつき、外観がバスケットの取って(ハンドル)のように見えることから呼ばれるアーチ状の橋
・タイドアーチ:アーチの両側の支点を連結材(タイ)結ぶことで、水平移動を拘束したアーチ橋の形式
・斜張橋:橋塔から斜めに張られたケーブルが直接桁を支持する橋の構造形式
・スパン:支点で支えられた区間、あるいはその区間の長さ
・ライズ:アーチの頂部から支点相互を結ぶ線までの距離。アーチの高さ(そりの大きさ)を示す

 などなど、橋の専門用語について、丁寧に解説が成されています。
 本文を読んでいて、「あれ、このことば、知らないなあ」と思うと必ずページ左側に用語解説が出ているので、すらすらと読み進めることができ、素人でもいっぱしの橋梁専門家のような気分で橋について詳しく知ることができました。

清洲橋(隅田川の橋めぐり2011年9月)


 これまで、橋を眺めて形の美しさばかりに目を奪われてきたけれど、橋の形の美しさは、構造の強化や工法が基本となっていることに、改めて感じ入りました。
 私は橋の中でも、斜張橋と吊り橋が美しいので好きです。眺めているのは好きだけれど、渡るときは揺れると怖い。怖いけれども渡りたい。

 これから橋を眺めるにも、形に見とれるだけでなくもっと構造や工法について考えながら見ていられるかも。渡るときは、、、、吊り橋の強度とか考えても、やっぱり「キャー揺れるよう」と恐がりながらが楽しいのだけれど。

永代橋(隅田川橋巡り2011年9月)


<つづく>
コメント
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