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ぽかぽか春庭「世界の国からこんにちは」

2017-04-23 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170423
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日記>2017年4月スタート(3)世界の国からこんにちは

 日本語が世界の中でどのような立ち位置を持っているかについて、日本語教師資格取得コースの学生が理解したら、次は、日本語学習者について。

 まず、私が出会ってきた世界からの留学生の国籍を見てもらいます。

「アジア」=韓国、中国、モンゴル、台湾、フィリピン、インドネシア、ブルネイ、マレーシア、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー、バングラディシュ、インド、ネパール、パキスタン、イラン、イラク、タジキスタン、トルコ、レバノン、シリア、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル、サウジアラビア、クエート、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーン。

「アフリカ」=エジプト、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、セネガル、マリ、ナイジェリア、カメルーン、エチオピア、ケニア、モザンビーク、南アフリカ。

「ヨーロッパ」=ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、ラトビア、エルトリア、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、イギリス、アイルランド、オランダ、ベルギー、フランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、スイス、オーストリア、チェコ、クロアチア、ハンガリー、ボスニアヘルツェゴビナ、クロアチア、ユーゴスラビア(2003年まで)、ギリシア、ブルガリア、ルーマニア、マケドニア。

「南北アメリカ」=カナダ、USA,メキシコ、ドミニカ共和国、ジャマイカ、グァテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、パナマ、コロンビア、ベネズエラ、ペル、ー、ブラジル、チリ、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン。

「オセアニア」=オーストラリア、ニュージーランド、西サモア、パプアニューギニア、ソロモン諸島、パラオ。

 1995年以来、世界に200ほどの独立国があるうち、国費留学生として日本にやってきた100カ国の留学生と出会い、その国の位置や文化について知ることができたこと、日本語教育に関わってきたからこそである、と、日本語教師をめざす日本人学生達に伝えます。

 私が、日本の国内で出会った留学生、この国の留学生とはたったひとりしか出会わなかった、という国も多いです。
 では、逆に、私が受け持った留学生のうち、一番多かったのは、どこの国からでしょう、という質問をすると、これは、ほとんどの学生にとって、推察しやすい。そう、中国です。一般的な留学生でいうと、私が日本語を教え始めて以後、圧倒的に来日留学生数が多い国は、中国です。

 私が1988年に日本語教育能力試験に合格して、日本国内の日本語学校で教えたのは、中国、台湾、韓国からの学生がほとんどでした。1994年以後、大学の留学生センター、国際教育センターなどで、国費留学生への日本語授業を担当するようになって以後、選抜されてくる留学生、さまざまな国から日本にやってきました。

 現在、世界中で日本語を学んでいる人は400万人。そのうち、日本で学ぶ留学生の数は、20万人を超えています。そのうちの半数近くは、中国から。そのほかは、ベトナム、ネパール、韓国、台湾、タイ、インドネシア、ミャンマーなど、アジアからの留学生が92%を占めます。最近急激に増えているのは、インドネシアからだそうです。看護介護の分野で働きたい学生が増え、日本でイスラム教の人が生活しやすい環境も整ってきたからでしょう。

 ミャンマーは、私が2015-2016年に滞在して日本語教育を担当した国ですが、中国からの留学生に比べれば、ごくわずか。
 現在教えている大学でも、40人の留学生のうち、サウジアラビア1人、韓国5人、台湾4人、あとは、中国大陸からです。

 日本語教師資格取得希望の学生のなかには「英語が好きだから、英語を生かした職業として、日本語教師も視野に入れている」という学生がいます。そういう学生には、「英語を生かしたいなら、英語を使う職業はたくさんあるから、そちらを選んだ方がいい」とアドバイス。日本で、英語を媒介語として日本語を教えているのは、上智大学やICUの一部のクラスで、日本に留学する大多数の留学生は中国人留学生で、英語が苦手な学生のほうが多いことを伝えます。英語が得意な学生はアメリカに留学するほうが多いですから。

 アメリカやオーストラリアなどの英語圏で日本語教師として働くには、「英語ペラペラ」が求められているのではなく、当地の教員資格を持っている、など、別の能力が求められていることが多い、

 「では、中国語をしっかり学べばいいですか」という中国語を外国語として選択した学生には、「中国に渡航して現地で教える場合、中国語ができることは有利です。ただし、私は中国語はニーハオ、シェーシェーくらいしかできないでも、3度中国に赴任して教えてきました。日本の国内の日本語学校で教えるには、中国語ができるだけでは、教えることはできません。中国人が多いと言っても、20人のクラスの中に、ひとりタイ人が混じっていたら、中国語を使っては教えられません。タイ人の学生には理解できなくなってしまうから」

 では、どのように日本語を教えていけばいいのか。ここで、「直接法」という現在日本語教育で主流になっている教え方の伝授が始まります。概論を学んだ学生、次は、教授法を学びます。

 日本語教師の資格、現在では、いろいろな機関が認定を行っています。
 日本語教師の資格が認められるには、
(1) 大学で日本語関連科目や日本語教育学の科目を40単位以上取得する
(2) 日本語教師養成機関で420時間以上日本語教育日本語関連の授業を受講する
(3) 日本語教育能力試験に合格する
などの方法があります。

 今でも最大の資格認定機関になっているのは、日本語教育学会が実施している「日本語教育能力試験」です。年5000~7000人が受験して、1000人くらいが合格者となります。合格率は25%前後。なかなか厳しい試験です。

 そんな厳しい試験に合格しても、日本語学校数が減少している現在では、日本語教師として就職する道はそれほど広くない。それでも、日本語教師資格をとろうとする学生たち、「資格欄に何か書いた方が就活に役立つ」という学生が多いです。それもまた、学びのきっかけのひとつ。

 「日本語教師になるつもりは、今のところない」という学生であっても、世界の国々の多様性を知り、世界の言語や文化の諸相をしるきっかけにもなってほしいと、毎年のはじめ、「世界の国からこんにちは」という趣旨の授業を1~2コマかけて実施しています。
 
 2015年の前期に受け持った日本人学生から2016年3月にメールがきました。
 「お久しぶりです。前期の授業でお世話になったマユです。御報告が遅れましたが、なんとか日本語教育能力検定試験に合格することができました。本来親類の寺を継ぐ予定で大学に入学しましたが、いろいろありまして、10月からポーランドの大学で日本語教師のボランティアをする予定です。
 さっそく実践の場が与えられることになり、前期に先生の授業を受けていて本当によかったと思いました。教わったことをうまく活かせるように頑張りたいと思います。
 それでは気温の変化の大きい時期ですのでお体に気を付けてお過ごしください
。」

 最初は、寺を継ぐつもりだった学生からの、海外でのボランティア日本語教師をやってみる、という報告をうれしく読み、激励の返事をだしました。

 さて、受講者のうち何人が実際に日本語教師として活躍するのか、今のところわかりませんが、春庭、今年も楽しく授業を続けたいと思っています。楽しくするには、綿密な準備と当日のエネルギーがいるのですが。老骨ムチ打ってがんばります。

<おわり>
コメント (2)
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