saderのエッセイ館

saderは自然の中を旅するのが好きです。
四季折々自然が持つ“蠱惑の魅力”を『エッセイ館(やかた)』へとどけます。

沙羅双樹の花の寺「葛城山 安楽寺」

2020-06-19 12:37:47 | Weblog
6月7日(日)、御所市の「安楽寺」で‟沙羅双樹“の花が咲き始めていると聞いて、中学生の頃、日本文学の教科書で知った「平家物語」、その冒頭、‟祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理(ことわり)をあらはす。奢(おご)れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、偏(ひと)へに風の前の塵に同じ“。という名文が強烈な印象で残り、その日のうちに「平家物語」を購入、何度も読み返した。
「祇園精舍の鐘の声」と「娑羅双樹の花の色」という、二つの言葉にひかれ、何時の日か「祇園精舍」へ行って「娑羅双樹の花」を見たい、「祇園精舍」の場所は何処?「娑羅双樹」とは、どんな花?好奇心いっぱいに、図書館へ行った。そんな純粋だった少年時代を懐かしく思い出しました。
早く「安楽寺」へ行かないと・・・、と思いつつ、純粋さを失った熟年者は10日も後の17日(水)になって、もう遅いかも、と思いながらヨタヨタと出かけてみました。(R309から「安楽寺」への道は軽四しか入れません。「安楽寺」に駐車場は無いのでR309から歩行が無難)
沙羅双樹の花の寺として、知る人ぞ知る「葛城山 安楽寺」は徳太子の創建と伝えられる名刹で本尊は十一面観世音菩薩立像です。本堂と少し離れた場所に国の重要文化財に指定されている塔婆(安楽寺塔婆)が残っています。
本堂に詣でようと、手洗い場へゆくと、誰が入れたのか、‟沙羅双樹の花“が浮かんでいました。‟沙羅双樹“は本堂の周りを囲むように多く植えられていますが、花の盛りは、もう過ぎていて、梢には、黒い実が目立つようになっていた。それでも、まだ、そこ此処に純白の美しい花を見ることができ幸いでした。
因みに、少年時代、訪れたいと思っていた「祇園精舎」は古代インドのコサーラ国の首都シュラーヴァスティーにあった寺院で、釈迦が説法を行った天竺五精舎の一つですが、唐の「玄奘三蔵」が訪れた7世紀、既に「祇園精舎」は荒廃していたと「西域記」に記述されています。
また、インドの寺院(精舎)には、もともと梵鐘は無いそうでから‟鐘の声“は聴けません。そして、‟沙羅双樹の花”ですが、これも修行僧が‟夏椿“を‟沙羅双樹”と間違えて日本に伝えたため、‟夏椿“が日本では‟沙羅双樹・沙羅の木”と言われるようになったようです。インド原産の沙羅双樹の花は星型、緑色で桜のように集まって咲き、日本では温室でしか育たないようです。
帰路、「安楽寺」を振り返ると、梅雨の晴れ間、青空に映える本堂の裏山にも‟沙羅双樹“はあるような気がした。もし、来年も訪れることができたら、ゆっくり歩いてみよう。(小さい写真はクリックで拡大)

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