五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 『GANTZ -ガンツ- 』37巻 感想

2013年08月21日 | ◆マンガ 感想

『GANTZ -ガンツ- 』37巻 (奥浩哉 先生)

 Gantz_37

 36巻感想はこちら

 ついに完結!

 もう、ただただ感慨無量の最終巻。

 声を大にして讃えたいほど、大好きな作品です。

 

 

 

 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 

 

 

 

 

【玄野の決意】

 Gantz_37_p029

 最期の戦いへの誘い。

 人類の勝利間近かと思われた矢先、

 圧倒的な強さをほこる巨人の英雄イヴァが、玄野に最期の戦いを持ちかけます。

 この世界に配信されている呼びかけにより、玄野の名前を世界中の人々が知りますが、

 人類全体を人質にとるかのようなイヴァの提案を聞いたことで、人々はパニック状態に・・・

 

 

 Gantz_37_p047

 さっさと行けと、玄野を煽る群衆。

 無責任に死地へ赴くことを強制する人々、その声はあまりに残酷。

 タエさんなどは、玄野にすがりつて引き留めようとしますが・・・

 このあたり、群衆の特徴といいますか、こーゆー風になりそう

 といった雰囲気を、みごとに表現していますね。

 

 

 Gantz_37_p050

 ヒステリー状態の群衆、泣きわめくタエさんにはさまれた玄野は・・・

 不思議なことに、落ち着いた表情を見せているのが面白い。

 周囲の喧騒をよそに思い起こすのは、それまで戦ってきた強敵たち。

 これまでの経験があってこそ、玄野が落ち着いていられるということなのでしょう。

 中でも「千手」の存在が大きく描かれているのは、

 それが玄野にとって、ひときわインパクトを感じた敵だったということなのかも。

 

 

 Gantz_37_p074

 そして、決戦へ・・・

 タエに再会を誓い、パニックとなった人々の嘆きを背に、最後の戦いへ赴く玄野。

 地球の命運などと関係なく、ただ大事な人のもとへ帰るため、

 という決意が、彼の心の支えとなっているのは興味深いですね。

 

 大義のために戦える人は、それはそれで立派なことではありますが、

 「普通の人間」にとっては、自分の周りのことくらいしか気にかける余裕なんてないわけで、

 そうしたことを、玄野という「普通の人間」が意識していたのは、大切なことだろうと感じます。

 だからこそ、人類の命運をかけた戦いなどという巨大なプレッシャーに

 押しつぶされることなく、最後の戦いへと挑むことができるのですから・・・

 

 

 

【最後の戦い】

 Gantz_37_p085

 玄野 vs イヴァ・グーンド。

 ついに切って落とされた最終決戦の幕!

 最後の戦いにふさわしい2人の攻防。

 アメリカ・チームをすら一蹴してしまったイヴァの強さの前に、

 玄野などアリも同然・・・ と思いきや、予想以上に善戦しているのはさすが!

 これもまた、彼が死線をくぐり抜けてきた結果、培われた力なのでしょうね。

 

 

 Gantz_37_p093

 他人事のように戦いを眺める人々。

 絶望的な状況ながらも、どこか余所の事のように語る観衆。

 「瞬殺されないのが不思議な感じだなァ」だの、匿名掲示板では「だめだ、こりゃ」だの、

 必死な当事者のことなど思慮にもかけぬ物言いが、どうにも歯がゆい感じですねえ。

 それにしても、このヒゲのおじさん、とある漫画(評論)家さんにそっくりなんですけども、

 何か含む所でもおありなのでしょうか(^^;

 

 

 Gantz_37_p103_2

 世界中で湧き起こるクロノ・コール!

 玄野が善戦し始めるや、手のひらを返したように沸き立つ群衆。

 まあ、人間こんなもんですよね。

 

 それはともかく、玄野というただ1人の「普通の人間」が、

 世界中の人々から期待を込めて名前を呼ばれている光景は、

 なんとも奇妙で、しかし心躍らされるものでした。

 もしかすると、このシーンを描くため、最後の戦いは設定されたのかもしれませんね。

 

 

 Gantz_37_p120

 そして終局へ・・・

 2人の戦いを見守る加藤たち。

 ここで加藤が、子供の頃のことを思い出しているのも面白かった。

 あのシーンは序盤で描かれていましたが、これこそが加藤の原点。

 

 「憧れの男」のイメージに重ねた生き方を、貫いてきた加藤。

 彼の行動が、かつて腐っていた玄野の精神に火をつけ、ここでまた、

 玄野の姿に「憧れ」を思い起こすという巡り合わせが、2人の関係を印象付けてくれます。

 加藤の存在は、この作品にとって本当に重要なものだったと感じます。

 

 そして、佳境。

 絶望が降りかかる状況で、加藤が見つけた活路。

 これには、千手編の大仏や、大阪編の「意識の外からの攻撃」を思い出しましたよ。

 大仏攻略のときに玄野が見せた戦い方を、意識していたんじゃないかな、加藤は。

 そこに、大阪での経験を活かした「意識の外からの攻撃」を重ねたのかも?

 私は、そんな風に考えて、独りで最高に盛り上がってしまいました!

 

 

 

【決着そして・・・】

 Gantz_37_p211_2

 「俺達がやッたことッて・・・ 意味があることだッたのかな・・・」

 戦いの後、語られたこの言葉をみた瞬間、

 何だか良くわからないのだけど、こみ上げてくるものがありました。

 これまでの戦い、その課程に意味はあったのか?

 

 「人間はチリと同じ、ただの物質でしかない」

 という真理を告げられた玄野たちが、意味を求める構図は、

 それこそが人間であると感じさせるものでもありました・・・ 意味を求める存在。

 

 本作品は、不条理な世界にたたきこまれた人間の

 生き様と死に様が描かれてきた物語であり、そこに意味などあるかと問われれば、

 すべてに意味があったとは、とうてい思えないわけです。

 理不尽な戦いの末、理不尽に死んでゆく人々。

 けれど、そこに意味を求めてしまうし、おそらく、意味を与えてしまう。

 それこそが人間なのかな・・・ と。

 

 

 Gantz_01

 1巻表紙。

 私が本作に感じたのは、不条理な世界へ放り込まれた人間の自立というテーマでした。

 1巻を読み直してみると、玄野の性格がまるで違っていることがよくわかります。

 その変化は、不条理にもまれながら、彼がその中でも正気を失わずに、

 自立できたためであるだろうと、私は考えています。

 

 だからこその「神」の不在であったり、

 自立できなかった少年=西との対比などが、重要だったのかな、と。

 また、加藤やタエさんの存在も、大きかったと思われます。

 もっともっと、じっくり語りたいところでもありますが、長くなるので・・・

 

 それにしても、後日談のような話はないのでしょうかね~。

 生き残った人々や、死んでしまった人々、それぞれについても気になる事は多いわけで、

 そのあたりのことを語ってくれる物語が、私は読んでみたいですね。

 あと余談ですけど、こんな話も(^^;

 

 ラストシーンは、私は存じ上げないのですが『ザンボット3』というアニメのリスペクトだとか。

 ここでは感謝の言葉が描かれていますけど、私はこの言葉を、この作品世界そのものと、

 登場人物たちと、そして何より、奥浩哉先生に贈りたいと思います。

 「ありがとう」 本当に素晴らしい作品でありました。

 連載13年という長きにわたり、楽しませていただきました! ありがとうございました!!!