最近読んだマンガ1巻作品いろいろです。
『陰陽師 瀧夜叉姫』1巻 (原作:夢枕獏 先生/漫画:睦月ムンク 先生)
平安時代の陰陽師・安倍晴明と、その相棒的存在・源博雅による、怪異にかかわる物語。
夢枕獏先生の原作小説をもとにしたコミックス版。
すでに岡野玲子先生によるコミカライズ版もありますが、あちらとはまた別の内容・・・
といいますか、こちらの方がより原作に忠実なカタチでのマンガ化となっております。
魑魅魍魎が闇にまぎれて存在している平安京。
そこで起こる様々な怪事件に、晴明&博雅がかかわることになりますが、
本作品はシリーズの中でも特別な物語となっていて、歴史上の有名な人物も大勢登場。
そんな所にも注目ですね。
腹を割かれて殺される女性たち、盗みを働かない盗人集団、そして平貞盛の瘡・・・
これらの怪事件がやがて接点をもち、大きな陰謀に結びついてゆくことになるのですが、
その行方やいかに・・・?
晴明と同等の力を持つ男も登場して、かなり盛り上がってゆきます本作品。
私は原作既読ですので、あまり多くは語れませんが、シリーズ中でも上位に入る面白さ。
ここからコミックス化されるとは思っていませんでしたが、つづきが楽しみです!
『光圀伝』1巻 (原作:冲方丁 先生/漫画:三宅乱丈 先生)
“水戸黄門”として有名な徳川光圀を描いた作品。
「・・・隠居するまでに四十八人の生命を殺めた」という光圀。
そして四十九人目となった男こそが重要であると語られつつ、
老境にある光圀が、腹臣・藤井紋太夫を殺めるところから物語は始まります。
その後、その理由を追うためなのか、話は光圀の少年時代へとさかのぼり、
彼の人生が描かれることに・・・ という内容になっています。
そこで描かれるのは、父親、そして兄との関係。
父を敬愛し、そのムチャ振りにも意気込んで応えようとする少年・光圀の苛烈さ、
世継ぎとして外されながらも穏やかな日々を送る兄との確執、そして愛情と、
人間模様が一筋縄でいかない部分が、かなり面白味となっていました。
徳川光圀というと、水戸黄門のイメージとは大違いというのは、
知っていれば知っていることですが、そのハチャメチャぶりがどのように描かれていくのか、
楽しみです!
『センゴク 一統記』1巻 (宮下英樹 先生)
仙石秀久の生涯を描く物語、その新シリーズ開幕!
前シリーズ「天正記」にて、ついに武田家の滅亡となりましたが、
そうなると本能寺の変という一大転換点が迫っているわけでして、
ここから物語はずんずん盛り上がること間違いなしの状態です。
主人公・仙石秀久は、秀吉のもと対毛利戦線で活動中。
物語は、備中高松城の支城の1つ・冠山城を攻める場面から始まります。
そこで伊賀者を招き入れるかどうか、信じられるかどうかを試される仙石・・・
と思ったら、あっさり信じて助力を請うあたり、彼の人柄が出ていて面白い。
事務方が増える羽柴陣営において、仙石のようなタイプは肩身が狭くなる一方ですが、
それでも、その性質を見込まれて、やがて淡路のまとめ役として派遣されることに。
といった主人公側の展開ですが、大枠での物語は、
信長勢力の伸張も来るところまで来ており、ここから本能寺までの過程がどう描かれるかに
注目が集まりそうです。 仙石秀久の物語はもちろんのこと、そのあたりにも期待ですね。
『カラメルキッチュ遊撃隊』1巻 (大石まさる 先生)
13年前に大異変が起きた世界で生きる13歳の少女たち。
人類が減少した世界に存在する謎のイホージン。
彼らが引き起こす騒動とかかわることになるのが、間宮伽藍を中心とした3人の少女たち。
キッチュというイホージンの助力を得ながら、事件解決へ活動中!
大石先生の豪快かつ奔放な作風が、良いテンポとなっています。
13年前の変動と、その時期から現れたイホージンの不可解さが背景にありつつ、
そこで起きる騒動に対処する少女たちの活躍が面白い作品。
ほかの2人を引きずり回す伽藍の元気さと、母親のような抱擁力をもつ芽留のおっとりさ、
ツンケンしている依良のしっかり者ぶりが、良いバランスのトリオとなっていますね。
また、13歳の少女たちの不安定さが良い味付けとなっていて、
そのあたりの物語が心に響いたりもして楽しめます。
とくに、依良の父親との関わりの話は、なかなか良かったですね。
『犬神もっこす』1巻 (西餅 先生)
感情の起伏が少ない大学生による、演劇サークル物語!?
その性格ゆえに孤立してきた犬神くん。
彼が大学入学を機に参加したのは、演劇サークル。
コミュニケーションはかみ合わないものの、演劇活動にいそしむ日々を描いた作品。
犬神くんの変わった感情表現と、それによって巻き起こる騒動が笑える面白さ!
感情がわかりづらいうえに、その表現の仕方が突拍子もないモノばかりで、
不意打ちを食らったようになることで、笑いを誘われますね。
「泣いたことがない」という犬神くんの感情表現は
もはや絶望的なレベルで、そんなので演劇出来るのか?
と不安になりつつも、その行動の読めなさ、ハチャメチャぶりがかなり楽しい。
感情が表に出ないので、ポーカーフェイスになっているのも、これまた笑える要素ですね。
などなど、そんな犬神くんと、演劇サークルの仲間たちとのやりとりがコメディ色強し。
よく彼にあきれずに付き合いつづけられるよな~、サークルの人々は・・・
と思ってしまうくらい良い人揃いだよね。 なんだかよくわからない面白さがあります。
『よいこの君主論』1巻
(原作:架神恭介 先生 辰巳一世 先生 / 漫画:ミサオ 先生 /
キャラクター原案:川奈梶馬 先生 M.W 先生 天然君ⅱ 先生 マエサキ 先生)
マキャベリズムをテーマに、小学生のクラスにおける覇権争いを描いた作品。
5年生になったひろし君。
彼が父の書斎で見つけたのは『君主論』。
これを教科書として、クラスでの覇権を目指すのですが、
そこには多くの難敵が存在しており、苛烈な抗争が始まることになります。
教育プログラムの一環として、クラス内でリーダー争いをさせている目立小学校。
ひろし君もまたリーダーとなるべく、「小君主」の立場からスタート。
「仲良しグループ」を形成すべく、多くの「友達」を参加させ、勢力を拡大することに・・・
しかし、そこは世襲君主や、圧倒的な腕力で支配を勝ち取る者、
奸計を用いて地歩を固める者などがいる、武闘派・頭脳派ひしめく世界。
『君主論』というテキストに沿って行動する、ひろし君の運命やいかに?
といった物語となっているわけですが、
まあマキャベリズムといえば、過酷で容赦ないものでもあり、善し悪しいろいろ。
このあたりがどう描かれてゆくのかが気になる所ですかね。
ひろし君以外の「小君主」も、クセ者ぞろいで、なかなか面白い群雄割拠状態。
はたして、統一君主となるのは誰なのか、今後が楽しみです!
『ジャコモ・フォスカリ Ⅰ』 (ヤマザキマリ 先生)
あるイタリア人男性の物語。
1993年、東京へやって来たジャコモ氏。
だいぶ変わってしまったこの地にて、
友と語らい、音楽喫茶で働く青年に出逢った頃、1960年代を思い起こすことに・・・
ヴェネツィア出身の大学教授であるジャコモ氏の、
イタリアでの少年期、そしてファシズムが覆う戦争期、そして日本で過ごした時期。
様々な時代の情景が、淡々と紡がれる作品となっています。
中心となるのは1960年代の日本。
そこでジャコモ氏が出逢った青年・古賀に、不思議と惹かれてゆく様子を軸に、
穏やかで、しかし激情を秘めたような時代が描かれているのが、良い味わい。
作者先生自らが「マニアックでニッチな作品」とおっしゃっているように、
派手さがなく、静かに過ぎてゆく物語でありますが、それゆえに好感触でもある作品。
これからどのように進行するのか、楽しみです。
『海傑 エルマロ』1巻
(作画:井上紀良 先生/原案:伊藤福八 先生/脚本:中川トシヒロ 先生)
サムライパイレーツ、世界へ船出す!
16世紀ごろの平戸にて、豪遊する男・カイリ。
女たちを率い、海賊と戦い、やがて世界へ漕ぎ出そうという彼の目指すものは?
いや~面白い!
主人公のカイリが豪胆かつ爽快な男で、彼のやることなすことが痛快すぎてたまらない。
彼にかかわる女性陣の魅力もまた素晴らしく、ヴェロニカ姐さんの艶っぷりが良い感じ。
さらに、海賊を敵に回しての大立ち回りはもちろんのこと、
その後始末のさわやかさには、ホレボレしてしまいましたね~。
快男児・カイリの冒険の幕は切って落とされ、ここからどこまで行ってしまうのか?
ややご都合主義的に進行する面もありますが、それゆえに爽快でもある物語。
これはなかなか目が離せない作品ですよ。 今後がめっさ楽しみです!
『ヒーローカンパニー』1巻
(島本和彦 先生 斉藤大哲&ビッグバンプロジェクト)
ヒーローが勤める企業「ヒーローカンパニー」を舞台に描かれるヒーロー物語。
「正義大好き」と語る青年・アマノギンガ。
ヒーローになりたい彼が入社を目指すのは、ヒーローカンパニー。
しかし、入社試験を受ける当日、なぜか周囲で事件が頻発。
はたして彼は、みごと入社できるのか? ヒーローとなれるのか!?
と始まる物語なのですが、これが島本先生ブシがきいているのはもちろんのこと、
「街の人々と平和を守りながら何とか利益も出す会社」というヒーローカンパニーの
特殊性が面白さを際立たせる要素となっていますね。
そこに勤めるヒーローたちは、多くの事務手続きと多様な業務に圧迫されつつ、
平和のために戦っていますが、「勤務時間外の悪に対してはスルーを決め込む」という
徹底した姿勢でのぞむプロフェッショナルぞろい。
また、主人公・ギンガが挑む入社試験も、「これでヒーローやっていいのか?」
と思えるような適性試験となっていて、なかなか興味深いものがあったりします。
しかし、作中で説明されるこれらの事柄の理由には、
社会人であれば納得できるものが多く、そのあたりさすが島本先生といった趣。
一筋縄ではいかないヒーローという立場を、見事に表現していると感じますし、
何より勢いある作風が、可笑しさ・面白味となっていますね。 今後が楽しみな作品です!
『TIGER & BUNNY THE COMIC』1巻
(作:吉田恵里香 先生/画;上田宏 先生/企画・原作:サンライズ)
特殊能力をもつヒーローたちを描いたアニメ作品の、オリジナル・サイドストーリー。
ベテランで熱血なヒーロー「ワイルドタイガー」と、その相棒である若手「バーナビー」。
この2人を中心に、ヒーローたちの活躍などが描かれます。
4コマ漫画『タイガー&バニーちゃん』もそうでしたが、
アニメ作品のキャラクター人気などに頼りっぱなしの作品にはなっておらず、
きちんとした話づくりがされており、かなり楽しむことができました。
登場人物の個性も、しっかりと押さえられていて文句なしですね。
とくに私が好きだったのは、キース(スカイハイ)とユーリ(ルナティック)の邂逅話。
本来であれば敵同士の2人が、平時に出会い、共同して事に当たる姿が面白かった!
ユーリの方はキースの正体を知っているんですけどね。
天然無垢なキースと、それとは相反する闇を抱えたユーリのやりとりは興味深い。
最後には、虎徹(ワイルドタイガー)の因縁に関わる話があって、
次巻への引きとなっているのも、良い感じにつづきを期待させます。
なんだかんだで、虎徹さんの熱血ベテランぶりが好ましいと思っていますし、
何よりオリジナル・ストーリーというのが引き込まれる要素。 今後が楽しみです!