【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ジェシー・ジェームズの暗殺」:都橋住宅前バス停付近の会話

2008-01-12 | ★東16系統(東京駅~ビッグサイト)

こんな海際に山の手みたいな閑静な住宅地があるとは思わなかったわ。
埋立地を開拓したってことだな。
アメリカみたいに広大な土地のない日本は海を開拓するしかなかったってことね。
西部開拓時代から近代国家に移行する時期にいたジェシー・ジェームズみたいなアウトローは、日本にはいないわけだな。
「ジェシー・ジェームズの暗殺」の見所のひとつは、あの西部の風景だもんね。
アメリカのフロンティアの荒涼とした土地に、ジェシー・ジェームズ役のブラッド・ピットが立つとそれだけで絵になる。
腹の底に黒い影を抱えた、他人を信用したり心を開いたりすることのない不気味な人物を身震いするほど繊細に演じていたわ。
美男子なくせにああいう常軌を逸した人物を演じると魅力的な男優っていったら、日本でいえば、三浦友和か。
うーん、ブラッド・ピットのほうがもっととんがってるんじゃない?
なるほど。でも、この映画、「ジェシー・ジェームズの暗殺」といいながら、2時間40分の映画の中で、ジェシー・ジェームズがどんなことをしてきた人物なのかはほとんど語らない。
アメリカ人なら誰もが知っていることだからじゃない?
それくらい有名な人物なのは確かだ。
ジェシー・ジェームズの生涯っていうよりは、題名どおり暗殺にまつわる話にしぼっているのよ。
しぼっている割りに2時間40分。長っ。
そうかしら。こういう話で2時間40分は、一瞬長いと思うかもしれないけど、前半の人間関係のあのバカ丁寧なほどの描写があってこそ、後半の暗殺からその後の暗殺者の運命までが説得力をもって生きてくるんじゃないの。そのためには、これくらいの時間が必要だったのよ。
たしかに、去年の映画でも「ゾディアック」とか「グッド・シェパード」とか上映時間の長いアメリカ映画があったけど、いずれも実にがっちりしたおとなの映画だった。その系譜の一本ていうことだな。
ブラッド・ピットの演技もよかったけど、暗殺者のロバート・フォード役のケイシー・アフレックの納豆のように粘着質な演技も見ものだったわよ。
ジェシー・ジェームズに憧れと憎悪を持っているんだけど、彼を暗殺したところで、結局、ジェシー・ジェームズの足元にも及ばない小物でしかなかったってことが証明されることになる。
この暗殺者、ジェシー・ジェームズを暗殺したことを芝居にして自分で自分の役を演じちゃうんだから、さすがアメリカ人よね。
何がさすがアメリカ人なのか知らないけど、暗殺者に狙われていることを知りながら、最後は悟ったようにわざと隙を見せて殺されるジェシー・ジェームズの死に方もすごいよな。
全篇を鎮魂曲みたいな静かな音楽が覆ってね。
タイトルは「暗殺」でも、映画自体は暗殺するわけにはいかない、密度の濃い作品だった。



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ふたりが乗ったのは、都バス<東16系統>
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