【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「迷子の警察音楽隊」:ジャパン・エア・ガシズ前バス停付近の会話

2008-01-05 | ★東16系統(東京駅~ビッグサイト)

ジャパン・エア・ガシズなんて珍しい名前の会社ね。
ジャバン・エア・ガシズの間違いないんじゃないのか。
「パ」じゃなくて「バ」じゃないかって?それじゃあ、「迷子の警察音楽隊」の勘違いと一緒じゃない。
エジプトからはるばるイスラエルまで遠征してきた警察音楽隊の映画のことか。
「ペタハ・ティクバ」という町に行くはずが「ベイト・ティクバ」という町へ行くバスに乗ってしまって、見知らぬ土地で一晩を過ごさざるを得なくなるという話。
バカだよなあ。「ペタハ・ティクバ」と「ベイト・ティクバ」を間違えるなんて。
あら、あなたなんて、この前、北浦和と南浦和を間違えたじゃない。
それはしょうがないだろう。北浦和に、南浦和。西浦和に、東浦和。浦和に、中浦和に、武蔵浦和。こんなに同じような名前の駅があるんだぜ、埼玉のJRには。間違えるのも当然だろう。
というわけで、この音楽隊も間違っちゃったのよね、きっと。
しかし、このエジプトの音楽隊は、間違ってよかったんじゃないのか。
そうそう。間違ったばかりに、一晩とはいえイスラエルの庶民と触れ合うことができたんだもんね。
まあ、一晩限りの触れ合いだから、そんなドラマチックなできごとはないけどな。
「たいしたことはありません」って、最初に字幕に出てくるんだもん、笑っちゃったわ。
そう、たいした話ではないんだけど、妙にユーモラスなできごとばかりで、ずーっとクスクスしてた。
エジプト人とイスラエル人じゃ言語が違うんで、どちらもカタコトの英語で会話を交わすしかない。
別に英語が得意な人たちではないから、それがかえって俺たち程度の日本人でもわかる英語になってて、それだけでなんだか好感が持てる。
音楽隊の隊長さんと地元の食堂のおかみさんが夜の町に出かけてデキそうになるんだけど、うっちゃりを食らわすような展開が待ってる。
それが、さもありなんという結末なんだよな。
身の上話をするほど親密になってしまった二人は一晩限りの関係にはなれない。むしろ、一晩限りの関係ならお互いを知らないほうがいいっていうことよね。
それって、お前の場合もか。
ゲボッ。
音楽隊の中のイケメンが地元の若者に恋の手ほどきをするくだりもおもしろい。
冴えない風貌の地元の男女がぶっきらぼうに心を通わせていく描写は、まるでアキ・カウリスマキの映画を見ているような錯覚におちいるわよね。
なにより、この音楽隊、青い制服を着てボーッと一列に並んで立っているだけでおかしみをかもしだす。
小さく手を振るだけでやたらおかしいのは、どうしてかしらね。
たたずまいがいいんだよな。
エジプトとイスラエルといえば、政治的に微妙な関係なのに、こういうチャーミングな映画ができてしまうなんて、結局、人と人の目線に立てば、喜怒哀楽は世界中どこでも同じってことよね。
俺たちもたまには、行き先を間違えたバスに乗ってみるか。思いもかけないできごとが待ち受けているかもしれないぞ。
いまさら、そんなこと言わなくたって、あなたはいつも間違ったバスに乗っているじゃない。
それが俺の人生なのさ。


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ふたりが乗ったのは、都バス<東16系統>
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