Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
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ARDSには2パターンある?

2017年02月09日 | 呼吸
2日連続のARDS関連。僕的にはちょっと珍しい。

Famous KR, Delucchi K, Ware LB, et al.; ARDS Network
Acute Respiratory Distress Syndrome Subphenotypes Respond Differently to Randomized Fluid Management Strategy.
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Feb 1;195(3):331-338. PMID: 27513822.


まず、前提となる研究がある。ARMA studyALVEOLI studyのデータを用いて解析したところ、ARDS症例を二つのphenotyeに分けることができた。具体的には、phenotype 2はphenotype 1に比べて、
・炎症バイオマーカー(サイトカインとか)が高値で、
・昇圧剤の使用頻度が高くて、
・重炭酸濃度が低くて、
・敗血症の頻度が高い
群だった。そしてその群は、
・病院死亡率が高くて、
・人工呼吸期間が長くて、
・そして何よりも、ALVEOLI studyでhigh peep群の死亡率が低かった。

そして今回の研究。上記の結果が、ARDSについての最大のRCTであるFACTT study(N=1000)でも成立するかについて検討。その結果、約4分の1の症例がphenotype 2で、ARMAやALVEOLIと同様の傾向が認められた。Phenotypeを分けるベストな方法は、IL-8、重炭酸、TNF受容体1の三つを使うことで、AUROCはFACTTで0.95、ARMAで0.94、ALVEOLIでも0.91と、再現性が強く認められた。かつ、consevativeとliberalなfluid managementによる死亡率が、phenotype 1では24% vs. 17%、phenotype 2では39% vs. 49%と逆転していた。

この結果の一般的な解釈(editorial)は、
・ARDSには炎症の強いものとそうでないものの2種類ある
・炎症が強い群では死亡率が高く、かつhigh PEEPや補液制限が有効である
・ARDSにもpersonalized medicineの時代がやって来た

確かにそうかもしれない。
否定はしません。

でも、なんか違う気がする。どうしてかな。結局はサブグループ解析だからかな。ある治療が、同じ疾患群の中で、このサブグループでは有効だけど残りのサブグループでは有害で、全体ではどちらでもない、というパターンはこれまでたくさん例があって、有効なサブグループだけを対象として研究し直して有効性が示された、という例は集中治療の世界では無いと思う。
これが初の例外となるか?
否定はしません。
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