真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 エッチな下半身」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:瀬々敬久/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:村川聡/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石川恵美・扇まや・山本竜二・ゐろはに京子・樹かず・西野奈々美・池島ゆたか・久保新二)。
 新東宝・ニュース・ネットワークの略なのか、朝のSNNニュース。キャスターの山又(池島)が女子アナ・真紀(西野)とのコンビで、コカイン所持で逮捕された片山書店前社長・片山夏樹被告人(は一切登場せず)の愛人・板元京子(扇)が、大量のコカインを所持したまゝ逃亡した事件を伝へる。とこ、ろで。ハルキックスがお縄を頂戴しREXが蔵にぶち込まれた、熱い内どころか鉄が未だアッチアチの三ヶ月弱後が今作の封切り、フットワークが軽いにもほどがある。閑話―で済まないが―休題、御馴染津田スタのダイニングキッチンにて、春雄(山本)と妻の石川恵美(役名不明)がそれを見ながら朝食。セックス下手でうだつの上がらない春雄が、徹底的に石川恵美から虚仮にされ倒して、都心を横断する電車のロングにタイトル・イン。決して美人ではないのかも知れないけれど、石川恵美が可愛くて可愛くて仕方がない。ひとつひとつの、何気ない素振りから狂ほしく堪らない、結婚したい。

 黙れ、あるいは消失しろ

 満員電車の車中、春雄は自らグリグリ体を預けて来る、扇まやとコンタクトする。春雄の画面左手、抜かれるやうに見切れてるのは若きひろぽんぢやねえか?
 山竜の目が点になる、豪快なオチから次の話題に入るSNNニュースの、ブラウン管挿んで津田スタDKから一人暮らしの部屋へと移行する、さりげなく超絶スマートな繋ぎで新章突入。配役残り樹かずは、青森から上京した浪人生・武良。ゐろはに京子が、さうとは知らず武良が電車痴漢を通して出会ふ、補導しようとした警官を刺した援交JK・圭。今度は街頭ビジョンを噛ませて、ザクッと最終章。久保新二は、視聴率獲得に形振り構はない、SNN局報道局長の椿。今度は封切り一ヶ月弱後に死去した逸見―政孝―さん改め劇中辺見さんにあやかり、山又に生放送で嘘の癌告白をさせようとする、だからフリーダムにもほどがあるだろ。
 深町章1993年第七作は、ex.DMMのタグづけがjmdbの記載を凌駕する、ゐろはに京子幻の第二作。当人達の記憶含め恐らく何処にも正確な記録の残らない、不毛の荒野を一歩一歩分け入る無為。キナ臭い三面記事なり有名人の生き死にパン食ひ競争感覚で喰ひついた、オムニバス仕立ての一篇。当方、もしくは今回の目的的にはゐろ京の裸が本来の目的であつた、中盤が突発的にエモーション弾ける。いい加減な津軽弁が抜けない朴訥とした武良に、やさぐれた圭が田舎暮らしを勧める件。下り列車は後ろ向きだと排する武良に対し、圭は「ぢやあ東京の人間はどの電車に乗ればいいの?」と飛び込んで来た上で、「ぢやあ私は山手線だな」。ただぐるぐる回つてゐるだけで、絶対真ん中には辿り着けない。すると今度は武良が「歩いて行けばいべさ!」、二人で東京の中心に歩いて行く旨約した流れでの、呆気ない別れが何となく沁みる。春雄が膨らませる皮算用的なイマジンで、石川恵美のエクストリームな痴態をタップリと見せる序盤に、久保チンのアクティビティで加速、滝田洋二郎ばりのスラップスティックに雪崩れ込む終盤。三幕各々の見所に富んだ、決して色物ないしツッコミ映画の範疇に収まらない良質な量産型娯楽映画。唯一難点を論ふならば、最終的にはボーイ・ミーツ・ガールの器としてしか機能してゐない、痴漢電車の一本調子。武良が圭と、電車を降りてしまふ選択に至るのが、その点象徴的ではある。


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 「人情フェロモン もち肌わしづかみ」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:村田剛志/撮影助手:比留間遼・赤羽一真/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:スナックRiz、スナック マ・ヤン、スナック マダムシルク/出演:友田彩也香・加藤ツバキ・工藤翔子・山本宗介・イワヤケンジ・安藤ヒロキオ・ダーリン石川・東中野リズ子・森羅万象)。
 アッサリしたフォントでスタイリッシュなタイトル開巻、日本語を解さない者に見せたなら、凡そ商業ポルノグラフィーとは思はないのではあるまいか。
 JR東中野駅東口を出た主観カメラが、徒歩すぐの飲食店街「東中野ムーンロード」(正式名称:東中野駅前飲食店会/ex.飲食店街住吉小路)入口近くのスナック「マ・ヤン」に。カウンターに東仙(友田)とママの丸高歌子(工藤)が入り、常連客の桜田(森羅)らで賑はふ店内、雑誌の取材が入つた体。加藤義一2017年第二作「愛憎の嵐 引き裂かれた白下着」(しなりお:筆鬼一/主演:佐倉絆)のナレーターを除けば、工藤翔子(歌舞伎町の居酒屋『寺子屋』女将)が案外空いてて同じく加藤義一2015年第二作「巨乳狩人 幻妖の微笑」(脚本:筆鬼一・加藤義一/主演:めぐり)以来。それと、我等が旗艦館前田有楽は画面が暗いのが弱点につき断定はしかねるが、ここで森羅万象の隣に座つてゐるのが竹洞哲也に見えたのは気の所為か。その日の「マ・ヤン」が閉店したのは、完全に日も上つた翌朝。お姉さん的な幼馴染で、亡夫の遺した店を守りつつ、早朝バイトに向かふ長田美鈴(加藤)を見送り、桜田と別れた辿は、同世代の幼馴染、なのに、今は町の地上げの片棒を担ぐ竹原馨(山本)と交錯する。端からオッカナイ剣幕の仙に、煙草のポイ捨てを咎められた薫は、「ゴミ箱だろ、こんな町」。櫛の歯を欠く再開発と桜並木の伐採が、界隈を揺らしてゐた。
 配役残り、イワヤケンジは辿の夫・秀、官能小説家か何か。小林悟の未亡人かつ、ゆかりの店「リズ」を継いだ端唄歌手・雅仙よしの変名である東中野リズ子は、ムーンロード外堀担当のほぼほぼハーセルフ、友田彩也香とは二度目の共演。安藤ヒロキオは、ナリはラフながら馨らよりも大手の地上げ屋尖兵・轟真澄。台詞の与へられるダーリン石川(新宿ゴールデン街町会長)のほか、「マ・ヤン」客要員がノンクレジットで十人前後投入される。
 秀が脱稿した画面越し、OPP+タイトル「ムーンロードセレナーデ」が本篇ラストの、竹洞哲也2018年第三作。東中野のアクチュアリティーを主軸に据ゑた正攻法の人情劇は、腹が立たない程度には観てゐられる。余計な御託の多さをさて措けば主演女優は濡れ場の手数を自然数最小に稼ぎ、二番手三番手はドラマの下駄を履く。徳俵一杯一杯で、裸映画に辛うじて踏み止まりもする。マダムシルク相手に、桜田がパラノーマルな飛び道具の火蓋を切るカットは、掛け値のない出来映えを撃ち抜く。さうは、いへ。友田彩也香の厚塗りに胸焼けするのはパーソナルな好みの範疇で片付けるとしても、三本柱各々に見せ場を振つたのが却つて禍してか、小さく纏まつた展開は特段面白くも何ともない。今回この期に初めて辿り着いた、竹洞哲也×当方ボーカル=小松公典コンビ最大の諸刃の剣が、名あり登場人物の全てが日常会話に於いて―しかも最終的には同種の―レトリックを駆使する世界に対する違和感。東中野はどんな―人間ばかりが住む―町なんだ、ブランキー・ジェット・シティか。無駄口で薄めるくらゐなら女の裸をもつとひたすらに撮らんかと、大御大には弟子の枕元に立つて欲しい。御当地映画といつたところで所詮買取である以上、映画の出来は最早さて措き、世間一般のやうに旨い汁だけ吸ひ逃げられる訳でもなからう。オーラスで混濁するものの、森羅万象が一旦は撃ち抜くファンタジーで最低限形になつてゐなくもないにせよ、加藤ツバキの前戦「弱腰OL 控へめな腰使ひ」(2016/主演:辰巳ゆい)同様ナッシングレフトな一作。いまおかしんじや城定秀夫のやうに、殆ど変らない―らしい―ストロングスタイルで挑むならばまだしも。全く別物とさへ伝へ聞く、下手にプラス戦線に色目を使つた結果、R18版はピンクス強硬派からそつぽを向かれ、反面R15+版もR15+版で城定秀夫はおろか、横山翔一が商業デビュー作で辿り着いた単騎公開にも手が届かない。要は、ものの見事に二兎を得られないでゐる現状を、全体当人達なりオーピーは如何に見るのか。


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 「ペッティング・レズ 性感帯」(1993 秋/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:サトウトシキ/脚本:小林宏一/プロデューサー:岩田治樹《アウトキャストプロデュース》/企画:朝倉大介/撮影:小西泰正/照明:高田賢/編集:金子尚樹《フィルムクラフト》/音楽:E-tone/美術:タケ/助監督:女池充/監督助手:戸部美奈子/撮影助手:畠山徹/照明助手:藤岡英樹/スチール:おもてとしひこ/タイミング:大津寄宏一/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/効果:㈲東京スクリーンサービス/タイトル:道川昭/協力:上野俊哉・西山秀明《スノビッシュプロダクツ》・勝山茂雄・北尾トロ・深谷奈美・上田耕司・タオコミュニケーションズ・中野貴雄・福島佳紀・轟夕起夫・赤間宏・山口真司・ラッシュ/製作協力:アウトキャストプロデュース/出演:ゐろはに京子・林由美香・吉行由美・秋山ひなこ・佐野和宏・紀野真人)。
 “1993 秋 国映株式会社 製作”大書開巻、滅茶苦茶に走り回る8mmモノクロ。芸のない導入で恐縮だが、実際同じやうなアバンを採用してゐるゆゑ仕方がない。全篇を貫きはするゐろはに京子のモノローグで、「子供の頃の夢はひとつだけ、直美と一緒にゐることだつた」。となると長馴染の村瀬友子(ゐろはに)と旧姓不明の直美(林)は、高校三年の時百合の花を咲かせる。蜜月は二年、直美に男が出来る。大学卒業後一年、直美は結婚。式にも出席しなかつた友美の、「以来私達の関係は途絶へた、直美は私の前から姿を消した」なる絶望的な独白に続いて、公開題ママのタイトル・イン。
 戸田物産営業課に勤務する木島郁夫(紀野)に、面識の一切ない友美からしかも職場に電話がかゝつて来る。雲を掴む遣り取りを通して喫茶店「シャルマン」でまんまと待ち合はせた郁夫を、友美はザクザク捕獲。事後シャワーを浴びる郁夫の手帳から、不倫相手の個人情報を抜く。郁夫が、直美の夫だつた。
 配役残り、登場順を時間差で前後して吉行由美が、郁夫の不倫相手・康子、元同僚。佐野和宏は、康子の夫で郁夫の友人でもある藤田武司。藤田家に電話をかけた友美が、康子不在と知るや切るカットから吉行由美と紀野真人の絡みに直結する、ジャンル上鮮やかかつ悪意に満ちた繋ぎと、郁夫が地雷を踏んだことに漸く気づいた、劇中三度目のシャルマン。二度の積み重ねが活きる、伝票クロスは素面で見させる。秋山ひなこは、脱獄後!直美を求め彷徨ふも遂に行き倒れた友美を、拾ふ女、この人もリリィ族。その他大学二年時の直美彼氏に加へ戸田物産×シャルマン要員が、若干名見切れる。
 改めて、あるいは今度こそサトウトシキ。国映大戦第八戦は、目下広く流布する「ナオミ 気持ちよくてとろけさう」―素のDMMにもこのタイトルで入つてゐる―といふのが、何題なのかよく判らないサトウトシキ1993年第二作。因みにオーラスを飾る原題は「ナオミ」で、1998年新題が「ペッティング・レズ 気持ち良くてとろけさう」、単館公開とかされたのかな。『PG』―前身の『NEW ZOOM-UP』―誌主催のピンク大賞(第六回)的にはベストテン一位と監督賞、林由美香の女優賞に小西泰正の技術賞までは兎も角、ゐろはに京子と吉行由美の新人女優賞には軽く驚いた。ゐろはに京子はさて措き吉行由美(現:由実)は―jmdb漏れの―何かありさうにも思へたが、別館を探してみた限りでは、今作以前の出演作は確かに見つからなかつた。
 あるいは容貌が惹起する、業の深さを睨んだキャスティングなのか、ルックスは前田日明似ながら、適度に肉感的で超絶美麗なプロポーションを誇るゐろはに京子に、公称二十八にしては何故か後年よりも年増に見えつつ、爆乳は矢張り大いに悩ましい吉行由美。豪華四番手も放り込み、数は潤沢に打つのだから、もう少し即物的に寄るなり攻め込むなりしろよといふ不満さへ強ひて押し殺せば、国映作にしては裸映画としてそれなり以上に安定する。所謂、締めの濡れ場といふ奴は存在しないけれど。
 尤も、お話の方はガッチャガチャ。友子が都合二度、正体不明の捜索力を発揮するのはそれをいつては始まらないにせよ、何故藤田が国家権力の管理下を離れてゐるのかを最大の謎に、超飛躍の連続で俳優部の三分の二が鬼籍に入る展開は正直大概大雑把。始終の縦糸を成す、内容が漠然としてゐる以前に、ゐろ京の口跡が挙句どうにもかうにも覚束ないモノローグに劇中世界を紡ぐ統合力は望むべくもなく、端的に捉へ処を欠いた印象は否み難い。そもそも、ポスターから偽つてもゐるものの、少なくとも蓋を開けた実際の本篇は直美といふよりもビリング通り友子の物語。友美は無理筋は無理筋なりに一本調子な一方、都度都度の行動原理から甚だ謎な、詰まるところ友美の動因としてしか機能してゐない直美役の林由美香が、実質的にはヒロインでないにも関らず―主演―女優賞に輝いたのは、由美香ならばほかの映画も幾らもあつただらうと呑み込むか言ひ包められなくもないとはいへ、ベストテン一位と監督賞は如何にもなこの頃の空気が如実に窺へると受け取る、もしくは臍を曲げざるを得ない。小屋で観てゐたら画の力にチョロ負かされてゐた可能性は大いに留保出来るが、この期に配信動画で見る分には、直截に名前で持ち上げられたとでもしか思へない一作である。


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 「レイプ・ショット 百恵の唇」(昭和54/製作:日活株式会社/監督:藤井克彦/脚本:播磨幸治/原作:響京介/プロデューサー:細越省吾/撮影:水野尾信正/照明:矢部一男/録音:福島信雅/美術:林隆/編集:山田真司/助監督:斉藤信幸/色彩計測:森島章雄/現像:東洋現像所/製作担当者:天野勝正/音楽:高田信/挿入曲:『甘いわな』 作詞・作曲・唄 佐藤三樹夫 ビクターレコード『不在証明』より/出演:水島美奈子・飛鳥裕子・山口美也子・宇南山宏・堀田真三・阿部徳昭・高橋明・島和廣・田辺治郎・久米観児・織田俊彦・麿のぼる・松風敏勝・溝口拳・小見山玉樹・佐藤了一・北川レミ・楠本達彦/技斗:大平忠行)。出演者中、織田俊彦から佐藤了一までと楠本達彦は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 「一級品ね彼のお色気」といふ女に、男が「彼つて誰だい?」。返つて来た答へがまさか、でも当時的にはないのか。兎も角返つて来た答へはジュリーで、ドヤ顔で流し目を呉れる全盛期ジュリーが―スチールで―ドガーンと飛び込んで来る開巻に圧倒される。こんな自由で許されるんだ、映画。愛撫の接写を一頻り連ねた上で、今度は男が「あの目あの唇一級品だぜ」。「百恵のことでせう」といふ女に対し、男は「あれは禁断の木の実」。セクシーな唇に、“唇”のみ赤く発色するタイトル・イン。唇からカメラが引くと飛鳥裕子の馬面が現れ、些かならずズッコケる。
 何処そこテレビ局―のちに東京12チャンネル(現:テレビ東京)が実名登場―の第三スタジオから、売り出し中の歌手・三木洋子(水島)が所属する中小芸能事務所「星野プロダクション」社長の星野礼二郎(宇南山)と、マネージャーといふよりはボディガードの田所(堀田)とともに収録を終へ出て来る。三木洋子が小見山玉樹&麿のぼる以下の芸能記者に軽く囲まれる一方、トップ屋の三宅透(阿部)は三木洋子のシャブ中疑惑に関して星野に直撃取材を敢行、田所に殴られる。三宅のハチャメチャな手法を戒める、何気な見せ場の設けられるコミタマで、当サイト的には木戸銭の元は取れる。出入りする、こちらも大絶賛実名登場「ミリオン出版」(昭和51年七月設立)の編集長(織田)が寄こした原稿料が思ひのほか安く、いよいよ一山当てる腹を括つた三宅は、男女の仲にある編集者・早川牧子(飛鳥)に、三木洋子を狙ふ胸の裡を打ち明ける。
 配役残り、三木洋子はやんごとなきフィクサー(不明)に寵愛され、溝口拳と高橋明は配下の実働部隊。この二人がゐて、中平哲仟がゐないのは矢張り寂しい。ほかにこれといつた女の登場人物も見当たらない、北川レミは三木洋子特需で沸く星プロで電話を取る女?男の方は確か松風敏勝。そんな最中の深夜、マンションに帰宅した三木洋子が三人組に拉致される一大事が勃発。田辺治郎は、最初にサインを求める風を装ひ三木洋子に声をかける、今でいふオタ風の好青年・トンボ、ヨーヨーを適当に振るロングがイカす。島和廣と久米観児はその隙に二人で田所を襲撃する、リーダー格の信次と、大体グラサンを外したドラムウルフなゴロウ。追跡するもトンボの駆るジープにまんまと撒かれた三宅は、貼られてあつたステッカーを頼りに横須賀に。「あんたスカぢや見かけない顔ね」、今では成立し得まいハクい台詞をキメる山口美也子は、三宅が超絶の嗅覚で適当に敷居を跨いでみたBAR「PoPoRo」のママ・コロン。佐藤了一はロスト、終盤三宅のヤサを高橋明・溝口拳と急襲、最強の戦闘力を窺はせる岸田森系の男とフィクサーの何れかが、楠本達彦?
 原作の響京介がポスターには“(スポニチ出版刊)”とあるゆゑ、恐らくスポーツニッポン紙に連載されてゐた小説か何かを基にしたと思しき、藤井克彦昭和54年第二作。タイトルに“百恵の唇”とまで冠しておきながら、山内百恵も登場しない及び腰なり、結局は強大かつ無慈悲な力の前に、個人が成す術なく捻り潰される無体な物語はこの際さて措き、出し抜けに弾ける中盤が今作の白眉。凌辱の一夜明け、破かれた衣服を針仕事でいそいそ直すトンボの傍ら、洋子は目覚める。洋子本人が折角籠絡を試みてゐるにも関らず、時間になるや三木洋子が出演する歌番組に熱中する、即ち生身の当人もそつちのけでブラウン管―の中の虚像―に没頭するトンボの造形が超絶。要は“オタク”といふ括りの有無があるのみで、ひとつの偏好もとい偏向した人間像としてはとうの昔に確立されてゐたにさうゐない点に、改めて括目させられる。加へて、あるいは火にガソリンを注いで。「PoPoRo」地下に乗り込んで来ての、殆どレス・ザン・ヒューマニティーな田所のフランケン感炸裂する暴れぶりと、無闇矢鱈にデストロイの限りを尽くした末の、馬鹿みたいに呆気ない死に様が爆発的に面白い。鮮度を失したかに見えた展開が、突発的なり偶さかにせよ熱を帯びる。「お前なんかに洋子ちやんを渡すか!」、果敢に蟷螂の斧を振りかざし、まんまと返り討たれるアイドリアンの姿にも、止め処なく流れよ、ピンクスの涙。尤も田辺治郎と堀田真三に山口美也子が退場してしまふと、如何せん魅力に乏しい男主役を、ポスターの決定力は劇中終ぞ感じさせない水島美奈子もカバーしきれず。溝拳と高橋明に自宅をインベイドされた、飛鳥裕子が如何なる素敵に酷い目に遭ふのかといつた品性下劣な期待は見事にスルーして済ますまゝに、結局終盤は既定の尺も幾分以上だか以下に持て余す。兎にも角にも、昭和54年を現在の視点で無造作に裁断すると、直截に今作の致命傷はグルッと一周しすらしない程度にどうしやうもなくダサい佐藤三樹夫(ex.ルパンⅢ)。もしも仮に万が一そこでノレてゐたなら、全く違つた輝きが見えて来るのかも知れない。


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 「白衣の妹 無防備なお尻」(2018/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/しなりお:筆鬼一/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/録音:小林徹哉/音楽:友愛学園音楽部/助監督:小関裕次郎/監督助手:植田浩行/撮影助手:高橋草太/照明助手:赤羽一真/題字・食事:広瀬寛己/スチール:本田あきら/整音:日活スタジオセンター/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:桜木優希音・櫻井拓也・しじみ・松下美織・山本宗介・小林徹哉・小滝正大・広瀬寛巳・鯨屋当兵衛・なかみつせいじ《写真》)。出演者中、なかみつせいじは本篇クレジットのみ。キャスト・スタッフをそれぞれ一緒くた、しかも瞬間的な不親切仕様のクレジットは、サヴァンでもないと読めねえよ。
 川辺をチャリンコが、左から右に走るロング。内科と整形外科を診察する藤村医院、看護師生活をスタートする島崎絵里(桜木)が、イケメン院長の藤村光夫(山本)に御挨拶。今度は右から左に逆走して、多呂プロ感覚の、といふかそのものの子供じみたレタリングによるタイトル・イン。昔から謎だつたヘタクソ経絡図の主が、広瀬寛巳である事実がこの期に判明する。この期にもほどがあるのは兎も角、ところで今作の封切りは、昭和天皇に扮した新作ごと荒木太郎が封殺された事件の四ヶ月後。為にする勘繰りを憚りもなく吹くが、加藤義一なりの、出来る限りのエールであつたのであらうか。
 目下一人住まひの実家に帰宅した絵里が、新生活を報告する亡父の遺影でなかみつせいじが駆け抜け、患者が多くくたびれた藤村の肩を、絵里が揉んであげる一幕。「もつと下を」と乞はれた末にあれよあれよと尺八まで吹かされた挙句、人外に大量な顔射を浴びメガネを汚される。イマジンに絵里が囚はれる、加藤義一が関根和美の向かうを張る微笑ましいプチ見せ場を経て、大体藤村医院と自宅を往復する絵里が帰宅したところ、高校中退後家出、なかみつせいじが死去した際にも帰らなかつた姉の良絵(しじみ)が、不倫男に捨てられたと不意に戻つて来てゐた。
 配役残り松下美織は、藤村と二人分の弁当をチャリンコで買ひに出た絵里と、乗用車で交錯する中学時代の同級生・小笠原亜弓。お嬢様造形、といふか設定である亜弓の綽名はそのまんまお嬢で、夢見がちな絵里がファンタ。終盤桜木優希音の決定力で「悪い!?夢見ることが」なる出し抜けに熱の籠つた台詞も放つものの、妄想癖を夢想に捻じ込むならば別だが、劇中絵里が夢見がちである旨示す描写は特にない。それはさて措き、清々しく御都合、もといタイミングでその場に通りがかる櫻井拓也は、この人も中学の級友・正岡栄太郎。綽名はガリだが当然ガリガリのガリではなく、ガリ勉のガリ。イコール小関裕次郎の鯨屋当兵衛は、ギックリ腰の患者・小村。腰部に注射を打たれる小村の傍ら、絵里が「私も先生に注射されたい(*´Д`*)」と心中秘かに身悶えるのは、アッタマ悪いけどその分琴線にフルコンする名カット。量産型娯楽映画といふ奴は、そのくらゐでちやうどよいと当サイトは常々考へる。ダサさなり馬鹿さ加減の内側に、臆することなく飛び込んで来る瑞々しく弾けるポップ・センス。いよいよ以て、加藤義一がかつての輝きを取り戻しに来てゐるのは否み難いのでは。そして、ロマポの座敷童・コミタマこと小見山玉樹と並ぶピンク映画の妖精・広瀬寛巳が、右足を骨折した往診患者・横田、下の名前は彰司?絵を嗜み、モデルに応じる形で桜木優希音が色んなポーズの裸を大量に披露するサービス乃至ボーナスタイムに貢献。小滝正大は、この男もこの男で絵里が帰宅すると家に上がり込んでゐた、良絵の不倫相手で結局離婚した森潤一。何れにしても見切れる程度の役にせよ、名あり配役となるとピンク限定では何と“ジャスティス”四郎の「痴漢暴行バス しごく」(1998/脚本・出演・監督:荒木太郎/主演:河名麻衣)まで遡る―その後2002年に薔薇族の「天使が僕に恋をした」(脚本:後藤大輔/主演:今泉浩一)を挿む―小林徹哉は、栄太郎の旅館を営む父親・龍次。
 国沢組で精力的な大暴れを展開する桜木優希音が、初めて外征した加藤義一2018年第二作。至極当たり前の話でしかないのかも知れないが、監督が変れば印象もガラリと変るもので、ドヤァ!と威圧的な国沢実映画からは一転、フォクシーなおメガネもエクストリームに、晩熟で不器用なある意味恋愛映画の王道ヒロインに大変身。傍若無人な姉―と森―に業を煮やし、一晩転がり込んだ正岡旅館(大絶賛仮称)にて途方もない深酒を浴びてなほ、一升瓶を縫ひ包みのやうに抱へて離さない桜木優希音が、キュートでキュートであまりにキュートで死ぬかと思つた。良絵が最初に形作るひとつも恋が実らない姉と、恋ひとつしたことない妹の魅力的な物語は、公称Gカップのオッパイと―親の―財力とで藤村を籠絡する亜弓に地団太を踏む絵里に、栄太郎は気が気でない四角関係へと華麗にハッテンもとい発展。非現実的に底の抜けたシークエンスでさへ、妖精性を如何なく発揮したひろぽんが撃ち抜く確かなファンタジーで猛も通り越した爆加速。桜木優希音がメガネをかけてゐた方が数段可愛い、一旦平板か怠惰に嵌つたかに見せかけた最大の難点をも力技で挽回してみせる、かつ櫻井拓也でなければ形にし得まい、画期的にダサい告白からカット跨いで絡みに突入する繋ぎが兎にも角にも超絶完璧。麗しく大完遂したのちも尺を惜しまず、美しい劇伴の鳴る中チュッチュチュッチュ接吻を交し続ける二人。これよこれ、これが締めの濡れ場といふ奴だろ。濡れ場にエモーションの頂点を持つて来る、ピンクで映画なピンク映画の最も然るべき姿を、今回加藤義一は見事にものにしてのけた。2019年は九年ぶり三度目の新春痴漢電車も任された、加藤義一の復調傾向依然堅調。“しなりお”だとか肩書を穿つた脚本家がウザいか何か知らんが、冗談ぢやないぜ、全体何時まで名前で映画を観てゐたら気が済むんだ。


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 平成30年映画鑑賞実績:108本 一般映画:19 ピンク:81 再見作:8 杉本ナンバー:20 ミサトナンバー:1 花宴ナンバー:2 水上荘ナンバー:2

 平成29年映画鑑賞実績:138本 一般映画:9 ピンク:122 再見作:7 杉本ナンバー:23 ミサトナンバー:2 花宴ナンバー:5 水上荘ナンバー:8

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。そのため、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。それと一々別立てするのも煩はしいので、ロマポも一緒くたにしてある。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)傾向がまゝあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて、戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかゝれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が、“水上荘ナンバー”は御馴染み「水上荘」が、劇中に登場する映画の本数である。


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 「赤い欲情 はめ上手」(1997 秋/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:上野俊哉/原案・脚本:小林政広/企画:朝倉大介/撮影:小西泰正/照明:渡波洋行/音楽:E tone/編集:金子尚樹《J.S.E.》/録音:シネ・キャビン/助監督:榎本敏郎/監督助手:森元修一・塚本敬・西島裕之/撮影助手:田宮健彦/照明助手:溝渕健二/製作デスク:女池充/応援:岩田治樹・勝山茂雄/タイミング:武原春光/タイトル:道川昭/現像:東映化学/製作協力:モンキータウンプロダクション・アウトキャストプロデュース/協力:佐々木正則、上野秀司、荒川栄二、田尻裕司、村井章人、サトウトシキ、スノビッシュ・プロダクツ/出演:田中要次・赤津真喜子・伊藤猛・福俵満・小林節彦・穂村柳明・河名麻衣)。
 “1997 秋 製作 国映株式会社”大書開巻、秋!?そもそもの画質から粗い以上断定しかねるが、8mm撮影ぽいモノクロで二両電車が田舎駅に到着。駅舎真正面も抜かれる割に、駅名も判読不能。町田康にしては田中要次にしか見えない男が、自販機でボスッたりしながら橋の上に。迎へに来たステーションワゴンから降りて来た男も隈本吉成にしては小林節彦にしか見えず、徐々に嫌な予感が鎌首もたげつつ、兎も角35のモノクロから、画面に色もつく。助手席で田中要次がアメリカ民謡の「峠の我が家」(中山知子訳詞)を口遊み始めた上で、「赤い欲情 はめ上手」そのまゝのタイトル・イン。やられた、素のDMMにも仕出かされた、改めて後述する。
 タイトル明け敢然と走るのは、若い頃の志村な髪型の伊藤猛と、そんな伊藤猛より髪の短い穂村柳明(a.k.a.穂村エリナ)の濡れ場。裸映画の本分は、案外か辛うじて忘れてゐない。到着するなりエッサカホイサカな二人に、河名麻衣が呆れた溜息をつく。小林節彦の運転する車が、そんな山間の別荘に到着。状況を整理すると七年のお勤めを終へ出所した木村(田中)を、映画学院の同級生であつた安斎か安斉か安西辺り(小林)がお出迎へ。安斎の妻・アキコ(河名)と、同じく同級生の清水(伊藤)とこの時点では未だ三度目の妻ではないヒロコ(穂村)が待つ別荘に招く。酒もやめ付き合ひの悪い一夜を過ごした木村は、翌朝安斎と清水に読ませたいものがあると、七年間に書き上げた脚本「夢の後始末」(脚本家名義は木村ノブ)を放つて寄こす。
 配役残り福俵満は、今は洋画配給会社に勤務する安斎が、飯を一緒に食いひに行く―だけの―同僚。ついでに、清水はテレビを主戦場とするシナリオライター。ネタバレしないと外堀を埋められない赤津真喜子は、木村をセイブする水中遊泳好きの女。
 国映大戦第七戦でVHS題?は「赤い欲情 夢の後始末」の、サトウトシキ1997年第一作「赤い犯行 夢の後始末」(脚色:小林政広/主演:町田康)を見ようかとしたところ、出演者で町田康と伊藤美紀のタグづけに監督もサトウトシキとしてあるにも関らず、蓋を開けてみれば出て来たのは十ヶ月後に封切られた上野俊哉による続篇であつたでござるの巻。別に上野俊哉を固め見する気もないんだがこの際、素頓狂な引きの強さでも言祝ぐかいな。
 伝へ聞く「赤い犯行 夢の後始末」の内容を、少なくとも忠実にトレースしてゐるらしき木村ノブ作「夢の後始末」を、頻りに清水がいいホンで海外の映画祭で賞も取れる―けれど売れない―と見てゐてムズ痒くなるほど再三称賛してのけるのは、生温かく見過ごすならばこの際微笑ましい御愛嬌。ありがちな因縁を抱へた三人の男によるドラマは、一旦一人が彼岸に強制退場。再び三人になる魔展開で驚愕のスイングを振りかけるものの、結局は赤津真喜子の登場で底が抜ける。男の愛なんて卒業よと、カッコよく安斎に人生ごと三下り半を叩きつけたアキコが、邪魔な男供を始末したカット跨いでヒロコと大輪の百合の花を咲かせる繋ぎは鮮やかな反面、少し戻つてキナ臭い過去を清算した安斎と清水が、各々のパートナーとオッ始める件。車中の安斎夫妻と無理から並べた、車のドアがあくまで閉まらないやう体を預けたヒロコと清水の立位後背位は、プロの仕事とは思へない不自然極まりない画に匙を投げた苦笑も禁じ得ない。“日本映画なんて全然詰まんないぢやない”、“下らなくて子供つぽくて”と悪し様かつ拙速に全否定して済ます赤津真喜子に対し、木村が“さうぢやない映画”と“昔のフランス映画やアメリカ映画それに日本映画”と無様に擁護―出来てない―する遣り取りも、小林政広は自らの底が浅いか脇の甘い限界を露呈するのがそんなに楽しいかと呆れるほかなく、見るに堪へないほど酷いが、一時間も跨いだタイミングでまさかの新東宝マークを飛び込ませての、劇中映画版「夢の後始末2」を、挙句大した中身でもないのに三分半チンタラ空費するに至つては、直截にナンジャコリャ案件。切つてのけた啖呵も、結果出来上がつた代物も惰弱な、始末に負へない一作。本質的にさういふ物言ひはするべきでないと思つてゐるゆゑ、幾ら筆を滑らせるにせよなッかなか憚るが、今回ばかりは小屋で観てゐなくてよかつた。

 因みに、あるいはおまけに。ex.DMMは山﨑邦紀のところに遠軽太朗第三作が入つてゐたりもするので一応探してみたが、結局、「赤い犯行 夢の後始末」は素のDMMにも入つてゐない。PGの「ピンク四天王 ピンク映画監督作品一覧」頁に貼られてあるリンクを踏んで見られるのは、だからサトウトシキの「赤い犯行 夢の後始末」ではなく、七福神上野俊哉の「赤い欲情 はめ上手」である。・・・・四天王とか七福神とか、何かもう、まあいいや。


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 「やくざ観音・情女仁義」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:神代辰巳/脚本:田中陽造/企画:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:川原資三/録音:高橋三郎/照明:高島利隆/編集:岡安肇/音楽:あがた森魚/助監督:海野義幸/色彩計測:田中正博/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:岡崎二朗・安田のぞみ《新スター》・絵沢萠子・丘奈保美・坂本長利・松山照夫・高橋明・薊千露・永井鷹男・宝京子・五條博・中平哲仟・田畑善彦・橘田良江・水木京一・溝口拳・吉野あい・北上忠行・氷室政司・小見山玉樹・谷文太・吉田朗人・佐藤了一・庄司三郎・山岡正義・賀川修嗣/刺青:河野光揚/技斗:田畑善彦)。出演者中、宝京子以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 見世物小屋の口上と、パーマ頭に鼻髭を蓄へた精悍な顔立ち、JAC(現:JAE)感溢れる旅の僧・雲水嵐雪(松山)が川に釣り糸を垂れる。仏の御心か、雲水が釣り上げたのは臨月の土座衛門(多分宝京子)。念仏を唱へかけ、胎児はまだ生きてゐるのに気づいた雲水は、男児を取り上げる。二十三年後、阿弥陀寺に預けられ成人した清玄(岡崎)の、滝行の画にタイトル・イン。明けて「おおい清玄、女を買ひに行かう」と捧腹絶倒の本篇開巻パンチをカマすのが、我等がコミタマことロマポの座敷童・小見山玉樹、ピンクの妖精が広瀬寛巳。庄司三郎も格子越しに見守る中、観音様と出生を茶化した生臭坊主(小見山)をシメる清玄を、窘める阿弥陀寺の庵主・阿闍梨(賀川)曰くに「クソだよ、仏とはクソだ」。禅問答が、パンクの領域に突入する。引き続き汲み取りに従事する清玄挿み、安田のぞみを乗せた車のハンドルを握る五條博が、「後ろ走つてるのは藤原興業の車ぢやないですか?」。土着の斉田組組長の一人娘・斉田美沙子(安田)が、五條博をお供に母親の三回忌で阿弥陀寺をお参り。そこを斉田組と対立する新興の藤原興業の、桃井か百井(溝口)・風間(不明)・ヒデ(中平)が襲撃。美沙子を拉致しようとする桃井らと、肥桶を担ぐ清玄が鉛と糞の銃撃戦。一旦撒いたところで、お礼にと美沙子が清玄に膳を据ゑる十三分半、遅れ馳せるにもほどがあるクレジットが漸く起動。事後美沙子の父親が、斉田組組長・斉田清明であると聞かされた清玄は絶望する。二十三年前、清明が手をつけた通ひの女中・チヨコ(が土座衛門)を、美沙子の母である本妻(遺影も見切れず)は川に突き落とす。チヨコは死にながらも雲水に取り上げられたのが、清玄即ち美沙子の異母兄であつたのだ。「お仕舞ひだ」、「私の中の仏が死んだ」と捨て鉢になつた清玄は、因縁をつけるべく再び現れた桃井らを手鎌で返り討ち。右手を手首から落とされたヒデが、まんまフック―船長―化して後半再登場するのには驚いた。
 辿り着ける限りの膨大な配役残り、永井鷹男は、斉田組若衆頭の中谷、美沙子とは男女の仲。田畑善彦は、美沙子を訪ねた門前、清玄と悶着になる斉田組の衆。そして坂本長利が、兄妹の父親・斉田清明。清明が美沙子に衝撃の事実をサクッと告げたのち、超絶唐突なものの弾みで右目を失明する件にも度肝を抜かれた。結論を先走ると、抜かれてばかりの映画ではある。気を取り直して絵沢萠子は、彷徨する清玄と懇ろになる、民謡酒場「満月」のホステス・多恵。そして張りのある発声が映える高橋明が、彫師(矢張り不明)の下で菩薩を背負つた清玄とミーツする、藤原興業組長・藤原銀三。丘奈保美は、藤原興業に草鞋を脱いだ格好の清玄が抱く芸者。満月にて、清玄が斉田清明を射殺する一幕。組長の傍らに控へる清水国雄は恐らくクレジットレス、変名臭い謎名義も見当たらない。a.k.a.恵千比絽の薊千露は、美沙子の幽閉先を教へたのに清玄にブチ殺される、斉田邸の現女中・友子。シャワー中に襲はれ一貫して全裸―with前貼り―での出演、これぞ裸一貫、黙れ。ヒデのフックを装ひ、藤原邸も襲撃した清玄に瞬殺されるのは佐藤了一。最後に吉野あいが、助けた瀕死の清玄に凌辱されるおさげ髪の少女。事後水面に散る花弁がありがちな破瓜のメタファーかと思ひきや、大量に数が増えるゆゑ死かもと面喰ふ。見れば判る筈の水木京一を、ロストしたのは重ね重ね残念無念。
 尺が八十四分もある、神代辰巳昭和48年第三作。ポスター全面を飾るのみならず、本来ならば裸映画のビリング頭に意表を突き飛び込んで来る岡崎二朗(東映から日活に移籍するも、ロマポ路線に厭き杯を返す)の、絡みは正直アップアップ。妹と乳繰るため破戒を通り越した破滅僧が最終的には二つの組を壊滅させるに至る破天荒な物語は、どちからかといはずとも裸映画どころかオーバーキル系のアクション映画。確かに所々では絵画的かつ叙情性の爆裂するショットも抜きつつ、絵具みたいに赤い血糊をジャブジャブ使用するインパクト勝負の、支離滅裂スレスレにガッチャガチャな展開でショッキングなシークエンスを連ね倒すに終始する一篇は、頭に三角マークをつければそのまゝ通るやうにしか映らない。寧ろ、コミタマとサブが辛うじて今作を、日活に繋ぐとさへいへるのかも。死体の山を築いてなほ飽き足らないラストも大概なのだが、清玄が美沙子をシャブ漬けにした藤原の首に、ゴロンと断頭するまで連射を撃ち込むのには流石に頭を抱へた。面白い詰まらないでいへば闇雲に面白くはある、本隊ロマポに毒々しく狂ひ咲いた徒花と目して宜しいか。名作と世評は高い昭和52年第一作「悶絶!!どんでん返し」(脚本:熊谷禄朗/主演:谷ナオミ・鶴岡修)と二本きりしか観てゐない上に、悶どんはサッパリ理解出来なかつた与太者につき、神代辰巳を如何に評したものか未だといふかこの期にといふか、兎も角完ッ全に手探り。


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 「十八歳・のぞいて開く」(1996/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:如月吹雪/撮影:柳田友貴/照明:真崎良人/編集:フィルム・クラフト/助監督:佐藤吏/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワ・プロ/録音:シネキャビン/現像:東映科学《株》/出演:河原めぐみ・青井みずき・桃井良子・残間ゆう子・坂入正三・芳田正三・志良玉弾吾・白都翔一)。初めて見た芳田正浩の芳田正三名義は、恐らく、あるいはどうせサカショーに引き摺られた単なる誤植にさうゐない。
 麗しき七色王冠開巻、一人娘で高校三年生の森ひなこ(河原)が、父・一郎(坂入)が再婚した両親の寝室を覗く。残間ゆう子が、未だひなこが母とは認めてゐない後妻の信子。残間ゆう子と坂入正三による、コッテリとした濡れ場。無闇に揺れるカメラも兎も角、合はせる気のサラッサラ窺へないリップシンクが清々しい。ヤリ遂げた上で校舎外景、ひなこの担任・西岡(白都)のスパルタ補習。“このクラスの平均点を著しく下げた貴様等”と痛罵される対象者は、教科書よりも鏡を見てばかりのコウダ真美(青井)に、留年生活幾星霜の池田篤(志良玉)。見覚えがウッスラなくもない志良玉弾吾(非佐藤吏)が、何者の変名であるのかには辿り着けず。そして、パパを困らせたいだとか子供じみた理由で、答案用紙を白紙で提出したひなこ。無防備に下衆い西岡を適当に言ひ包めたひなこを、皆で「やつたね!」と讃へてタイトル・イン。ここで久々につき改めて整理すると、青井みずきといふのは、子役時代に戻したらしい相沢知美(1997~/a.k.a.会澤ともみ)の裸稼業デビュー時名義。jmdbには今作以降の記述しかないものの、池島ゆたか1995年薔薇族込みで第四作「色情女子便所 したたる!」(脚本:岡輝男/主演:柚子かおる=泉由紀子)の存在が、少なくとも確認出来てゐる。一目見ると誰でも相沢知美と判るほど顔は完全に出来上がつてゐる反面、首から下は未成熟色濃くガリガリ。所々尻が青いのが、それは痣か何かなのか、まさかの蒙古斑なのか。
 配役残り、豪華にも純然たる絡み要員の桃井良子は、ひなこ・真美・篤が廊下から固唾を呑む教室にて、西岡に喰はれる教育実習生。ひなこの豪快な和姦見解で、ザクッとスルーされる無造作な展開も、絡み要員にはグルッと一周して相応しい。だから正三でなく芳田正浩は、ひなこの家庭教師。

 残弾数、ゼロ!

 終にバラ売りにすらex.DMMに未見ピンクがなくなつた、小林悟1996年第一作。後生だから、新着させて貰へまいか、需要の如何は保証しかねるが。当サイトはまだまだ、もつともつと大御大が見たい。いよいよ以て、最終章のその先の、薔薇族の蓋を開けるほかないのか。
 性懲りもない繰言はさて措き、ex.DMMに脚本を絶賛するコメがついてゐたのを、遂に―最も単純な確率論からは―小林悟が四、五本は撮つてゐておかしくない、百本に一本の一作に巡り会へたのか。とときめきかけたのは、勿論糠喜び、当然糠喜び。糠喜びに決まつてんだろ、学習能力といふ言葉を知らんのか間抜け、僕だけど。ひなこの進路相談で再会した元カノである信子を、今でいふリベンジポルノで脅迫する形で西岡を全方位的な絶対悪に据ゑてみせた辺りは、小林悟の映画にしては上々の構成かと南風を吹かすにせよ、依然脚本を絶賛するには果てッしなく遠い。全体コメ氏は、何の映画を視聴されてゐたのか。時制が謎な西岡が信子を手篭めにする件に、篤に続き西岡に撃墜された真美の、自主退学をひなこが必死に思ひ留まらせる一幕が直結される木端微塵な脈略の大御大編集にクラクラ来てゐると、帰宅したひなこが、事後に直面するとかいふ寸法。断じていふが、そこまで見ないと絶対に話が繋がらない。強ひてポリアンナばりによかつたを探すばらば、挿入と連動して劇伴が鳴り始め、完遂とエンド・マークの“完”がシンクロするラストの裸映画的―には―磐石くらゐ。当面最後の一本も、相変らず何時も通りの大御大映画。余韻なり感傷に浸る余地を欠片も残さない徹底的、あるいは完膚なきまでのドライさに、寧ろ小林悟の小林悟たる所以を見るべきなのか。それでも俺は、小林悟が見たい。


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 「デコトラガール 天使な誘惑」(2018/制作:㈱ANGLE/提供:オーピー映画株式会社/監督・編集:柿原利幸/脚本:川﨑龍太・唐戸悠・木村洋輔/プロデューサー:藤原健一/音楽:與語一平/撮影監督:高橋まなぶ/録音:山口勉/助監督:田中章一・菊嶌稔章/カラリスト:佐藤智/MA:若林大記/ヘアメイク:Kaco/スチール:本田あきら/撮影助手:羽鳥晃/録音助手:廣木邦人/演出部応援:冨田大策/制作部応援:貝原クリス亮/仕上げ:東映ラボ・テック㈱/ロケ協力:㈱アートワークスラパン/車両協力:黒潮船団・宮内如弘/出演:天使もえ・可児正光・桜ちなみ・遠藤留奈・難波拓也・佐藤日出夫・佐藤良洋・染井佳之・宮内龍二・服部康樹・Odori Ali・板橋正樹・西條祐・森羅万象)。出演者中、宮内龍二から西條祐までは本篇クレジットのみ。
 早速白々しく飛ぶ空は最早兎も角、ひとまづブロブロ重低音がバクチクするデコトラ。一欠片の脈略もなく苛つく天使もえが、ハンドルを握る。一方JR東日本内房線大貫駅、スーツ姿の可児正光がショボ暮れた風情で、キャリーケースを引き降り立つ。見た感じそんな道の真ん中を歩いてゐた訳でないにも関らず、デコトラと可児正光が軽く交錯。天使もえが改めてアクセルを踏み込むと、プルーンなタイトル・イン。何某かやらかしたのか、今野廉太郎(可児)は東京グローバル電工本社から子会社に出向。金子茂(佐藤日出夫)以下、出入りする運送会社のウェーイな連中がキャッチボールに興じる子会社(社名不詳)に今野が辿り着くと、新人研修時代世話になつた所長の中村静雄(森羅)は、双方納得尽の上伊東美穂(桜)の着替へを覗き垂涎してゐた。リアクションは甚だ冷淡な赴任の挨拶もそこそこに、美穂が今野に投げキッスを飛ばすや即カット跨いでガンッガン濡れ場突入。中村がそれを窃視して燃える関係性が、果敢に行間をスッ飛ばし豪快に成立する。ナベ2017年第一作「揉んで揉乳《もにゆ》~む 萌えつ娘魔界へ行く」(脚本:増田貴彦/主演:佐倉絆/三番手)・第二作「神つてる快感 絶頂うねりびらき」(脚本:波路遥/主演:あかね葵/三番手)以来のピンク第三戦で二番手に昇格した桜ちなみが、魅惑的な爆乳と数撃つ絡みで裸映画を担保する主力兵器。そんな最中、得意先の工場が閉鎖し仕事にアブれた高階凛虎(天使)が金子を頼つて現れ、今野と再会する。
 とりたてゝ大した物語もないゆゑ配役残り、堅気女優部ではあれ鬼どエロい遠藤留奈は、凛虎が夜はホステスのアルバイトもする、主に金子が入り浸るスナックのママ・さおり。オッパイまでは見せての、沁みるワンマンショーを大披露。最初で最後のピンク参戦で済ますには惜しい逸材、何とか吉行由実か浜野佐知辺りが捕まへて継戦させられないものか。難波拓也は、凛虎の元カレ・田代ユウジ。元々二人でデコトラを買ひながら、他の女を作つたユウジが消え―凛虎一人にローンを背負はせ―たといふ因縁。ユウジの背後に見え隠れする、国沢実2016年第一作「陶酔妻 白濁に濡れる柔肌」(脚本:高橋祐太/清水五郎名義)以来のピンク復帰を果たした佐藤良洋は、ユウジに貸し金を持つ笹崎裕太。ユウジがデコトラを金に換へようとする業者の井手口(染井佳之/何者かの変名かも)挿んで、菊嶌稔章が持ち前の強面で笹崎の部下に飛び込んで来る。そして最大級のサプライズ、竹洞哲也2009年第二作「妹のつぼみ いたづら妄想」(脚本:小松公典/主演:赤西涼/度会完名義)以来の大復帰を遂げた吉田祐健が、恐らく西條祐名義で、今野が本社帰還を賭けたインドからの視察団に随伴する多分本社の人。残りの面子は冷淡な子会社部が微妙だが金子以下の運送部と、インドから来日した外人部。無線で修羅場を金子に報告する、運送部がその中で一番目立つも特定能はず。
 「マジカル・セックス 淫ら姫の冒険」(監督:山本淳一/脚本:大畑晃一・山本淳一/主演:阿部乃みく)に続く、オーピー2018完全外様のピンク新規参入二の矢は、Vシネ監督の本篇デビュー作。半ば、あるいは事実上。ANGLE代表である藤原健一の、大蔵上陸作といつた色彩も否めず、さうなると長年の盟友である藤原健一を介したANGLE経由での、友松直之逆輸入的電撃帰還!だなんてトピックを、夢想してはいけまいか。
 記憶に新しい清水大敬2017年第二作「ハミ尻ダンプ姐さん キンタマ汁、積荷違反」(主演:円城ひとみ)はタイトル通りダンプにつき、関根和美の「デコトラ漫遊記」第二作「馬を愛した牧場娘」(2003/脚本:関根和美・小松公典/主演:秋津薫・町田政則)以来、実に十五年ぶりともなるデコトラピンクは、夜には煌々と電飾もカマすデコトラがそれなりに存在感を誇示しもするものの展開的には極めてフラットな、船頭が三人もゐるにしてはデコトラが山に登るどころか、セカンドでそこら辺を流した程度の一作。話題―と客足―は何処まで呼べたのか、今のところ二本共倒れて面白くも何ともない。水泡に帰しかけた交渉が、インド人がアートトラックと可愛いデコトラガールに喰ひついて一件落着、なる大団円?は子供も騙せないお粗末な一幕、腹の立つ意欲なり気力も失せた。乱打される桜ちなみのオッパイと、大輪の花は咲かせ損なひつつ遠藤留奈が確かに輝かせる大器以外には、役が小粒な佐藤良洋もさて措き吉田祐健(勝アカデミー五期卒/四期に中根徹)の変らず元気な様子が唯一の見所。に、してもだな。祐健と森羅万象が一つ納まるカットと来ると、熱核反応級のエネルギーが発生しておかしくない大イベントなのにと、心残りばかりが募る始末。全盛期の松岡邦彦がゐたらなあとか、死んだ子の齢を数へてみたり、死んでねえよ。


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 「マジカル・セックス 淫ら姫の冒険」(2018/制作:MARCOT/提供:オーピー映画/監督:山本淳一/脚本:大畑晃一・山本淳一/プロデューサー:井川楊枝/撮影:橋本篤志/照明:本間光平/録音:石井巧/助監督:森山茂雄/衣装:チバヤスヒロ/メイク:小林潤子《atrz》/特殊造形:土肥良成《はきだめ工房》・大森敦史《はきだめ工房》・新垣奈々子《はきだめ工房》/イメージボード:大畑晃一/劇中イラスト:高遠るい/編集・VFX:内田清輝/音楽:中村吉喜・石田智則/制作進行:神田明子・桐山トモユキ/車輌:浅海将大・深谷禰宜/撮影助手:赤尾郁哉/照明助手:酒井真子/ロケ協力:上野オークラ劇場・松村順・JCN目白スタジオ・茶色の小びん・池袋Gallery-O/協力:ファンスタープロモーション、他数社/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:阿部乃みく・璃乃・園田シンジ・あず希・川崎紀里恵・愛里るい・新美智・安部一希・希純正宗・安長博文・國津ヒロ・群馬牛雄・三浦ぴえろ・佐伯裕通・玉置太郎・伊藤康弘・ワニ完才・小野修・水野直・針原滋・久保新二)。決して追ひきれない速度ではなかつたのに、クレジットの情報量に爆死する。
 ど頭に飛び込んで来るのは、豪華にも大畑晃一の手によるラフ原稿、と女の嬌声。手洗ひの個室、原稿もそつちのけで事に励む齢の離れた男女と、隣の個室で固唾を呑む、マンガ家ルックの中太り。満知男(園田)が十回目に持ち込んだ原稿を、『コミック Do!スケベ』編集者の真壁ハリオ(針原)が、部下である新子(愛里)とセックロスしながら目を通、してないとかいふやゝこしい一幕。ほかにそれらしきロケーションも見当たらないゆゑ、この手洗ひ周りが上野オークラで撮影してゐるのかも。またしても没を喰らつた格好になつた満知男が、下手な意味ならリアルともいへるのか、マンガみたいに「ぐはー」と悶絶しつつ敗走してタイトル・イン。園田シンジの芸にならない過剰なメソッド以前に、開巻即脊髄で折り返して露になる馬脚に関しては、改めて後述する。
 満知男が住むのは、未亡人、では必ずしもないが旦那が長ッらく帰つて来ない、川崎紀里恵が大家の下宿。言ひ訳がましくトランスフォーマー系?のフィギュアなんぞも置いてあつたりするものの、「カブキングZ」(2008/監督:山本淳一)と「封印殺人映画」(2006/監督:ジェフ・マックイーン)に「ザ・カラテ3 電光石火」(昭和50/監督:野田幸男/主演:山下タダシ)のポスターが並び、机上には「地獄の逃避行」(1973/監督:テレンス・マリック/主演:シシー・スペイセク、マーティン・シーン)のVHSも見切れる満知男の部屋は、漫具がなければどちらかといはずともシネフィルの居室。ついでにアバンの出版社には、「ベースメント」(2016/監督:井川楊枝/璃乃出演)のポスターも。閑話休題、気を取り直して満知男が次回作に取りかゝらうとしたタイミングで、大屋が家賃の代りに、現に国土館大学土木学部道路標識学科の、最早尾崎セルフとでもしかいひやうのない尾崎・オブ・尾崎くん(久保)を喰ふ嬌声が轟然と漏れ聞こえて来る。結論を先走ると煽情性を爆裂させる川崎紀里恵の偉大なオッパイと、一件の現場応援を除き以後消息を絶つ、中川大資がやらかした「女子トイレ エッチな密室」(2014/脚本:小松公典/主演:由愛可奈)以来の久保チンが今作僅かな見せ場。再度閑話休題、こんなザマでは全然進まん、先は長いんだぞ。満知男の劣情が刺激されたところで、「チンコです、大きくなつてしまひました」と殆ど唯一正方向に機能するネタで飛び込んで来るワニ完才が、満知男の陰茎の擬人化、その名もどストレートにチンコくん。寧ろこここそが最大のファンタジーなのだが、満知男には、マンガ家としての前途を金銭的援助込みで応援して呉れる、可愛い彼女の麻家井鈴子(あず希)が。鈴子との新生活を夢見て、満知男はいよいよ気を入れ新作に。気づかぬ間にワンマンショーで宙に放つた精液の混入した、インクでペン入れした悪魔少女・アクマーニャ(高遠るい作)が、よもやまさかおまけに藪蛇な妹属性をも纏ひ満知男の前に実体化、あるいは三次元化(璃乃)する。アクマーニャの、満知男に対する呼称が何故お兄ちやんなのか、そこは流石か徒に盛りすぎだろ。ちなみに、地上アイドル勢の璃乃はビリング二位の高さであるにも関らず、そこそこ露出過多ではある悪魔コスを披露するまでで脱ぎはしない。
 配役残り水野直は、下宿―とミチコ―の周囲に出没する謎の男、素手で人体をスクラップにする箍の外れた戦闘力を有する。国沢実2017年第二作「ピンク・ゾーン 地球に落ちてきた裸女」(脚本:高橋祐太/町田政則大復帰作)に続くピンク第二戦となる阿部乃みくは、アクマーニャが満知男に用意した、心のない素体。アベミクボディに、アクマーニャが満知男の意識を移すとミチコが出来上がる寸法。藍山みなみスーパーライトといつた風情の國津ヒロが、満知男からミチコへの変身に連動して登場する、マンコちやんは流石に無理だつたクリちやん、堂々と文字にするなタコスケ。本篇クレジットのみの群馬牛雄から伊藤康弘は、満知男が鈴子と、ミチコもアクマーニャと行く喫茶店「茶色の小びん」要員、三浦ぴえろは先行する。なほ頭数は足らず、後にミチコを生温かく傍観するアクマーニャの傍ら妙にしつかり抜かれる、仏頂面で煙草を吹かす中年男もこの中に含まれるのかも知れない。安部一希と希純正宗は、ミチコをバイオレントにナンパするチャラ男・竹中ウジオと大西ゲテロウ。中盤この辺りから、迷走なり支離滅裂の取り返しがつかなくなる。そして絶望がピークに達する小野修が、ミチコに声をかける何とかクリエイティブアーティスト・GERO、名刺の馬鹿デカさは面白い。安長博文は、GERO製作の“人類最後の希望”とかいふサイボーグ・バルダム。頭部がほぼほぼザクヘッドなんだけど、サンライズに尻毛どころか尻子玉を抜かれるくらゐ怒られればいい。新美智は、ミチコの方から接近するストリートミュージシャン・岡村セイジ、苗字に自信がない。本職を連れて来ない限り基本この手のキャラクターを満足に形に出来ないのは、数十年一日で非音楽畑出身の映画監督が露呈するアキレス腱。MTV以前に、PV上がりの監督がゐたのかよといふ疑問にもなりはする。さうはいへ、MTV社が設立されたのもよくよく振り返るともう凡そ四十年前。いよいよ以て、昭和も遠くなりにけり。ついでにそれぞれバルダムとセイジで、Gallery-OとJCN目白を使用。
 ex.光GENJI SUPER 5の山本淳一しか知らないので大人しくググッてみると、こちらの山本淳一は自主時代からだと二十有余年、商業限定でも十年以上のキャリアを持つズッブズブのプロの映画監督。がしかも、如何なるコネクション―最新作「バイオレーター」にも出演する、久保チンとの関係も―なのか出世作「装鬼兵MDガイスト」(昭和61)が日本よりもアメリカで大ヒットした、アニメ監督・メカニックデザイナーの大畑晃一をメイン脚本に迎へての話題作。高遠るいのイラストがポップなポスターもらしからぬ類の華やかさに、盆まで包括する2018年前半戦、縮めてイチハチ盆半戦を席捲した、榊英雄佐々木浩久と同じく、完全外様のピンク映画新規参入作である。その割に、高原秀和のピンク復帰第二作、も霞ませるよもやまさかな工藤雅典の電撃大蔵上陸には驚かされこそすれ、以降OPP+戦線での舞台挨拶話はそれなりに賑々しく伝はるばかりで、山本淳一らの二作目なり、第四の矢をなす名前が聞こえて来ない辺りは、そもそも確定的な方針があるのや否や、オーピーの腹積もりがまるで読めないところではある。予断を許さないとでもいふと、何となくスリリングにもなるのか。今際の間際に突入して早かれこれ幾星霜、フィルムからデジタルへの歴史的転向もとい移行も果たした上で、何を今更、呑気にもほどがあると呆れられるならば、確かに尤もでなくもない。
 不得手な濡れ場でみすみす爆死する愚を犯さず、特技監督感覚で潔く森山茂雄を連れて来た戦略はひとまづ功を奏する。脆弱な男優部には目を瞑るのと、目新しくはある人間に撮らせる以前に、もしも仮に万が一当人の腰が重いのであれば、年代ごと代表する大傑作「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(2011/脚本:佐野和宏/主演:みづなれい)を最後に、長く沈黙する森山茂雄の尻を叩かんかといふマキシマムなツッコミ処さへさて措けば。卸してない筆で適当なマンガを描き散らかす満知男を、アクマーニャがミチコに今でいふ女体化することによつて、但し矢張りステレオタイプな“女の子の気持ち”を理解させる。大枠自体は成立する、辛うじて酌める程度には。さうはいへ粗雑な暗転の濫用で矢、もとい木に竹を接ぎ早に繋ぐ、造形が凡庸なのか単なる俳優部の限界なのか判別しかねる登場人物が薄つぺらく空騒ぐ、シークエンス自体が凡庸なのか単なる演出部の限界なのか判別しかねるぞんざいな展開は相当観るに堪へない。GEROを底にウジオ×ゲテロウからセイジまでも詰まらないテレビ並に酷いが、「茶色の小びん」で自身に注がれる男の性的関心を自覚したミチコがアクマーニャとともに、銀幕のこちら側にも乳尻をほれほれ~と誇示してのけるふざけたカットには、上野で観てたらスクリーンに物を投げてゐた。ピンク嘗めてんのか、女優部にホレホレ尻振らせてどうすんだ役立たず。素の佇まひにせよ素面の絡みにせよそゝらせて、思はずピウィりかねない―あるいはポルルベりかねない―やうに撮るんだよ!挙句火に油を注ぎ、分不相応な大所帯を構へたのが祟つたか、キネコ臭さ漂はせる白々しい撮影と、空間の存在を感じさせる安い録音が一回表の初球で止めを刺す。山本淳一は母校の専学で講師業にもありついてゐる様子だが、これで?といふのが直截かつそれ以外に出て来ない感想な、極めて漫然とした一作である。


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