「痴漢電車 尻と指」(1995『痴漢電車 長襦袢を狙へ!』の2000年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/音楽:鷹選曲/美術:衣恭介/効果:協立音響/編集:井上編集室/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:神代弓子《イブ》・柴田はるか・本城未織・杉本まこと・真央元・樹かず・木村正夫)。
夜の街、泥酔状態と思しき和装のイヴちやんが、両脇を杉本まことと樹かずに抱へられ駅に入る。さくさく実車輌内ショットにタイトル・イン、恐らくカット撮影を上手いこと誤魔化して、イヴちやんは杉本まことに電車痴漢でそこそこ嬲られる。画から伝はつて来る、和服から零れたイヴちやんのオッパイの豊かな柔らかさがエクストリーム。電車が駅に到着、そそくさと逃げる島津美子(神代)を、道夫(杉本)と、叔父貴と慕ふ道夫から女のコマし方を指南中の大学生の甥・武志(樹)が追ふ。自宅に辿り着くも鍵が見当たらなかつた美子は、道夫に正体不明の用具室に追ひ込まれ犯される。その間武志は何処で何をしてゐたのか?そんなこと知るか。人の気配を訝しんだ用務員の声(主不明)に乗じて美子はその場を離脱、改めて帰宅する。そこで樹かずに吹き替へさせたNBAの実況を見てゐた、こちらも主は不明のアテレコの―徒にややこしい―真央元は、離婚の決まつた美子の新しい男・祐司。一切登場しないもう直ぐ元となる美子の夫を、島津君と君付けで呼ぶ。美子と祐司が事を致しかけた抜群のタイミングで、道夫からの電話が着弾。道夫がどうして島津家の電話番号を知つてゐるのか?だからそんなこと知るか。美子がその日穿いてゐたパンティは、戦利品よろしく道夫の手中に。パンティにはプリントが施され、その文言が
“YUUJI.NO OMANKO”
爆裂するセンス・オブ・タマルミ!そのピリオドの意味は何なんだよ、草を生やせ草を生やせ、地表を大草原で覆ひ尽くせ。結論からいふと、今作最も面白いのは地球を緑の惑星と化すこの瞬間なので、ここで見るなり観るのをやめても別に困りはしなければ損もしない。後述する、柴田はるかの濡れ場まで我慢してもいいけれど。当然の如く、宝物のパンティを返す方便で、美子は道夫に呼び出される。
配役残り木村正夫は、武志と電車内でのナンパに明け暮れる斬新な悪友。柴田はるかは、木村正夫の誘ひを余所に武志が一人で挫る“こないだの娘”。挫るといふのは、劇中独白ママ。そのまゝ海辺の連れ込みに足を伸ばしての一頻りは、藪から棒にセンシティブに綴られる、さういふ芸当もこの人出来たのか。柴田はるかに引き続き登場する本城未織(a.k.a.林田ちなみ/ex.新島えりか)は、今度は道夫の“こないだの女”・ミサコ井関。名刺の肩書がよく見えないが何某かのその道のプロらしく、自宅を急襲した道夫を手玉に取る。ミサコが道夫の居所を押さへてゐる所以なんぞ、描かれる訳がない。
珠瑠美1995年第一作、jmdbを眺めた限りでは一応唯一の痴漢電車。呼び出されての美子と道夫の一戦を経て、二番手・三番手を連続して戦線に投入。絡みが連ねられる内に、鍵を握るアイテムである筈の“YUUJI.NO OMANKO”パンティの所在が忘却の彼方に沈む中盤は、これでも珠瑠美が繰り出す魔展開の中では比較的おとなしい部類。何時の間にか道夫はスマトラへの左遷が決定、加減を知らない振り幅が清々しい。となると、兎も角美子と道夫の攻守が逆転する終盤。民法733条の規定を軽やかに無視し祐司との再婚を進める美子が、ひとつの区切りにともう一度、そして最後の電車痴漢に道夫を連れ出すラストは、無理矢理にせよ何にせよ最初と最後を痴漢電車で纏めてみせただけ、寧ろ珠瑠美にしては最高傑作かと見紛ふばかりに上出来と勘違ひするべきだ。例によつて始終はへべれけながら、本城未織の見せ場は短いもののその分イヴちやんの裸はてんこ盛りに、ひとまづ裸映画としては安定することと、兎にも角にも“YUUJI.NO OMANKO”の破壊力が凄まじ過ぎて、要は残りの全てが瑣末な枝葉に感じられるチャーミングな一作である。
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