真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「襲はれた若妻」(1989/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:図書紀芳/照明:内田清/助監督:石崎雅幸/脚本:水谷一二三/編集:金子編集室/音楽:OK企画/スチール:津田一郎/撮影助手:戸澤潤一・三栗屋博/照明助手:佐野勝巳/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:南野千夏・風間ひとみ・詠美・久須美欽一・工藤正人・青木和彦・吉岡市郎・姿良三・熊谷一佳・中村芳晴・斉藤治朗)。何某かの意図でもあるのやらないのやら、超絶中途半端な位置にクレジットされる脚本の水谷一二三と、出演者中姿良三は小川和久(現:欽也)の変名。
 舗装もされてゐない田舎道を、赤い車がブーと走るロング。南野千夏がハンドルを握り、大体運転手視点の画を暫し見せた上で些か不似合に石がデカいのはさて措き、左手薬指には人妻である旨示す指輪が。伊丹玲子(南野)が運転する車に、未曽有の無造作さで男(ビリング推定で斉藤治朗、か中村芳晴)が飛び出して来る。文字にすると本当にウワーッ!とか叫んでる、ポップな悲鳴が早速ジワジワ来る。玲子が車を止めると、ウワーッ氏―以後宇和氏―は見事にといふか綺麗にといふか、兎も角そこかしこから大流血。およそ動かせさうにもないゆゑ、玲子がお医者を呼んで来ようと車を出した繋ぎで、赤バックに書き殴つた筆致が迫り上るタイトル・イン。時代劇か西部劇みたいにペットが哭く、エキサイトメントを直撃する劇伴もいい塩梅。
 ところが玲子が医師(青木和彦/マギー司郎の二番弟子)を連れて来たところ、現場から宇和氏の姿は消えてゐた。第三者が担ぎ込むにしても、そもそも近隣に他の医療機関もなく。玲子は一旦弁護士の夫(吉岡)が待つ津田スタに帰宅、だからこの物件は築何年なんだ。伊丹には同窓会翌日の二次会で、玲子がゐたことになつてゐたのは六本木。前日の同窓会までは事実として、実際玲子は再会した古橋マモル(工藤)と一夜の過ちを犯した挙句ゐる筈もない辺鄙な土地にて、謎の宇和氏を撥ねたのであつた。
 配役残り、何故かこの頃は今より髪が薄い―不ッ思議だなあ―久須美欽一は、次の日早速玲子に電話をかけて寄こす、自称宇和氏の代理人・キヤマ、正体はノミ屋。風間ひとみは、渡された鍵で玲子が古橋を訪ねたドンピシャのタイミングで乳繰り合ふ、古橋の婚約者・河合美沙。面相は雑だが綺麗な体をしてゐる詠美は、キヤマ馴染のホステス・マリ。姿良三と熊谷一佳に不完全消去法で中村芳晴、か斉藤治朗が、キヤマ殺害事件を捜査する刑事。
 束の間の昭和に滑り込めたのか、矢張り平成が明けてから封切られたのか微妙な和久時代の、今上御大・小川欽也1989年第一作。専門職に就く富裕な夫を持つ若妻が、不在証明の成立しない交通事故を起こしたばかりに、身から出た錆といつてしまへばそれまでの、ジャンル上類型的な悶着に巻き込まれる。と、なると。粗筋だけ掻い摘んでみればあれれれれ?何処かで観た記憶も過(よぎ)るのは、決して気の所為でも迷ひでもないんだな、これが。今をときめきさうで案外ときめききれない低予算映画界のマドンナ・しじみの、持田茜名義による銀幕デビュー作「浮気妻 ハメられた美乳」(2006)と同じお話ではないか!元ネタがあつた、あるいはウワハメに際してはセルフリメイク―焼き直しともいふ―してゐたのか。これは当のしじみも知らぬにさうゐない、とエウレカしかけたところが。
 不動の玲子(が、ウワハメに於いては持田茜/以下同)を筆頭に、配役は大体同じ。夫の水上祐二(なかみつせいじ)は大学教授と、姓と職業は若干変つてゐる。古橋とキヤマも、古川信吾(ひょうどうみきひろ)と崎山晃一(竹本泰志)にマイナーチェンジ。逆に美沙(山口真里)は不変で、宇和氏は石動三六に齢を重ね、姿良三は医師にスライド。人死には発生せず、官憲は登場しない。展開の逐一はおろか個々の遣り取りも、結構そのまんまトレースしてゐる。とは、いふものの。何気にオッパイ部を揃へる三本柱は二作共通ながら、美沙役の山口真里が三番手に下がり、代つて二番手に飛び込んで来る風間今日子が、水上の不倫相手・小林麻衣に扮するのが最大にして決定的な相違点。蓋を開けてみると出々しから全く異なる物語は、百八十度のハッピー・バッドと結末も正反対。正反対どころか、カザキョンの天衣無縫な大暴れが火を噴くウワハメは、オソワカとは斜め上だか下に正反対。しじみ(ex.持田茜)初陣の原典発掘とエウレカしかけたところが、量産型娯楽映画ならではといへばいへなくもない、消費と忘却ないし通過を以て業とするポップ・カルチャーの極北で時に結実する、臆面もないリサイクル作かと一瞬思はせ、実は全然違ふ。これでなかなか一筋縄では行かない、予想外のマジックにしてやられた。要は勝手に喰ひついて、まんまと吠え面かゝされただけともいへ、今上御大、畏るべし。更に時を経た現在、現代ピンクの到達点にして、安らかで慎ましやかな桃源郷。伊豆映画を完成した功績に至る小川欽也の来し方は、矢張り伊達ではなかつた。片岡修二に書かせたものを、のうのうと自脚本と称してのける深町章とは雲泥の差である。金払ひには、禍根を残しもしてゐるやうだが。
 とこ、ろで。ウワハメは一旦忘れ、今作単体に話を絞ると。所詮は大雑把なサスペンスを馬鹿正直だか下手に追つた結果、ワンピース越しにもムッチムチな南野千夏が、シャワーひとつ浴びるでなく尺の後半は見事か無様に温存。折角無理からでも何でも伊丹との夫婦愛を再確認し合ひながら、締めの夫婦生活を堂々と歌ひ上げもせず、抱き合ひはするチューでダラダラ縺れるラストには逆の意味で吃驚した。濡れ場で大団円を偽装する千載一遇の好機であつたらうに、腰も砕けるレス・ザン・尻子玉な裸映画である。一方、ウワハメもウワハメ。風間今日子が支配する世界にラウドなグルーブが確かに轟きはすれど、何れにせよ所詮、派手にブッ壊れた展開にグルッと一周した興を覚える、ツッコミ処の範疇を半歩たりとて出でる代物ではない。二十年近くの歳月を挿んでなほ、単品同士だと仲良く精々他愛ない辺りは、あるいは他愛ない辺りが、昔も今も、和久も欽也も変らない所以。


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 「女弁護士 羞恥なぶり」(1996/企画・製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:佐々木乃武良/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:三浦方雄/編集:金子尚樹 ㈲フィルムクラフト/助監督:阪本智考/製作担当:真弓学/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/監督助手:加藤義一/撮影助手:立川亭/照明助手:松夫一心/ヘアー・メイク:木村麗子/スチール:本田あきら/出演:水沢えりか・林由美香・扇まや・平賀勘一・久須美欽一・杉本まこと)。なかなか斬新なクレジット順は、本篇ママ。
 体育準備室的なロケーションにて杉本まことに、制服を着せおさげ髪にしてみたところで、清々しく女子高生には見えない水沢えりかが犯される。弁護士資格を得た霧島冴香(水沢)が宣誓した上、バッジを付与される。因みに、その手のプロフェッション文化にそもそも馴染の薄い我が国にあつて、さういふ光景が見られるのは弁護士会単位で限定的になくもない程度な模様。檻の中、左手を腰に当て立つたまゝ書物を紐解く杉本まことの背中にタイトル・イン。少しだけ話を戻して、冴香の宣誓。非嬌声で口を開くや早速覚束ない口跡が、エクセスライクの火蓋を華麗に切る。
 振り返つた杉本まことが自らカメラに寄る、セルフあるいはプリミティブな物理ズームを見せて、寺島法律事務所。冴香が師匠の寺島(久須美)にここまでの御礼をいふのもそこそこに、サクサクその他の面子は終始見当たらないオフィスでオッ始める。明るい屋内でよくよく映すと、表情は硬いけれど、顔立ちは整つた水沢えりかが一応美人。綺麗な体をエロく撮る初戦は、顔射完遂。即座に冴香が顔を拭ひに手洗ひに立つのは展開上必要なシークエンスながら、素知らぬ顔で戻つて来る際、バックヤードに通ずる引き戸を閉めんか。挙句寺島に冷たい飲み物を入れるのに、頑なに開けたまゝもう一往復する始末。閑話休題、寺島が華々しいデビュー戦を飾らせようと冴香に用意した初陣が、強姦容疑者の弁護。破天荒な親心も兎も角、冴香は西東京拘置所に出向き接見。最初手渡された資料に目を通した折には脊髄で折り返し担当を拒否した、教へ子に対する強姦容疑で拘置される教師の小野寺(杉本)に、冴香は、もしくは冴香も、女子高生時代に凌辱された過去があつた。圧縮陳列の店内より狭い劇中世間も最早強ひてさて措き、ところで寺島法律事務所のロケーション。最終的な判読は叶はなかつたものの、窓硝子にAOKI何とかコーポレーションの文字が透けて見える、画角選べばいいのに。
 配役残り、何気に完璧な三番手起用法を煌めかせる扇まやと平賀勘一は、小野寺に煽られた冴香の回想に登場する、淫乱な母と酒乱の父。どうしてウチのポンコツPCは、“父”と打ちたいところで一々“乳”とクソ変換しやがるのか。小野寺に会へと一喝され後半に突入する、ここも案外堅牢な構成で飛び込んで来る林由美香が、当該事件の被害者・クガアユミ。再度冴香が小野寺に促され赴く、屋号が謎なSMクラブ「もの鎖」。クラブ内では、基本全員バタフライで顔を隠す。マリ―奴隷を責める筆頭客を、平勘が兼任。ほか二名見切れる客の何れかが加藤義一かの特定には辿り着けなかつたが、プレゼンターは背格好と声とから多分乃武良。
 適当にex.DMMで何か見るかと見繕ひ下拵へ、ツイッターを触ればちやうどエクセスが津々浦々に回し始めた様子も窺へつつ、折角か面倒臭いのでそのまゝ見た坂本太1996年第二作。同じく坂本太四作後の1997年第二作「女弁護士 陵<こます>辱」(脚本:有馬仟世/主演:飛鳥ひとみ)に、助監督が相当介入してゐさうな関良平デビュー作「女弁護士 強制愛撫」(1998/主演:冴島奈緒)。公式に謳はれてゐる訳では必ずしもないにしても、エクセスの女弁護士三部作とザックリ括つたとて、さしたる問題もあるまい。
 ヒロインがミイラになるリスクを冒して、ミイラどころかミイラを統べる勢ひの魔人と相見えに行く。昨今は小市民的な造形を宛はれることが多いが、なかみつせいじに改名して久しい今なほ、思ひだした頃に健在な杉まこの大仰な声色は大風呂敷を綺麗にカッ広げ、房周りでは、安普請を苦心しそれつぽい画を幾つか見せもする。「羊たちの沈黙」(1991)を如何にもピンク映画的に翻案した節は、ひとまづ酌める。さうはいへリーガル方面に遜色のない脚本には、檻越しに接見してゐたりする時点で所詮到底遠い。いはゆる高値の花の、目新しい機軸に弁護士を持ち出したのであらうが、如何せん主演女優がさういふ才媛に女子高生以上だか以下に果てしなく遠く見えない、ジャンル上構造的かつ最大の弱点に、今作もまんまと、まんッまと力も込めたくなるほどに屈する。アユミ共々冴香が小野寺に籠絡される過程も大概大雑把で、劇映画的に素面で付き合ふには些かならず厳しい。反面、エッジの効いた絡みを叩き込み倒す、これぞエクセス本流の重戦車ピンクとしては文句ない出来映え。冴香の、劇中現在時制一度きりとなる対小野寺戦に於いては、映倫に果敢に挑んだキワッキワに際どいショットも乱打する。締めの改めてといふか、華麗に立場を逆転させた冴香が両義的に寺島に跨る騎乗位。実は唯一中完遂で終るのが狙つた趣向なのか単なるタマタマ、もとい偶々なのかまでは見極められないが、話の首は座らずとも、濡れ場の腰は据わつた裸映画。石井隆と市川崑を足して二の二乗で割つたが如き頓珍漢なクレジットが、空回りした才気を偲ばせる。


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 「SM教室・失禁」(昭和61/製作:雄プロダクション/提供:にっかつ/監督:広木隆一/脚本:加藤正人/企画・プロデューサー:奥村幸士/撮影:遠藤政史/助手:富田伸二・林誠/照明:隅田浩行/助手:谷内健二・薩川昭夫/助監督:鎮西尚一・大工原正樹・常本琢招/編集:J・K・S《沢田まこと》/スチール:田中欣一/音楽:藤岡央・神津裕之/効果:中村半次郎/現像:東映化工/録音:銀座サウンド/協力:SM用品専門店 六本木セビアン/出演:沢口久美・あきよし杏子・石田彩・螢雪次朗・本木直拓・春本金次・遠山俊也・高原秀和・黒森千加・斉藤美香・関口雅子)。出演者中、春本金次以降は本篇クレジットのみ。本木直拓がポスターには本木直招なのは、ポスターが正解。あとポスターのみ、井川浩なる謎の名前が。誰なんだといふか、そもそも実在するのか否かから怪しい。提供に関しては、事実上エクセス。
 立ち籠める湯気があまりに白々しく、一瞬撮影機材を見紛ふ開巻。これ、元々はフィルムだよな?ラブホにて、沢口久美女王様と奴隷螢雪次朗のプレイ。ワチャワチャしすぎる螢雪次朗のリアクションに、早くもサドマゾを生真面目に志向しようとはしてゐない節が窺へる。耳を抓られた螢雪次朗が派手に暴れた弾みで、沢口久美は足元の石鹸で滑つて転倒、浴槽でポップに後頭部を強打する。画面上でも実は息をしてゐるのだが、女王様が死んだと慌てた螢雪次朗はその場を逃走、昏倒する沢口久美の裸を改めて抜いてタイトル・イン。両手を縛られ殆ど半裸で逃げて来た酒井道雄(螢)は、息子の健治(本木直招=常本琢招)に助けを求める。道雄が喫茶店を潰した酒井家の家計は美容院を経営する妻の博子(あきよし)が支へ、配偶者を能なし呼ばはりする博子のみならず、バーカだ早く死ねよなだと道雄は健治からも完全にナメられてゐた。翌日、殺してしまつたと道雄が自首する腹を括つてゐると、幾分遅刻しながら、普通に出勤して来た博子の店の美容師・ゆかり(沢口)は、ただ気絶してゐただけだつた。気を失ふほど頭を打つ時点で、結構な話なんだけど。
 配役残り春本金次は、道雄が健治を呼び出す公衆電話ブースにゐた、昭和61年にして既に完成形感を漂はせる、現代でも通用するアイコニックなオタク風の男。もしかすると父子が帰宅したところ、店舗兼自宅に押し入つてゐた強盗役なのかも知れないが、オタ夫(超仮称)が鎮西尚一でも大工原正樹でもないゆゑの推定、高原秀和とも全く違ふ。不脱の非三本柱女優部の誰かが、ゆかりともう一人別の美容師・チカ、残りは客要員。石田彩は、健治が常時持ち歩くビデオカメラで撮影したり、レンタルルーム「恋人たちの部屋」にも度々入る仲の小百合。道雄はゆかりが女王様役で出演する、ハウツービデオでお浣腸のお勉強。遠山俊也と高原秀和は、ビデオにアシスタント役で登場する顔を晒してゐる方と、消去法でバタフライマスク着用。大絶賛現役である遠山俊也のフィルモグラフィーに、当然といふのも語弊しかないが、今作は一瞥だに呉れられてゐない。ところで博子役のあきよし杏子に話を戻すと、何となく既視感を覚えたのは彰佳響子の別名義。といふか、気紛れか何某か大人の事情か今回のみ、突発的にあきよし杏子名義を使用してゐるみたい。
 臆面もなく浅学か節穴をひけらかすと、単なる短尺買取系なのか、ロマンXなのかよく判らない広木隆一昭和61年第三作。ロマンXとなると本番カマさないとならなくなるから、矢張り買取系なのか。ちな、みに。実は今なほ35mm主砲を温存する我等が旗艦館・前田有楽―通称―には、前の週に同じく広木隆一の昭和59年第二作、「白昼女子高生を犯す」(昭和59/脚本:今成宗和/主演:甲斐よしみ)が来てゐたりもする。流石に、広木隆一が三週続くアメイジングは発生しない。
 何はともあれ最大の発見は、フレーム・インを独力で加速する「ジャン!」が、滝田―洋二郎―組限定といふ訳では別になく、螢雪次朗の持ちネタであつた点。元々、何処で編み出したメソッドなのかは知らないが。母親のイッパツはそれなりに組み立てられてゐなくもないものの、二発目のイッパツ、父親のヘモンは些かならず粗雑。ヘモンて何なのよといふ以前に、そもそもゆかりも一口口にしてゐるのはどうして効かないのか。適宜「イェーイ!」のシャウトとともに飛び込んで来る螢雪次朗と、カット跨いでお鈴が鳴く乾いたビートは軽妙に走りつつ、家族が無造作に解体するだか、息子が虚仮にしてゐた父親の轍を踏む物語は、面白いのか煙に巻かれるのか釈然としない。面白いのか詰まらないのか判然としないやうな映画は、大概決して面白くはない。それでゐてフォトならぬキネマジェニックな共同石油のネオンに、しんしんと降り頻る雪。散発的に繰り出す高威力のロングで、有無をいはせない映画的興奮を叩き込む。画の力で無理から引つこ抜く力技のエモーションがそれでも矢張り心地いいのは、それは果たして心の潤ひあるいは、脊髄で折り返した貧しさか、どうせ答へなど出まい。今も変らぬ空々しさがレス・ザン・プログレスな情けなさを爆裂させる、“こんにちは!美しい日本”なる標語のプリントされたコカ・コーラ社謹製の赤いベンチは、恐らく初めから狙つた上で拝借して来たものにさうゐない。


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 「猥褻ネット集団 いかせて!!」(2003/製作:国映株式会社・新東宝映画株式会社/製作協力:Vシアター/配給:新東宝映画/監督:上野俊哉/脚本:高原秀和/脚本協力:大竹朝子・菊池裕美子・吉永由衣/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・増子恭一/協力プロデューサー:岩田治樹/撮影:小西泰正/撮影補:水野泰樹/撮影助手:畠山徹/助監督:大西裕・伊藤一平/編集:酒井正次/ネガ編集:松村由紀/録音:福島音響/タイトル:道川昭/現像:東映ラボ・テック/協力:石川二郎・石川裕・今岡真治・江口啓三・金子尚樹・鎌田義孝・坂本礼・佐々木靖之・重信彰則・新里猛作・女池充・森元修一・レジェンドピクチャーズ/出演:村山紀子・佐々木日記・藍山みなみ・江端英久・蔵内彰夫・星野瑠海・川瀬陽太・高木鈴華・小川美佳・住吉理栄・下元史朗・伊藤猛・高原秀和・きぬた・渋谷ちか・加藤雅弘)。
 個人経営の印鑑店「大友印堂」を営む大友寛司(江端)が、イラク戦争のニュースを聞きながら斎藤さんの判子をコリコリ作業。一方的に正義を設定しイラクに侵攻したアメリカの姿に、僕に信じられるものがあるのだらうかと答へは明らかな自問モノローグに続いて、黒地に文字のみで“戦争のある時代に生まれたかつた”。正直、2018年現在の当サイトはこの時点で見るのをやめてしまはうかとも思ひかけたが、気を取り直して練炭の画に、猥褻ではなく発情ネット集団のビデオ題でタイトル・イン。明けて児童公園を窺ふショートカットの背中、別れた夫に強奪された愛娘・真美(渋谷ちか?)に目を細める村山紀子が、ネット掲示板の書き込みを示す黒地クレジットで“誰も私の気持ちをわかつてくれません”。ここで村山紀子といふのは、2001年に寿引退したex.篠原さゆり。今作が復帰作に当たり、以降は国沢☆実2004年第二作「凌辱の爪跡 裂かれた下着」(主演:春咲ももか)と、今をときめかない荒木太郎の「映画館シリーズ」第三弾にして最高傑作「美肌家政婦 指責め濡らして」(2004/脚本:吉行由実/主演:麻田真夕)に、出てはゐないけれども劇伴を担当。その後再び篠原さゆり名義で、2006年にAV再復帰してゐたのは忘れてゐた。俺が―真美の―母親であると、最早狂気さへ滲ませる元夫の佐野幸雄(川瀬)は、無断で真美に会つた道子(村山)を半殺ししかねない勢ひでボッコボコにする。幸雄がそこまで壊れるに及んだ顛末は、見事に等閑視される。再び道子の書き込みで、“眠れません。永遠に眠りたい”。
 配役残り、ピンク初陣の中村和愛最終作「三十路同窓会 ハメをはずせ!」(2001)から長足のプログレスを何気に迸らせる星野瑠海は、大友七度目の見合相手・島田宏美、宏美的には四回目。ザクッザク膳を据ゑ一戦こなすや、手の平を返し大友を束の間の天国から、何時も通りの地獄に叩き落す。この宏美が全身性器を思はせるクッソどエロい女で、飛び道具的な豪華四番手の役割を綺麗に果たす。ユメカ妹の佐々木日記は、映画に未練を残すAV監督の柏木(高原)と不倫するAV女優・吉田真美子、半ば自虐的なハンドルが銀幕。大友のハンドルはポップにもハンコで、道子はマリア。ASDの布袋寅泰みたいな蔵内彰夫は、いらつしやいませも満足にいへないレストランのウェイター・松永豊、ハンドルはイノセント。レストラン隊が無駄に豪華で、松永に匙を投げる店主の下元史朗始め、お冷を所望する女池充を起点として、対面の坂本礼と画面奥の今岡真治に手前でスパゲティを食べてゐるのが上野俊哉。松永が背を向ける席には鎌田義孝、a.k.a.絹田良美のきぬたが新たに来店する巨漢女。デビュー作となる藍山みなみは、万引きで得たコスメを、ギャル同級生の美雪と亜美(高木鈴華と小川美佳)に気前よく頒布する女子高生・相川和希、ハンドルはミュウ。問題が、松永の母とされる住吉理栄と、何処のか知らんけど店員役らしい伊藤猛はどうやら切られたらしく、どうにも欠片たりとて見切れない。最後にもしかすると加藤雅弘は、雨の中イノセが配るティッシュを、ただ一人受け取つて呉れる人?
 国映大戦第六戦は、PG誌主催の2003年度ピンク映画ベストテンに於いて、城定秀夫のデビュー作をも押さへ第一位に輝いた、2013年に死去した上野俊哉の最終作。左右も兎も角、騎乗位ともなると画面下半分を黒帯が覆ひ、男優部が完全に消失する出鱈目な修正がビデオ仕様なのか否かは、公開当時故福岡オークラか駅前ロマンで観て以来未見ゆゑ、本篇の記憶が忘却の彼方につき不明。
 “みんな死ねばいい”(マリア)、“どこかに消えたい”(銀幕)、“ここぢやないどこか”(イノセント)、“誰かあたしの背中を押してください”(ミュウ)と四人の書き込みを連ねた末に、ハンコが“一緒に死にませんか”。要は大友の店舗兼自宅に集つての、練炭オフといふ趣向。未だ鮮度を失する以前であつたからか、リアルタイムではそれなりの感銘を受けた気もウッスラとは残しつつ、改めてこの期に見てみると大概酷い。クソの一言でぞんざいに片付けたくなるくらゐに、松永のコテハンの途方もない恥づかしさすら霞むほど酷い。五人分の外堀を埋めるには、如何せん厳しい尺なんぞこの際取るに足らない些末。各々が死を望むに至る事情について、それなりにシリアスなマリアと、在り来りの範疇に納まらなくもない銀幕・イノセント・ミュウに関しては生温かく通り過ぎるにせよ、己の人生が偶さか空疎であるからといつて、いふに事欠いて戦争を希求するハンコの度し難い自堕落さが言語道断、一人で勝手に死ねよ役立たず。幾ら高原秀和が書いた脚本とはいへ、“いい人”だとはいはれ続けて来たハンコが、“変な人”であることに自己肯定の活路を見出すゴミ以下の着地点にも唖然とした。m@stervision大哥は何故か高く評価しておいでだが、何が“生きてますか”だうるせえよ、ヒュージなお世話だ。死ぬるつもりの男女が、セックロスしてゐる内に翻意する。如何にもピンク映画的かつ、幾許かは確かに人間的でもある展開は、寧ろラスト十五分を延々濡れ場で潰した上で、瞬間的なラスト・カットでシレッと振り逃げる。たとへば大御大・小林悟ならば平然と仕出かしてのけたにさうゐない、人を喰つたぞんざいな作劇の方が、寧ろ相応しいか清々しいやうにも思へる。あるいは、腹立たしい映画を見せ生きて行く力をロストした者を発奮的に再起動させる。とかいふ屈折したかあるいは回りくどく秀逸なコンセプトであつたならば、成功を果たしてゐる芽が万に一つ程度ならあるのかも、シニックにも限度があんだろ。


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 「福マン婦人 ねつとり寝取られ」(2018/制作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/監督・脚本:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/助監督:加藤義一/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:榎本靖/スチール:本田あきら/音楽:友愛学園音楽部/整音:Pink-Noise/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:江波りゅう・明里ともか・原美織・那波隆史・竹本泰志・山本宗介・なかみつせいじ)。
 朝の外景を一拍挿んで、夫婦の寝室。結婚七年、朝つぱらからの求めを夫の南圭介(なかみつ)に断られると、明日香(江波)は舌打ちしてオナニー開戦。布団の中で乳を弄り、パンティ越しの秘裂に指を這はせる案外あんまり見ない画が、結構エロい。女の裸をエロく撮るアルチザン・下元哲ここにありを、アバンから叩き込む。そんな風ゆゑ、てつきり休日かと思ひきや、圭介はけふもけふとて残業確定のど平日。溌剌とでなく出勤する圭介を、明日香がぼんやり見送つてタイトル・イン。ど平日の朝に、夫婦生活を求めたところでそれは大抵か到底断られるだらうといふ無造作なツッコミ処が、関根和美は関根和美でここにあり。
 今や池島ゆたか作よりも、どちらかといふとNSP“ニュー・関根和美's・ピンク”で御馴染の、パブ「ステージ・ドアー」。ネルシャツがダサい八巻直哉(那波)がカウンターに入り、客は紆余曲折の末に、漸く宅配弁当で一山当てた東野謙司(竹本)。そこに圭介とはステドで客同士として出会ひ、八巻とも旧知の明日香が来店。要は単なる欲求不満を、虫が目覚めただ何だと他愛なくすらない方便で正当化する明日香は、八巻も呆れる早さで東野にお持ち帰りされる、あるいはお持ち帰らせる。
 配役残り、関根和美2015年第四作「特務課の罠 いたぶり牝囚人」(主演:きみと歩実/二番手)、国沢実2016年第三作「性鬼人間第一号 ~発情回路~」(脚本:高橋祐太/主演:桜木優希音/三番手)に続くピンク第三作となる印象が、正直全然残つてゐない原美織は、スルこと済ませるやケロッと離脱しようとした明日香と玄関で鉢合はせる、訪ねるのでなく東野宅に帰つて来る間柄のキャバ嬢・水城愛。印象も残つてゐない癖に、多分今回が一番普通に可愛く撮られてゐる気がする。三十五歳といふ公称よりも、随分若く見える明里ともかは、こちらは結婚二年の八巻妻・幸枝。2018年前半戦実は殆ど出てゐない、現代ピンク最強の男前・山本宗介は、明日香が日課のジョギング中にミーツする、自称レジデント(後期臨床研修医)の北村裕也。幸枝に話を戻すと、明日香と幸枝の女二人で、買物か何か外出。まさかのランチが、そこら辺な公園のベンチにて、コンビニ的なパンとチルドカップコーヒー。無い袖を憚りもしない清々しさは、如何にもピンク映画といふのを超えて、なほ一層如何にも関根和美、もしくは如何せん関根和美。
 江波りゅう×ステージ・ドアー×なかみつせいじの組み合はせとなると、ママとブン屋が結ばれる2017年第一作「寸止めスナック めす酒場」の続篇とまではいはずとも、後日譚的なテイストの物語になるものかと勝手に予想してゐたら、ものの見事に全ッ然関係ない関根和美2018年第二作。徹頭徹尾、再度江波りゅう×ステド×なかみつせいじの組み合はせといふだけ。寧ろ通り過ぎた来し方を一々覚えてんぢやねえとでもいはんばかりの、悪びれない無頓着さが実に量産型娯楽映画的。工夫しろよなり考へろだとか難じてみせるのは、いはずもがなといふ奴だ。
 二番手三番手どころか、要はビリング頭から全員濡れ場要員といつて差し支へない、単純に明日香が愛と幸枝も巻き込む形でヤッてヤッてヤリ倒すに終始する展開は、先に触れた「寸止めスナック」後日譚的はおろか、そもそも満足な物語の体を成してゐない。中盤キーワード気味に起動する“福マン”が、肝心要の配偶者に掠りもしない天衣無縫な脇の甘さは、瞳を入れ忘れた竜がミミズになるが如き関根和美マジック。咥へてもとい加へて、文字通りの終始数撃ち続けておきながら、完遂に至る絡みは対北村の一回戦のみといふ、挙句ぞんざいな裸映画でもある。中途の濡れ場ばかりだと居心地が悪くて悪くて仕方がないのは、齢の所為で偏狭の度合いを増してゐるだけなのか?その割に標準的ロマポ並みの尺を微睡ませもせずに見せきるのは、演出部の功績といふよりは、穴のない俳優部の手柄のやうな気がする。一頃の煮ようが焼かうが食へない臭みが、那波隆史も漸く抜けて来た。

 NSP二作前の「W不倫 寝取られ妻と小悪魔娘」と、更にその前の「寸止めスナック」。今回がピンク四戦目となる江波りゅうの、初陣は2014年まで遡るデジエク第三弾「連れ込み妻 夫よりも…激しく、淫靡に。」。「連れ込み妻」を撮つた工藤雅典が、クリスマス前に大蔵電撃上陸を果たすニュースには度肝を抜かれた。工藤雅典といへば、結局終ぞエースにはなり損ねたやうな気もしつつ、にっかつ入社後本篇デビューはエクセスで果たした、生え抜きも生え抜き、公式サイトでも売り物企画のインタビュアーを任せられるほどの、嫡子と目したとて語弊のない存在である。ここから先は恣に筆を滑らせるが、そんな工藤雅典に、工藤雅典にさへ新作を撮らせられずに手放したのだとしたら、エクセスはいよいよ力尽きたのかと荒木事件以上の深い衝撃を受けた。


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 「痴漢電車 制服がいつぱい」(昭和61『痴漢電車 終点までいかせて』の1992年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:深町章/企画:伊能竜/撮影:志賀葉一/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:佐藤寿保/監督助手:上野勝仁/撮影助手:片山浩/照明助手:森岡薫藻/録音:東音スタジオ/現像:東映化工/出演:田口あゆみ・水上乱・ジミー土田・幡寿一・久保新二・しのざきさとみ・かすみさやか・津崎一郎・幡寿一・池島ゆたか・風見玲香・柏木早苗・立川小錦・港雄一・野上正義)。企画の伊能竜と、出演者中二重クレジットされる―本篇ママ―幡寿一に、津崎一郎はそれぞれ向井寛と佐藤寿保に津田一郎の変名。柏木早苗が、VHSジャケには柏木さなえ。
 新宿の高層ビル群を舐めて、「痴漢!?したことありませんよそんなもん」とジミ土の素頓狂な第一声で華麗に開巻。「何だつて、したことない!?」、久保チンの豪快な逆ギレに、ジミ土も流石に気圧される。とか何とか昼行燈上司が、部下に電車痴漢を勧めるとかいふ底の抜けた寸法で、カメラ目線の久保チンが「君達も痴漢やつてみない?」、ナア!とシャウトを決めてタイトル・イン。続くクレジット時、六甲おろしが実曲大起動するのが何事かと首を傾げるならば、想起されたし。前年の昭和60年は、阪神タイガースが二十一年ぶりのリーグ優勝と、三十八年ぶりの日本一を達成した年である。
 尺を大体三等分した、オムニバス仕立てで設定程度のふんはりした物語しか存在しない一篇につき、サクサク配役残り。Psrt1のみ何故か黒バック―以降はブルーバック―の、“Psrt1 セーラー服”。結局速攻でバラけつつも、久保チンがジミ土を先導する形で痴漢電車満員の車中に。水上乱は、ジミ土がコンタクトするセーラー服、煌めくほど女子高生には見えないけれど。若い頃は軽く山西道広似の幡寿一が、ジミ土が排除する格好となる水上乱のお得意。久保チンと対する田口あゆみ共々、水上乱は電車痴漢で金銭の対価を得てゐた。軽く痛い目に遭つた久保チンは、二度目の対戦で田口あゆみにバイブを突つ込んだ上で痴漢電車を離脱。ホームにて腕をグルングルン回しながら、ダブルミーニングの“必殺無チン乗車”を誇るといふのが痛快なパンチライン。“Psrt2 白衣”のファースト・カットは、結婚を控へた二人を、不忍池?の湖面に映す。池島ゆたかが係長昇進に手の届いたヨウイチで、アテレコのしのざきさとみが、ヨウイチとは温度差を感じさせ結婚を焦る恋人・トモコ、職業は看護婦。名前は可愛らしいかすみさやかは、ヨウイチが車内でナンパするゴリラ。津崎一郎は、ゴリラが膣痙攣を起こした修羅場に、トモコと緊急の往診で―要は自宅に―駆けつける医師。再登場の幡寿一は、如何にして着せたのか肉便器メッセージのプリントされた白衣のトモコに、群がる集団痴漢要員、もう二人見切れるのが片方は上野勝仁にしても、三人目には完全に手も足も出ない。漸く六甲おろしに辿り着く、“Psrt3 喪服”。野上正義は、電車に揺られる間も録音した真弓三十三号の実況を聴いてゐたりするくらゐの虎キチ・リョウスケ、柏木早苗が浮気相手。柏木早苗とパツイチ愉しんだのち、遅く津田スタに帰宅したリョウスケは、虎キチ夫婦の鬼嫁・ユキエ(風間)にコッ酷く怒られる。ところがそんなリョウスケが、阪神がヤクルトと引き分け二十一年ぶりのリーグ優勝を決定した瞬間、歓喜の急死。四十九日を終へたユキエは、坊主なのに何時も通りのアイパーな港雄一に何だかんだ喰はれる。最中、リョウスケを殺したのは阪神であると頻りに唆す坊主が、事後巨党である旨判明するのが無体なオチ。2代目快楽亭ブラック十三番目の名義である、立川小錦はラストの痴漢電車―正確には逆痴漢ないし痴女電車―でユキエがミーツする、縦縞を着たハーフ。
 久し振りに再起動した「Viva Pinks!」殲滅戦第十三戦、残弾数、一。新題のまゝビデオ化されたゆゑ、特定に軽く難儀した深町章(ex.稲尾実)昭和61年第一作、改名後第二作に当たる。久保チン×ガミさん×港雄一の男優部三巨頭を揃へ、女優部も倍増といふ豪勢な布陣を見るに、恐らく正月映画なのではなからうか。尤も倍増とはいへ、田口あゆみ・しのざきさとみ・風見玲香の実質三本柱以外は、乳尻には各々の魅力なり訴求力を有しながらも、何れ劣るとも勝らない大絶賛谷間ばかりの裏ローテ、それは寧ろ平地だ。実は田口あゆみが乳も拝ませないものの、久保チンが軽やかに弾けるPsrt1。久保チンと、ガミさん&港雄一に挟まれた池島ゆたかが絶望的に分が悪く、展開的にも最もプルーンではあれ、しのざきさとみが被弾する集団痴漢がクッソどエロいPsrt2。女房に怒鳴られムッチャクチャに開き直るガミさんと、港雄一に弄ばれる風見玲香の、いはゆるゴムマリ感あるオッパイが素晴らしいPsrt3。特段の映画的な面白味は一欠片もないにせよ、各篇それぞれそれなりの見所に富んだ、多分新春を飾つたに相応しい賑々しい一作である。


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 「続・未亡人下宿? エロすぎちやつてごめんなさい♡」(2018/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/音楽・脚本・監督:清水大敬/撮影:小山田勝治/照明:大久保礼司/録音:荒木俊一・大塚学/助監督:清瀬悟朗/スチール:田中幹雄/撮影助手:大江泰介・浪谷昇平/照明助手:石塚光/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:永井すみれ・さとう愛理・玉城マイ・成宮いろは・里見瑤子・三沢亜也・森羅万象・なかみつせいじ・旭丘太郎・永川聖二・フランキー岡村・野間清史・橘秀樹・萬歳翁)。出演者中、旭丘太郎は本篇クレジットのみ。スタッフと俳優部を、左右一緒くたに流すクレジットに惨敗する。
 玄関周り―だけ―は洋風な未亡人下宿、後述する前作の物件は忘れた。大家の山口裕子(ビリングに軽く驚かされた成宮いろは)が、早逝した亡夫・清彦(野間)の遺影に朝の挨拶。も、そこそこに。早速ミニスカの、隙間といふよりは最早射角からパンティ越しに恥丘の膨らみをガッチリ拝ませた上で、縁側から空を仰ぐ止め画にタイトル・イン。明けて賑やかな食卓が、何気に最初の見せ場。食卓を囲ふ面々は画面七時の方角から時計回りに、国立大法学部志望の浪人生・尾崎(永川)と、美大受験生の美由紀(永井)。十二時に裕子挟み年少上がりの保護観察中で、リハビリ施設のヘルパーとして働くex.ヤンキーの里恵(さとう)に、唯一の大学生にして、チアに夢中な就活生。とかいふ、この際寧ろ神々しいまでの閃きで闇雲な設定に辿り着いた弘美(玉城)。特筆すべきが、新田栄ばりの超速で四人分一気呵成に片付ける、手短かつ案外完璧な店子イントロダクション。冗長な説明台詞過多に思へたならば、当サイトは判り易すぎるくらゐで別に困りはしないとする、量産型娯楽映画観を常々唱へてゐるものである。愚直な直線勝負が持ち味あるいは関の山の、清大に斯様な芸当が出来たのかと、素面で感心すると同時に喝采した。もしかして俺は、ショ糖の二百倍甘い、クソ合成甘味料の代表格・アセスルファムKよりも更に甘いのか。
 出演者残り、秘かに美由紀が自室に匿ふなかみつせいじは、美由紀が義父の鮫島権造(森羅)にラブホテルにて犯されさうになつた際、助けに入つた清掃夫の曽根。里見瑤子が、夫が遺した借金のいはば形に、鮫島と再婚した美由紀実母・博子。美由紀と曽根が事実上駆け落ちした顛末が、二人の逢瀬を目撃し鮫島が激昂した、ものの弾みでバナナの皮で足を滑らせ後頭部を痛打。鮫島が死んだものと思つた美由紀と曽根は、慌ててその場を逃げて来た、だとさ。信じられるかいアンタ、二十一世紀もぼちぼち五分の一消化する西暦2018年、平成も終らうつてこの御時世にバナナの皮で足を滑らせる、クリシェ道場にも門前払ひを喰らひさうなシークエンスを堂々と、あるいはのうのうと撮つてのける映画監督がまだこの星の上に現存するんだぜ!事実は、映画よりも奇なり。
 名言をアレンジしたつもりの、閑話休題。裕子の前代大家、そこそこ以上に華のある清彦母遺影の主は、清水大敬が座長を務める劇団「ザ・スラップスティック」に、客演した縁のある平田京子。旭丘太郎と萬歳翁の特定が正直難いが、小さく映る清水大敬次作予告を頼りに恐らく萬歳翁が、美由紀がアルバイトでヌードモデルをする、アトリエの先生。絵筆を採る、生徒要員までは完全に手も足も出ない。唯一である以上、当然俳優部最大のアキレス腱たるフランキー岡村は、里恵の勤務先・医療法人「前田リハビリ・センター」社長の前田昭三。常連の、山科薫を一枚残してるんだけどな。萬歳翁との不完全消去法で旭丘太郎は、未亡人下宿のOB兼、鮫島のパイセンでもある尾崎伯父。削りは粗いが満更でもない貫禄と発声とで、無茶―苦茶―な作劇を補完する大役を果たす。観進めて行く内に、まるで配役が読めなくなつた三沢亜也は、鮫島の母・よね。そしてトリをとる橘秀樹が、誰もゐなくなつた山口家に貸間を求め現れる、既に大学生のニューカマー・米田。尾崎クンとは異なり、ちやんと学ラン着用。昭和を経て、平成と命運をともにするかのやうに一旦力尽きかけた未亡人下宿を、次代に繋ぐ希望の星。
 清水大敬2018年第一作は、三作前2017年第一作の無印前作「未亡人下宿? 谷間も貸します」(主演:円城ひとみ)とは一欠片たりとて掠らない物語の割に、“新”ではなく“続”と銘打つた「未亡人下宿?」第二作。終に語られることもなからうが、はてなの意味は相変らず雲を掴む。
 カットの繋ぎが大雑把ではあるものの、ゴリッゴリした戦闘的な濡れ場の合間合間も隙あらば、否、隙がなくとも意味が判らないほど不自然な脚立をも持ち出し、殆どマンチラと紙一重のパンチラを、執拗に執拗に執ッ拗に刻み込み続ける。ついでに、ちんたらした玉城マイのチアダンスも。残された僅かな間隙を下元哲に迫るアクロバットで潜り抜け、無理ッから鮫島を諸悪の根源に据ゑる大騒動を兎に角構築。限りなくデウス・エクス・マキナな尾崎伯父を放り込み、力技の大団円にヒッこ抜く。カサベテた頃の混沌は今何処、更生した清水大敬が遂に開眼した王道娯楽映画路線は、勢ひ余つた前作を挽回し堅調。不要である以前に、まるで芸になつてゐない映画ネタ。子供の悪戯以下の、ゴッドファーザー作戦。ポップを未熟で履き違へた、コント感覚に安いフランキー岡村のメソッド。となると相手役にも恵まれず、二番手に座りながら遅きに失するさとう愛理の絡みは加へて拙速に堕す。博子が仕掛ける藪蛇な親子丼に関しては、予想外の豪華五番手で里見瑤子が飛び込んで来る、サプライズで免責してしまへ。それにしても、もしかするとそこから逆算しての、曽根のカツ丼好きなのか。もしも仮に万が一だとしたら、改めて清水大敬を侮る勿れ。物語を構築するルートが一昨日か明後日すぎて、逆に余人の追随を許さない。ダメなところを論ふのは、世評に乗つかり城定秀夫を絶賛するより容易い。それ、でも。何となく寄りの多分で、清水大敬も明確に見据ゑてゐるのではあるまいかと思しき、要は一元号丸々ドブに捨てたに等しい、クソな時世に出鱈目だらうと力技だらうと、ユーフォリアを遮二無二叩き込む侠気は断固支持する。尾崎と弘美のカップルが成立する件の、“俺を無視するな”と、“マンガみたいにお目出度い連中だ”。鮫島に書いた二つの台詞に注目するに、どさくさしかしてゐない展開を、流石に清水大敬も自覚してゐるにさうゐない。自覚してなほ、突つ込んで来るのはよしんば優れてはゐなくとも、腰の据わつた作家の証左。清大は清大なりに清大のやり方で、時代を撃つてゐる。少なくとも撃たうとしてゐる、アセKよりもクッソ甘い当サイトにはさう映る。総体的な評価はさて措くにせよ、“シコシコのし過ぎで腱鞘炎”なるスーパーパワーワードを里見瑤子に吐かせる、飛び道具的モチーフに過ぎないものかと思はせた鮫島の偏執的な手コキ強要癖を、満を持して投入した三沢亜也(a.k.a.しのざきさとみ)で回収してみせるのは、ピンク映画2018のハイライトに数へて全然おかしくない実は超絶妙手。いふまでもなく裸は一切捨てずに、清水大敬は過去の継承も踏まへ、現在進行形のピンクを希求してゐる。能力が伴ふ伴はない、結果が成就するしないは、また別の問題。尾崎クンの跡目を米田クンが継ぐ、未亡人下宿?を延々と清水大敬が撮り積もらせていいんだぜ。

 意味が判らないほど不自然といへば、さあこれから皆で飯を食ふぞといふ段になつて、裕子が唐突に一番風呂を浴びると中座するのもサイコー。尤も、以降の風呂場戦を鮫島が山口荘(大絶賛仮名)に殴り込んで来る修羅場の発端に機能させる辺りは地味に論理的で、全体清水大敬といふ御仁が、頭を使つてゐないのだかゐるのだか判然としなくなる、使つてゐない訳ねえだろ。


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 「したがる兄嫁2 淫らな戯れ」(1999/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画株式会社/監督:上野俊哉/脚本:小林政広/企画:朝倉大介/撮影:小西泰正/編集:金子尚樹《フィルムクラフト》/音楽:山田勳生/助監督:鎌田義孝/監督助手:城定秀夫・大石健太郎・塚本敬・小林誠/撮影補:水野泰樹/撮影助手:畠山徹/録音:シネキャビン/撮影協力:岩田治樹/ネガ編集:門司康子/タイトル:道川昭/タイミング:武原春光/現像:東映化学/協力:橋口卓明・榎本敏郎・村井章人・勝山茂雄・坂本礼・アウトキャストプロデュース/ロケ協力:山椒・和銅鉱泉旅館・スーパースター21/出演:本多菊雄・葉月螢・佐々木ユメカ・里見瑶子・のぎすみこ・向井新悟・伊藤猛・渡部司・江端英久)。現在目線で見るとなほさら、何か裏方もエラい豪華な布陣だ。
 威勢のいい大書タイトル開巻、後述する前作ラストで死にかけ一旦持ち直した母親(全く登場せず)は、結局ほどなく死ぬ。無印第一作とナンバリング第二作のブリッジに使はれる、母の扱ひ。家業の竹籠職人を継いだ兄・良助(本多)と、田舎を捨て上京した癖に、女にフラれたとか情けない理由で出戻つて来た弟・健司(江端)の、一葬儀終へた喪服兄弟ロング、多分苗字はカワイ。第一作では都会帰りのセンシティブな相も見せてゐた気がするのに、健司がグッと馬鹿の純度を増した遣り取りを経て、没母が入院してゐた病院の外景から、佐々木ユメカの乳を揉む、伊藤猛が飛び込んで来る。二人は良助の浮気相手で、健司とも寝たことから騒動となる看護婦の井上美智子(佐々木)と、医師で院長の倅・木村(伊藤)。ここでこの期にユリイカしたのが、うんたらかんたら“なんです”。宇能鴻一郎調モノローグ、略してウノローグ風のダイアローグを、男優部に書いてみせるのが小林政広脚本のワン・ノブ・特色であるとハタと気づいた。迸る今更臭なんて、風に流してしまへ。
 兄弟に愛想を尽かし出奔した良助の妻・春代(葉月)が、仲居として働く温泉旅館で十年前高校時代の元カレ・クラタ新平(渡部)と再会する一方、味噌汁とお隣から貰つた野沢菜のおかずだけで、五合―引く良助分―の米を平らげた健司は、挙句女を買ひに行く金を良助に無心する。実は今作、さりげなく重大な破綻を孕んでゐる。後々春代が新平クンに話して曰く、兄弟の母親が亡くなつたのが、春代は如何にしてその旨知り得たのか当日のこと。となると、開巻は通夜帰りとしても次の日本葬ぢやね?といふツッコミ処は強ひて呑み込むにしても、そもそも、未だ日も沈まぬ内に、通夜から帰つて来れるオープニング・シークエンスからあちこちちぐはぐさは否めない。もう一点些末、カワイ家のロケーションは御馴染水上荘(塩山温泉/山梨県)ながら、設定上は野沢菜が名物の長野である。
 配役残り里見瑶子は、先に半殺しにされた健司を懐かしのスターレットで拾ふ、この人も木村病院(仮称)の看護婦で、肛門科の久美子。ドア・ツー・ドアだからと、白衣のまゝハンドルを握る飛び道具的な合理性を発揮する。のぎすみこと、jmdb鵜呑みでデビュー作の向井新悟は、健司を追ふ格好で軽トラを飛ばし町に下りた良助が向かふ、外人部隊は帰国したショークラブ「スーパースター21」の巨漢女と、静かな凶暴性を滾らせるボーイ。
  前作「白衣と人妻 したがる兄嫁」(1998/脚本:小林政広/ビリング頭は江端英久)に続く、「バカ兄弟」シリーズ第二作。上野俊哉はこの間年一作ペースの次作がシリーズのいはゆるエピソード0で、次々作がリブート。何といふか、捕まつてゐる感を、今となつては覚えなくもない。もしかして、既に病魔に侵されてゐたのなら申し訳ない。
 確かに身勝手な帰郷にせよ、良助の健司に対する粗野かつ粘着質の苛めやうが兎にも角にも鬱陶しくて鬱陶しくて、一月に小屋で再見した「白衣と兄嫁」は何がそんなに面白いのか改めててんでピンと来なかつた。コクエーとベルの音鳴れば、脊髄で折り返し受けてゐた時代に悪態をつく、当サイトも当サイトで脊髄で折り返しぶりがさして大差ない、ところが。「淫らな戯れ」は正方向に笑へるオフビートなコメディに化けてゐたりする辺りが、映画は矢張り見るなり観てみないと判らない。健司が無造作に振り回す下心に、伊藤猛と佐々木ユメカの顔色が鮮やかに変る居酒屋。喜び勇んで敷居を跨いだものの、客―と出稼ぎ勢―は無人でのぎすみこが一人ずるずるラーメンを食つてゐる、「スーパースター21」店内に良助は唖然として「何これ」。受けて穏やかにキレる向井新悟が、「何か御不満スか?」。バカ兄弟の馬鹿さ加減と、馬鹿さ加減が巻き起こす渦の巻き起こり具合が激しく可笑しい中盤は、頗る快調に転がる。勝因はズバリ、弟に伊藤猛兄貴には向井新悟。バカ兄弟の銘々に、何気な狂気を内包したエッジ系俳優部をぶつける、内角を抉るキャスティングにあるものと見た。反面、春代はといふと昔の男と適当に焼けぼつくひに火を点ける程度。終盤火を噴く魔展開の合間合間に挿み込まれる、新平クンと大浴場をクロールでチャプチャプ泳ぐ間抜けなショットはいい塩梅のシュールさが琴線にも触れつつ、肝心の兄嫁は、御都合に帰つて来てラストの体裁を整へるに止(とど)まる。土台がのぎすみこを除けば濡れ場は何れも中途で、決して疎かにしてゐる訳でもなく、当時的にクリーンナップ級の三本柱を擁してゐながら、裸映画的な訴求力は然程高くない。

 恐らく、要は如何に落とし込んだものか窮したのでもあらうが、その後の物語が終に作られなかつた点は、地味にでなく惜しまれる。


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