真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「昼下りの情事 すゝり泣き」(昭和52/製作:日活株式会社/監督:白鳥信一/脚本:大工原正泰/プロデューサー:海野義幸/撮影:畠中照夫/照明:田島武志/録音:福島信雅/美術:柳生一夫/編集:山田真司/音楽:高田信/助監督:上垣保朗/色彩計測:野田悌男/現像:東洋現像所/製作担当者:田中雅夫/主題歌:『すゝり泣き』作詞作曲:平野修 唄:宮下順子/出演:宮下順子・山口美也子・絵沢萠子・岡本麗・坂本長利・八代康二・藤野弘・飯田紅子・五條博・浜口竜哉・玉井謙介・水木京一・田島はるか)。出演者中、水木京一は本篇クレジットのみ。クレジットがスッ飛ばす、配給に関しては実質“提供:Xces Film”。
 本坪鈴と、柏手の音効。亀戸天神社に参つた宮下順子を、橋の上に抜くロングにタイトル・イン。どフォークなギターに続いて、謎の女性ボーカルが入る主題歌の起動に面喰つてゐると、よもやまさかの主演女優御当人。戯れにググッてみたところで音源が何も見当たらないのは、ドーナツ盤とか出してないのかな。逆に、何処かしらから出てゐれば、レコード会社もクレジットされてゐたのか。兎も角、宮下順子の歌唱が言葉を選ぶと御愛嬌。音程の右往左往する曲調を、一言で片づけるとへべれけな山崎ハコ。畢竟、逆の意味で順調に、タイトルバックから軽く道に迷ふ感は否み難い。
 本篇の火蓋を切るのは、素麺を突く八代康二。舞台的に墨田区か江東区辺りの区会議員・天藤勇吉(八代)の妾・桐川さなえ(宮下)が持たされた、その名もそのまんまBAR「さなえ」。芳しくない客足に、諦めて店を閉めようとすると外は雨。ホステスの夢子(飯田紅子/不脱)を先に帰したさなえは、軒先で雨宿りしてゐた、電気関係の専学生・玉井弘(藤野)と出会ふ。
 何時までも温存される玉謙と水京を尻目に、続々とビリングの狭間から舞ひ降りる大部屋部隊が、馬鹿みたいに豪華な配役残り。「さなえ」が軒を並べる、錦糸町の繁華街「楽天地」。のセットを組んでみせてゐる点に驚かされつつ、往来に森みどり(a.k.a.小森道子)の声がまづ一回響く。山口美也子と絵沢萠子は、さなえの種違ひの妹・みどりと、相変らずか性懲りもなく情の多い母親・初子。八年前さなえを輪姦した、三人組は特定不能。自炊生の弘が、コックとして働き始めた「さなえ」。寝落ち客の賀川修嗣が、ヒドゥンスーパースターズ先鋒。五條博は同僚のみどりから、金を借りてゐるナカサト周二。たゞのバーにしてはピンサロ紛ひの零距離で、夢子にガンッガン二人がかりで絡んで行く、常連二人組に北上忠行(a.k.a.大平忠行)と小宮山玉樹。コミタマをさなえが玉ちやんと呼ぶ、密やかに嬉しいヒムセルフぶり。それとこのコンビ、地味に多い組み合はせにも思へる。リーゼントみたいな髪型に、メタルフレーム二本橋。幾ら昭和の所業にせよ流石にどうかしてゐやがるファッションの、岡本麗はカウンター席で弘に目をつける看護婦の駒田ルリ子。あまり見ない気がする、男臭い造形の坂本長利は初子の新しい情夫・清水源一。「さなえ」の開店前、暖簾を出す隣の小料理屋「あき」の大将で、鶴岡修がシレッと見切れる。何かもう、メイン女優部を二枚か三枚見繕へば、この人等だけで一本撮れさうなどうかした勢ひ。しかも、まだ全部ぢやないんだな、これが。妾宅に夜は天藤が来ない、フラグを一分と待たず回収する、カット尻も乾かない即席展開はさて措き。弘のみずほ荘から、さなえと二人越したやはぎ荘。不在の弘を捜すさなえに呼び止められる、同じやうな白ジャケの人違ひで、振り返ると庄司三郎が飛び込んで来る鮮烈が明後日か一昨日なハイライト。庭にはカコーンなんて鹿威しの鳴る、料亭に逆アフターで弘を連れ込む。遊び方が凡そ看護婦らしからぬ、ルリ子との逢瀬も経て。さなえと正式に別れた弘が、落ち合ふ素性不詳の美人・間野京子がトメの田島はるか、この人も不脱。あと四人、後述する。
 さなえが―途中まで―暮らすマンション「ヴェラハイツ扇橋」(昭和50年築)が、現存してゐるのに吃驚した白鳥信一昭和52年第三作、来年で竣工半世紀だぞ。
 木に竹を接ぎ気味の過去から世間並みの所帯は諦めながらも、初子同様男に縋つて生きるさなえと、さういふ母姉の姿に、嫌悪と一種のミサンドリーをも隠さうとしないみどり。如何にも有体な対比は、みどりが決して異性愛自体を忌避する訳でも案外ない、量産型裸映画的な要請ないし要諦にも腰を折られ、然程どころでなく機能不全。大した魅力も欠いた小倅に過ぎない藤野弘に、往時天下の宮下順子が軸足を失して入れ揚げる。僅かに、筆下しの件には優しいファンタジーが確かに花開かなくもない、所詮ありがちな色恋沙汰は、やがてさなえが若き弘から何となく捨てられる、なほ一層類型的な破局に帰着。一方みどりもみどりで、「出てけ!」、ドンガラガッチャーンのあまりにぞんざいな作劇が、グルッと一周して別の意味で衝撃的。結局さなえとみどりが、高の知れた狭い町の歓楽街にて、仲良く逞しく生きて行く。とかいふ屁ほどの臭みすらない戯けた結末には、呆れ果てる嘆息も萎む始末。要はさういふ、イデオロギーの名には値しない気分的な風潮に従順であつたからこそ、宮下順子も一つの時代を築き得たのであらうが、旧き浪花節の杖を借らぬでは、直立も危ふい遺物のやうな物語。さういふ代物に今更触れたところで、この期に及んで覚える感興は特にない、保守なのに。結局、たとへば影山英俊や大谷木洋子。ゐない人間の名前を挙げる方が寧ろ難しいのかも知れない、幹ごとヘシ折る重みで枝葉を盛大に繁らせる闇雲なノンクレ班なり、先に触れたセット撮影。そこかしこから窺へる、日活の底力が最大の見所。限りなく、映画本体は特に褒めてないね。

 姉妹が底の抜けた再会を果たす、さなえがたかをで、みどりはよしの。女の源氏名が旧日本海軍の艦名に由来する、あくまで本番はNGのユニークサロン「ワールド」、ユニークサロンて。パッと見、大体ピンサロ。浜口竜哉が、“本番”の意味も知らないみどりに手を焼くマネージャー氏。「グッドセアバ?だね」、悪態つくのが何をいつてゐるのかよく聞き取れない、古参嬢で森みどりが改めて顔出し降臨。最後に画面左から玉井謙介と水木京一が、それぞれよしのの進水とさなえの出航を介錯する助平で、日章旗から引く店内カットに二人纏めて滑り込む。BGMは、扱くもとい至極当然軍艦マーチ。喧騒を暫し見せ、「すゝり泣き」再起動、ピンスポを当てた、宮下順子と山口美也子の2ショットで適当に締め括るラスト。よしのの乳に顔を埋める素振りで窮屈に体を折り、首から上を暗がりに逃がす玉井謙介の何気な至芸―と、田島武志の的確な照射―が、漫然とした一作の掉尾にさゝやかな灯を灯す。


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 「幼な妻 絶叫!!」(昭和51/製作:日活株式会社/監督:白鳥信一/脚本:大工原正泰/プロデューサー:海野義幸/撮影:安藤庄平/照明:直井勝正/録音:橋本文雄/美術:柳生一夫/編集:井上親弥/音楽:月見里太一/助監督:鴨田好史/色彩計測:田中正博/現像:東洋現像所/製作担当者:高橋信宏/出演:渚りな・谷ナオミ・坂本長利・水城ゆう・中原潤・島村謙次・あきじゅん・玉井謙介・木島一郎・北上忠行・賀川修嗣・大谷木洋子・原田千枝子・水木京一)。出演者中、賀川修嗣以降は本篇クレジットのみ。クレジットがスッ飛ばす、配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。あと音楽の月見里太一は、鏑木創である旨日活公式が変名を水泡に帰す。
 山梨県都留市ら辺の山中、神社の石段を駆け上がるセーラ服の背中。境内に隠しておいたボストンバッグの荷物で、野外更衣―それとも無縁所着替へ―した十七才の沖本順子(渚)が、脱いだ制服に幾許かの未練も滲ませる。橋のロングにクレジット起動、バスに揺られた富士急行谷村町駅にて、順子は宮脇啓次(中原)と合流。二人で東京に駆け落ち、乗り継ぐ電車の、三本目に割と唐突なタイトル・イン。玉井謙介の不動産屋に紹介された、風呂なし手洗と炊事場は共同の安アパート「曙荘」。初期費用が足りなかつたものの、看板が目についた北沢質店に救はれ順子と宮脇は11号室に転がり込む。カーテンはおろか、布団も持たずに。
 配役残り、水城ゆうは一般的な並びでいふと多分10号室の、華美なお隣・野崎ユキ、キャバレー「ニューサービス」(新宿)のホステス。のち宮脇を店に誘ふ際、「ばつちりサービスしちやふからさ!」とかいふ屈託ない弁を聞くに、さういふキャバレット?大体二年後大平に改姓する北上忠行は、宮脇が働く出光興産成城給油所の店長・井村。一方順子の勤め先は、同僚の梅沢クミ(あき)に執心する水木京一や、津田栄三(坂本)が常連客の喫茶店、屋号不詳。水木京一のある意味邪気のない助平男ぶりが、さゝくれた映画に一滴の潤ひを添へる。最初ナンシー・アレンみたいな頓珍漢なウィッグを被つてゐるのに、軽く頭を抱へさせられた谷ナオミは2ドアの外車でスタンドに出入りする、高級バー(矢張り新宿)のママさん・生田エリ。島謙後述、原田千枝子は、津田が順子に着せる下着を買ひに行く洋品店の従業員。賀川修嗣はその間津田家を訪ねる電気料―劇中用語ママ、普通電気代では―の集金人で、大谷木洋子は津田の不在をカガシューに告げる近所の主婦。そし、て。地味に満を持して飛び込んで来る木島一郎が、エリに身勝手な心を残し高級マンションの701号室をのこのこ急襲した宮脇を、文字通り撮み出す精悍な男。首から上のみならず、下にもドーランを塗つてゐるらしく今でいふ日サロ感覚で全身浅黒い。
 告白シリーズ第一作「をさな妻の告白 衝ショック撃」(昭和48/監督:西村昭五郎/脚本:いどあきお/主演:片桐夕子)と、三ヶ月後同じ面子による多分正調続篇「をさな妻の告白 陶クライマックス酔」。翌年の「をさな妻の告白 失エクスタシー神」(昭和49/脚本・監督:磯見忠彦/主演:立野弓子)が告白最終第三作、二年半強の歳月を経て、二ヶ月前に買取系「幼な妻 初夜のわなゝき」(昭和51/監督:渡辺護/脚本:高橋伴明/主演:早川リナ=渚りな)を挿んでの白鳥信一昭和51年第二作。主演女優的には、代々木忠昭和49年第一作「セミドキュメント スケバン用心棒」(脚本:林崎甚/主演:五十嵐のり子)に於いて大谷リナ名義でデビュー後、早川リナ期を通過、再改名した渚りなとしての水揚げ作にもあたる。通して買取系が主戦場の渚りなにとつて、本隊ロマポは今作と、白井伸明昭和53年第一作「《秘》肉体調教師」(脚本:村田晴彦)の実は二本きり。
 “幼な妻”とは、いふけれど。往時は活きてゐた民法737条(未成年者の婚姻についての父母の同意/2022年削除)に従つた上で、正式に婚姻届を提出し受理されてゐる、訳でもなく。要は単なる同棲に過ぎない、若き二人の日々、束の間の。薄い壁を通し島村謙次(アフター客、なんて自宅には連れて来ないか)に抱かれるユキの嬌声がガンッガン洩れ聞こえる中、その頃津田に捕まつてゐる順子は当然未だ帰宅しない曙荘11号室。宮脇が放置したマンガ雑誌が『週刊漫画アクション』で、いはずと知れた上村一夫『同棲時代』(昭和47~48)の頁が開いてゐたりするのは、流石に臆面もなくか大胆不敵に開き直りすぎかも。
 各々の交替制勤務―と生活―が擦れ違ふほど働けど働けど、口に出来るのは食パンと即席麺ばかり。逆の意味で順調に煮詰まる貧しい暮らしの火に油を注ぎ、宮脇が外に女を作る―正確には受動態―どころか、偏執通り越して変質的な津田に、順子は犯される。「失エクスタシー神」の六年後、当時バチバチのアイドル的人気を博した“大明神”原悦子がビリング頭に座る無印大作にして、白鳥信一昭和55年第三作「をさな妻」(昭和55/脚本:鹿水晶子)も想起するとなほさら、あたかもヒロインを心身とも酷い目に遭はせるのが、幼な妻フォーマットなのかと呆れさせられ、ながらも。
 手と手を取り故郷を捨てた筈が、侘しい暮らしに疲れ、何時しか二人の心は離れて行く。挙句の果て、の斜め上だか下。津田が及んだ二度目の凶行から、そのまゝ順子を―恨み節を窺ふに恐らく親の死んだ―実家に拉致する。ありがちな青春残酷物語が、いはゆる監禁飼育ものに転換する衝撃的な展開に、度肝を抜かれるのはそれでも些かならず早いんだな、これが。理不尽な凌辱に曝された女が、それまで知らずに生きて来た性の悦びに目覚めて行く。所詮昭和の昔日を方便に垂れ流された、箍の外れたファンタジーでなければ底の抜けたミソジニーでしかなく、現在の鑑賞には一欠片たりとて耐へ得る代物では土台ないにせよ。兎も角、兎に角力業にへべれけを合はせるクロスカウンターばりの超作劇で、映画がまさかのグルッと一周。順子の伴侶が宮脇には非ず、よもや津田との組み合はせで、思ひのほか綺麗な幼妻噺に着地しようなどとは。それこそ、あるいはこれぞ正しくお釈迦様でも案件。事そこに至る過程を断じて肯んじ難い点に目を瞑ると、空前絶後のアクロバット結末には滅多にない強度で吃驚した。無論、瞑れるかバカタレ、といふ全否定に対して、異を唱へるつもりも毛頭ない。最早それで、別に構はない、保守なのに。あと、枝葉に弾ける徒花にも目を向けると、正真正銘卓袱台を引つ繰り返す、渚りなのスキヤキキックが大笑必至。実際脊髄で折り返した速さにも映る、坂本長利の熱がりぶりは果たして芝居であつたのか否か、マジ火傷するぞ。裸映画の旧弊を等閑視する、天より高いハードルさへ超えられれば、なかなか以上に面白い一作。公開当時ジャスト五十歳、好々爺と称するには些か早い気もしつつ、水京の微笑ましい好色漢ぶり以外の見所で、縄のかゝらない谷ナオミの爆乳も、タップンもといタップリ堪能させる。

 元々マリに買はれたのも順子が心密かに望む、東京美容専門学院の入学費用を捻出する目的で、軽く匂はされかけた三番手による逆転救済も、結局実らず仕舞ひ。最終的に全てを失つた宮脇がたゞ独り取り残される、ナカジュン一人負けの様相をも、何気に呈しなくはない。


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 「女まみれ 本番はいります」(2023/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/音楽・脚本・監督:清水大敬/撮影:大久保礼司/照明:ジョニー行方/録音:江原拓也/撮影助手:今野ソフィアン/ポスター:北村純一/助監督:郡司博史/アクション指導:中野剣友会/ガン・エフェクト:木村政人/録音:西山秀明 ㈲スノビッシュ/編集:高円寺・編集スタジオ/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:伊東紅蘭・岩沢香代・白鳥すわん・佐々木咲和・長谷川千紗・中村京子・弘前綾香・末田スエ子・紅子・森羅万象・野間清史・市川洋・郡司博史・永井裕久・安藤ヒロキオ・フランキー岡村・なめ茸鶴生・マサトキムラ・松本モト松・銀次郎・橘秀樹・内田もん吉・川上貴史・土門丈・星野周平)。出演者中末田スエ子と紅子、郡司博史と永井裕久、なめ茸鶴生から松本モト松に、内田もん吉以降は本篇クレジットのみ。しかし何といふか、男優部は何でこんなランダムなビリングなんだ。
 回転式を撃つ安藤ヒロキオで上の句、ポンプアクションの伊東紅蘭で下の句。手ぶらの森羅万象も加はつて、全部入れるタイトル開巻。プリミティブな屋号の、便利屋「何でも屋」。映画学校の脚本家コースに通ふ、岡野弘美(白鳥)が執筆中のノートに夢中で出もしない、営業用のスマホを姉の裕子(伊東)が取る。自宅兼事務所なら仕方ないのか、「何でも屋」は裕子が一人で切り盛り。とはいへ妹よ、電話くらゐ出ても別に罰は当たらないだろ。とまれ今回受けた仕事は、鮫島邸の水詰り修理。仕事を終へた裕子が辞すや、夫人の明美(佐々木)は連れ込んでゐた夫の会社の社員で、名札のぞんざいな肩書が“現場主任”の間男・山下治(フランキー)と早速オッ始める。それ、名刺にもさう書いてあるのかな。兎も角事後、明美の皮算用を違へ、鮫島(森羅)がゴルフから予想外に早く帰宅する修羅場の危機を、クスリとも面白くないドタバタでどさくさ切り抜けるのは、大敬オフィス作の通常運行、茶を濁すともいふ。
 一方制作会社の、映画工房「岡野プロジェクト」。配役残り、登場順に銀次郎と野間清史、岩沢香代は、姉妹の父親で映画監督の武男と、大赤字を叩き出した前作に絡んだ未払ひ金を取り立てに来た山川に、岡野プロ経理担当の緋紗子。国沢実2020年第一作「ピンク・ゾーン3 ダッチワイフ慕情」(脚本:切通理作/主演:佐倉絆)以来、久々に飛び込んで来た橘秀樹は、オスカル的なコスプレで飲み放題の看板を持つ裕子と、繁華街にて再会する元カレのショージ、現職はクラブのボーイ。この二人、裕子は今も所属する同じ劇団の俳優部同士といふ仲。安藤ヒロキオは居酒屋以外にレストラン「La Vie」も経営する、飲食系クライアントの中間管理職・大山。も、本来は映画畑の俳優部なんだなこれが。小関組から初外征―その後竹洞哲也や、加藤義一の薔薇族が続く―の市川洋は、弘美の彼氏・健二、この人は演出部。大山から気に入られたのか、裕子がその日はメイド服で「La Vie」駐車場の看板持ち。長谷川千紗はスマホをヒッたくつた暴漢(判らん)を裕子が追跡、格闘の末奪還してあげる映画プロデューサーの高見、下の名前は多分アリサ。大山とは旧知、また狭い世間だな。忘れてた、緋紗子は鮫島のダブル不倫相手で、俳優部廃業後酒に浸つてゐたホステス時代、鮫島との出会ひで救はれた縁。話を戻して、裕子が高見に自分の素性を語る際、格闘技の稽古相手はもしかして清水大敬?弘前綾香は鮫島邸の家政婦、AV部ながら脱ぎこそしないものの、ミニスカの股間を里中智のアンダースローばりの低さから狙はれる。大久保礼司―と宮原かおり―の地を這ふカメラに、何となく安らぎも覚えるのは量産型娯楽映画のさゝやかな醍醐味。手放さない煙管が妖怪感を加速する、中村京子は山川の妻・サユリ。中村京子を介錯するさせられる、野間清史が何気に男―優部としての格―を上げる。撮影初日前夜、武男が語りかける亡妻の遺影は、もう一度もしかしてマサちやん?トンチキな名義の目立つ本クレのみ隊は、主に岡野組のその他皆さん。その中でタイトルバックが教へて呉れるのが、末田スエ子が多分制作部辺りで、紅子が俳優部。何れかは、裕子の撒くチラシを受け取つて呉れる、往来の女も兼ねてゐる筈。あと富野系の、飲食社長は誰なんだろ。
 前回編み出した素敵な造語を、大蔵が早速使つてゐないダイウッド新作。現時点で、誰も継戦してゐない女優部頭四人が全員映画初出演。エクセスも魂消る果敢な布陣―伊東紅蘭と岩沢香代にはVシネ出演歴あり―に畏れ入りつつ、清水大敬の場合大して関係ないやうに思へなくもない。
 本クレのみ隊も含めるとなほさら、登場人口の大半が映画のスタッフか俳優部といふ歪んだ、もとい偏つた世界観の中。「映画は俺の命なんだ」、とか臆面もなく豪語してのける香ばしい親爺に新作を撮らせようと、健気な孝行娘を中心に一同が奮闘する。挙句ホセ・メンドーサと15Rを戦ひでもしたかの如く、撮了と同時に岡野が情死ならぬジョー死を遂げると、来た日には。まるで清水大敬が己を鼓舞か慰撫するために、書いたやうな物語ではある。となると良くて苦笑混りに微笑ましい、悪くすると憤懣やるかたなく、なりかねないところが。如何なる途轍もない横紙であらうと、兎に角破り抜いてみせる箍の外れた圧と熱量が、この御仁の持味、とはいへ。封切当時、清大御齢七十四歳。流石に、もしくは直截に年波が寄つて来たのか。自らのオルター・エゴともいふべき武男役を、銀次郎に譲り演出に専念する。遮二無二な猪突猛進を以て宗とする、平素のドラマツルギーといふよりも寧ろファイト・スタイルからは全くらしからぬ、引き技が逆の意味で見事に諸刃の剣。精々声とガタイがデカい程度で、痛快を痛快たらしめ損なふ銀次郎の役不足にも足を引かれるか火に油を注がれ、無理を通しきれてゐない印象が最も強い。脚本は次女で、主演が長女。その他のキャストも純然たる素人の鮫島を筆頭に、何故か山川まで紛れ込む身内と身近で固め。家内制手工業の様相をも呈する岡野組新作が、クランク・インするのが四十五分前、そもそも早すぎる。そして岡野が稚拙、もとい壮絶な戦死を遂げるのも大体十分後。以降の十五分、睦事をそれなりに畳み込みこそすれ、各々の他愛ない行く末を類型的に描く、冗長なエピローグが割と画期的にダレてしまふのが致命傷。捧げたつもりが確かに一定以上は実際捧げてゐるのであらう、清水大敬が自身の映画愛を豪快に叫ばうとしてみせた、にしては。声が掠れて満足に叫べてゐないやうな、些か心寂しい一作。暫しドンパチと大立回りに尺を割く、撮影現場風景。無防備極まりない銃撃戦なり、ホールドオープンした銃を安藤ヒロキオに平然と構へさせる、凡そ現代映画とは思ひ難いノスタルジックな底の抜け具合は、矢張り清水大敬ならではであるけれど。女の裸的にも、劇中現在時制で固定されたパートナーに必ずしも恵まれなかつた、主演女優に実は弱さも否めないのが如何せん苦しい。三番手の、絵に描いたみたいに弾むプッリプリの美尻で琴線を最も激弾きしつつ、ガチの絡みは2019年第三作「おねだり、たちまち、どスケベ三昧」(主演:愛原れの/犠牲者:折笠慎也)ぶりで、二作前の「未亡人下宿?その4 今昔タマタマ数へ歌」(2020/主演:愛原れの)でも乳は無駄に放り出してゐる。それでも、あるいはまだしも。爆乳は未だ保たれてゐると尊ぶのが正解なのか、こちらは封切当時御齢六十一歳の、中村京子の凄惨な濡れ場を二度に亘り放り込んでのけるに至つては、ピンク云々の領域を超えた、一種の挑戦の趣すら漂ひ始める。チャレンジて、何に。シークエンスの醜悪さか、それとも観客の忍耐力か。


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 「あつぱれヒールズ びつくびく除霊棒」(2022/制作:Grand Master Company/提供:オーピー映画/監督・脚本・編集:塩出太志/撮影:岩川雪依/照明・Bカメ:塩出太志/録音:横田彰文/助監督:田村専一・宮原周平/小道具:佐藤美百季/特殊メイク:懸樋杏奈/特殊メイク助手:田原美由紀/魔女衣装制作:コヤマシノブ/整音:臼井勝/音楽:宮原周平/タイトルデザイン:酒井崇/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:露木栄司・木島康博・高嶋義明・青木康至・Seisho Cinema Club・愛しあってる会《仮》/出演:きみと歩実・西山真来・手塚けだま・並木塔子・七々原瑚子・橘さり・星野ゆうき・渡辺好博・今谷フトシ・竹内ゆきの・松本高士・窪田翔・漆崎敬介・細川佳央・加藤絵莉・折笠慎也・新井秀幸・田丸大輔・矢島康美・馬場泰光・鳥居みゆき)。出演者中細川佳央と、新井秀幸から馬場泰光までは本篇クレジットのみ。
 第一作「ぞつこんヒールズ ぬらりと解決!」(2021)、第二作「まん開ヒールズ 女の魔剣と熟女のアソコ」(同)を振り返るハイライトを、enough且つten minutesの十分見せた上で、占へない占師の松ノ木あゆみ(きみと)と眠らせられない催眠術師の東山マキ(西山)に、霊の見えない霊媒師・手塚茂子(手塚)。三矢の訓よろしく、ダメ人間が三人集まつたパラノーマル系便利屋ユニット、「ヒールズ」の日常的な暴飲暴食会。あゆみの両親が事故死してゐる布石を、サラッと投げタイトル・イン。アバンには今回一切出て来ない―クレジットもなされない―俳優部も、臆することなくワシワシ登場する。折角なので名前だけ拾つておくと、香取剛と西田カリナに松岡美空、津田菜都美、成宮いろはと小滝正大。凝縮した情報戦に、女の乳尻に割く余裕は残されなかつたか。
 明けて飛び込んで来るのは、詰まるところ疲れもとい憑かれ易い体質のトシヒロ(折笠)と、この時点では本当に全く正真正銘何処の何方!?な木村(七々原)の、トシヒロがアグレッシブに責める絡み。ところでこの二人、どうやら今作がラストアクトみたい。は兎も角事の最中、トシヒロは三人にトンデモ道具を提供するマッさん(今谷)と、元々マキの元カレであつたのが、今はプラズマ体宇宙人・シースー(橘)の器に甘んじてゐる鈴木(星野)も交へたヒールズを、リポーターの谷口美希(加藤)が紹介するテレビ番組に目を留める。仕事の舞ひ込んだ茂子が、何時もの調子でマキに助太刀を仰ぐ一方、放送を見て生き別れの両親を名乗り出た、田丸大輔と矢島康美の訪問を受けあゆみはそれどころでないキャンセル。仕方なくマキ一人連れて行く茂子に、助けを求める山田ゆうこ(並木)は意識のない裡に見ず知らずの男と、所謂ワンナイトラブを営んでしまふ怪現象に悩まされてゐた。SNSも畳み、完全にフェードアウトしたかに映つた並木塔子に関しては、伝聞形式ながら、塩出太志の口から戦線復帰が報告された往く人来る人、一旦往つて、帰つて来る人。なほ、帰つて来させて貰へない、荒木太郎、と池島ゆたか。
 閑話、休題。配役残り、妖艶なお胸の谷間をエモーショナルに刻み込む竹内ゆきのは、TV収録先の倉庫的なロケーションに顔を出す死神。地味か確実に迫つた危機を、それとなく忠告して呉れる。漆崎敬介はシースーこと、本名ピロロを訪ねる同族の宇宙人。ピロロは失念してゐる、地球に来訪した目的は人類滅亡。並木塔子の相手を一応務める細川佳央は、後述する窪田翔に憑かれるゆうくん。姿を消した、美希の彼氏でもある。一応とか言葉を濁したのはその一戦、二人とも憑かれてゐるギミックを優先、色気を放棄した代物。そしてトメを飾る鳥居みゆきが、ゆうこに憑いてゐた魔女。実体を持たぬゆゑ、鳥居みゆきの容姿は二十二年前に憑いてゐた、事故死した女のものである方便。に、しては。渡辺好博は今や茂子に結構自由自在に召喚され、シースーに続く事実上ヒールズ第五のメンバーたる武士の霊・ヨシ。成仏した結果、土手腹にブッ刺さつた妖刀「黄泉息丸」は失ひ丸腰で現れる。こゝまでが、前半部。あゆみ・マキ・茂子の三人と、マキから感染(うつ)された鈴木が急激に老いる後半。マッさん所蔵の謎―あるいはエクス・マキナな―書典に従ひ、元に戻るため四人ヒールズは吸血鬼の血を探す。松本高士が、特殊生命エネルギーも検知するやう改良された、幽霊測定器「ユーレイダー」でサクッと見つかる吸血鬼。何だかんだ吸血鬼も斥けたのち、木に締めの濡れ場を接ぐ新井秀幸は、あゆみと知らん間にデキてゐた元クライアントの上野。窪田翔が、前述したゆうくんに憑く悪魔。色塗りに頼る宇宙人と悪魔の造形は、正直ほとんどリデコ感覚。万事解決後のエピローグ、てつきり一幕・アンド・アウェイかに思はせた、七々原瑚子が見事に意表を突く再登板。馬場泰光は木村の依頼を受けたヒールズが捕捉する、近隣の冷蔵庫を荒らして回る食ひしん坊な霊。クレジットに於いては、“食べ過ぎた男”とされる。
 第五作がフェス先で公開された、塩出太志第四作。その最新作が全く別のお話である点を見るに、三本目でひとまづヒールズ完結篇となる模様。
 トシヒロがまた憑かれ鈴木は憑かれぱなし、美希も以前に憑かれてゐて。ゆうこも憑かれゆうくんに至つては、要はカップルで憑かれ。思ひだしたぞ、上野も親子で憑かれてゐた。実に憑依現象のカジュアルな世界観だな!とこの期に及んでプリミティブにツッコむのは、所謂いはぬが花と等閑視するとして。正しく矢継ぎ早に現れる敵々を、バッタバタといふかバタバタやつゝけて行く。如何にも今時の血統主義含めバトル漫画的な物語が、終始キレを維持する小ネタにも支へられ、有無をいふのを封じる高速展開の力業で加速。かなりか大概 一本調子ではあれ、勢ひに任せ一息に見させる。いふほど持て囃すに足る傑作名作の類では決してないにせよ、三作中一番面白いのは面白い、とりあへず。
 尤も、実体を持たない存在の―それこそフィジカルの―血とは何ぞや、とかいふ割と根本的な疑問はさて措くにせよ、女の裸は正直お留守。激しくお留守、甚だしくお留守。ある意味綺麗に二兎を追ひ損ね、小気味よく弾ける劇映画が最後まで走り抜く反面、裸映画的には全く以て物足りない。より直截にいふと、逆に一番物足りない。第一作で豪快に火を噴いた、きみと歩実が寸暇を惜しみそこかしこで兎に角脱ぎ散らかす、無理からな眼福はアバン同様、といふかアバンに圧迫される尺的な限界に屈したか二作続いて封印。限りなく一般―映画―畑の二番手には端から多くを望めず、三番手の機能不全は既に触れた。寧ろ七々原瑚子が四番手の位置から最も気を吐く、ビリング下位がピンクのアイデンティティを担保する構図は変らず、挙句頭数手数とも減つてゐる。愉快痛快にまあまあかそれなりには楽しませつつ、「あれ?俺は何処の小屋に何を観に来たのかな」と一歩でも立ち止まると、大いなる疑問も禁じ難い一作。R15版タイトルでフォーエバーを謳つてゐる以上難しさうな気もするが、西山真来の名台詞をアレンジした、「ヒールズ再起動やで!」が聞ける日は果たして来るのや否や。

 もう一箇所、大きめのツッコミ処?「強くなつたな、あゆみ」には、「アンドロメダ終着駅かよ!」と素直に釣られるべきなのか、それとも。単なる偶然の一致に脊髄で折り返した、オッサンの早とちりに過ぎんのかいな。
 備忘録< あゆみは魔女と吸血鬼の間に生まれた娘


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 「女高生“スケバン” SEX暴力」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:白井伸明/脚本:佐藤道雄/企画:伊藤亮爾/撮影:山崎敏郎/美術:川原資三/録音:高橋三郎/照明:直井勝正/編集:辻井正則/音楽:奥沢散策/助監督:中川好久/色彩計測:仁村秀信/現像:東洋現像所/製作進行:山本勉/出演:片桐夕子・潤ますみ・山科ゆり・薊千露・原田千枝子・しまさより・木村レミ・織田俊彦・玉井謙介・影山英俊・清水国雄・大泉隆二・近江大介・深町真樹子・伊達直人・山岡正義・大八木洋子・小宮山玉樹/技斗:田畑善彦)。出演者中玉井謙介と、近江大介以降は本篇クレジットのみ。音楽の奥沢散策は山本直純の変名である旨、日活公式サイトが白状してゐる。クレジットがスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 ブルマ七人とジャージ一人で何かしてゐる、錦城女学園高等学校のグラウンドを校門表から抜いて、チャリンコで移動してゐるのが微笑ましい、番長の宮川(清水)以下、弟分のシゲル(影山)とサブ(伊達)が敷地内に忍び込む。スカート丈の長い―劇中用語的には洋ラン―英子(木村)が、用を足しがてら一服キメてゐる手洗個室を宮川とシゲルが襲撃、サブは見張り役。カット跨ぎの魔術で、適当なロケーションたる体育倉庫にバイパススリップ、英子は三人に輪姦される。草叢を駆けるカメラ、錦城で番を張るモナリザお京こと森永京子(片桐)と英子に、もう一人三羽烏を成すドモ政(薊)、三人並んだ画にタイトル・イン。「よくもウチの英子甚振つて呉れたねえ」、テンプレ会話で火蓋を切る、宮川トリオとの対決。暫し尺を食つたのち、ドモ政の巴投げでサブが宙に舞ふ、豪快なストップモーションでクレジットが起動するタイトルバックがカッコいゝ。大宮をシマとするお京らは、お京が失くした定期券を犯行声明感覚で万引き現場に残して行つた、謎の二人組捜しに奔走する。一方、お京も含む地区番長の中から総番長を選ぶ、総番選挙も近づいてゐた。
 配役残り、大八木洋子は下着の万引きを見咎める店員。玉井謙介は、冤罪でお京―とドモ政―を呼びつける校長、カマキリなる綽名をつけられてゐるのが笑かせる、もう一人校長室に居合はせる馬面の女教師はノンクレ。山科ゆりが、錦城と敵対する椎葉女子で番を張る山根洋子。宮川とは、宮川が洋子のマブを気取る仲。洋子からはなかなか認めて貰へない辺りの力関係が、実にシミクニらしい。大泉隆二は永和商事のエリート営業・八代哲也、潤ますみが同僚である八代と事実上婚約してゐる中川ユキにして、果たしてその正体は。お京や洋子らを統べる、関東野あざみ会の会長・カルメンユキ。総番が卒業後顧問に昇格して組織に残る、OL番長とかいふ斬新な機軸にはホッコリした。終盤登場する、美術部もう少し仕事せれとツッコまざるにゐられない、プリミティブな模造紙組織図を見るに、顧問が進学した場合はセイガク番長なのか、高校生も一応セイガクだろ。野坂昭如みたいな造形の織田俊彦は、八代との結婚を見据ゑカルメンが手を切りたくて仕方ない、どうやら堅気ではない腐れ縁の男・南城。憎々しい色男、超絶のハマリ役ぶりが絶品。深町真樹子は雑貨屋を営む、ドモ政改め本名は政子の耳の遠い祖母、両親はゐないみたい。そして原田千枝子としまさよりが、お京の名を騙つたモト子とジュン、椎葉の新入り。山岡正義は、自分とこのビニールハウスで乱闘を繰り広げる、錦城と椎葉の面々を追ひ払ふ百姓、何気に強い。選挙でのOL番長買収資金に、お京らは売春パーティーを企画。再婚一年のセカンドハネムーンで、親は不在の森永家にて。近江大介はドモ政を買ふ男で、小宮山玉樹が英子を買ふ男。但しこの件、要はたゞの団地にしては照明部が徒にハッスルしすぎてゐて、近江大介はまだしも、コミタマは辛うじて程度にしか映らない。お京の相手には、何処から聞きつけたのか性戯に長けた南城が忍び込む。その他無駄に美少年の駅員始め、台詞の有無を問はず、総勢五十人でもきかない膨大な頭数がふんだんに投入される。あ、あと決して神など宿しはしない細部を忘れてゐた。ドモ政の部屋に、原作・監修を務めた買取系短篇が計三本前年公開されてゐる、医学博士・松窪耕平の俗流セックス指南本があるのは微笑ましい御愛嬌。つか、セックス指南本の本格ないし学術的とは何ぞや。
 白井伸明昭和48年第一作は、女高生に“スケバン”のルビを振る、ロマポでは初の顕示的スケバンもの。最初に女番長を冠したのは多分「女番長 仁義破り」(昭和44/日活/玉謙が出てゐる)の、邦画全体的にも黎明期。尤も狭義のスケバンロマポ―女高生なら沢山ある―はいふほど量産してゐる訳でも別になく、しかも本隊作よりプリマを主に買取系の方が寧ろ多い。
 仁義を欠いた姐御のユキなりライバルの洋子に、お京が落とし前をつける。黙つて聞いてゐると悪役が姦計を勝手にペラッペラ開陳して呉れる、オートマチックな御都合作劇にさへ目を瞑るか耳を塞げば、シンプルな物語がフォーマット通りに進行する、ひとまづは安定した一作。技斗も存在してゐるだけに、切つた張つたもとりあへずの水準で見てゐられはする。代々忠のやうに、何処の誰を撮ればいゝのか、白井伸明が見失ふこともない、大体見失はないんだけど。にしては明らかにノリきれないところの所以は、ズベ公が柄に合はなかつたのか、異常に不細工な主演女優。下品に歯を剥いた片桐夕子の見るに堪へない醜悪さは、結構衝撃的なレベル。挙句火に油を注ぐのが、いざ声を荒げ始めるや発声がへべれけで、京子が何いつてるのか本当に聞き取れなくなるのは、この手の活劇としては地味でないアキレス腱。反面、過分にビリングが低い気も否めない木村レミが、半世紀後の現代でも第一線で全然通用し得よう、スマートに整つた容姿は作中最強の美人。お芝居的にも、周りと比べて全く遜色ない。但し、惜しむらくはこの人、ググッてみても活動の形跡が今作以外、二三冊の週刊誌グラビアくらゐしか見当たらない点を窺ふに、どうやら瞬間的な実働期間であつた模様。

 と、ころで。お京が駆使するのが、大ぶりの指輪に剃刀を仕込んだ得物。悪辣なスケコマシを懲らしめる、流れ的な蓋然性は酌めなくもないものの、南城に対しお京がヤキを棹に入れる凄惨なシークエンスには、普通に死んでしまふと肝を冷やした、動脈通つてゐるんだぞ。


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 「女教師 秘密」(昭和53/製作:日活株式会社/監督:白鳥信一/脚本:鹿水晶子/プロデューサー:細越省吾/撮影:畠中照夫/照明:田島武志/録音:福島信雅/美術:川船夏夫/編集:井上治/音楽:A・ビバルディ 演奏:水谷ひさし・キングレコード「ロック・四季より/助監督:山口友三/色彩計測:村田米造/現像:東洋現像所/製作担当者:沖野晴久/出演:山口美也子、原悦子、砂塚秀夫、絵沢萠子、石太郎、高橋淳、川島めぐ、あき・じゅん、高橋明、西真琴、滝沢淳、萩原徹也、千葉泰子/技斗:田畑善彦)。音楽の水谷ひさしは、前年解散したex.コスモスファクトリー。
 部屋の大きさに不釣り合ひな、馬鹿デカいベッド、事後の。何とか学園英語教師の山川ひかる(山口)が、夫で同じ高校の体育教師・久志(石太郎/ex.岡田洋介/a.k.a.槇健吾)に、久志の不義を理由とする離婚を何度目かで切り出す。それでもこの御二方、夫婦生活は成立するのね。風呂に立つたひかるが観音様を入念にお清めしてゐると、ズンチャカ藪から棒に「ロック・四季」が起動して暗転タイトル・イン。但しこのタイトル画面、急に画調が変るのがオリジナル版か否か疑念が脊髄で折り返すのは、節穴の穿ちすぎであらうか。
 明けて校舎の外周りから、テストを執り行ふひかるの授業。真面目に取り組む気のまるでない、白紙の答案を見咎められた吉村麦平(高橋)はひかるに対し、和訳を求められた解答欄で“I LOVE YOU”と求愛。そのメソッドは果たして、アリなのかナシなのか、ねえだろ。さういふ二人に十時の方向から、森山解子(原)が恨めしげな視線を投げる。今回大明神の、隈が常にも増して濃い。
 配役残り、川島めぐは教室で麦平の右隣、解子の前の席のオカジマ信枝。同じやうなルックスが特定を阻む滝沢淳と萩原徹也は、麦平らとツルむ弘と正夫。ナンシー・アレンみたいな頭の千葉泰子は信枝の友達・由美、西真琴が大好きな大好きな解子ちやんに煙たがられる、不憫な虎雄。以上七名のネームド生徒のほか、四十人前後は優に賄ふ、潤沢な生徒要員が投入される。あき・じゅんが、久志の浮気相手で元教へ子の琴子。石太郎なり高橋淳より、高いビリングに座るのが正直違和感も否めない砂塚秀夫と絵沢萠子は、麦平の父親で蕎麦屋「大黒」の大将・浅吉と、登場順的には最後の、若い間男と出奔してゐた母・頼子、地味に壮絶なタイプキャストが清々しい。その他琴子が働く飲み屋と、後述する高橋明とひかるが出会ふ店に、十余人の頭数―とあの男!―が見切れる。と、ころで。川島めぐとオバパーのオッカサンはおろか、絵沢萠子も不脱の意外とオーソドックスなメイン女優部三枚態勢。
 よくよくex.DMMを探してみるに何故かサブスクに入つてをらず、バラ売りでしか見られなかつた白鳥信一昭和53年第三作、「女教師」シリーズ第二作。こゝで、無印第一作「女教師」(昭和52/監督:田中登/脚本:中島丈博/原作:清水一行/主演:永島暎子)分は妙に詳細なウィキでフライング、全九作を通して最多は誰が何本出てゐるのか戯れに数へてみたところ。第四作「女教師 汚れた放課後」(昭和56/監督:根岸吉太郎/脚本:田中陽造)と第七作「女教師狩り」(昭和57/監督:鈴木潤一=すずきじゅんいち/脚本:斎藤博)に、第八作「襲はれる女教師」(昭和58/監督:斉藤信幸/脚本:桂千穂)。三度主演を務めた風祭ゆきを筆頭に、色男常連の影山英俊と北見敏之。時にはノンクレで電撃の一幕・アンド・アウェイを敢行する、高橋明や水木京一でさへ風祭ゆきに並ぶ三作がやつと。監督が全て異なるのも起因するのか、油断してゐると皆勤しかねない勢ひで、五本六本とレギュラーを張る置き物的な猛者は案外ゐなかつた。寧ろ、庄司三郎の名前が何処にも見当たらない点が、逆に側面的な特色とすらいへるのかも知れない。
 とつとゝ自分から出て行けばいゝひかると、何故か大人しく渡りに船しない久志。ある程度の合意に基づきサクッと別れてしまふに如くはない、山川夫妻がにも関らず婚姻関係をちんたら継続するところの方便ないし所以に、兎にも角にも理解に苦しむのが最初の起爆装置。焼けぼつくひに再点火する火種として、ひかるが麦平を弄ぶ。虎雄を疎ましがる返す刀かものの弾みか、出し抜けに麦平への岡惚れを拗らせる、解子が看破した認識の方が余程呑み込むに易い。藪から棒に竹を接ぐ、破瓜の件には大時代的な青春映画が俄かに狂ひ咲きながらも、所詮は枝葉を飾る花。解子が苦痛に歪ませる、口元のカットに赤々としたフィルターをかけるプリミティブがグルッと一周するスーパー演出にも、確かに度肝を抜かれはした。と、はいへ。要はヌキ終へるやケロッと素顔を曝す、扮装自体の無意味さにも軽く拍子を抜かれる、ストッキングで武装した麦平が、山川家にひかるを急襲する一幕。の場面一転、サムウェア飲み屋。一人飲みしてゐたところ声をかけて来た男・近藤(高橋)と、ひかるが出奔する驚天動地の結末には度肝どころか尻子玉を抜かれた。いや、だから重低音をバクチクさせる、かといつて絡みにはいふほど長けてゐる訳でも別にない高橋明なんだけど、誰よそいつ。腐れ縁の配偶者でもある意味初心い教へ子でもなく、何でまた締めの濡れ場で女教師を介錯するのがポッと出の謎オッサンなのよ。挙句一時間を跨いで大黒に頼子が帰つて来たりと、ラストは割と画期的なレベルでガッチャガチャ。さう、なると。木端微塵に爆散したとて決しておかしくない一作を、徳俵一杯で救ふのは。「誰か待つてんのか?」、近藤がぞんざいな第一声をひかるに投げたカウンターの中にて、山口美也子と高橋明の背中側にカメラ位置が変ると、バーテンダー役の小宮山玉樹が詰まらなさうな顔でグラスなんて磨いてゐたりするのが完璧にして超絶のコミタマ仕事、ベストに蝶ネクタイが似合ふ似合ふ。壮大な蛮勇を以て曲解から牽強付会にギアを捻じ込むと、恐らく展開の無理を自覚した白鳥信一が、影の千両役者投入で超飛躍の固定ないし緩和を謀つた、もとい図つたにさうゐない。とまれ小宮山玉樹こゝにありをさりげなく叩き込む、慎ましやかな一撃必殺こそ今作の白眉。黙した小宮山玉樹がバーテンかウェイターでシレッと、でもない何気な存在感でフレームの中に自らの居場所を確保する。それが豊潤な沃野なのか、不毛な荒野なのかは一旦さて措き。量産型娯楽映画ならではの数打つその先で、数打ち倒した果てに初めて辿り着く、ひとつの地平をこそ最も貴びたい。心配御無用、明後日か一昨日な与太を拭いてるのは承知してゐる。

 当時的には未だ斬新なモチーフたり得たのか、“Bitch”といふ英単語の無闇なフィーチャーに、甘酸つぱい微笑ましさ通り越した居た堪れない小恥づかしさも禁じ難いのは、流石にこの期の視座からそれをいふても仕方がない。


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 「団鬼六 美教師地獄責め」(昭和60/製作:にっかつ撮影所?/提供:にっかつ/監督:瀬川正仁⦅第一回監督作品⦆/脚本:佐伯俊道/原作:団鬼六/プロデューサー:奥村幸士/企画:小松裕司/宣伝:羽田利一/撮影:水野尾信正/照明:木村誠作/録音:細井正次/美術:金田克美/編集:奥原好幸/選曲:林大輔/助監督:池田賢一/色彩計測:青柳勝義/緊縛指導:浦戸宏/擬斗:高瀬将嗣/製作担当者:作田貴志/現像:東洋現像所/出演:真咲乱・志麻いづみ・水野さおり・高山成夫・野坂隆広・福山聖一郎・名和宏・益富信孝)。出演者中、真咲乱にポスターでは括弧新人特記。提供に関しては、事実上エクセス。あと往時のポスターは、小妻要の責め絵。
 乳撫鉄道、もとい秩父鉄道浦山口駅に、長物背負つた顔面の濃い真咲乱が降り立ち、髪型のおかしな志麻いづみが出迎へる。岡崎冴子(志麻)の何某か含みを持たせた招聘に応じる形で、サドマゾならぬ剣道の女王として名を馳せた、国語教師の早乙女法子(真咲)は山間の女子高に赴任。くねくね進む車を、空から捉へた贅沢な俯瞰にクレジット起動、トンネルの出口に向かふ、車載カットにタイトル・イン。山道を塞いだステーションワゴンから、VANのジャケットの若林(高山)。黄ジャンパーの佐川(多分福山聖一郎)に、革ジャンの大木(心許ない消去法で野坂隆広)、不良三人組が現れ二人を襲撃。木刀を抜いた法子が大木と佐川を二対一でも撃退する一方、冴子は若林にある程度犯される。幾ら時と場合と相手次第にせよ、心得のある人間が、若林の顔を突くのは如何なものかと思へなくもない。
 配役残り、事もなげに投入される教室小隊を経て、名和宏と益富信孝は『葉隠』を採り上げる法子の授業を参観する、理事長の田野倉聡とその車椅子を押す、用務員の森田。益富信孝の本質を汚い佐藤浩市に看做すのが、今回新たに辿り着いた視座。漠然と顔の曲つた水野さおりは、田野倉の孫娘・美紀、ちなみに両親は死去。その他職員室分隊と法子から指南を受ける道場班のほか、上野淳から一切の華なり外連を脱色したかのやうな、正体不明の途轍もなく変哲のない遺影は、水難事故から法子を救ひ溺死した、冴子の婚約者・タカシ。それをいつては話がゼロから始まらないともいへ、結構派手な因縁を抱へる人間の招きを、そもそも法子は何故受けたのか。
 実際さういふ御仁がどのくらゐ存在するのか知らないが、監協と日本ペンクラブ両方所属してゐる瀬川正仁のデビュー作。尤も監督作は昭和末期の三本のみで事実上打ち止め、以降はテレビ―のノンフィクション―畑や日本大学芸術学部でない方の日芸(2013年閉校)レッスンプロ、近年の活動は文筆業がメインの御様子。一方、1000ミリバストを謳つた―末代と同義の―四代目“SMの女王”たる、真咲乱にとつても戴冠作。二番手に従へた志麻いづみとの共演となると、三代目・高倉美貴の前後を正規にはナンバリングされぬまゝ繋いだ、新旧女王が並び立つ格好となる。ついでといつては何だが、ザッと探してみたところ水野さおりにも実は、今作を遡るフィルモグラフィが見当たらない。ポスター・本クレとも、新人特記は施されてゐないけれど何か先行作があるのかな?
 美教師が地獄のやうな責めを受ける、煌びやかなほどあるいは、潔くそれだけの物語。最初に法子が生物準備室で昏倒するのが、よもやまさか驚愕の開巻十分。その際には仕掛けの早い映画だな!と軽くでなく度肝を抜かれつつ、幸いにも、当日一泊する冴子宅の古民家と、全裸防具がエロくてエモいエローショナルな、剣道場の一幕を挿む流石に早とちり。にしても学校から帰宅した美紀が、何をトチ狂ふたか西洋甲冑に入れられてゐる法子と熱い接吻を交す。藪蛇な意匠が火を噴く素頓狂なラストから窺ふに、結局その後終ぞ囚はれてゐると思しき法子が、田野倉邸の敷居を跨ぐのが尺の折り返し間際。以降主演女優をひらすらに甚振つて甚振つて甚振り抜く、腹の据わりぶりが実に清々しい。お胸を平手で打たれては「痛ーい」、背に熱ロウを落とされては「熱ーい」。濡れ場に突入すると硬さが抜ける、何気なセンスのよさを真咲乱が滲ませ、タカシ絡みの復讐心に燃える冴子が、法子にブチ込んだイチジクが実に六本。万歳大開脚の体勢―観音様はビデオカメラで隠す―で座らされた法子が、首まで浸かる水槽。お約束の苦悶を一時愉しませた末、遂に法子が決壊するや広がる茶濁水と連動させ、ポロポロポローンと美しいハーブを鳴らす、壮絶なスペクタクルは素の劇映画的にもグルッと一周して感動的。論を俟つまでもなく、俯せの状態で豊かに潰れ、縄で縛り込まれれば悩ましく零れる、爆乳は極上の眼福。人間性なんてホワイエか、家で見てゐるならベランダにでも置いて来てしまへ。品性下劣な琴線をエクストリームに激弾きする、轟音の裸映画。日活の公式サイトによるとどうやら瀬川正仁自身の着想らしい、葉隠の精神を百合で超克する。意欲的な主題か盛大な大風呂敷は、花を咲かせるビリング頭と三番手の、已むを得ない覚束なさにも足を引かれ後ろから撃たれ、木に竹すら接かず事実上完放置。随分藪から棒でもあれドラマティックに失墜した森田も、絶妙に鮮烈には死に損なふ。終盤の失速も否み難い反面、法子を地獄に堕とし燃え尽きた冴子が、浦山口を離れる印象的なロングは、首の皮一枚映画を救ふ。

 道場パート、気づくと途中暫しゐなくなる佐川が、ハイサイドライトから引きで狙ふ、若林曰く“剣道の女王レイプ現場の生撮りビデオ”を回してゐた、とかいふ。案外実直な作劇上の論理性と、佐川の闇雲な情熱には畏れ入つた。往時の機材で、そんな遠くから満足に撮れたのか否かは知らん。


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 「襲はれる女教師」(昭和58/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:斉藤信幸/脚本:桂千穂/プロデューサー:秋山みよ/企画:進藤貴美男/撮影:野田悌男/照明:木村誠作/録音:伊藤晴康/美術:金田克美/編集:井上治/アシスタントプロデューサー:沖野晴久/選曲:細井正次/助監督:児玉高志/色彩計測:森島章雄/現像:東洋現像所/製作担当者:香西靖仁/協力:錦糸町クリスタルHOTEL/出演:風祭ゆき・水木薫・聖ミカ・朝吹ケイト⦅新人⦆・下元史朗・添田聡司・川上伸之・永田豪史・高木常吉・奥村樹里・丹治信恭)。
 最初に根本的な白旗を揚げてさせて貰ひたいのが、ヒロインの、固有名詞下の名前に関して。添田聡司は確かに恵子と呼んでゐる反面、パールマンション203号室の表札が英子となつてゐるのは、何れが正解なのかもう当サイトは知らない、それはこちら側の黒星なのか。ち、なみに。恐らくプレスシート辺り準拠の、各種資料に於ける粗筋文中では英子とされつつ同時にあるいは同様の、キャスト一覧では恵子とされてゐる。さうなると五分五分に思へなくもないものの、こゝはひとまづ、俳優部が声に出す恵子を尊重してみる、ごめんね美術部。
 踏切の向かうに立つ、正直女子大生には見えない完成された美人。小脇に音楽史の教科書を抱へ、この頃は芸大生の津島恵子(風祭)が歩く、枯葉舞ふ往来にタイトル・イン。背後から自転車で接近した、甲斐太郎とささきまことを足して二で割つたやうな暴漢(高木)が、白昼の路上堂々と恵子を襲撃、一応地下道に連れ込んだ上で犯す。田舎者の、哀しさよ。ロケ地を特定しかねる、何処ぞの大学構内。恵子は絵画系の彼氏・今井広之(添田)に、噂されるレイプ被害を認める。相談を持ちかけた恵子のアパートに結局、今井は来なかつた。一人の部屋で今井を待つ、恵子が想起する何時かのクリスマスの夜。就寝中の恵子宅を、ツリーの電飾だけ携へた今井がコソッと来訪。寝込みを騒がす、ソフィスティケイトな一種の夜這ひ。部屋着の差異に気づかない限り、完全なノーモーションで回想に突入する、関根和美ばりの荒業を斉藤信幸が何気に仕出かす。
 ザクッと五年後が、劇中現在時制。配役残り聖ミカは、音楽教師となつた恵子が勤める荒淫、もとい光陰学園の女子高生・八坂ルリ子。奥村樹里と丹治信恭はルリ子が所謂“カンパ”を集める、同級生の菱田愛子と大江一郎、奥村樹里は不脱。そしてモサーッとした髪型が、80年代の仕業にしてもあんまりに映る水木薫は、保健室の養護教諭・夏木一美。メンタルヘルス的にはアリなのかも知れないけれど、保健室で小鳥を飼ふフィジカル衛生上の是非や如何に。下元史朗は日々甲斐甲斐しく車で恵子を自宅―近くのコンビニ―まで送る、同僚教師の白石信夫。永田豪史は恵子から、断じて合鍵は渡して貰へないセフレで浪人生の山上昭、遊んでゐないで勉強せれ。いや、風祭ゆき相手なら遊びの方が重要か。川上伸之は一夜を過ごす恵子ルールに触れた山上の放逐後、ディスコみたいに煌びやかなローラースケート場にて、恵子が新たにミーツする次の若い男・鈴川純一。そして満を持し損ねる朝吹ケイトが、五年の間に結婚してゐた今井の妻・雅代、朝吹ケイトは別に悪くない。その他校内よりも、主に恵子が出没する校外のそこかしこに寧ろ、大量の頭数が投入される。そ、んな中。恵子と今井の再会時、今井と悶着を起こしてゐる髭と、ゲーセンでルリ子の筐体対面に座る正体不明の二枚目が、とりあへず抜かれこそすれ、蒙昧ゆゑ辿り着けぬクレジットの狭間に沈む謎。
 斉藤信幸第六作は、年二本づつ後半は公開されてもゐた、「女教師」シリーズ全九作中第八作。明けての正月映画にせよ厳密には前年、既にれつきとした初土俵を踏んでゐる朝吹ケイトが、二本目であるにも関らず依然括弧新人特記を引き摺つてゐる所以がよく判らない。「女子大生の下半身 な〜んも知らん親」(監督:楠田恵子⦅成城大学⦆=吉村元希/脚本:小宮三和⦅跡見女子短大⦆・松本貴子⦅東海大学⦆)を満足な一本として数へてゐない、一種の差別意識でも酌めばよいのかしらん。兎も角、汚されたり狩られたり、相変らずバイオレントな憂き目に遭ふ、唯一人複数作の主演を果す風祭ゆき的には、シリーズ通算第三作にあたる。三度目の、正直ならず不誠実。
 襲はれ恋人と別れた過去を持つ一方、今はベッドバディを絶やさない案外か予想外に享楽的な生活を送る女教師が、改めて襲はれる、未遂含め二回。何はともあれ斉藤信幸といふと、傑作ニューシネマ「黒い下着の女」(昭和57/脚本:いどあきお/主演:倉吉朝子・上野淳)のしかも次作といふので、勝手に期待して見てみたところが結構どころでなく、派手に宜しくない出来だつた。風祭ゆきの、スレンダーな肢体をひたすらに拝ませ倒す。観客が最も求めてゐる、女の裸をしこたま見せる、その至誠は勿論酌める。さうは、いふてもだな。序盤はおろか前半をも優に通過してなほ、二番手以降を温存。三番手が漸く本格的な絡みを披露するのが四十一分、その後二十五分強がガッチャガチャ。雅代から妊娠を告げられた広之が、見せてみろといふので未だ膨らみ始めてもゐない腹かと思へば、よもやまさかの観音様御本尊。ハモニカを吹きがてら事に及ぶへべれけな導入は、流石に裸映画としての要諦ないし要請に、劇映画が完全に負けてしまつてゐる。昭和58年当時、安定期の概念が発見されてゐなかつた訳でもあるまい。そんな四番手―の処遇―に、火にガソリンを注ぐのが二番手。幾ら一美が白石に横恋慕を焦がす、布石を再三再四打つてゐたとはいへ。一時間も跨ぎラスト五分に突入しての大概土壇場に至つて、藪から棒に水木薫の濡れ場を放り込む。三上紗恵子脚本の荒木太郎に劣るとも勝らない、出鱈目な用兵と木端微塵のペース配分には引つ繰り返つた、卒倒ともいふ。挙句その期に及んで一度ならず二度までも、最中雑にカットを飛ばしてのける始末、もしくは不始末。この点今作に限らず、ロマポに触れてゐてしばしば躓くのが、肝心要である筈にしては、選りにも選つての見せ場で乱れる繋ぎ。そ、れとも。撮影所に籍を置く編集マンの、技術が足らないとも思ひ難い以上、もしかして。最終的には何処かで裸映画を虚仮にした態度の、ひとつの現れなのであらうか。話を今作単体に戻すと、二三四番手がトッ散らかした映画に、止めを刺すのが主演女優である流れはある意味といふか、より直截には逆の意味でビリング通り。鈴川に犯された―シークエンス自体も実は地味に酷い、後述する―恵子は、雅代が最初に出る今井家に電話。来て呉れるやう望む恵子に対し、夜分に余所の女から電話がかゝつて来て、当然不安ないし不審がる雅代の傍ら、今井は一旦黙つて受話器を置く。置き、ながら。そのまゝ家で大人しくしてゐればいゝものを、のこのこ今井が恵子の下に現れる展開には普通に吃驚した。曰く「五年前は僕が悪かつた」、ぢやねえだろ。今また悪いんだよ、輪をかけて悪いんだよ。家には、御子を授かつたばかりの配偶者もゐるんだろ。言葉を選べば頭がおかしい場面は他にもあつて、斉藤信幸らしいロケーションといつてもいゝのか、波止場に停めた車中。三年前亡妻に先立たれた―それもそれで、のちに白石が一美のモーションを、三回忌を方便に断る件と齟齬を来す、去年済ませてる―白石が、恵子に求婚。断られるや勢ひ余つたか端的に箍が外れたか、白石は恵子を手篭めにしかける。裸の腿に鉛筆を突き刺され、撃退された格好の白石が一旦一息ついた流れで、性懲りもなく再度プロポーズを申し出るのには度肝を抜かれた。桂千穂なら幾ら狂つてゐたとて、何をしても許されるだなどとゆめゆめ思ふなよ。兎に角、五年前を取り戻せた格好にして。当然、その間恵子が学校に出てゐなければ今井も家に戻つてゐない、数昼夜に亘る爛れた情交の果て。カーテンを開け放した陽光に風祭ゆきの裸身が霞む、画だけは綺麗な恵子が適当に吹つ切れる奈落の底も抜くクソ以下のラストは、斉藤信幸が斯くも碌でもない映画を撮るのかと、別の意味で衝撃的。こゝまで壮絶な有様だと扱ひは随分ぞんざいでもあれ、出奔する大江と、駅のホームに佇むロング。ショット自体は印象的な、ルリ子が限りなく登場人物全滅に近い死屍累々の中で、実は最も恵まれてゐたとする評価も、この際成り立ちかねない。頭三本が未見につき、最終的な結論は出せないが「女教師」シリーズのワースト有力候補。逆に依然これといつた有望株の特に見当たらない、ベストはと問はれると途端に考へ込んで答へに窮す。

 水の抜かれた、冬のプールに潜んだ鈴川があくまでフレームの中に於いては見えない角度から、恵子の足首をヒッ掴むサスペンス。いや、それさ、立ち位置的に端から恵子には見えとるぢやろ。映画の嘘すら、最早満足につけてゐない。


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 「肉の標的・奪ふ!」(昭和54/製作:日活株式会社/監督:澤田幸弘/脚本:永原秀一/プロデューサー:三浦朗/撮影:前田米造/照明:川島晴雄/録音:橋本文雄/美術:徳田博/編集:山田真司/音楽:クリエーション/助監督:川崎善廣/色彩計測:森島章雄/現像:東洋現像所/製作担当者:栗原啓祐/出演:鹿沼えり・小川亜佐美・志麻いづみ・飛鳥裕子・吉沢由起・岡本麗・志賀圭二郎・五條博・大河内稔・浜口竜哉・島村謙次・柳田雅夫・織田俊彦)。出演者中、柳田雅夫は本篇クレジットのみ。クレジットがスッ飛ばす、配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 商社大手の「大興物産」、出社した鉄鋼一課の根津隆(志賀)が、オフィスの窓から往来を見やる。ビリングは無視、何気に綺麗な順―当サイト調べ―で並べてゐるやうに思へなくもない、銘々出勤する鉄鋼一課のタイピスト・吉村京子(小川)。同じく鉄一の文書係で、根津と次期課長の座を争ふ武井の婚約者である上条由美(鹿沼)。この時点に於いては明らかでなかつたが、実は百合の花咲き誇らせる仲の、電算室計数処理係の先輩後輩・池田沙智(飛鳥)と森川みゆき(吉沢)。そして、専務秘書の遠山直子(志麻)。二百人はゐる女子社員の中から、五人の根津いはく“最高”のイントロがてら、「一人だけでも何とかモノに出来れば」とか、朝ぱらから何をこの男はな自由な内心を叙情すると、窓越しのカメラがガーンと引いて鮮烈な筆致のタイトル・イン。
 ザクッと配役残り、専務の堀田(大河内)と部長の山崎(島村)に連れられ、根津は重要な接待の席に。綿を含んだ浜口竜哉と、織田俊彦は接待される側と思しき役人其の壱其の弐。五條博が件の武井で、ほかにこれといつた人影も見当たらないゆゑ、柳田雅夫はもう一人宴席にゐる謎ポジションの男かなあ、岡本麗はその座につくホステス・奈々。その他大興要員を主に沙智・みゆきが遊びに行くディスコ等々、数十人規模の潤沢な要員が用立てられる。忘れてた、普通に団地クラスの大興物産社員寮にあつては、子役をも投入。この辺りの所帯の大きさが、如何せんピンクには太刀打ち能はざるロマポぶり。話を戻すと酒癖の悪い根津が、お役人に矢鱈挑発的な態度をとるのを見咎めた堀田は、武井を伴ひ手洗にトラを隔離しお説教。すると根津は静かに激昂、やをら右ストレートを堀田に叩き込む極大粗相。その場は武井に取り抑へられ、堀田からは出社に及ばぬ旨厳命された根津が、雨の中傘も差さずに悄然とする帰途。奈々の2ドアに小遣ひ稼ぎの白タク感覚で拾つて貰つた根津は、尿意を催し車を停めた奈々を暴行する、手始めに。
 都合七作中、澤田幸弘のロマポ第六作。大雑把に探してみたところ、「肉の標的」を冠した量産型娯楽映画が全部で三本。一本目の「肉の標的 逃亡」(昭和44/国映/監督:大杉虎=若松孝二)は兎も角、小川和久(=小川欽也)の「肉の標的 射る」が今作の五ヶ月半後に封切られてゐるのは、豪快に二番茶を煎じてのける節操のなさが実に清々しい。
 奈々で味を占めたかそれとも、純然たる自業自得で飼ひ殺しに追ひやられ、箍が外れたか。根津は次に由美、そして京子。みゆきと沙智は一緒くた、最後に直子をと矢継ぎ早に凌辱する。適度な距離を置き、腰を据ゑ案外長く回す。要は大半が和姦ではない濡れ場はアクション映画的なスピード感と、下賤な琴線を激弾きする即物的な官能性とを素晴らしく両立。まづ雨中の奈々、京子は車内で。沙智はみゆきに手をつけてゐる間、押し込んだクローゼットの中でそのまゝ手籠めにする予想外の変化球。直子に至つては、堀田は終日外出中の専務室。自宅を普通に急襲した由美―とみゆき―以外、多彩に凝つたロケーションから大いに振るつてゐる。豪華六本柱を擁するとなると、往々にして諸刃の剣と化しがちなのがその頭数。七十分を跨ぐ尺は六人全員に物足りなさを覚えさせるでなく、裸映画的には狂人もとい強靭に充実。陰鬱の一歩手前に無表情な造形を宛がはれた志賀圭二郎の、精悍も剥き出されるが如く映える。唯一の難点ないし欠点はといふと、コミタマなりサブ、影英や水京が出て来ない辺りくらゐ。浜竜とオダトシ、島謙もゐるんだから満足しろ。とは、問屋が卸さないんだな、これが。
 全く以て武井のいふ通り身から出た錆で失墜した男が、最早自棄糞なのか連続強姦魔に変貌。目星をつけた社内の美人を片端から犯し倒した末、うち一人の口添へで一発大逆転の再起を果たす。とかいふ、鬼神と化した浜野佐知が雷雲従へ轟然とスッ飛んで来さうなバイオレント立身出世譚。しかも土砂降りの中ヤリ捨てられ御役御免、以降ワン・カットたりとも顧みられるでなく。一番無体な扱ひの岡本麗と、よしんば相手が顔見知りであつても、おいそれと男の車に乗りはしない。育ちのよさを感じさせる京子の二人は幾分怪しいものの、概ね何れの女もレイプされてゐるうち根津の虜になつて行く。挙句、そもそも当時はさういふ視座の兆しすら覚束ないが、沙智とみゆきに至つてはセクシャリティからガン無視の全否定。幾ら昭和の所業とはいへ、大概底の抜けたミソジニーには匙を投げるのも通り越し畏れ入つた、感心してゐる場合か。とまれ斯くもピカレスクの斜め上だか下を行く出鱈目かへべれけな物語、どれだけ木に竹接ぐ最期であつたとて、兎に角根津が無様か呆気なく死んで呉れないことには、流石に最低限の形でさへ起承転結が満足に成立するまい。あたかも根津が全てを手に入れたかのやうなラストに半ば呆然と、直截にいふならば開いた口が塞がらなかつたのは、腐れ保守の分際で、利いた風な戯言叩くんぢやねえとの誹りも当サイトは免れ得ないであらうか。


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 「女教師 生徒の眼の前で」(昭和57/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:上垣保朗/脚本:大工原正泰/プロデューサー:三浦朗/企画:奥村幸士/撮影:野田悌男/照明:内田勝成/録音:木村瑛二/美術:中澤克巳/編集:山田真司/選曲:伊藤晴康/助監督:村上修/色彩計測:福沢正典/現像:東洋現像所/製作進行:三浦増博/出演:三東ルシア・岡里奈⦅新人⦆・嵯峨美京子・中根徹・堀広道・北見敏之・吉川敏夫・岸正明・小旗拓郎・水木京一)。
 軽く廃墟みさへ漂ふ古い校舎を背景に、体育の授業のサッカーにクレジット起動。校内に入つたカメラが、歩を進めるタイトルバック。英語の授業中の、教室のドアを開けトリの上垣保朗。教科書を朗読する、校名不詳高校英語教師のヨシザワ令子(三東)に、案外ぞんざいな書体でタイトル・イン。一学級優に賄ふ潤沢な生徒部に関しては、潔く白旗を揚げる。凄腕の人が見たら、何処に後年の誰それがとかあるのかな。
 令子に当てられ、教科書を読み始めたシマノ貴志(堀)をリーダー格の酒井拓也(中根)以下、ガールフレンドの久美(岡)。桑田(岸)と名なし悪ガキ要員(小旗)に、若森(古川)の三馬鹿が点取り虫云々と揶揄する。フと調べてみると初陣にして二番手に起用されたオカリナに、以降の戦歴が見当たらない件。ザックリ譬へるならば、縦方向に引き伸ばした相沢知美(ex.青井みずき/a.k.a.会澤ともみ)。閑話、休題。令子が顧問で、冷やかしに来た三馬鹿をテニスには真面目に取り組む拓也が排除する、テニス部の部活を経て。女子職員更衣室のシャワーで汗を流す令子を、拓也と同じジャージなのは多分学校指定の、ストッキングを顔に被つた暴漢が襲撃。令子が誰も見てゐないところで犯された事後、現場には何故かジグゾーパズルがひとピース残されてゐた。
 配役残り、嵯峨美京子は令子の同僚かつ友人の祥子。北見敏之は祥子の恋人・秋山、多分サッカー部の顧問。令子は普通のアパートに住んでゐる割に、秋山が妙にゴージャスなマンション住まひであつたりするのが不可解な所得格差。そして画期的ならしさで飛び込んで来る水木京一が、件のワンピースを携へ、令子が話を訊きに行く玩具店店主。ピースひとつ持参してどのジグゾーパズルのものかなんて、判る訳ないだろ。
 第四作「女教師 汚れた放課後」(昭和56/監督:根岸吉太郎/脚本:田中陽造/主演:風祭ゆき)が地元駅前ロマンに来た流れで、ぼちぼち見進めて行くかとした、全九作で一応括られる「女教師」シリーズ第六作。ex.DMMに全部入つてゐるゆゑ、見る分には容易いとしても第一作のそのまゝ「女教師」(昭和52/監督:田中登)が、何をトチ狂ふたか尺が百分もあるのが正直結構面倒臭い。上垣保朗(a.k.a.佐々木尚)のフィルモグラフィとしては昭和57年第一作、といふより通算第二作にあたり、一方、三東ルシアにとつては初の量産型裸映画。演出部と俳優部、期待の新星を日活が揃へて来た布陣ないし風情も窺へる。
 ロマポの一種お約束事でもあれ、若かりし時分に要はオナペットとしてしこたまお世話になつたイカ臭い思ひ込み、もとい青臭いエモーションにじつくり醸成された闇雲な激賞もそこかしこに見当たりつつ、そもそも強姦された女が、ジグゾーパズルを手掛かりにレイプ犯を自力で捜し出さうとする。だなどと土台頓珍漢な無理筋に貫かれた物語が、特段面白い訳でも別になく。反面、男が立ち去つた後の方が寧ろエロい最初の凶行と、久美に連れて行かれるまんまと鴨葱の体で、令子が日曜日と創立記念日の二連休、矢鱈豪勢な酒井邸に囚はれる。当時観客の精巣を空つぽにしたにさうゐない、轟然と畳みかける怒涛の中盤が大いに充実。屈折した劣情をヒロインが正体不明か御都合的な懐の広さで受け容れる、シークエンス自体は―よしんば歪んでしかゐないにせよ―感動的な締めの濡れ場まで含め、女の乳尻を愛でる分にはひとまづの完成度。端々でズッタズタ平然とカットを飛ばす乱雑さと、締めの濡れ場の、不用意な暗さに加へ距離と構図何れも中途半端な、ヤル気の有無が微妙に怪しいフィックスは頂けないけれど。裸と映画を天秤にかけた場合明らかに裸が重い、ぼちぼちの一作。でも別に構ひはしないともいへ、今作最もメタ的に解せないのが、公式のイントロ―当時のプレスが、シリーズの第10弾を謳つてゐるへべれけさは微笑ましい―から貴志が自閉症とされてある謎設定。精々線の細い、優等生くらゐにしか映らない。女教師が生徒(久美と三馬鹿)の眼の前で生徒(拓也)の尺八を吹かされてゐる体育倉庫に、ぐるぐるパンチばりの原初的な勢ひで実力介入、したはいゝものの。秒殺でボッコボコに返り討たれる情けない貴志の姿は、無体な無様さがグルッと一周する清々しさを呼ぶ。

 それと、前年に勝アカデミー(四期)を卒業してゐる、カメラの前に立つ仕事的には最初期の中根徹が、幼さを残すほど若いのも側面的な見所。


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 「悶絶本番 ぶちこむ」(1995 冬/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/製作協力:アウトキャストプロデュース/監督:サトウトシキ/脚本:立花信次/企画:朝倉大介/プロデューサー:岩田治樹⦅アウトキャスト・プロデュース⦆/撮影:小西泰正/照明:櫻井雅章/編集:金子尚樹《フィルムクラフト》/音楽:E.tone/美術:タケ/助監督:女池充/監督助手:戸部美奈子・坂本礼/撮影助手:高橋秀明/照明助手:加藤義明・加藤賢也/制作進行:藤川佳三・根本泰成・広瀬寛巳/現像:東映化学/タイミング:永沢幸治/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/タイトル:道川昭/スチール:スタジオ601/協力:上野俊哉、中野貴雄、福島佳紀、田中昭二、丹治史彦、菅数浩、石田章、河野恒彦、橋場一男、古川和弘、スノビッシュ・プロダクツ、タオ・コミュニケーションズ、無人駅/詩引用:福間健二『トラブル』『むかうみず』より/出演:本多菊雄・南口るみね・葉月螢・吉行由美・飯田孝男・今泉浩一・上田和弘・伊藤猛・細谷隆広・立花信次・岩元がんこ・牧田泰子・田中要次)。出演もしてゐる脚本の立花信次は、福間健二の変名。出演もしてゐるといふか、出演してしまつた更には出やがつたといふか。
 タイトル開巻、失業中の池山修司(本多)がイントロによつて配偶者と同棲相手の二説分かれる、兎も角一緒に住んではゐる麻紀に、旧友と再会したゆゑ遅くなる旨電話を入れる。本当は呼び出した、前職の同僚・ルミコかユミコ(吉行)のオープンカーに乗り込む。福島出身である吉行由美(大体ex.吉行由美で吉行由実)の、他愛ない似非関西弁に躓きを覚えるのは否み難い。さて措き印刷会社勤めにしては、妙に高いユミコかルミコの生活水準について修司も疑問を呈しこそすれ、結局語らずに済ます、一体何だつたんだろ。坂崎麻紀(南口)と暮らす緑荘に帰宅した修司に、麻紀はハムラビ式の浮気を公言する。
 配役残り、田中要次が麻紀の火遊び相手に修司が名前を挙げる、修司の親友で麻紀に気のある野川シゲオ。一級建築士、かつ詩人とかいふ何気にへべれけなハイスペック。『現代詩手帖』等々の並ぶ、シゲオ宅―多分実際には福間健二宅―の面倒臭い本棚を舐めるなら舐めるで、もう少し書名が満足に見えるやう舐めればとは思ふ。不必要に、やきもきさせるか煙に巻いてどうするの。麻紀が繰り出した繁華街、細谷隆広が麻紀を買はなかつた男で、今泉浩一が麻紀を買ふ男。葉月螢と上田和弘は、出奔した修司が電車で乗り合はせる、“笑はない女”―といふキー造形は正直伝はり辛い―の中村佐知子と佐知子を口説く、ドラ倅臭漂はせる輩。凄まじく不自然か無防備なロケーションでカーセックロスに励む、上田和弘の―案外ショボい―車の傍らを修司が通りがかる。殴りかゝつて来た上和を返り討つた流れで、修司と佐知子が偶さか接近。「何してる人ですか?」、「仕事探してる人」。そんな棚牡丹会話を通して、修司は最低でも佐知子の実家が営む「中村印刷」に拾はれる。映画の世界は無職に優しい、しかも無宿の。腐れ現し世がクソ優しくない以上、軽く底が抜けてゐるくらゐで寧ろちやうどいゝのか、この期に及んで正しい匙加減に辿り着いた。飯田孝男は中村印刷のネームド従業員・木村、画面奥にもう一人見切れるのは知らん。修司が姿を消したのち、麻紀はシゲオのマンションに転がり込む。その後通算二度目で消えた麻紀を追ひ、シゲオと修司は前回失踪時麻紀が見つかつた、地元である横浜に。伊藤猛は、二人と交錯するために交錯する、一幕どころかワンカット・アンド・アウェイの強面。火を噴く、わざわざ横浜まで連れて行つたのに感。岩元がんこは喫茶スナック「無人駅」のママ、麻紀の知己。「ライク・ア・ローリング・ストーンつて知つてる?」、悶絶必至の恥づかしさで飛び込んで来る、立花信次は茶も濁し損なふ御仁、間抜けすぎて吃驚した。最後に牧田泰子は、麻紀と別れたシゲオの車に乗る、覚束なく遠くに行きたガール。
 所詮は配信動画ながら35mmでなく、どうも16mmの画に映りググッてみたところ。昨年の上映イベントに際し新東宝が使つたプリントが、現に16mmであつたりもするサトウトシキ第十五作で国映大戦第五十八戦。ピンク上映館に16の映写機を望めもせず、少なくとも1995年当時は、普通に35のプリントが津々浦々を巡つてゐたのではなからうか。ところで“ぶちこむ”映画が、確認出来る限り全部ピンクで計四作。一本目が稲生実(=深町章)の「ぶちこむ!」(昭和52)で、雨垂れをトッ払つた二本目が市村譲の「ぶちこむ」(昭和60/脚本:夢野春雄)。ぞんざいな公開題が、市村譲にはよく似合ふ。三本目が今作、そして現状最後にぶちこんだ四本目が再び深町章の、2005年第五作「セクシー剣法 一本ぶちこむ」(主演:吉沢明歩)。なほ終止形でなくとも、本数はさほど増えない模様。
 漫然と漂泊する本多菊雄(a.k.a.本多菊次朗/a.k.a.吉田春兎etc.)を、美しいほどカッコよく捉へるショットに全てを賭けたやうな一作。の割に間を取つてリュミコ―何だそれ―の半ば露悪的なキャラクターが気にならなければ、女の乳尻も満更でもなく愉しませる。転がり続ける修司を、田中要次が持ち前の頑丈な安定感で的確に援護、「お前とは暫く会ひたくない」の切れ味には痺れた。「俺は間違つてるか!?」とシゲオに問ふた修司が「間違つてるな」と自己完結した上で、「でももの凄く間違つてる訳ぢやないだろ?」。『むかうみず』―表題とも原文は珍かな―の一節をそのまゝ台詞に採用した、主モチーフを直撃させるクライマックスは見事にエモーショナル。そ、れだけに。改めて際立つのは、のこのこ腹か頭を抱へさせに来た福間健二の蛇に足を生やしぶり。いつそ修司とシゲオの別れで映画を綺麗に畳む、フィニッシュの選択もあつたのではなからうか。

 前貼りは使つてゐないと流石に撮影が成立しない、後方に建物を望むロケーションで、カメラが全裸―風―の本多菊雄をぐるぐる周回する。幾多の小屋から端折られたにさうゐない、木に竹を接ぐオーラスが商業―の筈の―映画を徒に濁らせる、履き違へた作家性的にはグルッと一周して完璧。これが薔薇族なら、素直にひとつのエクストラ見せ場たり得たのかも知れないけれど。


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 「悶絶ふたまた 流れ出る愛液」(2005/製作・配給:国映株式会社・新東宝映画株式会社/製作協力:Vパラダイス/監督:坂本礼/脚本:尾上史高/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・臼井一郎/撮影:鏡早智/編集:酒井正次/録音:福島音響/助監督:伊藤一平/撮影助手:矢頭知美・柴田潤/監督助手:岸川正史/制作応援:永井卓爾・田山雅也/美術協力:松井祐一/メイク協力:波止和子/協力:福原彰・河合里佳・大橋健三郎・桜井一紀・加藤遼子・毛原大樹・菊地健雄・中川大資・泉知良・河西由歩・朝生賀子・今岡信治/タイミング:安斎公一/現像:東映ラボ・テック/出演:夏目今日子・石川裕一・藍山みなみ・佐野和宏・伊藤猛・あ子・吉岡睦雄・岸田雅子・伊藤清美・山崎佳寿江・飯島大介・上野つかさ)。出演者中、飯島大介と上野つかさは本篇クレジットのみ。
 小癪にも『それから』を新潮文庫版でど頭に抜く開巻、もしも仮に万が一、よもや漱石に何某かの含意が込められてあつたのだとしても、浅学菲才で右に出る者のゐない当サイトには諒解能はず。いや、そこは進んで出て貰へよ、といふか左に下がれ。加藤美紀(夏目)と、この時点では一緒に住んでゐなかつた筈―のちの「とりあへず一緒に住みますか」との間に齟齬を生じる―の苗字不詳亮介(石川)の婚前交渉。ナルコレプシーばりに事の最中度々寝落ちる、美紀の大概底の抜けた不自然な造形に劣るとも勝らず、生で挿したはいゝものの、亮介がくさめした弾みで中に出してしまふ下らなくすらないシークエンスが早くも木端微塵。ックション、「あ!」、何だそれ。眠る美紀にキスを二回、亮介も寝てタイトル・イン。アバンから猛然と飛ばす飛ばす、逆向きに。そして、その加速を保つたまゝ完走を果たす。
 明けて主(ぬし)に辿り着けない医師の声で、「本日の検査では進行は見られませんね」。「今日は妹さん達来て呉れてよかつたですね、橋本さん」。こゝから先、三姉妹下二人の順番に関しては、遣り取りと雰囲気からの大胆か適当な当寸法。長女は確定の橋本好子(あ子)が眠る病室に、恐らく次女の美江子(岸田)と消去法で三女の八重子(山崎)。八重子の息子である亮介に美紀まで集まり、亮介の兄・明(伊藤)も遅れて顔を出す。八重子と同居、終ぞ配偶者なり子供の見当たらない、明はどうもチョンガーぽい。一方、大学時代の恩師・田中(佐野)と不倫関係にある美紀は、田中の妻も癌を発症したとやらで、藪から棒かつ一方的な別れを切り出される。
 劇中常時、ダダッ広い会議室にてパッと見時間を潰してばかりゐる、美紀の業務内容が謎めいてゐつつ亮介も亮介。賃金の発生する時間の無駄に関しては、当サイトも現場稼業なんだけどゴンドラでビルの外壁を清掃する人等が、スーツで通勤するかね。最終的には、個人の自由なんだけどさ。兎も角配役残り、ファースト・カットでは二人乗つてゐたのに、次に亮介がゴンドラから携帯をかける際には消えてゐる連れは不明、落ちたのか?出し抜けに酔つ払つて出て来る藍山みなみは、最後まで繋がりの如何を一切語らずに済ましてのける、亮介の浮気相手・ちひろ。どうも、婦人を職業にしてをられる職業婦人の模様。吉岡睦雄は妊娠したちひろが、亮介以外に父親の可能性を残す男・相澤。あまり見覚えのない、茶髪のチャラ男造形、チャラ男は大体何時もチャラ男のやうな気もしなくはない。あくまで不脱ながら、三番手らしい一幕・アンド・アウェイを敢行する伊藤清美が、大病を患つた田中の妻・典子。土壇場で飛び込んで来る、飯島大介はまさかの神父、何がまさかなんだ。あとは分娩室の看護師が、朝生賀子であるのが看て取れる限界、医師は無理。ツイッターに上げられてゐた―シネロマン掲示の―プレスシートの画像から、乳児の名前がつかさちやんで上野つかさのベイビーセルフ。問題が、マペットの類にしては相当よく出来てゐる―風に節穴には映る―新生児に全く手も足も出ない。
 勝山茂雄の「人妻 濃密な交はり」(2005/脚本:奥津正人/主演:真田ゆかり)と同じ要領で、坂本礼第四作について以前茶も濁し損なつたエントリーの、全面的改稿を潔く選んだ国映大戦第五十七戦。第二作にして最高傑作に感激したばかりだといふのは極私的なタイミングにつきさて措き、余程悪い記憶につき消去されてゐたらしく、まあ軽く驚くほど綺麗に覚えてゐなかつた、そんなに宜しくないのか。
 クソ面白くない相当酷い以前に、しかも終始、人物間を凄まじく無造作に往来するカメラに匙を投げるといふか橘高文彦のピック感覚でバラ撒いてゐたところ。恐ろしい通り越して呆れ果てることにそれがどうやら、大人しくカットを割ればいゝものを、無駄か闇雲に長く回す諸刃の剣であるのに気づいた瞬間には、エウレカ!と全裸で往来に飛び出したアルキメデスが、強化外骨格でもガキンガキン着装するくらゐの衝撃を受けた。一言で片づけると、斯くも間抜けな映画初めて見たよ。カメラ自体は動かないまゝ、機械的に寄れば寄つたでガチョーンとか音が聞こえて来さうなぞんざいなズームにも、改めて腰骨ごと尻子玉が粉と砕けた。俳優部の顔に照明の当たらない、何処までも逆の意味で完璧な締めの濡れ場への導入含め、画角云々どころでないプリミティブな惨状に、果たして鏡早智は、今作に名前を残してゐて大丈夫なのか。この期の限りに及んで、膨大な世話でしかない不安さへ去来する。もう一言付け加へるならば、斯くも素頓狂な撮影滅多に見ないよ。フィックスの画が何故か―特に何もなければ別に誰もゐない空間へ―勝手に動いて、何事もなかつたかのやうにまた元の位置に平然と戻る。その時この御仁が何を撮つてゐたのか大御大も多分知らない、“大先生”柳田友貴の魔技・ヤナギダスライダーに匹敵する箆棒な破壊力を、鏡早智が撃ち込んで来るとは思はなんだ。
 典子と吉岡睦雄は無視するにせよ、四角関係を成す女二人が、それぞれ父親を絞りきれない子供を宿す。ただでさへトッ散らかつた状況の、火に油を注ぎ。別れたいのに別れて貰へない、佐野にしては防戦一方の田中以外、あとの三人が何れも、各々の恋敵に直談判あるいは直接攻撃を仕掛けて来るエントロピーの高い連中揃ひ。亮介に至つては、与へられた情報は美紀が大量に借りパクした、田中蔵書に捺された田中印のみ。田中さんの性別も判らない出発点から、クリエイティブな猜疑を膨らませるにもほどがある。七面倒臭い風呂敷を広げるだけ広げ倒しておいて、はてさてこの物語といふかより直截にはこんな物語、全体如何にオトすものかと期待はせずに心配してゐると。どうせ清々しく意味不明ゆゑ、支離滅裂をのうのうとバレてのけるがちひろの子供に関しては、亮介が父親ではないとする、ちひろの確信を尊重するほかない、その後の産む産まぬは知らん。亮介と美紀はつかさの父親は棚上げした上で結婚、ところが式場で昏倒した好子が、そのまゝ往生。どさくさした勢ひに任せ美紀が産気づくへべれけな展開に、悶絶するにはあたらない。展開云々以上だか以下に、カメラワークからへべれけだからな。それは律は首を縦に振つたのか、好子の骨を皆で舟から川に流すラスト。つかさちやんがくさめをした何となくなタイミングで、ボレロなんて鳴らしてみたり。暗転、クレジットが起動する瞬間の、六十五分の五里霧中が漸く終る正体不明の安堵こそ、今作がもたらすエモーションの最たるものであらうか、最早映画といふより一種の苦行に近い。
 前述したミステリアスな美紀の会議室勤務―保健室登校か―に関しても、要は今上御大のイズイズム的なそれらしきオフィスのロケーションと要員を用立てる袖と労力とを端折つた、無作為の生んだ不条理にさうゐない。あるいは、肉を斬らせて骨まで断たれる、壮絶な布石にせよ。美紀が相変らず会議室でポケーッとしてゐると、流石にメットは被つてゐる私服の亮介がゴンドラで降りて来るカットには、桂文枝(ex.桂三枝)のメソッドで引つ繰り返つた。これ実は、盛大なバッカバカバカ映画にまんまと釣られてるだけなのかな。単なる詰まらなさに止(とど)まらずヤバい、坂本礼が珠瑠美―あるいはプロ鷹―とも互角に殴り合へさうな、国映系の枠内から逸脱さへしかねない一種の問題作である。


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 「18才 下着の中のうづき」(2001/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画株式会社/監督:坂本礼/脚本:井土紀州/企画:朝倉大介/音楽:安川午朗/撮影:鏡早智/編集:酒井正次/助監督:大西裕/録音:福島音響/撮影助手:平林利穂/撮影応援:中島美緒/監督助手:躰中洋蔵/演出部応援:伊藤一平/現像:東映化学/デジタルカメラ撮影:今岡信治・田尻裕司・榎本敏郎・女池充/協力:泉田聖・小曾根京子・片良あゆみ・五来恵美・平田亜希子・陣内智子・浜田梢恵・境美登利・坂本仁・境駿平・鈴木賢一郎・細井禎之・ファントムライン/出演:笹原りな・川瀬陽太・工藤あきら・山崎瞳・鈴木あつ子・樋口大輔・山根豊治・中村祥二郎・星野麻伊・海老原由紀・五十嵐愛・佐野ゆかり・伊藤渚・田辺彩・井野朝美・野平美保子)。
 真ん中を端折つた「18才のうづき」でタイトル開巻、これは配信題なのか、DVD題は「連続自殺 メル友」で別にある、ホラーかよ。「ねえ、ハルマゲドン来なかつたね」。今更感の軽く漂ふ、十七ヶ月前ノストラダムス―といふか五島勉―が盛大に外した、2000年の歳末。忍び込んだアトムビルの屋上にて、略称でナカジョの女子高生・舞子(山崎)が彼氏(多分中村祥二郎)と乳繰り合ふ。事後ジュースを買つて来た彼氏の眼前、舞子は足から飛び降りる。遺された舞子の携帯がメールを送信、したタイミングでピンク題でのタイトル・イン。以降ラストまで全篇を貫く、藪蛇なフラメンコ推しが何気に今作最大の謎、金が動いてゐる風にも見えないし。
 その他生徒七人と先生(境美登利までの協力部)に、ビリング頭の計九名がフラメンコ教室に飛び込んで来る。校外でフラメンコを習ふショウジ千尋(笹原)は、同じスタジオに通ふ同級生のヒダカ亮(まこと/恐らく山根豊治)に片想ひするものの、まるで相手にされない。制服の違ふ親友・京子(工藤)が千尋を慰めがてら、メル友であつた舞子の噂話。“綺麗なまゝ死にたい”、“綺麗”の定義を問ひ詰めたい―無論非処女である―舞子の方便に、千尋が何となく共感を示す一方即物的に距離を置く京子は、バンドマンの彼氏・ヨシヒコ(樋口)から連絡が入るや、サクッと千尋と別れ逢瀬に向かふ。置いてけぼりにされた格好の千尋は渋谷の街にて、舞子の事件に興味を示す元教師のウラサワ真(この人もまこと/川瀬陽太)と、牧歌的な出会ひ系を介して遭逢。7セグメントのアラビア数字をフィジカルで差し替へる、造りが結局アナログな東急のパブで“21世紀まであと3日”のある日、京子もアトムビルから飛び降りる。
 凄まじく大雑把な配役残り、星野麻伊から野平美保子までの誰か一人が、千尋にはダンスのことしか頭にないと宣ふたにも関らず、渋谷駅の構内で真がお別れのチュッをして貰ふ美少女。イコール敦子の、恐らく今回きり使つてゐない名義の鈴木あつ子は真の在職当時教へ子。固有名詞が最後まで呼称されぬゆゑ、大絶賛仮名でアツコ。真と要は淫行したのち、卒業後の結婚すら約しつつ、アツコは幹線道路に飛び込む。チュッ子ちやん(超仮名)役以外の七人が、京子や舞子と千尋を迎へる屋上部隊。二十四人投入される頭数を、無事整理出来るとは思はなかつた。と、ころで。受験勉強してゐる気配の一滴も窺へない、留年してゐなければ高三である筈の、千尋の進路については見事か豪快に通り過ぎて済ます。浪人してわざわざ入る、高校の生徒にも更に一層見えないぞ。
 配信では見られないものと諦めてゐた坂本礼第二作が、楽天TVの中にあるのを見つけた国映大戦第五十六戦。喜び勇んだついでで、ザッと探してみたところサトウトシキの「悶絶本番 ぶちこむ!!」(1995/脚本:立花信次=福間健二)も入つてるぢやない。こゝから先は純然たる私(わたくし)の些事でしかないが、近所のスーパーの会員カードがUNiTe Cardに切替へだか吸収。普通に生きてゐると勝手に貯まつて行く、楽天ポイントで戦へるのは非常に捗る、プレイヤーの使用感も悪くない。これで旧素のDMMに劣るとも勝らず画質の酷い、使ひ心地から決して芳しくはないビデオマーケットと縁が切れる。短い間だつたけど、今まで有難う。
 実は舞子と京子が同じロケーションから飛び降りた以外、残りの七人に関してはイントロをスッ飛ばしてもゐる、パラノーマルな少女達の連続自殺。好きな男の子からは木端微塵にフラれ、マブもダイブ。偶さか渦に吞み込まれさうになる少女と、敦子の死と一連のアトムスーサイドに直接の関係なくね?とかいふ、割と根本的かプリミティブな疑問はさて措き、一件の真相に辿り着かうとする男。ほかには八ヶ月後の美波輝海(a.k.a.大貫あずさ/a.k.a.小山てるみ)初陣、「股がる義母 息子の快感」(製作・脚本・監督・編集:北沢幸雄)しかピンクに於ける活動の痕跡なり戦績の見当たらない笹原りなは、下手に攻めれば映画を沈めかねない覚束なさが、元々正体不明の不安に奇跡の調和。あとこの人、モコモコした冬支度でチョコチョコ右往左往する姿がエクストリームに可愛らしく、寄つて抜くよりも寧ろ距離を取つてのロングに映える。亮と同じハンドルの人間とランデブーする千尋の、微笑ましい高揚感。狭義の絡みに止(とど)まらない、真と敦子の絡み。何か贈り物を貰つた真が手を繋いで来た時の、敦子が零すさりげないときめき。他愛ないシークエンスの数々が他愛ないまゝに、超絶のエモーションを随所で連発。舞子と京子、にほか七人。総勢九人の少女―少女ぽくないのが何人もゐるのは気にするな、通り過ぎろ―が千尋を天国だか地獄かよく判らない、今風にいふとハビタット的なサムウェアに誘(いざな)ふ劇中第三次アトムビル。斯くも物騒な場所が、閉鎖されてゐないのが大いなる二つ目の不思議。真が間一髪滑り込む、カット割りは正直御愛嬌ではあれその前段、「せーの」の足下なんてもう完璧。井土紀州の作家性を論じる資質は持ち合はせないけれど坂本礼は確かに、二十有余年後の今なほ相変らず晴れる兆しすら窺へない、空つぽにしては何故か息が詰まる、恒常化した半ば肌身の閉塞感を果敢に正面突破してみせた。それ、だけに。主演女優のオッパイを何と五十五分温存してゐた事実に気づいてから驚かされた、締めの濡れ場に跨ぎで突入。ピンク特有の要請ないし要諦としても、一種のぞんざいさに平素とは真逆の不服を覚えかけたくらゐ。尤も、一旦突入した以上、締めの濡れ場は矢張りキチンと完遂させるべきではあるまいか、と横に振るほどでもないけれど、首を傾げる疑問は否み難い。それが裸映画のみならず、女の裸と映画それぞれに対する責任といふ奴ではなからうか、漸くらしくなつて来た。為に吹く与太は兎も角、よしんばあとから思へば底の抜けた馬鹿騒ぎながら、二十一世紀の火蓋を切る瞬間と興奮とをカメラに捉へ、二月の頭には封切る。如何にも量産型娯楽映画らしい、熱い内に打ちのめすスピード感も清々しい。暗転ならぬイエローバックの黄転で起動するクレジットが、南風そよぐ映画を温かく軽やかに締め括る。今後いまおかしんじの遺志を酌み電撃大蔵参戦でもしない限り、当サイト選坂本礼最高傑作、褒めるのは構はないにせよ今岡信治別に死んでねえ。


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 「をさな妻」(昭和55/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:白鳥信一/脚本:鹿水晶子/プロデューサー:中川好久/撮影:山崎敏郎/照明:小林秀之/録音:福島信雅/美術:菊川芳江/編集:山田真司/助監督:川崎善広/色彩計測:森島章雄/現像:東洋現像所/製作担当:鶴英次/テレビ画像協力:東京12チャンネル/音楽:大野雄二/挿入歌:『愛の妖精』作詞:荒木とよひさ 作曲編曲:大野雄二 唄:原悦子 『ひとり暮し』作詞作曲:石黒ケイ 編曲:鈴木宏昌 唄:石黒ケイ⦅ビクター・レコード⦆/出演:原悦子・吉行和子⦅特別出演⦆・山本伸吾・矢崎滋・三崎奈美・桑山正一・浜口竜哉・島村謙次・絵沢萠子・清水石あけみ・大平忠行・玉井謙介・小見山玉樹・八木景子・鹿又裕司・岡本達哉・水木京一・庄司三郎・浅見小四郎・賀川修嗣・兼松政義・緑川摂・野崎巳代・中嶋朋子・深町真樹子)。出演者中、水木京一と庄司三郎に、賀川修嗣以降は本篇クレジットのみ。配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 湯の沸いた薬缶が鳴り、年齢が明示されないのは兎も角、あるいは兎に角“をさな妻”の原田悦子(原悦子/公称的には封切り当時二十四)が、未だ布団の中でぐずぐずしてゐる夫の則夫(山本)を起こす。この二人、悦子は中学時代の先輩と結婚した間柄。自堕落に求めて来る則夫に対し、「今夜頑張るから」と悦子が健気に拒んでタイトル・イン。二人が暮らす、風呂なし手洗は共同の安アパート「芙蓉荘」。向かひの部屋に住むホステス・東美智(吉行)の顔見せ挿んで、共働きの二人が仲良く出勤。踏切を通過する、電車の車体にクレジット起動、悦子が勤務先の「西原郵便局」に辿り着くまでがタイトルバック。新任の事務長・田村(浜口)以下、滝沢ゆり子(三崎)と大沢(賀川)が劇中登場する悦子の同僚で、局には深夜ラジオ狂で日々大量の葉書を送り散らかす、高二の西島政人(鹿又)が通ひ詰める。一方、出勤した筈といふか要はフリの則夫は、茶店で元同僚の谷口(岡本)と密会。興信所「町田コンサルタント」に勤めて、ゐた則夫は顧客を恐喝したお痛で実は馘になつてゐた。谷口から隠し妻子の写真を入手、浅見小四郎に再度恐喝を試みる性懲りもない則夫に、町コンの強面・江崎か畑中(小見山)が目を光らせる。さあて、皆様御唱和お願ひ致します、コミタマキタ━━━(゚∀゚)━━━!!
 配役残り、桑山正一は悦子を頻繁に訪ねて来る義父・山田連太郎。絵沢萠子が―男を作り出奔した―実母のせきで、中嶋朋子は幼少期の回想に於ける子役。筋者すれすれの稼業から足を洗ふ腹を固めた谷口の、お腹の中に子供もゐる女は恐らく春江役とされる八木景子。江崎か畑中を連れ則夫と谷口を急襲する、大平忠行が兄貴分の畑中か江崎。誰も呼称して呉れぬゆゑ、この二人の名前を詰めきれない。矢崎滋は、美智のヒモ・島元。ほかにこれといつた人影の見当たらない兼松政義は、窓口でうはの空の悦子を急かす影英似のパーマ頭か、後述する「パコパコ」の無駄に美青年のボーイ辺り。ヤサに押しかけた大平忠行が悦子を犯す際鳴つてゐる、事前に政人クンから聞くやう乞はれてもゐた文化放送のDJが、吉田照美らしいけれど個人的には確認能はず。町コンが浅見小四郎に支払つた―とする―示談金・百万の返済を強ひられた悦子は、郵便局を辞め美智が働くキャバレー「パコパコ」に転職、ピンサロみたいな屋号だ。清水石あけみは先輩ホステスのアケミで島村謙次が、元々アケミの客であつた上客・湯山陽一郎、女達からの愛称はゆーさん。緑川摂と野崎巳代はその他ホステス、多分。水木京一と庄司三郎が、二人連れのパコ客で飛び込んで来る、さりげなく芳醇なカットが今作のハイライト、頂点そこかよ。玉井謙介は、町コン社長の町田。則夫がコミタマに文字通りの手傷を負はせ、何だかんだ二百万まで膨らんだ借金を、悦子は寝るのを条件に湯山から借り返済。町コンから救出した則夫と悦子が出くはす、子連れ夫婦のこれ見よがしに幸せさうな三人と後々登場する、島元の浮気相手はノンクレだと思ふ。最後にパチンコ屋で放心状態の悦子に、「お姉ちやん玉なくなつてるよ」とフランクに声をかけて来る女丈夫は深町真樹子。あと、東京12チャンネルが提供するのはお馬さんの中継。島元が見事に負け、美智こと吉行和子が溜息交りに放つ、鮮やかなほどやさぐれた名台詞が「アタシの労働の結晶が馬公のウンコになつちやつた」。馬公のウンコ、カッコよすぎんぢやねえか。
 扱ひの詳細がよく判らないが、一応ロマポでなく一般映画らしい白鳥信一昭和55年第三作。なほ、「をさな妻」といひながら富島健夫の原典とは関係ないフリーダムな建付け。許されるんだ、そんな真似。
 当時博く絶大な人気を誇つた原悦子をヒロインに擁し、実際客席を若年層なり女性客で埋めてはみせ、たさうだともいへ。「愛の妖精」とかいふ、謎の挿入歌が何処で流れてゐるのかサッパリ判らない―予告ででも使つたのか?―のはさて措き、ただでさへ、腐れ則夫の粗相に悦子が振り回され続ける、正しく火に油を注ぎ。クソ則夫いはく“どうしてかうなつちやつたのかな”だなどと馴初めは豪快にスッ飛ばしてのけた上で、何時の間にか則夫の外道がまさかかしかものゆり子と男女の仲。主人公が手籠めにされたり体を売つてゐる間、諸悪の根源たるゴミ男は余所の女の部屋で呑気に、マンガを読んで笑つてゐたりなんかしやがる。悦子を奈落の底に叩き落すことにのみ全てを賭け、挙句終ぞ一切の救済に一瞥だに呉れぬ、潤ひを欠いた暗黒作劇には畏れ入つた。アイドル映画にしては原悦子を美しく可愛らしく撮らうとする意欲すら特段窺へず、憔悴しきつた悦子が悄然と砂浜に佇む。入水しか連想させない沈痛なラストに至つては、往時大好きな大明神の主演映画を観るんだと、小屋の敷居を嬉々と跨いだ少年少女の心中や果たして如何に。慈悲といふ言葉を知らんのか、昭和。この際原悦子は諦めてしまふとして、濡れ場といふ見せ場にこそ与らないものの、決して一幕・アンド・アウェイで駆け抜けるでなく終盤まで潤沢な出番に恵まれる、本隊ロマポの道祖神・小見山玉樹にエモーションを注ぐのも一興。話を戻すと先に見切れる、地味な名演技で本当に楽しさうな水京からカメラがパンすると、連れがサブであつた瞬間には小屋の暗がりの中思はず声が出た。


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 「果てしない欲情 もえさせて!」(2000/製作・配給:国映株式会社・新東宝映画株式会社/監督:サトウトシキ/脚本:小林政広/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人/協力プロデューサー:岩田治樹/音楽:山田勲生/撮影:広中康人/照明:高田賢/録音:中山隆匡/編集:金子尚樹/助監督:女池充/監督助手:城定秀夫・菅公平・伊東一平/撮影助手:鏡早智/照明助手:屋宣瞬?/特殊造形:むくなしよる/タイミング:安斎公一/タイトル:道川昭/現像:東映化学/録音スタジオ:福島音響/ネガ編集:フィルムクラフト/応援:坂本礼・永井卓爾・榎木敏郎・鎌田義孝・大西裕/協力:江尻健司・竹内宏子・西浦匡規・上田耕司・三和映材社・東洋照明・不二技術研究所/出演:向井新悟・川瀬陽太・奈賀鞠子・佐々木ユメカ・本多菊次朗・上野俊哉・伊藤猛・勝山茂雄・吉田俊・請盛博行・坂本礼・下元史朗・伊藤清美・横浜ゆき)。照明助手の名前が、五六回ダビングを繰り返したVHSみたいな画質で潰れ判読不能。所蔵するプリントが飛んでゐたのか、nfajはnfajでスッカスカなんだな、これが。
 国映と新東宝のクレジットから公開題イン、生首を提げた、思ひのほか髪の長い向井新悟のロング。「最初に久美子と会つたのは新宿、歌舞伎町でしたかね」。以降全篇を貫く、刑事に対する供述を思はせるモノローグが起動する。年少―劇中用語は“学院”―出の順一(向井)が更生し損なひ、薬の売人に身を落とす、までを語つた上で改めて原題―にして一般映画題―の「青空」イン。ブルーハーツの「青空」のカラオケかと一瞬耳を疑ふ劇伴は、流石に少なくとも狙つてはゐるよね?
 繁華街の往来、曲り角の出会ひ頭で順一と、佐々木ユメカを連れた久美子(横浜)が交錯。口論から出し抜けに張つて来た久美子を、順一は路地裏に連れ込むと腹パン一発で制圧し犯す。いきなり手を出す久美子もヤバいが明らかに危機的な状況を前にしながら、友人を捨てその場を逃げるユメカも大概な更に上か下を行き、一番壮大なのは斯くもブルータルな出会ひなり出鱈目な経緯で、久美子が順一のアパートに転がり込んで来る奇想天外なファンタジー。シリアスだかソリッドを気取つてゐる割に、油断してゐると国映がへべれけに底を抜いて来る、最早一括りかよ。ビリング推定で吉田俊・請盛博行・坂本礼のプッシャー仲間と卓を囲む順一宅に、二人組の刑事(本多菊次朗と上野俊哉)が突入。上野俊哉は何故か、一直線に隠し場所からヤクを見つける。徒歩で逃走した順一が意外な健脚を誇り、ちやうどフルマラソンくらゐ走つて流れ着いたのが、習志野といふ土地のセレクトは距離からの逆算か。
 配役残り下元史朗は、二つ目の途方もない夢物語でそんな順一を拾ふ、旋盤工場の社長・熊沢。川瀬陽太がネームド工員の及川で、伊藤猛と勝山茂雄はその他工員。奈賀鞠子は昇給を餌に、日々熊沢に抱かれる事務員・朋子。昼休みのキャッチボール、順一が全力を出してみたところ、及川を昏倒させた剛球を拾つて呉れる伊藤清美は、熊沢の妻・礼子。その件のモノローグに於いて、「こんな美人があのエロ親爺の女房だつたなんて」といふのが、都合三つ目のアシッドな羽目外し。
 東京に舞ひ戻つた順一が亀有駅南口にて再会を果たした、久美子と交す会話で何時か多分故福岡オークラで観てゐたのを思ひだした、サトウトシキ2000年第二作で国映大戦第五十三戦。いや、そこは青空アバンで思ひだせよ。
 恐らく、行き先なんて端から知らない空白と、持て余す充溢。そして、偶さか弾ける暴力を主演の一人語りで淡々と綴る、ピンクにしては珍しい明々白々な男優映画。女の裸を、宗とはしてゐないのもある。さう来た日には早々か易々と煮詰まつてゐてもおかしくないものが、演出部の勝利か朴訥としかしてゐないやうに聞かせ、これで案外向井新悟が独白に長けてゐたのか。一時間を四五分跨いだ尺を、飽かせも厭かせもせず最後まで見せきる。二三番手は共々挨拶程度で茶を濁す反面、終盤再び、あるいは終に道を踏み外した久美子が順一とひたすらに闇雲にヤリ倒す過程で、一番手に関してはそれなりに挽回。と、いふことは。要は同じ便法で、女優部の濡れ場とゴリゴリに墨を入れた青年の屈曲した青春映画とを、両立させるミッション:インポッシブルも決して不可能ではなかつたのではなからうか。とかいふ漠然とした疑問は、単にもしくは結局、裸映画に向き合ふ姿勢の問題に過ぎまい。


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